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40.堪忍袋の緒が切れた

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「や、やめてください!」

「へっへっへっ」

「へっへっへっ」

「良いねぇ」

 下品な声を上げて5人で囲んでいる。

「そ、そのような事はおやめ下さい!」

 別の給仕の人が止めに入る。

「お、お前もいいな! こっち来い!」

「い、いや!」

 腕を掴まれて5人の元へ連れてこられる。

「おっ! 増えた!」

「へっへっへっ」

「へっへっへっ」

「へっへっへっ」

 宿の職員が絶望した。
 周りの客も遠くから様子を伺っている。

「いやぁ!」

ブチブチィィィ

バリバリィィィィン

 ガラスが飛び散る。

 5人がこちらを見る。
 何が起きたか分からないだろう。
 蘇芳のグラスが粉々になっている。
 
 もう我慢ならねぇ。
 コイツらに容赦は要らねぇわ。

 真白くなった頭で自分の手を見ると血が出ている。
 
 あぁ? なんで血が……
 あぁ。グラス粉々にしちまった……
 弁償しなきゃな

 ユラァと立ち上がる。

「おいおい! モヤシがやんのかコラァ?」

「こっちは5人とも解放者だぞ!」

 若女将を掴んでいる腕に手を伸ばす。

ゴキャッ

「が! がぁぁぁぁ! 腕がぁぁ!」

「てめぇ! 何しやがった!」

 無視して自分の後ろに若女将を庇う。

「どけよ! どかねぇと酷い目に合うぞ!」

 そいつの後ろをチラッと見ると武器を出している解放者。

「蘇芳。容赦しなくていい」

バガァァァァンッ

 後ろにいた解放者が一瞬で横の壁に埋まる。

 チラッと後ろを見て謝る。

「すみません。弁償しますので」

「このやろぉぉ! 何なんだてめぇぇぇ!」

 ガッと血塗れの手で喚いてるやつの頭を掴む。

ミシミシミシッ

「割ってやろうか?」

「あががががが」

 パッと手を離す。

 泡を吹いて白目になり気を失っていた。

「お、お前達何もんだ!?」

「俺達も解放者だ。お前みたいな腐ってるやつは大嫌いだ」

「俺達に手ぇ出してタダで済むと思うなよ!」

グシャ

「ぐわぁぁぁ! 足がぁぁぁ!」

「お前達がなんだって?」

 最後に残った1人が怒鳴り散らす。

「俺達はザ・王っつうチームのもんだ! 俺達に手ぇ出して無事に帰れると思うんじゃねぇぞ?」

「ほう?」

 失神したやつを連れて逃げ出す男。
 腕を痛めたやつが壁に埋まってたやつを連れて。
 足を痛めたやつはヒョコヒョコ帰っていく。

「すみませんでした! 有難う御座います!」

 若女将が頭を下げる。

「いえいえ、我慢できなかったので」

『僕も我慢できずにすみません!』

 ペコッと頭を下げる蘇芳。
 一緒に頭を下げる。

 若女将をチラッと見ると着物が乱れたことにより胸元が開いている。
 そこから見える光景も絶景であった。

 職員の人が若女将の元へ行くと。

「さっきのザ・王って、この辺を牛耳ってるっていう解放者チームじゃないですか?」

「えぇ。その様ね」

「タダじゃ置かないって言ってましたよね? 仕返しに来るんじゃ……」

「対策を取りましょう」

 キリッと指示をしている若女将。

「その必要は無いですよ?」

「えっ!? 何故です?」

「俺達がちゃんとケリつけて来ますから」

「で、でも、どうやって?」

 チラッと奴らが逃げていった方を見る。

「アイツらの行くところ、特定しますんで大丈夫です」

「あっ、そういえばもう一方……」

「はい! そろそろ戻ってくるんじゃないですかね」

 玄関の方からやって来る影が見える。
 雷を迸らせながら走ってきた。

「翔真さん、場所特定出来ました。町外れにある大きな廃墟ですね」

「えっ!? あそこはずっと空き家のはず……」

「何らかの工作をして空き家のままにしているんでしょう。そこを違法に占拠していると」

「いつ行きます?」

『すぐに行こう。奴らはやり返しに来るために人を集めてるはず』

「だなぁ。こっちも堪忍袋の緒が切れたわぁ。我慢ならねぇ」

『僕も同意見だな』

 歩き出す3人。

「大丈夫なんですか!? 人が集まってるところに3人だけなんて……」

「大丈夫です。俺達、神代の鞘は最強なんで」

 そう言い残して宿を後にする。

 一斗に案内された通りに向かう。
 大きな廃墟に着いた。

「ここか? 暗いな」

『でも、沢山の人の気配がする』

「窓を何かで隠してるのかもしれないですね」

「よしっ! 突入!」

ドンッ!

 一瞬で建物の前だ。
 そのままの勢いで扉を蹴破る。

ドガァァァァンッッッ

 数名吹き飛ばされたようだ。

「何もんだ!?」

「俺達が温泉をせっかく堪能してる時にお前んとこのゴミグズが邪魔したから説教してやったんだよぉ」

「あぁ!? てめぇらか!? ウチのもんやったやつは!?」

「だから、そうだって言ってんだろ?」

 蘇芳と一斗も後ろから歩いてくる。

「ハッハッハッ! たった3人でこの人数相手にする気か!?」

 ざっと100は居るだろうか。

「ダッハッハッハッ! その程度の人数の雑魚を集めたところで所詮雑魚なんだよ! お前ら、今日で終わりだ。牢屋で反省しろ」

「だぁれが、お前みたいなモヤシにやられるかよ!」

「御託はいい。掛かってこい」

 手をクイクイッとする。

「やっちまえ!」

「雷波」

ブゥゥゥゥンッ

 向かってきた奴らの真ん中に雷の波を放ち分断する。

「俺左!」

『じゃあ、僕右!』

「一斗は魔法で一掃!」

 掛かってくる相手を全て殴り、蹴り、時には投げる。

 全て顔面を殴り気絶させていく。

 蘇芳は余っ程頭にきたんだろう。
 力が入りすぎて倒れた輩の大半が骨折している。

 追い打ちをかける一斗。

「雷雨」

 雷の雨が降り注ぎ、身体を焦がしていく。

ビリビリビリビリ

 プスプスいいながら倒れていく輩たち。

「おぉ。やっぱり一斗の魔法はすげぇ」

『威力あるよね?』

 スタスタ歩きながらリーダーらしい奴の元へ行く。

「俺達は人数こんなもんじゃないぜ? 集まった時は覚悟しろ?」

「んー。まだ居るんだ?」

「まぁ、お前の指示で動くんだろ?」

「そうだ」

ゴギャッ

 一瞬で近づくと下から拳を突き上げ、顎の骨を粉砕する。

「あがっ!」

「これで指示できないね?」

「おええころあろう」

「何言ってるかわかんねぇよ」

 横に頭を蹴り飛ばす。

ズガァァァン

 壁に頭が埋まる。
 そのまま腕を縛る。

「おまえらぁ。コイツみたいになりたい奴出てこーい!」

 ダメも出てこず、静まり返っている。

「根性ねぇな。一斗」

「はぁい! 雷雨!」

ズガガガガガガガガーン

 そこに居た輩は全て失神している。

『スッキリしたねぇ。まだ残党がいるかな?』

「それは、自警団に任せよう」

『あー。そうだね。1番厄介なのはあそこに居るし』

 ズルズルと引きずって詰所に行く。

「すみませーん! コイツ引き渡したいんですけど……」

「おっ! どうしたんですか!?」

 自警団の人がでてきた。

 髪を掴み顔を見せる。
 コイツ、悪さしてたんですよぉ。
 捕まえたんで死刑なりなんなりして下さい。

「あぁ! コイツ俺達が捕まえられなかったザ・王の王じゃないですか!」

「へぇ。コイツ王だったんですか? 良かったぁ。こっぴどくやっておいて。あぁ、コイツが目覚めたら、また俺達の目に入ったら命はないと思えって伝えてもらえます?」

「はっ! わかりました!」

 敬礼して言う。

「お願いします!」

 敬礼を返して後にする。

「よしっ。これでいいだろう。戻って温泉入ろう!」

『いいね!』

「汗を流しましょう!」

 意気揚々と帰ったが、0時を回っていたため温泉には入れないのであった。

「くっそぉぉぉぉ!」
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