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36.感謝の気持ち

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 ギルドの中に入るとザワついた。

「おい! テツ? 何持ってきたんだ?」

 盗賊の一件があってから皆との仲間意識が強くなり、色んな人とコミュニケーションをとるようになった。
 その為、気軽に声をかけられるようになっていた。

「ああ。ライガーをな、依頼で仕留めたんだ」

「ホントか? たしか、ライガーってAランクだよな?」

「そうだ」

「流石だな!」

 その会話を聞いてきた他の冒険者も寄ってきた。

「テツ! 何背負ってんだよ? 怖ぇな」

「換金するためにそのまま持ってきたんだ」

「いや、怖ぇよ!」

「そうか?」

 口々に突っ込んでは離れていく。
 しばらく冒険者達と触れ合ったところで、サナさんの元へ行く。

「サナさん、これヒゲ」

 ライガーの髭を差し出す。

「うん……グンじいに渡してもいいわよ? あとさ、その格好、自分で何とも思わないの?」

「ん? こうするしか無かったんだ。仕方ないだろ?」

「イヤイヤ、バラしてくればいいじゃない!」

「いや、他に換金出来るとこあるかと思ってな。知識があるグンじいの方が知ってるだろ?」

「そりゃそうだけど……その格好……」

 サナさんにグチグチ言われている横で荷物を下ろし、グンじいを呼ぶ。

「グンじい。お願いできますか?」

「お前さん、凄いもの持ってきたな……」

「これ、買取出来るとこありますか?」

「あぁ。丸ごと買い取るわい」

 丸ごと買い取ってくれるとは嬉しい限りだ。
 あっ、あと爪とかもあったんだったな。
 背負い袋から次々と取りだして出していく。

「これって買い取り出来るものですか?」

「おぉ。牙もだが、爪も武器にもできるから需要がある。それも貰おう」

「じゃあ、お願いします」

 全部渡す。
 俺はあっても使わないからな。
 グンじいが目を見開いた。

「こいつぁ驚いた。綺麗な状態の爪が多い。あまり弱い個体ではなかったみたいだな」

「あぁ、たしかにデッカイ角つけたやつを襲ってましたね」

「ほぉ。そいつぁ貴重なとこに遭遇したな」

「はい。それもあって無事に仕留められました」

「なるほどな」

「報酬は入れておこう。どれも貴重だ。ざっと千六百万バルだな」

 おぉ。それはかなりの額だな。
 アリーとミリーと、フルルにもか。
 何か買ってあげるか。

「助かります」

「テツくん稼ぐわねぇ。私もあやかりたいわぁ」

 何時にもなく艶っぽい声を出している。
 アリーとは大違いだ。
 アリーはそんなした事などないからな。

「頑張ってください」

「待って! 依頼の報酬もあるわ。報酬額が二百万よ」

「有難う御座います」

「あやかりたいわぁ」

「頑張ってください」
 
 そう言い残し去っていく。
 ギルドを出て家へと帰る。

「ただいま」

「「「おかえりなさい!」」」

「無事に帰ってきてくれて嬉しいです!」

 アリーの明るい笑顔で癒される。

「あぁ。Aランクの魔物を無事に狩ることが出来てな。素材を持って帰ってきたら報酬がかなりの額になってな」

「えぇー!? 初のAランクの狩りに出て仕留めてくるなんてテツくん凄いじゃなーい!」

 ミリーさんが驚きの声を上げる。
 最近になって『テツさん』から『テツくん』にかわったのだ。
 なんだがむず痒いが嬉しいもんだ。

「凄いですテツさん! お父さんもそんなに簡単じゃないっていつも言ってましたよ!?」

「そうか? あぁ。それでな……」

 何かみんなにプレゼントしたいとスっと言えればいいのだが、急に恥ずかしくなり下を向いてしまった。

 何を子供みたいにと思うだろうが。
 慣れていないことを言うというのはこれが中々に難しいことでな。

「あの……な……」

 フルルにまで心配そうな顔をさせてしまっていた。これじゃいかんな。ハッキリと話さないと。

「俺に、みんなに何かプレゼントをさせて貰えないだろうか? 俺は、いつもアリーと、ミリーさんと、フルルに世話になっていてだな。感謝の気持ちを伝えたかったというかなんというか」

「ぷっ! あははは!」

 ミリーさんが笑いだした。
 なぜ笑われているのだろうか?
 そんなにおかしいこと言ったかな。

「あのね、お世話になってるのは私達の方よ。お金の面でももう一年は暮らせるくらいのお金入れて貰ってるし。街は守ってもらってるし、私達にも警護つけてくれたりして。本当に感謝してるのよ?」

 ミリーさんも日頃の感謝の気持ちを伝えてくれる。
 だが、俺の感謝はもうなんというか前世からの負の感情を全て洗い流してもらえているというところがあり、感謝してもしきれないぐらいなのだ。

「俺は、ホントに昔からの負の感情を洗い流してもらえていて、ホントに癒されているんです。だから、感謝の気持ちをちゃんと言葉でだけじゃなくて、形であげたい」

 三人の目がキラキラしだした。
 何を貰えるのかワクワクしている感じだろうか。

「あのー。予算とかは……」

「気にしなくていいです」

 目を見開いて驚き、そして更に顔を輝かせた。

「ちょっと! お母さん!」

 ミリーさんを叱るように言うアリー。
 はしたないというばかりに肩を叩いている。

「あら、いいじゃない。ハッキリさせた方が選びやすいでしょ?」

「俺、明日は一日休むつもりです。皆で買い物に行きませんか?」

「「「賛成!」」」

 三人は元気いっぱいに返事した。
 長時間の買い物は覚悟しないとな。
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