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お前は親友、そして恋人だぜ! 「最終話」

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カーテンの隙間から入り込む陽の光は、アタルの頬を掠めてキラキラ輝くと、耳に掛かった柔らかい髪に降り注ぐ。

この間よりも少し伸びた髪は、離れている時間の長さを教えてくれた。

「勇人……」
やっと口をついて出た俺の名前を聞いて、ホッとした。驚きのあまり言葉を忘れてしまったのかと思って。

「あたし、実家に戻ってたから、うちのママとスーパー行った時に松井のお母さんに会っちゃったんだよね。で、ママが水沢の事喋っちゃって…」
菊地がアタルに説明する。

「そうか、……」

「そうか、じゃないよ!俺、ビックリしたんだからな!電話ぐらい寄越せよ。」
アタルに言ってはみたけれど、そんな状況では無かった事も承知していた。

「ゴメン、勇人には知らせたくなかった。ちゃんと説明聞いて貰うまでは…、なんか、こんな事で気を引こうとしてるみたいで……。」

「バカだな…、でも、俺もちょっと意固地になってたかも。アタルは俺に説明しようとしていたのに……、俺の方こそ謝らなきゃ。」

アタルの枕もとに近づくと、軽く手をさすった。
硬い石膏で固められた腕は、歪な感触で。
そこから出ている指先は、まだ少し腫れているようだった。

「あたし、これで帰るから、あとは二人で話してよね!それと、水沢には悪いけど、昔の事、喋っちゃったから。松井の事どう思ってたのか…。全部バラした。」

「え?………そんな、」

アタルが頬を赤くしているのに気づくと、俺はアタルの指先に手を当てる。

じゃあね、と言って菊地が帰ってしまうと、二人の間に少しだけど緊張が走る。

摩る俺の手を上からそっと押さえると、アタルは俯き加減に下を向きこう言った。
「勇人が女の子の話をするの、本当は辛かった。オレが傍にいても、女の子の代わりにはなれないもんな。」

それを聞いて、俺もまた当時を思い出す。
「俺、アタルの事女の子にモテて羨ましく思ってたんだ。だから、絵美ちゃんがお前を好きになっても仕方がないって思って。」

「あれは、ゴメン。オレ、勇人が本気になるんじゃないかって恐くなって…。卑怯な事して、あの子を引き離した。勇人はオレだけのもんだって思いたくて。」

そう話すアタルは、ひと回り小さく見える。
あんなに堂々と真っ直ぐ立っていた男が……

「勇人の事、好きでいてもいい?」
気弱な声できかれて、「いいに決まってるよ!俺だってアタルの事好きだから。」と、被せるように言った。

俺たちは互いにぎこちなく見つめ合う。
照れて、時々伏し目がちになるけど、それでも繋いだ手は離さずにいた。

「勇人、………オレと付き合って欲しい。」

「………、うん、そのつもり。俺からもアタルに付き合って欲しいって言いたい。」

「もちろん!ありがとう。」

見れば、アタルの目尻から涙の雫が………

俺はそっとカーテンを閉じると、枕もとに顔を近づけた。

「今日から、俺たちは恋人同士な!」
俺はそう言うと、アタルの頬に唇を寄せた。

「勇人………、うん。親友で、恋人同士、だな!」

アタルは片方の手で俺の頬に触れると、そっとキスをした。

俺はアタルの気持ちごと受け入れると、更に深い口づけを返す。

俺たちの恋愛は、まだ始まったばかり。

これから何度、疼く身体を持て余す事か…
でも、その度にこの気持ちは通いあってるんだって思う事にする。

「アタル、好きだよ。」

「勇人、…大好き!」

「「大大大好き~ッ」」





____終____







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