濃紺の火花

設計図から見る思い出

だが、幾ら設計図があるからと言って俺にはそれを現実に顕現させるだけの財力は到底持ち合わせてい無い。
「どっかに俺の設計図を顕現させられる世界は無いかなぁ？」
その時だった。我妹連矢玲
（れんや　れい）が我領域の閉ざされし扉を開けて入って来た。
「おい兄上！」
「ん～玲じゃないか。どうしたんだぁ～？俺の部屋に入って来て」
「兄上うるさい！」
「ヒェッ」
怒られてしまった。気の強い妹を持った物だ。
「兄上、どうせ俺の設計図を顕現させられる世界ないかなぁ～？なんて考えてたんだろ？」
「どっ、どうしてそれを！？」
「兄上の考えることなんざお見通しよ。妹を舐めないでね」
「それで、あるのか！？あるのか！？」
「持って来てやったぞ。Shima-Fabrikだ。兄上なら喜ぶと思うぞ。ただし、兄上が思い描くのを創るには時間がかかると思うぞ」

※ Shima-Fabrik。ドイツ語で島工場の意。島の上にある工廠という意として使っている。

これなら、行けるかもしれない。
俺は妹から手渡されたゲームのパッケージの裏側の説明を見てそう思った。
「ありがとう、我が妹よ。本当に、感謝する」
そのゲームは、大量の島が浮かぶ海で船を造ったりする、というゲームだった。
「兄上よ、いや、連矢工海軍大臣よ、頑張りたまえ。それを私、連矢玲陸軍大臣からの伝言とする。心得よ」
「了解だ。Sieg heil！」
俺は手を掲げてナチ式敬礼をしてそう叫ぶ。ありし時のナチの軍人のように。

※Sieg heil（ジークハイル）。ナチス式の敬礼をして叫ぶ事でナチスへの忠誠を確認するというならわしもある。言葉自体の意味としては勝利万歳。Sieg が勝利の意味でHeilの意味は色々あるがおおよその意味としては健全な状態を表してSieg heilのHeilは万歳と訳して良いだろう。こんな事を長々と書いておいてなんだがSieg heilは割と規制語だったりするので垢バンされないかの心配が私を襲っていたりする。Hakenkreuz （ハーケンクロイツ）も出す予定だしSieg heil 程度でビクビクしてたら垢がいくつあっても足りん。余談だがHeilは現在登山家の挨拶のBerg heil（山万歳）やスキーヤーのSki heil（スキー万歳）など、特定の仲間に通ずる符丁として残っていたりする。またオーストリアのチロル地方なんかではheilを友人との挨拶で使うらしい。因みにこの時工にSieg heilと言わせたのはただ単にナチオタだからである（私が）。

「そうか。精々頑張りたまえ」
玲からの言葉を受け取ると部屋の奥のゲームハードを探す。もう一年位見ていない。

「ようやく見つけた」
だから見つけ出すのに一時間かかっても良いでしょ？
「ちゃんと動くか？此奴。あっ、充電しないと」
ケーブルは見つけてあったのでそれをコンセントに指して充電する。充電してる間は今までに描いた設計図を見直す。
「おっ、これは」
俺が昔描いた設計図を眺めていると懐かしい物が出てきた。
「カールスルーエ級軽巡洋艦の設計図だ！初めて描いたやつ」

※カールスルーエ級軽巡洋艦。ドイツ帝国海軍が建造した軽巡洋艦。カールスルーエ、ロストックの二隻が建造された第一次世界大戦時の軽巡洋艦。


今見返すとそんな物ダメダメだ。と思ってしまう。
「カールスルーエ級軽巡洋艦の拡張版も描いたな。あれ何処やったっけ？」
カールスルーエ級軽巡洋艦の拡張版。それは私の初めてのオリジナルの軍艦だった。
「確か拡張版カールスルーエ級軽巡洋艦の区分が重巡洋艦クラスになっちゃったんだよ」

※軽巡洋艦と重巡洋艦の違い。ぶっちゃけあんま無い。大日本帝國の軽巡洋艦の艦名は川から名付けるというルールがあるのだが最上型は重巡洋艦に区別はされる。コレはロンドン海軍軍縮条約により重巡洋艦の所持数に制限がかかって居た為である。コレに対して大日本帝國は軽巡洋艦としては最大の２万５千ｔ級の軽巡洋艦を建造し軍縮条約を破棄した時に主砲を換装して重巡洋艦とする、という行動をしたように本当に殆ど差は無い。また、第二次世界大戦後にミサイル技術が発達したため大口径砲を積む意味が無くなり軽巡洋艦と重巡洋艦は統合し、巡洋艦と表記するようになった。軽巡洋艦の代表的な艦は夕張や阿武隈だろう。また、重巡洋艦の代表的な艦は日本の高雄型とナチスのアドミラル・ヒッパー級（アドミラルを取り除いて表記する場合もある）だろう。

「そろそろ充電出来たかな？」
そう思ったので俺はゲーム機に近づき残電量を見る。
「うん。１００％MAX」
さて、始めるか。
「始めようか。いざ！俺の、俺の望む世界へ！」
ゲームログイン。

作者
第一次世界大戦時のドイツを帝国。第二次世界大戦時のドイツをナチスと呼ぶことにします。