シナリオを退場した悪役令嬢は、賢者様をハッピーエンドに導きたい!!

冬野 冷

文字の大きさ
22 / 34
第一章 婚約破棄からの逃亡

20

しおりを挟む
 レイン様は、夕方になると私の家から出てしまった。ヴァルテス家からクライシス家までかなりの距離があるので、歩いていったら夜になるだろう。

 ・・・・・・あぁ、風が気持ちいいなぁ~。現在私は・・・・・・空にいます。

 ん?何を言っているのかって?空を飛んでいるんですよ。空を飛ぶのって気持ちいいよ。なぜ私が空を飛んでいるのかって?そりゃあもちろん、乙女ゲームのシナリオを、フラグを、たたき折るために決まったいるではありませんか!!
 今、私が向かっているのは王都に立っているクライシス家。レイン様の実家ですね。私の予想通りなら、今から、大火事が起こるはず・・・・・・のちに『サラマンダーの癇癪』と呼ばれる、レイン様の心に大きな傷をつける出来事が・・・・・・。




 乙女ゲーム『マホコイ』の攻略難関隠しキャラ、レイン・クライシス。
 ヒロインと乙女ゲームのレインとの出会いイベントは、少し特殊だ。なにせ、Aランクの迷いの森に薬草を摘みに来たヒロインが、魔物に襲われるところから始まるのだ。何故森に?と思うかもしれないがそこは、ゲームならではのご都合主義の発動。ストーリーでは、ヒロインのおばあさんが病気にかかってしまい、その病気を治すために必要な薬草を取りに行くという流れだった。実はこのゲーム、ヒロインが学校に編入、つまり、始まってすぐに選択肢が出てくる。その選択肢は3つ。

『天気がいいから、学園の周りを散歩してみようかな?』
『学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!』
『少し疲れちゃった。寮に帰って休もうかな』

 この3つの選択肢の中から1つ選ぶ。ちなみに、『学園の周りを散歩』『学園の探検』を選ぶと、攻略対象と悪役たちに出会える。
 で、『寮に帰る』を選択するとすぐに次の日になってしまう。まあ、それは隠しキャラのルートが解放されていない場合。隠しキャラのルートが解放されていると、ヒロインのお母さんから1通の手紙が届くのだ。この手紙を、その日のうちに読めばレインルートに入れる。次の日に読んでしまうと、既におばあさんの病気が完治していると書かれた手紙が届くので、レインの攻略はできない。

 レインと出会ったヒロインは、助けてくれたお礼に何故か持っていたクッキーを渡そうとする。が、レインはこれを拒否。それもそのはず、乙女ゲーム・レインは人とかかわることに恐怖していたのだから。

 なぜ、人とかかわることに恐怖していたのか?それはレインのトラウマとなった『サラマンダーの癇癪』に関係がある。

 幼いころから好奇心が旺盛であったレインは、多くの書物を読み漁り、たくさんの知識を吸収していった。気になったことはすぐに実験していた。気づけば彼は賢者になっていた。そして、彼は様々な魔法や魔道具を生み出していった。それはとても素晴らしいものばかりで、たくさんの人たちに称賛された。しかし、中には彼に嫉妬する者たちがいた。
 その中でも、特に彼を嫉妬した男がレインを亡き者にしようとした。しかし、レインは強かった。並の暗殺者では歯が立たなかったのだ。そこで男は、レインの家族を亡き者にしようとした。そのころにはすでに自立していたレインは実家を離れ、森の中で生活していた。男の計画を知ったレインが実家に向かうも間に合わず。レインの家族が住んでいた屋敷は、火で包まれていた。魔法で水を生み出し屋敷にかけるも、火は勢い良く燃え上がり、消えることはなかった。何をしても決して消えることのない火。月のない夜に燃え盛る屋敷を前にレインは立ち尽くしていた。そんなレインの前に男が現れてこう言ったのだ。『お前さえいなければ、家族もこんな目に合わなくて済んだのになぁ?・・・・・・お前がいたからこうなったんだよ。まあ、今更嘆いたって仕方がない。すべて、なくなっちまったんだからな!!ギャハハハハハハハ!!また、こんなことが起こってほしくなければ、あの森に建てられたボロ屋敷でおとなしくしてな!!』
 その男の言葉を聞いたレインは自分を責め続け、やがて何をするも無気力な、人とかかわることに恐怖する、堕落した賢者となったのだ。
 この話は、乙女ゲーム・レインの好感度をMAXまで上げることで聞くことができる。『僕とかかわると、みんな、不幸になるんだ。』と言った乙女ゲーム・レインの切なげな顔、もといスチルは今でも思い出すことができるよ。この場面で、前世の私はマジ泣きしてしまった。
 レインルートでは『サラマンダーの癇癪』事件を引き起こした男に、ヒロインが追われ、殺されそうになるんだけど、レインと一緒に返り討ちにするんだ。その時のスチルもまた素晴らしいもので、クフフフっゲフンゲフン!!

 と、とにかく、そんなわけで私は『サラマンダーの癇癪』事件を阻止しようとしているわけだ。この『サラマンダーの癇癪』事件、なんで『サラマンダーの癇癪』っていう名前なのかは知らないんだよね~。どんな手段を使っても、火が消えなかったっていうことが関係していると思うんだけど・・・・・・う~ん、わからん。

 そんなことを考えながら空を飛んでいたら、あたりは暗くなっていた。私、クライシス家の場所知らないんだよね~。ヴァルテス家からすごく離れている、というか何故かすべての貴族の屋敷がヴァルテス家から離れているから、どの屋敷なのかわからない・・・・・・。
 ん?大きな魔力の反応が・・・・・・こんなところで?魔力暴走にしては制御が取れすぎて・・・・・・まさか!!

 私は魔力反応があった方向に猛スピードで向かう。あともう少しでつく、というとき・・・・・・

 鼓膜が破けるかと思うほどの爆発音がして・・・・・・





 目の前の屋敷が燃えていた。









しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

処理中です...