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1章~新透明人間事件~
新透明人間⑥
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《5》
図書館には、女性の姿がそこにはなかった。いや、隈なく探せば見つかるかも知れなかったが、彼はそそくさと本に触れた。
そして今、過去において、車内での共有が終わった所だ。坂下の道を進み、右折する。そうすると見えてくるコンビニに一旦車を停めた。
相変わらず喧騒が風を濁らせている。
「こんな中を通ってまで雑誌は買う気はないかな。」
「けど、アパート行くのなら、ここ以外にコンビニはないですからね。」
怒号をすり抜けてコンビニへと向かう。
赤のコンビニの中で雑誌の他に揚げ鶏、レジ袋などを購入した。
外へと出る。
相変わらずの怒号が風に流されてきた。
警察官に同情しかねない。
車の中で険しい景色に目を逸らしながら、温かい揚げ物を頬張っていく。
食べ終わるのも数分の世界。未だに喧騒を続いている。
「いやぁ、ルイン君。ちょっとあの喧嘩、気になってきたよ。」
「何言っているんですか。」困り顔を浮かべる。
「面白いのに気付いてしまったんだよ。さあ、面白いこととは何ですかと聞きたまえ。」
にやり顔で両手を空へと横へと伸ばす。
それを見て、ため息を放つ。
「はいはい。面白いこととは何ですか。」
指が怒りを顕にする私服の男に向かう。
「足元を見てくれ。何か気付かないかい?」
足元に視線を向ける。
ジーンズの裾近くは泥で汚れていた。履いているクロックスは新品に近いであろうと推測する程、綺麗な状態だ。隙間から見える裸足は泥で汚れている。
「えぇ、汚れていますね。靴以外。」
「そういうことだよ。」指を鳴らした。
彼はふふふと笑っている。
「僕は彼について少し、調べて見ようかなと思う。なぁに、運転免許証は持っているんだ。自力で運転できるさ。その間、アパートの方の事情聴取をお願いするよ。」
彼は運転席に乗った。
急発進。横見ずに真っ直ぐと道路へと出た。目を当てられない大きく迂回するような左折が運転の荒さを証明させる。車……大丈夫かな、と心配だけ募らせた。
*
夜が明けた。
誰もいない公園。少し寂れた滑り台の上に登った。そこからなら現場の様子がチラリとだけ覗ける。残念ながら殆どが木々に邪魔されて見えない。
そこから眺めても何もならない。そう判断して短い坂を下るように走りさった。
ひとまず事件の状況について時系列順に確認することにした。
まず昼に瑚子が外出する。その時に鍵を閉めていた。その後、裏庭に向かい「落し物をした」と言って数分そこにいた。それを牛林が確認している。
被害者である住吉は大量の睡眠薬を飲まされ眠らされた可能性が高い。その後、腕や足に縄を縛った可能性がある。落下後の遺体発見時に巻かれてたようなので確かだろう。
首を強く絞められて殺害された。警部や瑚子の言う通りなら相当強く絞められていて、力がない者――牛林や瑚子には難しいと思われている。
その後、窓から遺体を投げ捨てた。
その間、窓以外は鍵がかけられており侵入は不可能。管理人曰く、屋上には誰も行っていないため窓から侵入するのは至難の業だろう。
まさに透明人間が行ったといっても過言ではない状況。その遺体を牛林が見て今に至る。
全く事件の真相が見えてこない。
そんな時に着信音がなった。モタローからだった。一般的な着信音だ。モタローみたいに変な曲を着信音にしていない。
『もしもし。どうかされました。』
『ルイン君。分かったよ。』
『何が分かったんですか。』
『犯人だよ。』
『えっ――』きっと電話越しでもその動揺を感じ取れただろう。間髪入れずに繋げる。『誰ですか?』
『この事件の犯人は――』『犯人は?』
シーンとした状況。彼は言葉を溜めていた。
『犯人は大河虎之助さ。』
え――誰?
ポカンと口を開く。
頭の中をぐちゃぐちゃにするように思い出そうと探ってもその名前は一切出てこない。
『当てて上げよう。君は誰だと惚け顔をしながら思い出そうとしている。違うかな。』
図星だった。
『それもそうだろうね。だって君にとってはコンビニ前で喧嘩してるだけの一般人だからね。』
あの人か。コンビニの前で声を荒らげていた私服の男性のことだろう。
『まあ、まだ確認したいことがあるんだよね。それと、先程、違う仕事も増えてしまったんだよね。依頼人から探していた人物が見つかったと連絡があって、すぐに面会を求めてきていてね。』
それに対して、
『それがタイムリープの最後です。また、歴史をやり直すことになります』と呟いた。
『そうなのかい。確認したいことがあったんだけどねぇ。じゃあ、未来に繋ごうかな。』
相変わらず公園は静かだ。
人が自身以外いないお陰か風の音だけ響いている。
涼しい風がなびいていく。
『ルイン君。お願い、いいかな。』
『はい。どうぞ。』
『まず過去の俺に事件の流れを伝える際に、コンビニの前で言い争いをしていた男についても加えて欲しい。これを言えば、すぐ伝わるはずさ。彼――大河虎之助は山に行くのに、釣具店で良~い釣り糸を購入していた、ってね。』
残念ながらその真意は、ルインには伝わらなかった。しかし、伝えることはできた。
『それと確認のために行かなければいけない所が二つあるんだ。』
『二つ?』
『一つはコンビニ。犯人がいないといけないからいち早くいくべき所だね。こちらはルイン君にお願いしたい。』
『分かりました。して、もう一つは?』
『キャバクラさ! こちらは俺が行こう。』
いや、キャバクラ行きたいだけじゃん、なんて突っ込みたかったがやめた。突っ込むタイプではないからだ。
『こちらもいち早く行かなければならないからね。大丈夫。安心してくれ。やるべき事があるから行くだけさ。』
その言葉を聞いて安心した。
『やるべき事とは?』
『可愛いキャバ嬢と連絡先を交換することさ。』
『なんでやねん!』
危なかった、とほっとする。突っ込むタイプじゃないのに、使ったこともほとんど無い関西弁で突っ込んだような気がしたからだ。
そのまま『よろしく』と最後のメッセージを受け取り、通話が終わった。
風が吹いている。
自販機で炭酸飲料を購入した。
炭酸飲料を飲み干した頃に、光に包まれ、図書館へと戻された。
図書館には、女性の姿がそこにはなかった。いや、隈なく探せば見つかるかも知れなかったが、彼はそそくさと本に触れた。
そして今、過去において、車内での共有が終わった所だ。坂下の道を進み、右折する。そうすると見えてくるコンビニに一旦車を停めた。
相変わらず喧騒が風を濁らせている。
「こんな中を通ってまで雑誌は買う気はないかな。」
「けど、アパート行くのなら、ここ以外にコンビニはないですからね。」
怒号をすり抜けてコンビニへと向かう。
赤のコンビニの中で雑誌の他に揚げ鶏、レジ袋などを購入した。
外へと出る。
相変わらずの怒号が風に流されてきた。
警察官に同情しかねない。
車の中で険しい景色に目を逸らしながら、温かい揚げ物を頬張っていく。
食べ終わるのも数分の世界。未だに喧騒を続いている。
「いやぁ、ルイン君。ちょっとあの喧嘩、気になってきたよ。」
「何言っているんですか。」困り顔を浮かべる。
「面白いのに気付いてしまったんだよ。さあ、面白いこととは何ですかと聞きたまえ。」
にやり顔で両手を空へと横へと伸ばす。
それを見て、ため息を放つ。
「はいはい。面白いこととは何ですか。」
指が怒りを顕にする私服の男に向かう。
「足元を見てくれ。何か気付かないかい?」
足元に視線を向ける。
ジーンズの裾近くは泥で汚れていた。履いているクロックスは新品に近いであろうと推測する程、綺麗な状態だ。隙間から見える裸足は泥で汚れている。
「えぇ、汚れていますね。靴以外。」
「そういうことだよ。」指を鳴らした。
彼はふふふと笑っている。
「僕は彼について少し、調べて見ようかなと思う。なぁに、運転免許証は持っているんだ。自力で運転できるさ。その間、アパートの方の事情聴取をお願いするよ。」
彼は運転席に乗った。
急発進。横見ずに真っ直ぐと道路へと出た。目を当てられない大きく迂回するような左折が運転の荒さを証明させる。車……大丈夫かな、と心配だけ募らせた。
*
夜が明けた。
誰もいない公園。少し寂れた滑り台の上に登った。そこからなら現場の様子がチラリとだけ覗ける。残念ながら殆どが木々に邪魔されて見えない。
そこから眺めても何もならない。そう判断して短い坂を下るように走りさった。
ひとまず事件の状況について時系列順に確認することにした。
まず昼に瑚子が外出する。その時に鍵を閉めていた。その後、裏庭に向かい「落し物をした」と言って数分そこにいた。それを牛林が確認している。
被害者である住吉は大量の睡眠薬を飲まされ眠らされた可能性が高い。その後、腕や足に縄を縛った可能性がある。落下後の遺体発見時に巻かれてたようなので確かだろう。
首を強く絞められて殺害された。警部や瑚子の言う通りなら相当強く絞められていて、力がない者――牛林や瑚子には難しいと思われている。
その後、窓から遺体を投げ捨てた。
その間、窓以外は鍵がかけられており侵入は不可能。管理人曰く、屋上には誰も行っていないため窓から侵入するのは至難の業だろう。
まさに透明人間が行ったといっても過言ではない状況。その遺体を牛林が見て今に至る。
全く事件の真相が見えてこない。
そんな時に着信音がなった。モタローからだった。一般的な着信音だ。モタローみたいに変な曲を着信音にしていない。
『もしもし。どうかされました。』
『ルイン君。分かったよ。』
『何が分かったんですか。』
『犯人だよ。』
『えっ――』きっと電話越しでもその動揺を感じ取れただろう。間髪入れずに繋げる。『誰ですか?』
『この事件の犯人は――』『犯人は?』
シーンとした状況。彼は言葉を溜めていた。
『犯人は大河虎之助さ。』
え――誰?
ポカンと口を開く。
頭の中をぐちゃぐちゃにするように思い出そうと探ってもその名前は一切出てこない。
『当てて上げよう。君は誰だと惚け顔をしながら思い出そうとしている。違うかな。』
図星だった。
『それもそうだろうね。だって君にとってはコンビニ前で喧嘩してるだけの一般人だからね。』
あの人か。コンビニの前で声を荒らげていた私服の男性のことだろう。
『まあ、まだ確認したいことがあるんだよね。それと、先程、違う仕事も増えてしまったんだよね。依頼人から探していた人物が見つかったと連絡があって、すぐに面会を求めてきていてね。』
それに対して、
『それがタイムリープの最後です。また、歴史をやり直すことになります』と呟いた。
『そうなのかい。確認したいことがあったんだけどねぇ。じゃあ、未来に繋ごうかな。』
相変わらず公園は静かだ。
人が自身以外いないお陰か風の音だけ響いている。
涼しい風がなびいていく。
『ルイン君。お願い、いいかな。』
『はい。どうぞ。』
『まず過去の俺に事件の流れを伝える際に、コンビニの前で言い争いをしていた男についても加えて欲しい。これを言えば、すぐ伝わるはずさ。彼――大河虎之助は山に行くのに、釣具店で良~い釣り糸を購入していた、ってね。』
残念ながらその真意は、ルインには伝わらなかった。しかし、伝えることはできた。
『それと確認のために行かなければいけない所が二つあるんだ。』
『二つ?』
『一つはコンビニ。犯人がいないといけないからいち早くいくべき所だね。こちらはルイン君にお願いしたい。』
『分かりました。して、もう一つは?』
『キャバクラさ! こちらは俺が行こう。』
いや、キャバクラ行きたいだけじゃん、なんて突っ込みたかったがやめた。突っ込むタイプではないからだ。
『こちらもいち早く行かなければならないからね。大丈夫。安心してくれ。やるべき事があるから行くだけさ。』
その言葉を聞いて安心した。
『やるべき事とは?』
『可愛いキャバ嬢と連絡先を交換することさ。』
『なんでやねん!』
危なかった、とほっとする。突っ込むタイプじゃないのに、使ったこともほとんど無い関西弁で突っ込んだような気がしたからだ。
そのまま『よろしく』と最後のメッセージを受け取り、通話が終わった。
風が吹いている。
自販機で炭酸飲料を購入した。
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