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4章~怪盗《ℋ𝑜𝓇𝓈𝑒》参上~
大怪盗ye-one⑦
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「失礼するよ。」
そう言って、アンティークなソファへと腰をかける警部。周りは風流な古典的な物が趣を与えている。
「コーヒーか紅茶、どちらがいいかな?」
「じゃあ、紅茶を貰おうかな。」
彼の目の前にインスタントの紅茶が出される。澄んだ赤色の液体が白いコップの中で揺れている。
「じゃあ、俺からいいか。」
どうぞ、と返される。それと同時に、少しだけ紅茶がすすられた。
「怪盗エーワンの事件の内三つ共、鹿内と奥川の自作自演だった。トラノコ株式会社の社長室に厳重に保管されていた幻のアート『サファイア色のフリージア』については、そもそもトラノコ株式会社の社長である残炭譚も共犯だった。つまり、自作自演だ。」
ため息が混じっている。
「もちろん、鹿内の豪邸に飾られた『パール花瓶』や主催していた『神の手博覧会の土器』も自作自演だった。因みに、元々日午をハメる為に作られた怪盗エーワンなんだが、実際は怪盗ホースだったみたいだ。日午は昔、馬というあだ名があったらしい。んだが、噂を流した先――その記者がホースをエーワンと読み間違えたことでエーワン呼びが主流になったらしい。」
そこについては、予想の範囲内だった。
ただ、一つだけ言われていない事件がある。
「伊勢神宮の八咫鏡について、鹿内らは何も知らないとのことだ。まあ、これに手を出してたら逮捕なんだがな。」
「やっぱりその件は違っただねぇ。」
「まあ、その件は別件だ。あまりにも謎に包まれているんだ。簡単には手が出せねぇよな。」
そこで再び紅茶がすすられた。
残された液体は少なく底が見え始めている。
「それで、名古屋市科学館での一件について詳しく教えてくれるんだろ。」
「そうだねぇ。ひとまず彼らの動機については必要ないよねぇ。」
「そりゃそうだ。あの場で一緒に聞いてるからな。知りたいのは、どうやって宝石を盗んだのか、だ。」
モタローは横を見た。
試されているのだ。
ゆっくりと呼吸をして、意識をスッと切り替えた。真っ直ぐ彼の首元を捉える。
「真っ暗闇の中で全てが行われました。それに当たって、彼は暗闇でも動けるようにするために暗視機能のサングラスをかけていたと思われます。」
「あー。あの首にかけていたサングラスか。まあ、ただのサングラスには見えなかったのはそういうことか。」
「警備会社もグルなので電気も機械も自由に使えます。つまり、電気を落とすなんて些細なことだと思われます。」
「まあ、今回は怪盗エーワンから宝を守る名目であの部屋の設備は会社アトムが独占してたからな。できて当然だな。」
「そして、宝石を安全な場所へと移動させたのでしょう。これも機械によって移動させられたと考えられますね。」
「まあ、それも御茶の子さいさいだろうな。初めからそうシステムを作ってたってことだよな。まっ、自作自演なんだから当然と言えば当然か。」
「えぇ。そこから『エメラルドクリスタル』を闇の中で移動させ、リュックに入れたのでしょう。あの中で鹿内さんは歩いていましたしね。」
思い出される動揺したと思われる彼の行動。それが実際は演技だったのだ。
「だが、宝石を守っていたガラスは何だ。確かに割られてたんだが……。」
「それこそ相手の思う壷です。ガラスを割ることで、怪盗が奪うために割ったと思わせるための演出だったんですよ。」
「なるほどなぁ。つまり、暗闇の中で鹿内が椅子で叩きつけたんだな。……けどなぁ、見えなかったとは言え、振り回してるのに気づかないなんてことあんのか。流石に気付きそうなんだがな。」
「いいえ、彼は椅子で叩きつけてなんかいませんよ。こそこそとガラスの破片を踏みにじって『エメラルドクリスタル』をリュックに移動させただけです。」
「ん。待て待て。じゃあ、なんでガラスが割れたんだ?」
そこに冷たいバニラアイスが出された。
「冷たいアイスに暑い紅茶。最高のマリアージュだね」なんて言いながら、置かれていく。
突然、冷たいアイスが出されたのには訳があった。というのも、硝子張りの筒が破裂した理由の導入となるからだ。
「して、警部はとても冷たい冷気にとても熱い熱気が混ざるとどうなるかご存知かい?」
冷たいアイスは口の中でひんやりと溶けながら甘味を感じさせていく。
「どうなるんだ?」
「拡張するのさ。例えの話をしよう。警部は平成漫画はお好きかい?」
平成漫画は今ブームとなりつつある。というのも、全ページフルカラーが主流となっている昨今、平成漫画は最近になって――アニメ化した漫画に限り――フルカラーのリメイク版が出されるようになって人気を博している。
「その時代の漫画は……見たり見なかったりするなぁ。」
「僕のヒーローアカデミアなんてのはどうだい? イチオシの作品だよ。」
「あー、少しだけ齧ったことある気がするな。」
「その漫画のあるシーンでこのようなシーンがある。力をコントロールできない主人公が体育祭でクラスメイトの轟焦凍と一対一で戦うんだけどね。主人公は抑えきれない程の超パワーで指をズタボロにしながら、えげつない衝撃波を決めるんだ。まさに異次元級のね。一方で相手の轟君は氷と熱を同時に繰り出した。超パワー対氷と熱。結果は轟焦凍の勝ちさ。さあ、ここでクイズだよ。どうして轟君は単なる氷と熱で、異次元級の超パワーに勝てたのか。」
「見に来ていたパワハラ父への怒りのお陰だろ。」
「そんなことを聞いてるんじゃないんだよ。答えは冷気と熱気が同時に混ざると拡張するからさ。爆風が現れるのさ。」
出されたアイスはもう口の中へと消えていた。紅茶ももう消えており、底が見えている。
「俺が言いたいのは冷気と熱気で強力な風圧が生まれるということさ。」
「それがどうしたんだ。」
モタローは再びこちらを見た。
「『エメラルドクリスタル』はとても繊細な宝石のために常に冷えていないといけません。そのためにあのガラスの中は冷気で冷やされていたと考えられます。」
「それで冷気か……。」
「暗闇の中、機械によって『エメラルドクリスタル』が硝子張りの筒から違う場所に移動したと考えられます。どこに移動したかは分かりませんが、闇の中でそこからこそこそとリュックに移動させたのでしょう。」
「そうなると、真っ暗闇の中で『エメラルドクリスタル』はあの中には無かったってことか。」
真っ暗闇が宝石を安全な場所に移動したことを気づかせなかったのだ。
「その何も無い筒の中に、熱気が送り込まれたんですよ。つまり、冷気の中に熱気が送られた。」
「ということは、冷気と熱気が混ざって、風圧が生まれるってことか。」
「そういうことです。」
そこまで聞いて、深い頷きを得られた。
関心しているのか頷きが止まらない。
「因みに、そう考えられる要因は幾つかあるんだよ。まずガラス片が生温かったということ。それが熱気と混ざった証拠だよ。さらに、外からの衝撃で壊れたのなら、ガラス片は筒の中と衝撃を受けた反対側へと飛ばされるはず。しかし、ガラス片はどうしてか四方八方に飛び散っていた。そう、外からの破壊ではなく、中から全体に向けて破壊されたと考えられるんだよ。つまり、風圧だね。」
「そんな大層な破壊ですけど、あの繊細な『エメラルドクリスタル』が壊れていないということは既に別の所に避難されていると考えられますね。そんなことができるのは元の機械を弄れる人しかいません。」
「それが鹿内と奥川だったって訳だな。」
「どうかな。納得できる説明だったかな。」
「ああ。腑に落ちた。本当に、こんな下らない自演舞台に呼んでしまって申し訳なかったな。」深々と頭を下げる。
顔を上げて「今回のことは俺の借りにしといてくれよな」と放つ。
それを聞いた彼は「ということだそうだ。ルイン君」と横を向いた。
どういうことか訪ねると「今回の事件を解明したのは君だよ。つまり、君こそ警部に貸しを作ったのは君なんだよ」と返された。
突然貰った大きな貸し。それを使って、今後起きる爆破テロに協力して貰おうと「ではお願いを――」と言いかける。
それを聞いて「ん。早速、返却か」とその速さに驚いていた。
「いえ、やはり、もう少し考えてからにします。」
保留にして貰った。
彼は何も無いなら、とその場から帰っていった。
二人残された客室にて、疑問をぶつけられる。
「どうしてお願いを取りやめたんだい?」
率直な疑問だったようで、その顔は何ともないいつもの表情をしていた。
「僕のお願いは――爆破テロを防ぐのを協力して欲しいということでした。でも、そのことは未来に起きることで、僕が未来から来て歴史を何度も繰り返しているなんてこと、信じて貰えないような気がしたんです。」
「なるほどねぇ。」
「爆破テロが起きることも、亥が爆発を起こすことも、そもそも未来の予言なんて、彼にとっては突拍子もないこと。そんなことを伝えた所で意味はないような気がします。」
「本当にそれでいいのかい?」
彼の周りだけ一瞬時が止まった。そんな風に感じさせた。
「君は立ち止まれる人間さ。時には、それがトラブルを回避するきっかけになることもある。けれども、立ち止まって動き出さなければ、何も得ることはできないんじゃないかな。君がいいならいいのだけど、君が後悔すると思うのなら思いきって進んだ方がいい。」
その言葉が心の奥底にズキズキと突き刺す。
「そうですね。不安も多いですけど、悩んでいる場合じゃないですよね。鬼怒川警部に連絡取れますか。」
「任せてくれたまえ。」
前方の暗闇。そこに足を出せないでいる性格。しかし、彼の言葉が足を出させる。
「やはり、モタローさんは凄いです。僕は一歩が出ない人間です。それで後悔することも多くあります。けれども、モタローさんは前に進める。進む勇気がある。お陰で僕を前に進む勇気をくれてくれる。本当に一緒にバディを組めて嬉しい限りですよ。」
「照れるね。だけど、前に進むことだけが良いことじゃないんだ。行動するということはアクションを起こすということさ。いい事もあるし、悪いこともあるのさ。それで失敗することもタダあるのさ。立ち止まれる人間も貴重なんだよ。つまりだね、俺も一緒にバディを組めて嬉しいってことだねぇ。」
残された食べ終えた皿やコップを流しへと持っていった。蛇口から出る水が残った液体を洗い流していった。
そう言って、アンティークなソファへと腰をかける警部。周りは風流な古典的な物が趣を与えている。
「コーヒーか紅茶、どちらがいいかな?」
「じゃあ、紅茶を貰おうかな。」
彼の目の前にインスタントの紅茶が出される。澄んだ赤色の液体が白いコップの中で揺れている。
「じゃあ、俺からいいか。」
どうぞ、と返される。それと同時に、少しだけ紅茶がすすられた。
「怪盗エーワンの事件の内三つ共、鹿内と奥川の自作自演だった。トラノコ株式会社の社長室に厳重に保管されていた幻のアート『サファイア色のフリージア』については、そもそもトラノコ株式会社の社長である残炭譚も共犯だった。つまり、自作自演だ。」
ため息が混じっている。
「もちろん、鹿内の豪邸に飾られた『パール花瓶』や主催していた『神の手博覧会の土器』も自作自演だった。因みに、元々日午をハメる為に作られた怪盗エーワンなんだが、実際は怪盗ホースだったみたいだ。日午は昔、馬というあだ名があったらしい。んだが、噂を流した先――その記者がホースをエーワンと読み間違えたことでエーワン呼びが主流になったらしい。」
そこについては、予想の範囲内だった。
ただ、一つだけ言われていない事件がある。
「伊勢神宮の八咫鏡について、鹿内らは何も知らないとのことだ。まあ、これに手を出してたら逮捕なんだがな。」
「やっぱりその件は違っただねぇ。」
「まあ、その件は別件だ。あまりにも謎に包まれているんだ。簡単には手が出せねぇよな。」
そこで再び紅茶がすすられた。
残された液体は少なく底が見え始めている。
「それで、名古屋市科学館での一件について詳しく教えてくれるんだろ。」
「そうだねぇ。ひとまず彼らの動機については必要ないよねぇ。」
「そりゃそうだ。あの場で一緒に聞いてるからな。知りたいのは、どうやって宝石を盗んだのか、だ。」
モタローは横を見た。
試されているのだ。
ゆっくりと呼吸をして、意識をスッと切り替えた。真っ直ぐ彼の首元を捉える。
「真っ暗闇の中で全てが行われました。それに当たって、彼は暗闇でも動けるようにするために暗視機能のサングラスをかけていたと思われます。」
「あー。あの首にかけていたサングラスか。まあ、ただのサングラスには見えなかったのはそういうことか。」
「警備会社もグルなので電気も機械も自由に使えます。つまり、電気を落とすなんて些細なことだと思われます。」
「まあ、今回は怪盗エーワンから宝を守る名目であの部屋の設備は会社アトムが独占してたからな。できて当然だな。」
「そして、宝石を安全な場所へと移動させたのでしょう。これも機械によって移動させられたと考えられますね。」
「まあ、それも御茶の子さいさいだろうな。初めからそうシステムを作ってたってことだよな。まっ、自作自演なんだから当然と言えば当然か。」
「えぇ。そこから『エメラルドクリスタル』を闇の中で移動させ、リュックに入れたのでしょう。あの中で鹿内さんは歩いていましたしね。」
思い出される動揺したと思われる彼の行動。それが実際は演技だったのだ。
「だが、宝石を守っていたガラスは何だ。確かに割られてたんだが……。」
「それこそ相手の思う壷です。ガラスを割ることで、怪盗が奪うために割ったと思わせるための演出だったんですよ。」
「なるほどなぁ。つまり、暗闇の中で鹿内が椅子で叩きつけたんだな。……けどなぁ、見えなかったとは言え、振り回してるのに気づかないなんてことあんのか。流石に気付きそうなんだがな。」
「いいえ、彼は椅子で叩きつけてなんかいませんよ。こそこそとガラスの破片を踏みにじって『エメラルドクリスタル』をリュックに移動させただけです。」
「ん。待て待て。じゃあ、なんでガラスが割れたんだ?」
そこに冷たいバニラアイスが出された。
「冷たいアイスに暑い紅茶。最高のマリアージュだね」なんて言いながら、置かれていく。
突然、冷たいアイスが出されたのには訳があった。というのも、硝子張りの筒が破裂した理由の導入となるからだ。
「して、警部はとても冷たい冷気にとても熱い熱気が混ざるとどうなるかご存知かい?」
冷たいアイスは口の中でひんやりと溶けながら甘味を感じさせていく。
「どうなるんだ?」
「拡張するのさ。例えの話をしよう。警部は平成漫画はお好きかい?」
平成漫画は今ブームとなりつつある。というのも、全ページフルカラーが主流となっている昨今、平成漫画は最近になって――アニメ化した漫画に限り――フルカラーのリメイク版が出されるようになって人気を博している。
「その時代の漫画は……見たり見なかったりするなぁ。」
「僕のヒーローアカデミアなんてのはどうだい? イチオシの作品だよ。」
「あー、少しだけ齧ったことある気がするな。」
「その漫画のあるシーンでこのようなシーンがある。力をコントロールできない主人公が体育祭でクラスメイトの轟焦凍と一対一で戦うんだけどね。主人公は抑えきれない程の超パワーで指をズタボロにしながら、えげつない衝撃波を決めるんだ。まさに異次元級のね。一方で相手の轟君は氷と熱を同時に繰り出した。超パワー対氷と熱。結果は轟焦凍の勝ちさ。さあ、ここでクイズだよ。どうして轟君は単なる氷と熱で、異次元級の超パワーに勝てたのか。」
「見に来ていたパワハラ父への怒りのお陰だろ。」
「そんなことを聞いてるんじゃないんだよ。答えは冷気と熱気が同時に混ざると拡張するからさ。爆風が現れるのさ。」
出されたアイスはもう口の中へと消えていた。紅茶ももう消えており、底が見えている。
「俺が言いたいのは冷気と熱気で強力な風圧が生まれるということさ。」
「それがどうしたんだ。」
モタローは再びこちらを見た。
「『エメラルドクリスタル』はとても繊細な宝石のために常に冷えていないといけません。そのためにあのガラスの中は冷気で冷やされていたと考えられます。」
「それで冷気か……。」
「暗闇の中、機械によって『エメラルドクリスタル』が硝子張りの筒から違う場所に移動したと考えられます。どこに移動したかは分かりませんが、闇の中でそこからこそこそとリュックに移動させたのでしょう。」
「そうなると、真っ暗闇の中で『エメラルドクリスタル』はあの中には無かったってことか。」
真っ暗闇が宝石を安全な場所に移動したことを気づかせなかったのだ。
「その何も無い筒の中に、熱気が送り込まれたんですよ。つまり、冷気の中に熱気が送られた。」
「ということは、冷気と熱気が混ざって、風圧が生まれるってことか。」
「そういうことです。」
そこまで聞いて、深い頷きを得られた。
関心しているのか頷きが止まらない。
「因みに、そう考えられる要因は幾つかあるんだよ。まずガラス片が生温かったということ。それが熱気と混ざった証拠だよ。さらに、外からの衝撃で壊れたのなら、ガラス片は筒の中と衝撃を受けた反対側へと飛ばされるはず。しかし、ガラス片はどうしてか四方八方に飛び散っていた。そう、外からの破壊ではなく、中から全体に向けて破壊されたと考えられるんだよ。つまり、風圧だね。」
「そんな大層な破壊ですけど、あの繊細な『エメラルドクリスタル』が壊れていないということは既に別の所に避難されていると考えられますね。そんなことができるのは元の機械を弄れる人しかいません。」
「それが鹿内と奥川だったって訳だな。」
「どうかな。納得できる説明だったかな。」
「ああ。腑に落ちた。本当に、こんな下らない自演舞台に呼んでしまって申し訳なかったな。」深々と頭を下げる。
顔を上げて「今回のことは俺の借りにしといてくれよな」と放つ。
それを聞いた彼は「ということだそうだ。ルイン君」と横を向いた。
どういうことか訪ねると「今回の事件を解明したのは君だよ。つまり、君こそ警部に貸しを作ったのは君なんだよ」と返された。
突然貰った大きな貸し。それを使って、今後起きる爆破テロに協力して貰おうと「ではお願いを――」と言いかける。
それを聞いて「ん。早速、返却か」とその速さに驚いていた。
「いえ、やはり、もう少し考えてからにします。」
保留にして貰った。
彼は何も無いなら、とその場から帰っていった。
二人残された客室にて、疑問をぶつけられる。
「どうしてお願いを取りやめたんだい?」
率直な疑問だったようで、その顔は何ともないいつもの表情をしていた。
「僕のお願いは――爆破テロを防ぐのを協力して欲しいということでした。でも、そのことは未来に起きることで、僕が未来から来て歴史を何度も繰り返しているなんてこと、信じて貰えないような気がしたんです。」
「なるほどねぇ。」
「爆破テロが起きることも、亥が爆発を起こすことも、そもそも未来の予言なんて、彼にとっては突拍子もないこと。そんなことを伝えた所で意味はないような気がします。」
「本当にそれでいいのかい?」
彼の周りだけ一瞬時が止まった。そんな風に感じさせた。
「君は立ち止まれる人間さ。時には、それがトラブルを回避するきっかけになることもある。けれども、立ち止まって動き出さなければ、何も得ることはできないんじゃないかな。君がいいならいいのだけど、君が後悔すると思うのなら思いきって進んだ方がいい。」
その言葉が心の奥底にズキズキと突き刺す。
「そうですね。不安も多いですけど、悩んでいる場合じゃないですよね。鬼怒川警部に連絡取れますか。」
「任せてくれたまえ。」
前方の暗闇。そこに足を出せないでいる性格。しかし、彼の言葉が足を出させる。
「やはり、モタローさんは凄いです。僕は一歩が出ない人間です。それで後悔することも多くあります。けれども、モタローさんは前に進める。進む勇気がある。お陰で僕を前に進む勇気をくれてくれる。本当に一緒にバディを組めて嬉しい限りですよ。」
「照れるね。だけど、前に進むことだけが良いことじゃないんだ。行動するということはアクションを起こすということさ。いい事もあるし、悪いこともあるのさ。それで失敗することもタダあるのさ。立ち止まれる人間も貴重なんだよ。つまりだね、俺も一緒にバディを組めて嬉しいってことだねぇ。」
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