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しおりを挟む翌朝、目覚めたリューイは綺麗に整えられた寝台を見て胸を撫でおろした。きっとまた、夢を見たのか。それにしても昨夜のそれは最悪な······。
そこまで考え、部屋の隅で真っ赤な顔をしたクレハを見て、現実に引き戻される。
身体も怠く起こすのもやっとで、リューイは赤い印の散りばめられた自分の身体をみた。
───── あれは夢などではない、のか。
兄様達に犯されて。それも今までずっと自分の寝ている間に悪戯をされていたことまで明かされて。それで、クレハにそれを目の前で見られ─────
─────でも彼女、あの時恍惚の表情を······とそこまで思い出して、自分を心配そうに覗き込んだクレハを見て首を振った。
そんな筈がない。私の大切なクレハが。
私の唯一無二の寵姫 ────
「 ────── クレハ······、」
「リューイ様、ごめん······なさいッ、私、とめることが······できなくて」
「良いんだよ? クレハが兄様達相手に何も出来ないのは当たり前でしょう?」
あんな非道な男達でも、一応この国の王位継承権を持った王子なのだ。
竜王の血を継いでいる彼らは崇高な存在。女官程度が逆らえる筈もないのだから。
「私でさえも、無力なんだから······」
雄の言う事が絶対のこの国で雌に決断できる権利などないに等しい。それが例え王女であったとしても、道具として見られる事に代わりはないのだ。
政略結婚の道具としてどこかに嫁がされるか。でももうそれはないか。とリューイは視線を逸らす。
純潔でなくなった事実が父に露見すれば、自分には何も価値はない。
捨てられるように追放されればマシな方で、高額で売り払われる可能性すらあるだろうその先に、クレハとの未来などはきっとあり得ないのだから。
このままあの双子の王子に愛でられて、黙っていればクレハと引き裂かれる事はないだろう。彼らはリューイとクレハが恋愛関係にある事には特に何も執着してこないのだ。
だから、彼女との平和な未来への道を見つけるまでは、彼らの好きなようにされよう。とリューイはその時を以て、彼等への抵抗をやめた。
──── そもそもこの不本意な世界のどこにも、無条件で得られる平和など存在しないのだ。
それを本気で望むなら、必死に藻掻き、全力で生きて、自分で未来を切り拓くしかない。
「姫さま······、」
「私はね、貴女が好きなの、クレハ」
リューイは精一杯笑顔を作って笑った。
そんなリューイを見てクレハは瞳から大粒の涙を零す。その美しい水滴が彼女の頬を伝って床に落ちていった。
「私もッ、私もリューイ様が好きなのにっ······。
ごめんなさい、クレハが、変な子、だから······」
「違うわ。変な子なんかではないでしょう?だからね、私は、クレハと居る未来を選ぶのよ。そのために頑張るの、」
「クレハは、ずっと変な子だと分かっていたのです。こんな子を、拾って下さっただけでも······クレハは、幸せですっ······」
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