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第一章 王国、離縁篇
ユニーク累計1万記念閑話: 男達が集まると、碌なことはない
しおりを挟むヴィクトールとリリアーナが退出した部屋には、リチャード、レイアード、ルーカスの三人と念話で繋がっているセドリックをいれて男四人となった。
レイアードは先程のタイミングでは聞けなかった疑問を口にする。
「反対派が多いのは、リリアーナに魔法が使えないことが関係しているのではないの?」
「まあ、十中八九そうでしょうね。ルドアニア皇国では魔道具が普及しているとはいえ、貴族の間では魔法が使えるのが当たり前のような所はありますから」
念話にてすぐに回答するセドリックにレイアードは無言で頷いた。
そんなレイアードの隣でリチャードはソファに凭れ掛かるといつも通り緊張感の全くない声をだす。
「ってゆーかさ、マリア嬢泣いてたよねぇ? あの娘、意外とスペック高いんだから、デビュタントしたら結構人気でると思うんだけどなぁ」
「まぁ、あんな濃い闇を醸された上に『世継ぎといっても俺が抱けなければ世継ぎもできぬ』みたいな事言われたら、誰だって泣くだろう」
レイアードがあの時の現場を思い出して、死んだ魚のような目をした。
「まあ、確かに。僕もできる限り関わりたくないなーって壁を見つめて耐えてたもんっ。でもその横でリリアーナ様ってば意外と普通な顔して座ってたけどねぇ、」
笑いながら言うリチャードに、レイアードはポツリと呟くように爆弾発言をする。
「僕のリリアーナは、、きっと色々知らないんだと思う、んだ··········」
「「「は?」」」
驚愕で口をあんぐりと開けた、ルーカス、リチャード、セドリックの三人声が重なり、部屋に響いて、消えていく。
「ちょ、ちょ、え?! レベロン王国の性教育っ!」
「いや、リリアーナは幼い頃から殆ど北の領地に籠もっていたから·······」
「なるほど、·······そうですか、」
セドリックが何かを考えながら念話越しに立ち上がり書類をパラパラと捲る音が聞こえる。
それに焦ったようにレイアードは矢継ぎ早に質問を投げかけて話を逸らした。
「で、でもっ、先程の話に戻るけれど。陛下は欲情しないということかい?」
「いやいやいやいや、シャルロン家って天然なの?ルリナ嬢や他の女には、って意味でしょ?」
「あぁ、なるほど。そうだよな。ヴィクトール陛下って学園にいた時は結構あそんで「レイアード卿、これ以上は不敬ですよ」
セドリックはレイアードがそれ以上何かを発言する前に彼を制する。そしてそれを誂うようにリチャードが声を発した。
「えー、良いじゃん、良いじゃんっ♪ レイアード君の推測どおり、ヴィクトール様は学園ではなくて外で後腐れのないように適度に女遊びしてたよ? 結構泣いてた子いたもんねぇ~。“ルドルフ様に捨てられた”って言ってさぁ。ってゆーか、あの見た目で童貞だったら面白すぎじゃん?「誰が、どんな見た目で、なんだって?」
突然背後から聞こえた低いテノールにリチャードは氷のように固まる。
セドリックは『ほら、みたことか』とため息をついた。だが、誰も彼を助けようとはしない。
リチャードは自分の背中に黒い猛毒の棘が無数に刺さっているような感覚に陥った。全身に冷や汗が流れ、全く動けない上に、圧で息すらできないのだ。
「で、リチャード。教えてくれるんだろう?楽しい話なんだろう?な?」
息ができない時には思い切り息を吐き出すといいんだっけ、とリチャードは頭の中で考えながら呼吸を正常にする事を優先に考える。
‥‥‥ふぅーっ、‥‥‥っ、はぁ、はぁ。
後ろからゆっくり歩いてきた闇がリチャードの背中をポンッと押すと、彼は膝から崩れ落ちた。やっと息が出来るようになった事に安堵して声を絞り出す。
「っは、あ。はぁ‥‥‥へ、へいか········」
何故、こいつは恍惚とした表情をしているのだろう‥‥‥?俺たちは一体何を、見せつけられているのか?レイアードは心の中で思う。
明らかに苦しそうなのに、どこか嬉しそうで蕩けるような表情をしたリチャードに、レイアードは彼の性癖を垣間見た気がして身体を震わせた。
案外、本気でヴィクトール陛下が好きなのかもしれない。と。
「まあ、いい。確かに俺はこいつの言うように経験がないわけではないが、そうだな、皇国では管理されている身だからな」
「管理、ですか?」
「レイアード、俺はあの馬鹿王子とは違う。ルドアニア皇国では王族の精は管理されているから、気安く女は抱けないんだ」
「たしかに、子を成して問題にでもなったら大変ですね。クリストファー王太子のように」
「リドゥレラ中立国で身分を変えていた時には、な。まあ自由は利くから」
だが、ヴィクトールとして女を抱いたことはない。
と彼は付け加えた。
臣下もここまで骨抜きにしているのだ。この世界で最強となれば女でも男でもきっと困ることはないんだろうな。とレイアードは納得し頷く。
その後リチャードはセドリックに説教を食らい、ルーカスに強制連行される形で退出したので、その際にレイアードも便乗して席を立った。
そして、扉から出る直前でヴィクトールから発せられた言葉に息をのむ。
「レイアード。俺はリリアーナを必ず幸せにする。何があっても、だ。今はまだ信用できないかもしれないが、ゆっくりそれを証明していくつもりだ」
あぁ、こうゆう所だ。この人は親を殺し、重臣達を抹殺した悪魔だとか言われているが、きっと奥底には理由があるのだろう。だって、既にこんなにも優秀な家臣を持ち、信頼され、多くの民に支持されているのだから。
一人の男として本当に魅力的だと、レイアードはこの時、肯定せざるを得なかったのである。
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