詩物語 

嶋野の狂犬

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ズルい女

ズルい女 〜Kai side 〜 1

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会社の飲み会帰り、繁華街を歩いていた俺は酒も入っていたこともあり、フラフラしながらゆっくり家まで歩いていた。
道の端で寝ている輩や血の気が多い輩が道のど真ん中で遊んでいたり、夜の繁華街特有の雰囲気に包まれていた。

繁華街の飲食店ゾーンを抜けて、ホテル街に差し掛かった頃だった。
スーツ姿のオッサンが無理やり女性の手を引いてホテルに入ろうとしているのが目に入る。20代前半ぐらいだろうか、女性は必死に抵抗しているが、流石に男には力で敵う筈もなくジリジリとホテルまで引っ張られていく。
普通なら人様の事情に首を突っ込むなんて面倒くさい事はしないのだが、その女性が流した涙がやけに綺麗だったのに見惚れ、つい声を掛けてしまった。

「おいオッサン、その子嫌がってるぞ?」

「あぁあ!うるせぇな!他人は黙ってろ!」

酔っているようだ、話が通じる相手じゃない。俺は強引に女性を掴む手を引き離す。

「何すんだ!」

「嫌がってるって、、、聞こえなかったか?」

ついオッサンを掴む手に力が入る。悶え苦しみ地面に倒れるオッサンがついに泣き出してしまった。

「うわぁああぁあ!俺なんてぇ、何をやってもダメなんだぁ、、、うぇえん」

不憫に感じた俺は、徐に財布から札を5枚抜いて不憫なオッサンの胸ポケットに入れてやった。

「これで嬢でも呼んで慰めてもらえ。ただ無理やり女を泣かす事は許さん」

オッサンは状況が理解出来ていない様子で呆気にとらえている。
これ以上の面倒事は御免だ。俺は足早にその場を去ろうとしたが、今度俺の手を掴んで離さない人物がいた。

「お兄さん、、、あなたカッコいいのね、よかったら今夜だけでもご一緒出来ない?」

「おいおい、、、」

さっきまで泣いていた女性はどこにいったのやら、、、

「私、美咲。近くのキャバクラで働いてるの。お兄さんお名前は?」

なんか馴れ馴れしい奴だな、一瞬でも見惚れた事を後悔したい。

「あっ、これ、名刺ね」

名刺を渡す所作は美しい。俺も仕事柄よく交換するが、なかなか手馴れたものである。

「、、、ダイヤモンド?」

店の名前には聞き覚えがある、この繁華街で1番人気の高級キャバクラだ。
なるほど、それは所作が手馴れてるのも納得だ。

「だいたい出勤してるから、会いに来てね?」

「俺はこういうの、あまり得意じゃなくてな、、、」

名刺から美咲という女性に目線を戻した瞬間、ふわりと花のような香水の香りと頬に柔らかい感触を感じた。

「私のキスは特別だからね?」

理解が追いつかずフリーズする俺を差し置いて、美咲は手を振りながら夜の街へ消えて行った。




次の日、二日酔いの体を何とか起こし会社へ出勤する。受付嬢が深々と頭を下げて挨拶してくれる。良い人材が揃っているようだ。

「甲斐社長、、、おはようございます。昨日は大丈夫でしたか?」

出迎えてくれたメガネのスーツ姿の男性、秘書の大翔君だ。

「あぁ、おはよう。無事家に帰れたから問題ないぞ?」

「昨日は些か飲み過ぎのご様子でしたので、歩いて帰るって出て行ったって聞いた時はどうなるかと、、、」

「ガキじゃないんだ。一人で帰れるよ。大翔君、今日の予定は?」

大翔君はタブレットで今日の予定を確認する。

「今日は夕方まで企画部とのミーティング、夜はホテル産業コンサルの高館社長との会合ですね」

「あぁ、あの高館さん俺苦手なんだよなぁ。すげぇ女癖悪いだろ?」

大翔君はなんとも言えない表情をしている。

「実は、、、今日の会合場所なのですが、、、」

釈然としない大翔君のタブレットを見ると、高館社長会合とメモの下にダイヤモンドと書いてあった。

「ダイヤモンド?なんだそれは」

「繁華街にある所謂キャバクラという所です。高館社長の強い希望があり泣く泣く、、、」

「そうか、、、なら、仕方ない」

その時だった。昨夜の出来事がフラッシュバックして、俺は恐る恐る鞄にしまった名刺を取り出した。

「、、、中々ない巡り合わせか」

不覚にもさっきまで憂鬱だった会合を少しだけ楽しみに感じてしまった。









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