アポカリプス

霧波 敦也

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この塔の中にまともなヤツがいない

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俺、凛﨑 冬人(りんざき ふゆひと)は
地球では普通のサラリーマンだった。
大して頭もよくない大学を出て二流企業に就職。
まあ人並みの人生を送る予定だった。
なのに・・・・・・なぜ。

「お、おれのことをもっと叱ってください
 ジョーカー様!」

目の前にドМのライオンがいるんだ。しかもオス。
まあこのドМライオンは無視しておこう。
俺がここに召喚されてから1週間が経った。
この塔について色々とわかったことがある。
まずこの塔は15階建てである。
1番上にはアポカリプスが保管されており
その下の14階が俺のフロアだ。まあラスボスだな。
13階はエースのフロアだがまだ帰ってこないため
空き部屋となっている。早く殴りたい。
12階はキング、11階はクイーンという感じで
階が上がるにつれ配下の強さも上がっていく。
そして塔の中でもし命を落としても
数時間後には復活する。つまり俺達は不死身だ。
この1週間で何回かウィザードが攻めてきたが
1番上がってきたやつらで5階だ。
そうつまり俺はとても暇だ。
それはキング達も同じようで暇なやつらは
俺のフロアに集まってくる。

「キングよ。なぜサイキックは攻めてこないんだ?」

ふと疑問に思った。
この1週間、ウィザードしか攻めてこない。
モニターで戦闘は見れるのだが
もう似たような魔法を見るのは正直飽きた。

「はい。人間達は1週間置きに塔へ挑戦する権利を
 交代しています。今週はウィザードの週です。
 昔はウィザードもサイキックも好き勝手
 塔へとやってきていたのですが、鉢合わせした際
 戦闘になり両者共に多大なダメージを負うことが
 度々あったので両種族の王がそのようなルールを
 作ったようです。」

なるほど。いや一緒に戦えばいいのに。と思ったが
よほど仲が悪いのだろう。
ここに召喚されたときキングのデコピンで
知識をもらったのだが、あれはあくまで必要な知識
だけだったので俺にはまだまだ分からないことが多い。
クイーンがメンヘラという情報は
俺にとって必要な知識だったらしい。
クイーンは忠誠を誓うモノに対して
メンヘラになるらしい。俺の前はエースだ。
ちなみにドМライオンがジャックだと知ったときは
本当に驚いた。なんでこんな奴らが強いんだ。
キングだけは本当に常識人だ。イケメンだけど。
あ、俺もイケメンになったんだっけ。
鏡を見たとき驚いたな。白髪の赤目。黒いマント。
中二病を詰め込んだような見た目だった。
まあ今は魔法で元の姿に戻してるけど。
中の上くらいの顔に少し癖のある黒髪。
眠たそうな一重瞼に色白の肌。うん平凡。

「あ、あのジョーカー様・・・・・・。」

キングが何やら照れくさそうにもじもじしている。
嫌な予感がする。まさかこいつも変人なのか。

「実はわたくし、堅苦しい敬語が苦手でして。
 よろしければ普段の口調でジョーカー様と
 お話させていただきたいのですが・・・・・・」

俺はホッとした。なんだそんなことか。
てっきりホモなのかと思った。いやほんとに。

「全然構わないぞ。なんなら冬人と呼んでくれ。
 ジョーカーって呼ばれるのそろそろ恥ずかしいし。」

冷静に考えてジョーカーって名前が1番中二病だ。
できればキングだけでなく皆に冬人と呼ばせたい。
だけど一応俺ってこの塔の主であるわけだし
威厳は保たないとな。
口調もそれっぽくはしているつもりだ。

「ホンマ?!おおきに!助かるわ~。
 じゃあ冬人て呼ばせてもらうで~。」

は?待て待て待て。
なんで関西弁なんだ。金髪に青い瞳で関西弁。
あまりにもミスマッチだ。
しかも堅苦しい敬語どころか
敬語ですらない。むしろタメ口だ。
なんなら俺の方が下のような気がする。

「なあキング。なんで関西弁なんだ。
 お前の容姿にその口調は違和感しか感じないぞ。」

まさかキングですら変人だったとは。
いや変人ではないか。メンヘラとドМに比べれば
関西弁で喋る外国人なんて可愛いものだ。

「関西弁?なんやねんそれ。
 冬ちゃんわけわからんこと言うねんな~。」

そうこれくらいは可愛いものだ。
だがなぜだ。無性に腹が立つなこの喋り方。
語尾を伸ばしてくるのが少しうざったい。
あ、いかんいかん。こんなことで腹を立てては。

「なあ冬ちゃん冬ちゃん。
 暇やろ?ワイ喉乾いたわ。
 外行ってなんか買ってきてくれへん?
 あ、冬ちゃん塔から出られないんやった~。
 ワイとしたことがうっかり。」

そう言ってキングは舌を出しながら
ウインクをしてくる。これで俺は完璧にキレた。
と、同時に殴っておいた。
キングは壁にめり込みピクピクしている。

「ジョーカー様!いや冬人様! 
 俺もぜひ殴ってください。全力で何度でも。」

とライオンが懇願する。

「なら私は冬人様の汗、血、涙
 すべて飲み干したいです。
 あ、血は全部飲んだらダメですね。
 バラバラにするとき血が出てこないと
 楽しくないですもの、うふふ・・・・・・」

と美女ことメンヘラことクイーンが笑う。
俺は切実に願った。この塔から出たいと。








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