お前を愛することはないと言われたので、愛人を作りましょうか

碧井 汐桜香

文字の大きさ
1 / 2

結婚初夜

しおりを挟む
「お前を愛することはない」

 結婚初夜。旦那様となるお方は、そう言い放った。私はモトラスト子爵家で生まれたシャーリー。旦那様は同じく子爵家であるフェリプラス子爵家の嫡男フィレンツェル様。
 私の斜め後ろで、私の護衛があたふたしている。落ち着きなさい。

 フィレンツェル様には幼馴染で平民の想い人がいるという噂で有名だ。
 そのため、結婚初夜には何かしら言ってくると予想していた。
 ただ、この結婚は契約結婚だ。そこを理解できるお方だったら……いや、何も言うまい。


「かしこまりました。では、わたくしも旦那様を愛することはないと誓いましょう」

 そうお答えすると、旦那様は驚いたような表情を浮かべられた。なぜ。

「旦那様には、想い人がいらっしゃると認識しております。そのお方への想いが叶ったのならば、そのお方を愛人としてこの屋敷にお迎えくださいませ。ただ、好きでもない女が共に暮らしていると不便でしょうから、わたくしは、わたくしの所有する別邸に移り住ませていただきます。書類で約束いたしましょう」

「あぁ」

「その代わり、私にも同様の権利をくださいまし」

「は?」

 目を丸くなさる旦那様。何をそんなに驚いているのでしょうか。この結婚は契約結婚。結婚生活の内容も契約で決めるのが相当でしょう。

「わたくしにも、結ばれることのできない想い人がおります。ですから、旦那様のお気持ちは痛いほど理解できるつもりです」

 悲壮感を浮かべた私に、旦那様は同情するような視線を向けられます。

「もしも、この想いが叶ったのならば……そうなったのならば、想い人と共に過ごす時間が欲しいのです。二人きり……いえ、子ができるかもしれませんわ」

「子を孕むつもりか!?」

「え? 旦那様は想い人を愛人となさったのならば、子を儲けるつもりはないのですか? でしたら、わたくしも子を生すことのできない薬を服薬いたします」

 私の言葉に、旦那様は気まずそうに目線を逸らされました。自分は子を儲け、私には子を生さないよう強制する。不平等ではありませんか。

「あぁ、後継のことをご心配でしたら、子は想い人に養子に出す形にいたしましょう。もしくは、我がモトラスト子爵家の養子として私が養育する、という方法でもいいかもしれません。もちろん、旦那様のお子は旦那様のお子としてお育てくださいませ。もちろん、教育にかかる費用、別邸での生活にかかる費用、こちらはわたくしが自ら負担いたします。双方の想い人や子供については、関わらない方向でいきましょう。旦那様のお子にわたくしが関わったら、お困りになるでしょう? 社交につきましては、必要があればわたくしも参加いたしますが、やはり想い人のお方とご出席されたいようでしたら、旦那様のご希望の通りの契約内容にいたしましょう?」

 私は、言葉を連ねます。

「ただ、わたくしの契約条項は、わたくしの想い人がわたくしの愛に応えてくれたら、という妄想でしかございませんもの」

 そう悲しそうに言うと、旦那様は納得した表情を浮かべられました。


「ただし、わたくしが旦那様のお子様の教育にかかる費用を負担することはございません。今回の婚姻にあたって、すでに資金の援助は済んでおります」

「そうだな」

 今回の婚姻では、旦那様の負債となってしまっている事業の買取が契約内容になっております。それ以上の負担は、双方自力でという形になるでしょう。そもそも、私に興味のない旦那様です。私が資金をそんなに持っていないとお思いでしょう。


「では、教会での誓約魔法でこの内容を契約致しましょうか?」

 教会での誓約魔法。神の面前で行うとされるこの契約は、すべての契約を凌駕する。私が子を生した時にフェリプラス子爵家を乗っ取られたらと考えたのか、旦那様はすぐに了承なさいました。

「では、わたくしは別邸で過ごしますわ。旦那様もわたくしもお互いの恋がうまくいくように願っておりますわ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

憧れの人と結婚しましたが夫は離縁を望んでいるようです

矢口愛留
恋愛
スピカは、政略結婚により、かねてから憧れていたアーク・トゥールズ次期辺境伯の元へ嫁いだ。 しかし、夫となったアークは、スピカに白い結婚を望む。 そんな中、二人の共通の友人、デネが訪ねてきたことで、意外な事実が判明する――。 *カクヨム(修正前)にも投稿しています。小説家になろうにも投稿予定です。

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

身勝手だったのは、誰なのでしょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢になるはずの子が、潔く(?)身を引いたらこうなりました。なんで? 聖女様が現れた。聖女の力は確かにあるのになかなか開花せず封じられたままだけど、予言を的中させみんなの心を掴んだ。ルーチェは、そんな聖女様に心惹かれる婚約者を繋ぎ止める気は起きなかった。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

魅了魔法にかかって婚約者を死なせた俺の後悔と聖夜の夢

恋愛
  『スカーレット、貴様のような悪女を王太子妃にするわけにはいかん!今日をもって、婚約を破棄するっ!!』  王太子スティーヴンは宮中舞踏会で婚約者であるスカーレット・ランドルーフに婚約の破棄を宣言した。    この、お話は魅了魔法に掛かって大好きな婚約者との婚約を破棄した王太子のその後のお話。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※魔法のある異世界ですが、クリスマスはあります。 ※ご都合主義でゆるい設定です。

処理中です...