お前を愛することはないと言われたので、愛人を作りましょうか

碧井 汐桜香

文字の大きさ
2 / 2

5年後

しおりを挟む
「シャーリー、その、本当の夫婦にならないか?」

「まぁ。旦那様、ご機嫌よう」

 第三子であるルシウスを抱き抱えながら、別邸を訪問なさった旦那様を出迎えます。

「な? その子は?」

「我が子ですわ。先日、我がモトラスト子爵家の養子となりましたの」

「お母様! だぁれ? そのお方は」

「私の契約相手よ? ナーシャ。大切なお話があるから、お部屋に戻っていなさい?」

「はぁい。お母様」

「な!? 二人もいるのか!?」

「いえ、すでに三人おりますわ。もうすぐ、四人目が生まれる予定ですの。旦那様の想い人とはうまくいっていらっしゃいますか?」

「いや、それはだな……」

「まぁ! 喧嘩なさったのかしら? 結婚初夜にあんなにも自信満々に“君のことを愛することはない”とおっしゃったのですもの。まさか想いが届かなかったなんてことは……」

「……あの女は性悪だったんだ。俺に気持ちがあるフリをしていたんだ。それなのに、愛人になることを迫ったら、他に好きな人がいると……」

「まぁ……そのお方は、どんなそぶりをなさっていらしたのですか?」

「好きになった当初は笑顔で挨拶してきたんだ。会話を交わすようになると、満面の笑みで話しかけてきたり……。あと、やけに褒めてきたり……。そうだ、皆に配っていると言っていたが、クッキーを手渡されたこともある!」

「まぁ。そんなお方でいらしたのですね。わたくし、旦那様が次に好きになるお方が、もっともっと素敵なお方であることをお祈りしておりますわ? 旦那様は誓約魔法のことを覚えておいでだと思いますもの」

 笑顔を向けて旦那様にそう話しかけると、力無く頷き、去っていきました。
 教会での誓約魔法。誓約は両人の合意によって、解除することもできる。しかし、合意なく誓約を破ると神罰が下るとされる。我が子と想い人を守る内容も契約に含まれている。
 旦那様は最低限の社交すら不要、我が家に関わらないように、と、おっしゃったから、私もきっと誓約魔法に守られております。







「いい結婚相手だわ。本当に」

 私の実家の資産は、私の運営する商会によって増やされた。その資産を使って、貴族としての実家の面子を潰さずに、私を想ってくれていた想い人と結ばれる方法を探していた。両親は一人娘の私の子を成人後、子爵家の後継にしてくれるのなら、自由にしていいと言っていた。
 私の想い人は、そう、結婚初夜に私の後ろであたふたしていた護衛だ。
 平民の想い人がいると有名な旦那様。幼馴染という噂は、旦那様の一方的なものであると存じていた。そんな旦那様だ。想い人に操を立てるために、今流行りの“君を愛することはない”をしてくれるだろう。そこに、誓約魔法をうまく使えば、私の願いは叶うと思っていた。
 最悪、別れてしまえばいい。そう思って初夜に契約を持ちかける予定だったが、旦那様の方から“お前を愛することはない”と言ってきてくれたことは、僥倖であった。


「旦那様は、平民が貴族にとる態度を好意と受け取っていらしたのね。だから、自信満々に初夜に宣言した、と」

 私がそうやって分析していると、ナーシャの足音と慌てた様子の大人の足音が聞こえてきた。


「シャーリー! 大丈夫だったかい?!」

「まぁ、あなた。あのお方には、すぐにお帰りいただいたわ。大丈夫よ。そんなに焦ってこなくてもよかったのに」

「大切なシャーリーに何かあったら、と思うといてもたってもいられなくて」

「お父様ったら、仕事を放り出してお母様のところにきてしまったのよ? ふふふふ」

 ナーシャが楽しそうに笑い、私の想い人も安心したように私を抱きしめ、笑う。

「ねぇ、あなた。私と一緒になってよかった?」

「叶わないと思っていた君への想いが叶ったんだ。それに、こんな可愛い宝物たちにまで出会えたんだ。すごく幸せだよ。シャーリーも幸せと思ってくれているかい?」

「もちろん、私も幸せよ」
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ブリトニー
2025.10.16 ブリトニー

恋の相手の顛末、そういう事か〜ニヤけました🤭夫のその後がちょっと気になる
テンポが良くて面白かったです👏👏👏

解除

あなたにおすすめの小説

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

憧れの人と結婚しましたが夫は離縁を望んでいるようです

矢口愛留
恋愛
スピカは、政略結婚により、かねてから憧れていたアーク・トゥールズ次期辺境伯の元へ嫁いだ。 しかし、夫となったアークは、スピカに白い結婚を望む。 そんな中、二人の共通の友人、デネが訪ねてきたことで、意外な事実が判明する――。 *カクヨム(修正前)にも投稿しています。小説家になろうにも投稿予定です。

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

身勝手だったのは、誰なのでしょうか。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢になるはずの子が、潔く(?)身を引いたらこうなりました。なんで? 聖女様が現れた。聖女の力は確かにあるのになかなか開花せず封じられたままだけど、予言を的中させみんなの心を掴んだ。ルーチェは、そんな聖女様に心惹かれる婚約者を繋ぎ止める気は起きなかった。 小説家になろう様でも投稿しています。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

魅了魔法にかかって婚約者を死なせた俺の後悔と聖夜の夢

恋愛
  『スカーレット、貴様のような悪女を王太子妃にするわけにはいかん!今日をもって、婚約を破棄するっ!!』  王太子スティーヴンは宮中舞踏会で婚約者であるスカーレット・ランドルーフに婚約の破棄を宣言した。    この、お話は魅了魔法に掛かって大好きな婚約者との婚約を破棄した王太子のその後のお話。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※魔法のある異世界ですが、クリスマスはあります。 ※ご都合主義でゆるい設定です。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。