ちょうどいい私は、無理めの宮久土先輩のくるぶしをかじりたい

KUMANOMORI(くまのもり)

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十秒後にキスします

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 私の言葉に宮久土はきょとん、とした顔をする。

「いじわる言われた?」
 じっとこちらを見てくる瞳はあまりに静謐で、私は嘘をつけなくなる。頷いたら、頭を撫でてくれた。

「芦野さんがいる方がいいよ、いないとつまらなくて死にそう」
 そして、何か思いついたように、あ、と口にする。

「十秒後にキスするから。いやだったら手をあげて教えてください」
「ええっ?」

 歯医者さんの「痛かったら手をあげて教えてください」みたいに言うけれど、内容が内容だ。
 冗談かと思ったけれど、宮久土先輩は訂正する気配もなく、視線を離してくれない。

 肩に手が触れて来て、
「十、九、八、七」
 とカウントが始まった。

 そして顔が近づいてくる。

 四とカウントしたときに、宮久土先輩の瞳が悪戯っぽく光るのを見た。あ、面白がってる、と思う。

 どっちに転んでもいい、と思って私を試しているんだ、と思った。でも、二とカウントしたとたんに宮久土先輩は迷ったような顔になる。

 変なの。宮久土先輩ってよく分からない。

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