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速攻お泊り

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 親死んでるから。

 そう前にさらりと言っていただけだ。
 じゃあ、今のアパートは誰名義で、食費や光熱費、家賃はどうなっているんだろう?と思う。

 宮久土先輩の生活の本質的なところを、私は知らない。聞いていいのかも分からない。
「ご飯のおかわり、持ってきましょうか」

 空になったごはん茶碗を見て、私が聞いたら、ありがとう、でもこのくらいにしておく、と宮久土先輩は言った。
 すっかり綺麗になったお皿を見て、片づけようとして手を伸ばせば手が重なる。

「え?」
 宮久土先輩の顔を見れば、宮久土先輩もまた不思議そうな顔をしていた。

「なんでだか分からないけど、芦野さんの考えていることが分かるんだ」
「考えていることですか?」

「うん、高確率で頭にピンってくる。芦野さんの視線も絶対に分かる。電気が走ったみたいに視線を感じるんだ。前に校庭で芦野さんが片づけしていたときに気づいたのが最初」

「あ、あのとき」
 宮久土先輩のくるぶしに一目ぼれしたときだ。

「くるぶしに、ビリビリって何か感じた」
「そ、そうなんですね」
「で、今は。芦野さんは昔話のことを考えてたんだって分かる」

 昔話。
 その通りだった。
「すごいですね、宮久土先輩」
「昔話は忘れちゃうし、あまり話せないんだけど。簡単になら話すよ」

 昔話は今私の頭の中にも浮かんでいる。
 互いに見つめ合ってしまっていたら、数秒経ってしまった。宮久土先輩が私の頭を撫でてくる。

「頭の中にあるものを口にすると、心に落ちてくるらしい。もし、落ちて来てもいいなら話してみる?」
「それは宮久土先輩もですよ?話してくれますか?」

 じっと見つめ合ってしまうので、じゃあ、片づけをしてからにしようか、と宮久土先輩が提案する。
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