妊娠しません！

初恋の元カレ

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　ここに一つの画像がある。
　閲覧制限のかかった資料で、研究所に配属されてからたまたま目にしたものだった。

　画像は名前のリストになっており、ここに名前を連ねている人が、秋彌輝夜の結婚相手候補だ。【秋彌輝夜に関する適合度リスト】と書かれている。

　こうしたリストは毎日作成され、希望者に送信していく。
　遺伝的な病気やリスクを排除した相手と婚姻したい人たちから、要望が多いのだ。デザイナーズベイビーと倫理的な批判を受けていたけれども、富裕層の間では現在密かなブームとなっている。
　
　検査項目は数百にも千にも及ぶ中、能力開発や疾病発症予防など、希望の観点から検査項目を絞って検査していくのだ。
　検体を研究所に提出しているユーザーのみ、適合度の高い相手のリストの作成が可能だった。

　私は研究所で検査結果をまとめて希望者へ発送する仕事をしていた。
　輝夜のリストを作成したのは昨年のことだ。依頼者は輝夜の父であり、研究所の所長である秋彌眩夜。
　私達が結婚したい、と告げた直後だった。私はその依頼を検査課の課長夏嶺流から任される。

「随分と酷なことをするよな、所長は。もし、このリストに環さんの名前がなかったら？」
　そんな風に告げて仕事を振って来た夏嶺には、
「気にしません、仕事は仕事ですよ」
　と答える。

　内心びくびくしていたのは否めない。あがって来たリストを見たときには、言葉もなかった。

　そこに私の名前はなかったからだ。