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甘さを求めて

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「とうど、いや、八紘さんは。少し強引に欲しがってくれると、分かりやすくて嬉しい。元々我がままじゃない人が、少し我がままにしたってバチは当たらないよ」
「それは、ダメだ。オレが我がままになったら、きっと刃傷沙汰になる」
「そしたら、オレが今度は助けるよ」
 藤堂さんの上に乗った状態だったので、「脱がしてもいい?」と聞くと、黙って頷いた。オレは藤堂さんのスーツパンツのボタンを外す。下着の上からでも分かる高まりを見ていたら、愛おしくなった。
「オレが抱いてもいいんだけどなあ」
 と呟いてみると、藤堂さんは少し怯えた目をするので、冗談冗談、と言う。
 下着から取り出して、口をつけようとすると肩をおさえられて、全力で拒否された。
「ダメだ、黎。シャワー浴びてないし、それだけはやめて欲しい。汚したくない」
「我がままだな~。けどそっか、八紘さんってちょっと潔癖なんだね。だから、普段オレんちにも泊まらないんだ」
「着替えがないことは、気になってる。それに今は」
 スキンの持ち合わせがないことを、今オレも思い出した。
「オレは気にならないけど」
「俺は気になる」と藤堂さんは言うけれど、目の前のそれはどんどん角度を増している。
「じゃあ、このままにしとこうか?」
 オレは藤堂さんのシャツのボタンを外しにかかる。
「言ってることとやってることが違うよ」
「そばにいるうちに求めとかないと、いついなくなっちゃうか分かんないじゃん」
 オレは藤堂さんの素肌にキスを落とした。
「シャワーを……」
 と藤堂さんは嘆く。
「大丈夫、そのまま味わわせて」

 オレもシャツや自分のボトムス、下着を脱ぎ捨てて、藤堂さんのそれとこすり合わせた。湿度と温度の高い藤堂さんを感じたら、想像以上に早く高まってきてしまう。
「黎」
 吐息まじりに藤堂さんは呼んで、オレを抱き寄せる。下がって来た手で、尻を割られる感覚があり、思わず藤堂さんの目を見る。
「どうすればいい?したいんだ、何の準備もないけど」
 とおずおずと言うので、
「いいよそれで」
 と返す。毎回優しくなくても、甘くなくてもいいと思っている。総合的に付き合いたいと思えればいい。

 入り込んでくる指さばきは、丁寧ですぐに中に欲しくなる。オレは自分から腰を落とし、藤堂さんを飲み込んでいく。二人同時に声をあがった。脈打ちをダイレクトに感じて、腰骨がぶるぶると震える。
オレが上下運動をしていくと、ビリビリッと衝撃が走る部分があった。前の部分が角度を増し今にも達しそうになったあたりで、藤堂さんが下から同じ場所をえぐって来る。ヒッと悲鳴が漏れて、そのまま藤堂さんの上に吐き出してしまう。
「ウッソ」
 びっくりするほど早かった。その様子を見ていた藤堂さんの喉がごくりと鳴る。
「ゴメン、体勢かえて」
 と言って、繋がったまま上下交代した。
「ちょっと待って、拭かないと」
 と言う声は聞き届けられずに、長いストロークで打ちつけがやって来る。初めての感覚に、頭がチカチカした。ぐりぐりっと中をかき回す感覚があって、大きな声があがった。
「ほらね、マズいんだ。俺に我がまま言わせない方が、仲良く出来たって思うかもしれない」

 オレは視線をあげ、藤堂さんを見る。藤堂さんの目が細められ、涙袋が膨らんで見えた。吐息は熱くて、額には汗がにじんでいる。これは、多分、ちゃんと気持ちいいんだろうな、と分かった。それを見て、良かった、となぜかとても深く安心したのだ。
「まだまだこんなんじゃ甘いよ。ずっと飢えてたんだから、もっともっと求めてくれないと」
 そう言ったら、やや強引に深くえぐって来た。
「止まらなくなるよ」と藤堂さんは吐息まじりに言う。
「いいよ」とオレは言った。
 オレもまた、求められることに飢えていたし、本音をむき出しにすることに飢えていた。兄貴のことはやっぱり心から消えることはないと思うけど。兄貴がもし生きていても、兄貴の言っていた通り、オレと兄貴はずっと兄弟のままだったとオレも思う。
 ただ、ひょっとしたら、藤堂さんと付き合ったことは兄貴が結んだ縁なのかもしれない、とはうっすらと思うけれど。

 今はただ、今まで見たこともないほど懸命に、求めてくれる藤堂さんを感じるだけで、オレは幸せだった。
 何度も交わし合って、その日は眠る。着替えが気になる藤堂さんは朝一番にチェックアウトして、家に帰ったのは言うまでもないけれど、まあ、それでいいやと思った。
 オレもまた早めにチェックアウトして、翌日もインターン先に行く。
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