5 / 127
大失態の一夜目
4
しおりを挟む
「愛らしい方へ。王宮の一室においでください」
と同僚の近衛兵経由で、手紙が返って来た。
手紙をもらった私は舞い上がる思いで、指定された部屋に行く。
近衛兵の屯所と離れ、奥まった場所にあった部屋だったので、少し戸惑いつつも、部屋に入っていった。
その部屋には私が見たこともないような天蓋付きの寝台がある。私はおずおずと入っていき、そして、恐らく――――
寝台で居眠りをしたのだと思う。休めるときには休んでおく。そう身体に叩きこんできた習慣が祟って、どうやら寝過ごしたようだ。スパイシーな香りがして、気が遠くなったのを記憶している。
目覚めると不意に人影が見えて、私は言った。
「後悔はさせません。ですから、最後の機会をくださいっ!」
と。
なけなしの口説き文句だったと思う。
この機会を逃せば、私の純潔は恐らく、色好みの軍司令官の息子に奪われてしまうのだから。
その後、相手の顔を確認する間もなく暗がりで、結ばれた。
確認する間もなく――――?
花の香りがしたのを覚えていたし、兵長の声音と比べるとその声は柔らかいとは思った。
何より、触れた素肌の感覚は、百戦錬磨の兵長のものとは思えない。傷のあと一つない、滑らかな肌だ、とは思っていた。
けれど、まさか。
それが、我が王子とは思わない。
と同僚の近衛兵経由で、手紙が返って来た。
手紙をもらった私は舞い上がる思いで、指定された部屋に行く。
近衛兵の屯所と離れ、奥まった場所にあった部屋だったので、少し戸惑いつつも、部屋に入っていった。
その部屋には私が見たこともないような天蓋付きの寝台がある。私はおずおずと入っていき、そして、恐らく――――
寝台で居眠りをしたのだと思う。休めるときには休んでおく。そう身体に叩きこんできた習慣が祟って、どうやら寝過ごしたようだ。スパイシーな香りがして、気が遠くなったのを記憶している。
目覚めると不意に人影が見えて、私は言った。
「後悔はさせません。ですから、最後の機会をくださいっ!」
と。
なけなしの口説き文句だったと思う。
この機会を逃せば、私の純潔は恐らく、色好みの軍司令官の息子に奪われてしまうのだから。
その後、相手の顔を確認する間もなく暗がりで、結ばれた。
確認する間もなく――――?
花の香りがしたのを覚えていたし、兵長の声音と比べるとその声は柔らかいとは思った。
何より、触れた素肌の感覚は、百戦錬磨の兵長のものとは思えない。傷のあと一つない、滑らかな肌だ、とは思っていた。
けれど、まさか。
それが、我が王子とは思わない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる