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偽りの五夜目

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 目を開ければ華やいだかんばせの男性がいた。
 視界はなぜかぼやけていたけれど、ウィリエール様だと即座に思う。目鼻立ちがウィリエール様に似ていたからだ。
 名前を呼ぼうとするけれど、声が出ない。

「そちらから呼び出しておいて、いぎたない女だな」
 言葉遣いはまるで別人だ。その口調には覚えがあった。

 傲岸不遜の第一王子、ランドルフ様だ。

 なぜ、ここにランドルフ様がいらっしゃるのか、私には分からない。意識がしっかりと戻って来て、正面から見据えれば精悍なお顔立ちのランドルフ様だ。

「なぜこちらへ?」
「なぜ?一夜限りでもよいのです。最後の思い出をくださいと手紙をよこしたのはお前だろう?」

「手紙をお送りした覚えはありません」
「嘘だな。軍神の巫女となったお前は知っているんだろう?継承権の秘密を」

「え?」
「あんな危険な手紙を剥き出しのまま、扉に挟んでおく神経が分からない」

「私は何もしてはおりませんが」
 身体を見おろせば、私は何も身に着けていない。
 さらにランドルフ様もまた上半身裸なのだ。
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