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大好きな親友
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しおりを挟むその日も、空き時間に花菜野と街歩きをしていた。
常盤は花菜野と緋々来に会うのだけは、許してくれる。予行演習は緋々来のことを避けていることもあって、花菜野と過ごすことが多い。
「ね、碧衣。うちのパパの会社に就職しない?推薦できると思うけど」
何度となく、花菜野は私にそんな話をしてくる。
「期待されるだけの働きが出来るかなぁ?コネって言われてバカにされそう」
と言って断る。何度も経験した会話だ。
私は実家の花屋を継ぐか、外に就職するのかを天秤にかけていた。
「碧衣とずっと一緒にいたいな」
と花菜野は言う。
「ずっといれるよ」
と私は言うけれど、花菜野は渋い顔をするのだった。
「親戚のお姉さんに聞いたんだけど。女の人の友情が壊れるのは、恋愛か結婚か、子どもの存在らしいよ。そのフェーズが一番危ないらしい」
「へーそうなんだ。でも、花菜野に彼氏できても、私たち別に壊れてないよね?」
「碧衣に彼氏ができたのが、ちょっと危険な香りがしてる」
と花菜野は言う。
「常盤ね」
と私はただ、名前を言った。それ以上、花菜野に話せることはない。
「順調?」
と花菜野は聞いてくる。
「初めてだから、何がどうか分からないな」
と私は答えた。
肌感覚で、あまり順調ではないことは分かっていたけれど。
「順調が続けば、いつかは結婚になるのかな?結婚は、したくないな」
私はついつい本音を言ってしまう。
「まだ、早いでしょ。さすがに大学生なのに」
と花菜野が言ってくれたことで、私は一安心した。
付き合っている常盤の考えが普通じゃないと分かることで、安心するのは変だとは思うけれど。常盤といると、私の考えがおかしいような気がしてくるからだ。
好きな人と結婚したくない、妊娠したくない私こそが、異端のような気がするから。
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