カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然モテ一途男子は最強夫婦~

KUMANOMORI(くまのもり)

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カエル化姫と最愛の人

最愛で最強

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 翌日、瑠璃也から「今日は完全にオフにするから、悪いけど白那も休みにして」と言われた。
 今日は婚姻届けを出して、結婚指輪を買うからと言われる。

 婚姻届けの保証人に関して一人目は、彰文にお願いしてした。
「見届け人」と言う意味ではぴったりだったからだ。
 ただ実は、彰文こそがカエル化王子で、キャッチ&リリースの恋愛遍歴を繰りかえしていることは、最近知った。みんな一皮むけば、どこかこじらしているようだ。

 そして、私が一番驚いたのは、瑠璃也が「俺が水樹姓になる」と言ったことだ。
「別に苗字にこだわりないから、瑠璃也の姓でも全然いい」と私は思っていたのだけれど、「水樹の名前は残さないダメたよ」と静馬のようなことを言う。
 瑠璃也の希望により、水樹家の名前が残ることとなった。瑠璃也は水樹瑠璃也となるらしい。

 瑠璃也がもう一人の保証人は「藍さんにお願いしたい」というので、瑠璃也の会社のスタッフである優成に車を出してもらい、藍さんのところまで行く。
 藍さんに挨拶をして、記入してもらってから、近くの市役所で提出した。その後ママのお墓に行って、報告する。

「朱那さんの期待に応えられてたかな」と瑠璃也はママに話しかけて、
「たしかに、ママの見る目は間違ってなかったね」と私も言った。


 ○○市からのUターン後、私は瑠璃也の、瑠璃也は私の指輪を用意することにした。刻印を決めて、出来あがったら取りに行くことになる。

「式はあげる予定ですか?」とお店の人に聞かれて、私が、
「結婚式はしません。こだわりもないし、お互いに忙しいし」と言ったら、瑠璃也はそう言うものがあった、

 今気づいた、というような驚いた顔をする。瑠璃也は基本的にソツがないのに、どこかスポッと抜けているところがあるのが、面白い。

 その後、
「いや、結婚式はするって。何言ってんの白那」
 と言うのだ。いや、完全に忘れてたじゃん、とツッコミを入れてしまう。

「瑠璃也の方はともかく、私の方の親族は難しいからいいよ」と告げれば、
「俺が水樹家の方は懐柔してくる。朱那さんのためにも、絶対に白那の晴れ姿用意するから」と言われた。どこまでも保護者目線なのが瑠璃也らしい。

 とはいえ、瑠璃也の親族をどこまで呼ぶのかによっては、規模がどんなになるのか恐ろしいと思う。



 その日以降、瑠璃也が各所に連絡して、強引にスケジュール変更してもらったり、仕事を人にどんどん割り振っていき自分は、必要なときだけ行けばいい状態にしていったりするのを見て、私は圧倒されていた。
 卒業に必要な単位は全部取ったし、卒論発表も強引に終わらせた、と言う。
 強引に終わらせるとは?と疑問符が浮かんだけれど、「全く問題ない、てか何も文句は言わせない」と言うので文字通り受け入れるだけだ。
「白那は少し離れただけで距離取ってくるから、白那と一緒の仕事だけする。白那以外のことは省いて、新婚満喫する」と言う。

 さらにサロンの方に一緒に住むことにしたら、自宅部分のリフォームと改造をしたいと言いだして、すぐに施工業者が入った。瑠璃也は思いついたらすぐに動いてしまうから、目まぐるしすぎてついていけない。しばらくは瑠璃也のマンションに住んで、工事が完了したら今の自宅で暮らすことになっている。
 瑠璃也はスイッチが入ると、演技とかじゃなくて天然で俺様なんじゃないの、と思った。



 私や瑠璃也の周りの人たちにも少しずつ変化がある。
 静馬は最近、サロンで会えるアイドルとして活動し始めているらしい。あくまでもアイドルを名乗る辺りに謎のプライドを感じる。
 静馬とはサロン経営に関わっているので、定期的に会う機会があるけれど、私が疲れていると、黒い粉が見えるらしく、
「瑠璃也には絶対に言わないので、払いません?」と未だに言われる。

 ただ、裏技をママのノートから仕入れていたので、静馬にお願いすることはない。

「大変な施術のあとは、日埜家に近い女性にハグしてもらえば、OK。痛くないし、払う力も意外に強い。私は友達の亜鈴にお願いしてた」
 と書いてあった。
 試しに静馬の従妹だという美亜にお願いすることにする。

 サロンに来た美亜に、「私を助けると思って、月一回くらいでハグしてくれませんか?」と言ったら、変な人扱いされた。
 ただ既に美亜とは一緒に出掛けるくらいに仲良くなっていたこともあり、
「広い意味では私たちファミリーになるんだし、もちろん、いつでもOK」と言ってくれるのだ。

 美亜には黒い粉は見えないらしいけれど、ハグをしてもらうと、黒いもやが一瞬で消えるのが私には見えた。

 これを初めから知っていれば、周り道はしなくてすんだんじゃないの?と思う。
 ママ初めから教えておいてよ、と言いたかったけれど、何事も経験だ、と思っておくことにする。

「経験は血肉になるのよ!」
 と太い字で書かれた、ママの日記の一文を思い出したからかもしれない。


※※※ 



 結婚式に関しては、瑠璃也が盛り上がってしまい、
「白那の結婚式なんだから、本当なら全人類集めたい」と言う。
「私の結婚式じゃなくて、私と瑠璃也の結婚式だよね」
 と私は訂正するのだけれど、
「保護者としてバージンロード歩くのでもいいな」と妙なことを言う。
「じゃあ、新郎はどこに?」
 とツッコミを入れざるを得ない。
 瑠璃也はやっぱりどこか保護者目線が抜けないのだった。

 もちろん全人類集めるわけもなく、親族や知り合い、仕事関係者を集める式になる。とはいえ、まず瑠璃也の親族筋の数が尋常じゃなく、さらに瑠璃也が懐柔した水樹家の関係筋を呼ぶことになったら、かなり人数が増えてしまった。
 あり得ないボリューム感になった結婚式は、私の手には負えない。瑠璃也に任せることにしたら、社内に結婚式準備・実行委員会を作って、作業をスタッフに割り振っていく。

 当然同時進行の仕事もあるので、「大丈夫かな、パワハラ指摘されないかな」と心配になった。けれど、瑠璃也の気まぐれに揉まれているため、スタッフ陣はとても優秀だ。
 優秀なスタッフ陣のおかげで、結婚式の準備はつつがなく終わる。

 そして今日――――その結婚式が行われるのだ。
 昨夜私はママに手紙を書いた。


 最愛のママへ

 やっぱりママの好みには異議があるし、私たちは誤解にまみれる宿命にあるみたい。
 でも、私は今、最愛のイケメンと一緒にいられて、かなり幸せです。
 どれだけ生きられるのかとか、面倒な出来事が起こるのかとか、分からないけれど、きっと大丈夫。
 愛おしい人がどんどん増えていくから、図太く生きてくね。

 地上から愛してるよ!


水樹白那


※※※


 間もなくて、私たちは赤ちゃんを授かることになる。その子が歩くようになり、そしてその顔つきがハッキリとしてきた頃に、隔世遺伝が炸裂していたことを知った。
「可愛い、めちゃくちゃ可愛いし、愛おしい。命かけて護りたいって思うよ。でもさ、何で白那や俺似じゃないんだよ」
 と瑠璃也は言う。
「色んな人から可愛いって言われてるし、いいじゃん。実際可愛いんだもん」と私が軽く流せば、瑠璃也から疑いの眼差しを受ける。けれど、自分の名誉にかけて、「絶対にない」と言っておく。

 その疑いの眼差しは、施術に来た蒼真からも向けられる。蒼真はサロンに来ていた我が子を見て、目を丸くした。頭の中で何やら計算して、「ないよな?冷凍した?」と聞いてくるので、
「お客様。その下品な発想は、金輪際話題にしないでくださいね」と念を押しておく。



 誤解を招くのは私の宿命のようだ。

 でも、今は誤解もはねのけるパワーがある。

 最愛の人はママだったけど、瑠璃也も最愛の人になった。

 そして、この子も最愛の人だ。

 最愛の人が増えていく私は、控えめに言っても、最強だと思う。


End
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