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第2話 窮地に立たされる
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私、山本利奈(やまもとりな)は、窮地に立たされている。
そう、まさに窮地だよね。
だって知らない場所に、ひとりポツンと来てしまったんだもん。
まさかベッドで眠ろうとしていたら、別の世界へ来ちゃってたなんて誰が予想できる?
できないよね……
私はTシャツに短パンといういつもの部屋着スタイルで、眠ろうとしていたから、当然すっぴんよ。
持ち物なんて何もない。
まぁ、お金や携帯があっても、この世界では何の助けにもならなかったかもしれないけれど……
手ぶらで出かけたことないから、何だか落ち着かない。
私って、一文無し、家無しよ。
食べるものだって何も持っていない。
これって……かなりまずい状態じゃないかな。
まぁ、なぜだかわからないけれど、言葉が通じるのがせめてもの救いかな。
今、私がいる部屋には見知らぬ男性。
私が彼の部屋に勝手に入ってしまった状態なわけだけど、私だって、どうしてこうなったのかわからない。
Tシャツに短パン姿の私を『娼婦みたい』だなんて、ふざけたことをいう男だけど、悪い人ではなさそう。
ただ髪も髭もボサボサで、顔色も青白いし、何だかやつれてる感じで、病気なのかな?
この人は大丈夫なんだろうかと心配になる。
まぁ、私自身がとんでもない状況にあるわけで、今は人の心配よりも自分の心配だよね。
今、頼れるのは目の前の男だけ。
日本ではなかなか見ない色彩だな。
キレイな金髪にスカイブルーの瞳。
とりあえずは状況を説明して、仕事と住む場所が確保できるまで、家に置いてもらえるように頼んでみよう。
「あのー、ケント様? 私をしばらくここに置いてくださいっ。働きますから。
私はひとり遠い場所から飛ばされてきたようで、何も持っていません。住む場所も仕事もお金も。頼れる知り合いもいません。
あなたに見捨てられると、生きていけません。どうか、どうか、ここに置いてください」
彼の良心に訴えかけるように、弱々しく訴えてみる。
私は何としてもここに置いてもらわないと困るのだ。
なりふりなんて構っちゃいられない。
どうせ知り合いなんていないんだから、どう思われたっていい。
ははーっ、とドラマに出てくるような深々としたお辞儀をしながら、チラリと彼の表情をうかがう。
「リナさん、頭をあげてください。まぁ、僕も何が何だか混乱していて……よくわかりませんが、あなたに死なれると寝覚めが悪くなりそうだ。僕の客人として、しばらくの間、滞在を許しましょう」
「ははーっ、ありがたき幸せ」
またまた平伏してみる。
「リナさん、あなた、何をやっているんですか? そのありがたき幸せって何ですか?」
「あっ、いえ、普段有り得ないことが起こっているものだから、ちょっとドラマというか時代劇というか、いつもと違ったことしたら、『ハーイ、カット』と元の世界へ戻れないかなって、試してみました。訳がわからなかったですよね。えへへっ」
冷静になると、私ってば何をやってるんだと恥ずかしくなり、顔に熱がたまっていく。
なりふり構わなさすぎた?
きっと真っ赤な顔になっているんだろうなと両手で顔を隠した。
「ところでケント様はこんな明るい時間にベッドに居て大丈夫なんですか?お仕事は?もしかして病気でお休み中のところでしたか?」
「えっ、いや、仕事、仕事は、そう、そうだ今は休暇中で……」
「病気休暇ということですか?顔色が悪いですもんね。では、私が看病します。お世話をします。それが仕事ってことで、ここに置いていただけませんか?」
「病気……病気というか、病気ではないというか……」
「何か言えない事情があるんですか?まずは体調に支障がない範囲で身だしなみを整えさせてください。水、タオル、ブラシが必要ですね。ベルを鳴らせば誰かが持ってきてくれますかね?」
チリンチリン
彼の返事を聞く前に、ベルを手に取り鳴らしてしまった私。
ベルを握った私へと伸ばされた彼の手は、力なくおりていった。
ガックリと肩を落とした後、顔を手で覆い、床に座りこんだ彼を見て、私はやらかしてしまったのかと気がついた。
「あっ、ベルを鳴らしちゃまずかったですか?ごめんなさい」
ベルの音を聞き、やってきた使用人が私の姿に悲鳴をあげ、次々と使用人と思われる人々が集まってきた。
「ケント様、この女性は……いったいどういうことですか?何が起こっているんですか?」と困惑気味に問う男性。
「ケント様も隅に置けませんね」
「いつの間に女性を?」
「それにしても変な格好じゃない?」
「どうやってこの部屋に?」
小声で話し込む女性たち。
みな使用人と思われる服を着ている。
使用人たちはケント様に対し、あまり緊張することもなく自然に接しているようだ。
威厳がないとも言えるが、私は高圧的な人は苦手なので、そういったところは安心できそう。
「あー、これは……僕が彼女を招き入れたわけでも、彼女が忍び込んだわけでもないんだ。ついさっき突然彼女が部屋に現れたんだよ。ほら、彼女は見たこともない格好をしているだろう?こんな姿で屋敷に出入りすればさすがに目立つはずで……」
ケント様が小さな声で自信なさそうに、ボソボソと説明をする。
「はい、確かに初めて見る格好ですね……」
使用人の中でもリーダー格と思われる男性が呟いた。
「とりあえず、しばらくの間 彼女のことは僕の客人として、接して欲しい。彼女に部屋と着るものを」
「「「はい、かしこまりました」」」
バタバタと動き出す人たち。
私はケント様の客人として、この屋敷にしばらくは置いてもらえることになった。
やったわっ、衣食住を確保できた!
そう、まさに窮地だよね。
だって知らない場所に、ひとりポツンと来てしまったんだもん。
まさかベッドで眠ろうとしていたら、別の世界へ来ちゃってたなんて誰が予想できる?
できないよね……
私はTシャツに短パンといういつもの部屋着スタイルで、眠ろうとしていたから、当然すっぴんよ。
持ち物なんて何もない。
まぁ、お金や携帯があっても、この世界では何の助けにもならなかったかもしれないけれど……
手ぶらで出かけたことないから、何だか落ち着かない。
私って、一文無し、家無しよ。
食べるものだって何も持っていない。
これって……かなりまずい状態じゃないかな。
まぁ、なぜだかわからないけれど、言葉が通じるのがせめてもの救いかな。
今、私がいる部屋には見知らぬ男性。
私が彼の部屋に勝手に入ってしまった状態なわけだけど、私だって、どうしてこうなったのかわからない。
Tシャツに短パン姿の私を『娼婦みたい』だなんて、ふざけたことをいう男だけど、悪い人ではなさそう。
ただ髪も髭もボサボサで、顔色も青白いし、何だかやつれてる感じで、病気なのかな?
この人は大丈夫なんだろうかと心配になる。
まぁ、私自身がとんでもない状況にあるわけで、今は人の心配よりも自分の心配だよね。
今、頼れるのは目の前の男だけ。
日本ではなかなか見ない色彩だな。
キレイな金髪にスカイブルーの瞳。
とりあえずは状況を説明して、仕事と住む場所が確保できるまで、家に置いてもらえるように頼んでみよう。
「あのー、ケント様? 私をしばらくここに置いてくださいっ。働きますから。
私はひとり遠い場所から飛ばされてきたようで、何も持っていません。住む場所も仕事もお金も。頼れる知り合いもいません。
あなたに見捨てられると、生きていけません。どうか、どうか、ここに置いてください」
彼の良心に訴えかけるように、弱々しく訴えてみる。
私は何としてもここに置いてもらわないと困るのだ。
なりふりなんて構っちゃいられない。
どうせ知り合いなんていないんだから、どう思われたっていい。
ははーっ、とドラマに出てくるような深々としたお辞儀をしながら、チラリと彼の表情をうかがう。
「リナさん、頭をあげてください。まぁ、僕も何が何だか混乱していて……よくわかりませんが、あなたに死なれると寝覚めが悪くなりそうだ。僕の客人として、しばらくの間、滞在を許しましょう」
「ははーっ、ありがたき幸せ」
またまた平伏してみる。
「リナさん、あなた、何をやっているんですか? そのありがたき幸せって何ですか?」
「あっ、いえ、普段有り得ないことが起こっているものだから、ちょっとドラマというか時代劇というか、いつもと違ったことしたら、『ハーイ、カット』と元の世界へ戻れないかなって、試してみました。訳がわからなかったですよね。えへへっ」
冷静になると、私ってば何をやってるんだと恥ずかしくなり、顔に熱がたまっていく。
なりふり構わなさすぎた?
きっと真っ赤な顔になっているんだろうなと両手で顔を隠した。
「ところでケント様はこんな明るい時間にベッドに居て大丈夫なんですか?お仕事は?もしかして病気でお休み中のところでしたか?」
「えっ、いや、仕事、仕事は、そう、そうだ今は休暇中で……」
「病気休暇ということですか?顔色が悪いですもんね。では、私が看病します。お世話をします。それが仕事ってことで、ここに置いていただけませんか?」
「病気……病気というか、病気ではないというか……」
「何か言えない事情があるんですか?まずは体調に支障がない範囲で身だしなみを整えさせてください。水、タオル、ブラシが必要ですね。ベルを鳴らせば誰かが持ってきてくれますかね?」
チリンチリン
彼の返事を聞く前に、ベルを手に取り鳴らしてしまった私。
ベルを握った私へと伸ばされた彼の手は、力なくおりていった。
ガックリと肩を落とした後、顔を手で覆い、床に座りこんだ彼を見て、私はやらかしてしまったのかと気がついた。
「あっ、ベルを鳴らしちゃまずかったですか?ごめんなさい」
ベルの音を聞き、やってきた使用人が私の姿に悲鳴をあげ、次々と使用人と思われる人々が集まってきた。
「ケント様、この女性は……いったいどういうことですか?何が起こっているんですか?」と困惑気味に問う男性。
「ケント様も隅に置けませんね」
「いつの間に女性を?」
「それにしても変な格好じゃない?」
「どうやってこの部屋に?」
小声で話し込む女性たち。
みな使用人と思われる服を着ている。
使用人たちはケント様に対し、あまり緊張することもなく自然に接しているようだ。
威厳がないとも言えるが、私は高圧的な人は苦手なので、そういったところは安心できそう。
「あー、これは……僕が彼女を招き入れたわけでも、彼女が忍び込んだわけでもないんだ。ついさっき突然彼女が部屋に現れたんだよ。ほら、彼女は見たこともない格好をしているだろう?こんな姿で屋敷に出入りすればさすがに目立つはずで……」
ケント様が小さな声で自信なさそうに、ボソボソと説明をする。
「はい、確かに初めて見る格好ですね……」
使用人の中でもリーダー格と思われる男性が呟いた。
「とりあえず、しばらくの間 彼女のことは僕の客人として、接して欲しい。彼女に部屋と着るものを」
「「「はい、かしこまりました」」」
バタバタと動き出す人たち。
私はケント様の客人として、この屋敷にしばらくは置いてもらえることになった。
やったわっ、衣食住を確保できた!
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