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第14話 誘われました
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私と街へ出かけたのをきっかけに、ケント様は少しずつではあるが、外へ出かけるようになってきた。
だいたいはアレン様と共に領地へ。
そしてごくたまに、友人に会いに王都へ。
ケント様がひきこもったばかりの頃、心配してデリーノ領まで会いに来てくれていた友人たちがいるらしい。
ケント様が外へ出ていくことはすごくいいことで、必要なことだとわかっているのだ。
それでも、この世界に来てからずっと一緒に居たので……彼が邸内に居ないのは寂しいし、胸がザワザワして不安になる。
同じ部屋にいなくてもいい。
会いに行けば、すぐ会える場所に彼がいる。
ただそれだけで安心できる。
ケント様がいない不安で、暇だ。
いつもケント様と食事をし、ケント様の仕事を手伝い、ケント様とダンスを練習している。
考えてみたら、私はケント様がいない時は何をしているのだろう……
湯浴みしたり、眠ったり、ソファーでゴロゴロしたり、寛いでいる。
一日中ただぼーっとするのも、それはそれでキツそうだ。
それに何もせず、一日を終えるのはすごくもったいない気がする。
今日は何をしようかしらと考えていると、ロナが大きなかごを抱えてやってきた。
「リナ様、ケント様が不在で何をすればいいかと困っていませんか?いろいろお持ちしてみました。気になるものがみつかるといいのですが……」
ロナはドンッと重そうなかごをテーブルにのせると、かごの中からあれこれと出し、テーブルに並べていく。
「まずは刺繍セットと図案集。裁縫セットもありますよ。茶会や舞踏会のマナー本。アマリア王国の歴史本。女性に今 人気の恋愛小説。男性に人気の冒険小説も念の為、お持ちしました。どうでしょう?」
「ロナ、さすがだわ。本当によく気が利くのね。あなたは侍女の鏡だわ」
「いや~、そこまで誉められることでは……」
彼女は頭に手をやり、視線を反らした。
ロナでも照れることがあるんだな。
よく見ると、ほんの少し頬が赤いように思う。
「私は手先があまり器用じゃないんだけど、私にもできる簡単な刺繍があるのかな?」
「もちろん、もちろん、ありますよ。刺繍されるのなら、ハンカチに刺繍してケント様にプレゼントしてはどうでしょう?」
「いい!すごくいいアイデアよ!街でガラスの小物入れとポシェットをいただいたし、何か返せたらと考えていたのよ」
「そうですか。では、まずは刺繍するハンカチを選びましょう。今からお持ちしますので、図案集を参考に図案を考えてはいかがでしょう?」
「いいわね。そうする」
早速、私が図案集にパラパラと目を通している間に、ロナはスーッと部屋を出ていく。
刺繍したのは、小学生の頃に家庭科の授業でやったのが最後。
それから特に興味なかったから……
難しいものはできないし、図案集の最後に載っている飾り文字はどうだろうか。
ロナに確認して、ケント様のイニシャルとか何か縁のある文字を……このくらいなら私にもできそう。
トントン、「ハンカチをお持ちしました」
「ロナ、早かったのね。ありがとう」
「はい、ハンカチは奥様が刺繍してプレゼントに添えることがある為、いろんな色のものを在庫として置いているんですよ」
「ジョセフィーヌ様の?私が使わせていただいて大丈夫?」
「はい、許可をいただきました。奥様から伝言を預かりました。『何枚使ってもいいから遠慮せずに使ってね』とのことです」
「まぁありがたいわ。では遠慮なく使わせていただこう」
真っ白なハンカチ、淡いブルーのハンカチ、淡いイエローのハンカチなど淡い色が多い。
そんな中、爽やかなスカイブルーのハンカチに目がとまった。
ケント様の瞳の色よりも薄いけれど、これが一番彼を連想させる色だわ。
「ロナ、決めたわ。このスカイブルーのハンカチを使わせてもらう」
「いいですね。ケント様の色ですね。では練習はこのハンカチでいかがですか?」
「そうね。一度練習してから、本番に望むわ。ケント様に縁のある飾り文字はどれかな?」
図案集の飾り文字が載ったページを広げ、ロナに指差してもらう。
それからまずは練習。
用意してもらった布に何度も飾りも鯖を刺繍する。
「ロナ、これ、うまくできたんじゃない?」
「リナ様、やりましたね!次は本番にしますか?」
「もう少し練習してから、後日ゆっくり本番に挑むわ」
「そうですね。それがいいですね」
それからしばらくの間、私は休憩をはさみながら刺繍の練習に励んだ。
***
ケント様が王都から戻った翌日。
今日、ケント様は邸内でゆっくりと過ごすそうだ。
久しぶりにケント様とダンスホールで踊っていると、楽しいなぁ、やっぱりかっこいいなぁと思う。
踊り疲れて、イスに座って休憩していると、
「リナ、今度 舞踏会へ一緒に行ってくれないか?」とケント様に誘われた。
「舞踏会?舞踏会へ私が行って大丈夫なの?」
「うん、友人が主催する気楽な会だから大丈夫だよ」
「でもドレスがまだ届いていないよ。間に合うかな?もしドレスが間に合うのなら、行きたい、行ってみたい!」
舞踏会へ自分が参加するなんて……まるで夢みたい。
「ドレスなら、明後日に届く予定だと聞いたよ。だから、間に合うはずだよ。アクセサリーは母が貸してくれることになってる」
「えっ、ジョセフィーヌ様のアクセサリーを貸していただくの?」
伯爵夫人のアクセサリーを私が身に付けるなんてびっくりだ。
でも舞踏会に出るのなら、アクセサリーは必要なのだろう。
とても自分で用意することはできないし、貸していただくしかないか……
「母が若い頃のアクセサリーで、今はもう使ってないから使って欲しいと言ってたよ」
ジョセフィーヌ様のアクセサリーを貸していただくなんて、ドキドキするけれど、嬉しい。
ケント様との舞踏会、楽しみだ。
だいたいはアレン様と共に領地へ。
そしてごくたまに、友人に会いに王都へ。
ケント様がひきこもったばかりの頃、心配してデリーノ領まで会いに来てくれていた友人たちがいるらしい。
ケント様が外へ出ていくことはすごくいいことで、必要なことだとわかっているのだ。
それでも、この世界に来てからずっと一緒に居たので……彼が邸内に居ないのは寂しいし、胸がザワザワして不安になる。
同じ部屋にいなくてもいい。
会いに行けば、すぐ会える場所に彼がいる。
ただそれだけで安心できる。
ケント様がいない不安で、暇だ。
いつもケント様と食事をし、ケント様の仕事を手伝い、ケント様とダンスを練習している。
考えてみたら、私はケント様がいない時は何をしているのだろう……
湯浴みしたり、眠ったり、ソファーでゴロゴロしたり、寛いでいる。
一日中ただぼーっとするのも、それはそれでキツそうだ。
それに何もせず、一日を終えるのはすごくもったいない気がする。
今日は何をしようかしらと考えていると、ロナが大きなかごを抱えてやってきた。
「リナ様、ケント様が不在で何をすればいいかと困っていませんか?いろいろお持ちしてみました。気になるものがみつかるといいのですが……」
ロナはドンッと重そうなかごをテーブルにのせると、かごの中からあれこれと出し、テーブルに並べていく。
「まずは刺繍セットと図案集。裁縫セットもありますよ。茶会や舞踏会のマナー本。アマリア王国の歴史本。女性に今 人気の恋愛小説。男性に人気の冒険小説も念の為、お持ちしました。どうでしょう?」
「ロナ、さすがだわ。本当によく気が利くのね。あなたは侍女の鏡だわ」
「いや~、そこまで誉められることでは……」
彼女は頭に手をやり、視線を反らした。
ロナでも照れることがあるんだな。
よく見ると、ほんの少し頬が赤いように思う。
「私は手先があまり器用じゃないんだけど、私にもできる簡単な刺繍があるのかな?」
「もちろん、もちろん、ありますよ。刺繍されるのなら、ハンカチに刺繍してケント様にプレゼントしてはどうでしょう?」
「いい!すごくいいアイデアよ!街でガラスの小物入れとポシェットをいただいたし、何か返せたらと考えていたのよ」
「そうですか。では、まずは刺繍するハンカチを選びましょう。今からお持ちしますので、図案集を参考に図案を考えてはいかがでしょう?」
「いいわね。そうする」
早速、私が図案集にパラパラと目を通している間に、ロナはスーッと部屋を出ていく。
刺繍したのは、小学生の頃に家庭科の授業でやったのが最後。
それから特に興味なかったから……
難しいものはできないし、図案集の最後に載っている飾り文字はどうだろうか。
ロナに確認して、ケント様のイニシャルとか何か縁のある文字を……このくらいなら私にもできそう。
トントン、「ハンカチをお持ちしました」
「ロナ、早かったのね。ありがとう」
「はい、ハンカチは奥様が刺繍してプレゼントに添えることがある為、いろんな色のものを在庫として置いているんですよ」
「ジョセフィーヌ様の?私が使わせていただいて大丈夫?」
「はい、許可をいただきました。奥様から伝言を預かりました。『何枚使ってもいいから遠慮せずに使ってね』とのことです」
「まぁありがたいわ。では遠慮なく使わせていただこう」
真っ白なハンカチ、淡いブルーのハンカチ、淡いイエローのハンカチなど淡い色が多い。
そんな中、爽やかなスカイブルーのハンカチに目がとまった。
ケント様の瞳の色よりも薄いけれど、これが一番彼を連想させる色だわ。
「ロナ、決めたわ。このスカイブルーのハンカチを使わせてもらう」
「いいですね。ケント様の色ですね。では練習はこのハンカチでいかがですか?」
「そうね。一度練習してから、本番に望むわ。ケント様に縁のある飾り文字はどれかな?」
図案集の飾り文字が載ったページを広げ、ロナに指差してもらう。
それからまずは練習。
用意してもらった布に何度も飾りも鯖を刺繍する。
「ロナ、これ、うまくできたんじゃない?」
「リナ様、やりましたね!次は本番にしますか?」
「もう少し練習してから、後日ゆっくり本番に挑むわ」
「そうですね。それがいいですね」
それからしばらくの間、私は休憩をはさみながら刺繍の練習に励んだ。
***
ケント様が王都から戻った翌日。
今日、ケント様は邸内でゆっくりと過ごすそうだ。
久しぶりにケント様とダンスホールで踊っていると、楽しいなぁ、やっぱりかっこいいなぁと思う。
踊り疲れて、イスに座って休憩していると、
「リナ、今度 舞踏会へ一緒に行ってくれないか?」とケント様に誘われた。
「舞踏会?舞踏会へ私が行って大丈夫なの?」
「うん、友人が主催する気楽な会だから大丈夫だよ」
「でもドレスがまだ届いていないよ。間に合うかな?もしドレスが間に合うのなら、行きたい、行ってみたい!」
舞踏会へ自分が参加するなんて……まるで夢みたい。
「ドレスなら、明後日に届く予定だと聞いたよ。だから、間に合うはずだよ。アクセサリーは母が貸してくれることになってる」
「えっ、ジョセフィーヌ様のアクセサリーを貸していただくの?」
伯爵夫人のアクセサリーを私が身に付けるなんてびっくりだ。
でも舞踏会に出るのなら、アクセサリーは必要なのだろう。
とても自分で用意することはできないし、貸していただくしかないか……
「母が若い頃のアクセサリーで、今はもう使ってないから使って欲しいと言ってたよ」
ジョセフィーヌ様のアクセサリーを貸していただくなんて、ドキドキするけれど、嬉しい。
ケント様との舞踏会、楽しみだ。
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