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第67話 ようやく……
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バルバラ領の視察を終えた報告の場で、デリーノへの帰還とケント様との婚約の許可がおりた。
それからの1週間は、残りの講義を受けたり、王妃様、王太子妃様との交流を楽しんだ。
またハンバーグやスクワットの情報が漏れていて、厨房でハンバーグを作り、みんなに食べてもらったり、スクワットなど簡単なトレーニングの講習会を催したりした。
ドーラが報告したのかな~。
ヘンリー王子には、ハンバーグをパンにはさんだハンバーガーというメニューをおすすめしておいた。
これで、近いうちにバルバラは気軽にハンバーガーが食べられる街になることだろう。
ハンバーグ、食べたいけれど、作るのが大変だもん。
いつでも食べれる場所があると嬉しいなと思って。
バルバラがもっと近ければいいんだけどね。
王宮で過ごす最終日には、駆け込みのようにチャーリー王子から視察への同行要請が来た。
チャーリー王子は第二王子だ。
私はあまり関わったことがないのだが……
どうも婚約者セリア様からの依頼があったそう。
ヘンリー王子の婚約者ダイアナ様が暮らす領地バルバラへ行った話を聞きつけたセリア様がそれならばうちにもと言い出したそうだ。
デリーノでの生活が落ち着いてから、視察に向かう日を決めるという話になった。
新たな土地で新たな出会いが待っている。
美味しい食べ物にも出会えるといいな。
そして、いよいよデリーノへ帰る日がやってきた。
ロナとドーラは抱き合って泣いている。
王宮に来てからというものずっと一緒だったものね。
デリーノは王都から近い街。
次の視察もほぼ決まっているし、またすぐ訪れることになるはずだ。
護衛のハンスにも今までのお礼を伝えると、
「俺もあちこち行って楽しかったです。それに美味しい料理をたくさんごちそうになりました。お元気で」
と爽やかな挨拶が返ってきた。
ハンスは今までいろいろな人の護衛についてきたのだろう。
別れに慣れている感じで、さっぱりしてる。
実に爽やかだ。
厨房、庭園などに立ち寄りながら、今までお世話になった方々へお別れの挨拶をしながら、馬車乗り場へ向かう。
みなさん笑顔で送り出してくれる。
王宮で過ごした1年3ヶ月。
本当にいろいろなことがあった。
初日に有無を言わせず連れ回されたこと。
初めて王族の方々に対面し、無言で食事をしたこと。
王妃様、王太子妃様とお茶を楽しんだこと。
講師の方々に少しずつ認められ、様々なことわ学んだこと。
次々と思い浮かんでくる。
最後に、王族の方々へご挨拶に向かう。
みなさん忙しい方々なのだが、王太子妃アリエラ様と宰相様が来てくださった。
「リナさん、あなたに会えてよかったわ。またお茶を楽しみましょうね。お義母様から招待状が届くと思うわ」
「はい、王太子妃様、楽しみにしております」
「今までよく頑張りましたね。この短期間にあなたはどの貴族家に嫁いでもいいほどのものを身につけましたよ」
「宰相様、ありがとうございます。そう言っていただけると、安心してケント様に嫁ぐことができます」
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
馬車乗り場には、既に馬車が用意されていた。
紋章がついていないとても乗り心地がいい馬車。
護衛の方々も馬で並走してくれている。
ロナは、納得がいかないようで、機嫌が悪く、ぶつぶつと独り言を言っている。
「ケント様、いったい何をしてるんでしょうかね、ここは自ら迎えに来るべきところでしょうに」
「仕方がないわ。ケント様はアレン様から仕事の引き継ぎを受けているところだもの。きっと忙しいのよ」
「リナ様、申し訳ございません。つい心の声が出てしまっておりましたね」
「あー、うん。いいのよ」
苦笑いしてしまう。
ロナは私を思って、怒ってくれているのだとわかっている。
ついつい口に出てしまっただけなのだ。
私も、期待していた。
ケント様が王宮まで迎えに来てくれることを。
気まずい雰囲気が流れる中、
『ヒヒーン』
馬たちが騒ぎだした。
かなり興奮しているようだ。
「襲撃です」
外に配置された護衛から言葉が飛ぶ。
ロナが私を馬車のイスの下にある隙間へ入るよう促し、私が見えないように、布を被せる。
「ロナ、だめよ。あなたも向かいのイスに隠れて」
「リナ様、ご心配には及びません。私は訓練を受けております。いざとなれば戦えます。まずは護衛を信じましょう」
「ええ、ええ」
「私が声をかけるまで、何があっても静かにしていてくださいね」
「わかったわ」
襲撃と言っていたのに、剣がぶつかる金属音が聞こえてこない。
「うわっ」「おっ」「あつっ」と人々の声だけが響く。
それがとても不気味だ。
だんだん空気が暖かくなり、焦げ臭い匂いが漂いとパチバチと木が燃えるような音が聞こえてきた。
火? 火だわ。
火魔法で攻撃を受けているんだわ。
護衛が応戦しているはずだが、馬車まで攻撃を受けてしまったら……
ロナの洗浄魔法で応戦するのは、難しいだろう。
だんだんと恐怖が押し寄せ、心臓がパクバクと大きな音をたてる。
ケント様、ケント様、助けて。
心の中で強く、強く願う。
それからの1週間は、残りの講義を受けたり、王妃様、王太子妃様との交流を楽しんだ。
またハンバーグやスクワットの情報が漏れていて、厨房でハンバーグを作り、みんなに食べてもらったり、スクワットなど簡単なトレーニングの講習会を催したりした。
ドーラが報告したのかな~。
ヘンリー王子には、ハンバーグをパンにはさんだハンバーガーというメニューをおすすめしておいた。
これで、近いうちにバルバラは気軽にハンバーガーが食べられる街になることだろう。
ハンバーグ、食べたいけれど、作るのが大変だもん。
いつでも食べれる場所があると嬉しいなと思って。
バルバラがもっと近ければいいんだけどね。
王宮で過ごす最終日には、駆け込みのようにチャーリー王子から視察への同行要請が来た。
チャーリー王子は第二王子だ。
私はあまり関わったことがないのだが……
どうも婚約者セリア様からの依頼があったそう。
ヘンリー王子の婚約者ダイアナ様が暮らす領地バルバラへ行った話を聞きつけたセリア様がそれならばうちにもと言い出したそうだ。
デリーノでの生活が落ち着いてから、視察に向かう日を決めるという話になった。
新たな土地で新たな出会いが待っている。
美味しい食べ物にも出会えるといいな。
そして、いよいよデリーノへ帰る日がやってきた。
ロナとドーラは抱き合って泣いている。
王宮に来てからというものずっと一緒だったものね。
デリーノは王都から近い街。
次の視察もほぼ決まっているし、またすぐ訪れることになるはずだ。
護衛のハンスにも今までのお礼を伝えると、
「俺もあちこち行って楽しかったです。それに美味しい料理をたくさんごちそうになりました。お元気で」
と爽やかな挨拶が返ってきた。
ハンスは今までいろいろな人の護衛についてきたのだろう。
別れに慣れている感じで、さっぱりしてる。
実に爽やかだ。
厨房、庭園などに立ち寄りながら、今までお世話になった方々へお別れの挨拶をしながら、馬車乗り場へ向かう。
みなさん笑顔で送り出してくれる。
王宮で過ごした1年3ヶ月。
本当にいろいろなことがあった。
初日に有無を言わせず連れ回されたこと。
初めて王族の方々に対面し、無言で食事をしたこと。
王妃様、王太子妃様とお茶を楽しんだこと。
講師の方々に少しずつ認められ、様々なことわ学んだこと。
次々と思い浮かんでくる。
最後に、王族の方々へご挨拶に向かう。
みなさん忙しい方々なのだが、王太子妃アリエラ様と宰相様が来てくださった。
「リナさん、あなたに会えてよかったわ。またお茶を楽しみましょうね。お義母様から招待状が届くと思うわ」
「はい、王太子妃様、楽しみにしております」
「今までよく頑張りましたね。この短期間にあなたはどの貴族家に嫁いでもいいほどのものを身につけましたよ」
「宰相様、ありがとうございます。そう言っていただけると、安心してケント様に嫁ぐことができます」
「本当にお世話になりました。ありがとうございました」
馬車乗り場には、既に馬車が用意されていた。
紋章がついていないとても乗り心地がいい馬車。
護衛の方々も馬で並走してくれている。
ロナは、納得がいかないようで、機嫌が悪く、ぶつぶつと独り言を言っている。
「ケント様、いったい何をしてるんでしょうかね、ここは自ら迎えに来るべきところでしょうに」
「仕方がないわ。ケント様はアレン様から仕事の引き継ぎを受けているところだもの。きっと忙しいのよ」
「リナ様、申し訳ございません。つい心の声が出てしまっておりましたね」
「あー、うん。いいのよ」
苦笑いしてしまう。
ロナは私を思って、怒ってくれているのだとわかっている。
ついつい口に出てしまっただけなのだ。
私も、期待していた。
ケント様が王宮まで迎えに来てくれることを。
気まずい雰囲気が流れる中、
『ヒヒーン』
馬たちが騒ぎだした。
かなり興奮しているようだ。
「襲撃です」
外に配置された護衛から言葉が飛ぶ。
ロナが私を馬車のイスの下にある隙間へ入るよう促し、私が見えないように、布を被せる。
「ロナ、だめよ。あなたも向かいのイスに隠れて」
「リナ様、ご心配には及びません。私は訓練を受けております。いざとなれば戦えます。まずは護衛を信じましょう」
「ええ、ええ」
「私が声をかけるまで、何があっても静かにしていてくださいね」
「わかったわ」
襲撃と言っていたのに、剣がぶつかる金属音が聞こえてこない。
「うわっ」「おっ」「あつっ」と人々の声だけが響く。
それがとても不気味だ。
だんだん空気が暖かくなり、焦げ臭い匂いが漂いとパチバチと木が燃えるような音が聞こえてきた。
火? 火だわ。
火魔法で攻撃を受けているんだわ。
護衛が応戦しているはずだが、馬車まで攻撃を受けてしまったら……
ロナの洗浄魔法で応戦するのは、難しいだろう。
だんだんと恐怖が押し寄せ、心臓がパクバクと大きな音をたてる。
ケント様、ケント様、助けて。
心の中で強く、強く願う。
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