2 / 3
偉大なる魔王様
しおりを挟む
「魔王様、魔王様。どこにいらっしゃるのですか。」
黒猫の姿をした魔物が静かな魔王の姿を探して静かな城を見回る。
この黒猫こそが、魔王の重臣であり忠実な僕である。
「あぁ、魔王様。そちらにいらっしゃったのですか。今までどこにおられたのですか。」
ようやく隅にいるのを見つける黒猫だったが、呼びかけられた魔王の動きがおかしいことに気がついた。
「魔王様?今、何かを隠しませんでしたか。」
「何のことだ。」
「とぼけないでください。明らかに後ろに何かを隠しているではありませんか。ほら、出してください。」
魔王の後ろの何かがもぞもぞと動いた。
まさかと思い黒猫は魔王に大人しく後ろに隠したものを見せるように言ってみれば、でてきたのは豪華な服を着た小さな少女だった。
「・・・魔王様、この娘は?どうみても姫君に見えるのですが。」
「人間界から連れてきた。気に入ったのでな。」
「また勝手に人間界に向かわれただけでなく、人間を連れてこられたのですか!それもよりによって王女を?」
「何が問題なのだ。我々に危害を加えるわけでもあるまい。」
「先代の魔王様は王女を誘拐したがゆえに勇者に封印されたようなものですよ!?それなのにまた連れさらってくるなんて。」
「誘拐ではない。この娘も承知の上だ。」
「承知の上と?」
好き好んでのこのこと魔界に来るような人間がいたとは信じられない。それも一国の王女たるものが。
しかし王女の態度を見てみれば、驚いたことにここに来て恐怖や不安といったものはないようだ。
根性が座っているというよりは世間知らずなのだろうと黒猫は悟った。
「しかし、王女が魔王に連れ出されたのなれば人間共が騒ぎ出すに違いありません。まだこちらも状況が安定してないのですから、返してきてください。」
「断る。そもそも、先代も姫を連れてきたのであろう?私も同じことをして何が悪い。」
「う・・・そ、それは。」
痛いところをつかれた。
今の魔王様は魔界で一番強いとはいえまだ若い。それゆえに先代から重臣をつとめる黒猫が世話係のような形でそのまま役目を引き継いでいた。その先代の魔王を否定するようなことはできない。
「仕方ありませんね、承知いたしました。ただ、ちゃんと面倒はみてくださいね。下手なことをされても困るので、私も監視しますが。」
「わかった。そのようにしよう。」
「ありがとうございます、黒猫さん。これからよろしくお願いします。」
黒猫にとっては礼を言われる筋合いなどなかった。
どうせ、魔王にとってはペットのようなものなのだろう。すぐにでも飽きられればいいのにと投げやりな気持ちだった。
「それで、どうだ姫。この世界は。」
「すごく気に入りました。本当に私のいた世界とは違うのですね。暗闇にいくつもの明かりが照らされて・・・とても綺麗です。」
「そうか、それはよかった。」
会話を聞きながら黒猫は呆れたように小さくため息をついた。今回の魔王が魔王なら姫も姫かと。
「よっぽどの変わり者だな。」
魔界を綺麗と言うなどと。
黒猫の姿をした魔物が静かな魔王の姿を探して静かな城を見回る。
この黒猫こそが、魔王の重臣であり忠実な僕である。
「あぁ、魔王様。そちらにいらっしゃったのですか。今までどこにおられたのですか。」
ようやく隅にいるのを見つける黒猫だったが、呼びかけられた魔王の動きがおかしいことに気がついた。
「魔王様?今、何かを隠しませんでしたか。」
「何のことだ。」
「とぼけないでください。明らかに後ろに何かを隠しているではありませんか。ほら、出してください。」
魔王の後ろの何かがもぞもぞと動いた。
まさかと思い黒猫は魔王に大人しく後ろに隠したものを見せるように言ってみれば、でてきたのは豪華な服を着た小さな少女だった。
「・・・魔王様、この娘は?どうみても姫君に見えるのですが。」
「人間界から連れてきた。気に入ったのでな。」
「また勝手に人間界に向かわれただけでなく、人間を連れてこられたのですか!それもよりによって王女を?」
「何が問題なのだ。我々に危害を加えるわけでもあるまい。」
「先代の魔王様は王女を誘拐したがゆえに勇者に封印されたようなものですよ!?それなのにまた連れさらってくるなんて。」
「誘拐ではない。この娘も承知の上だ。」
「承知の上と?」
好き好んでのこのこと魔界に来るような人間がいたとは信じられない。それも一国の王女たるものが。
しかし王女の態度を見てみれば、驚いたことにここに来て恐怖や不安といったものはないようだ。
根性が座っているというよりは世間知らずなのだろうと黒猫は悟った。
「しかし、王女が魔王に連れ出されたのなれば人間共が騒ぎ出すに違いありません。まだこちらも状況が安定してないのですから、返してきてください。」
「断る。そもそも、先代も姫を連れてきたのであろう?私も同じことをして何が悪い。」
「う・・・そ、それは。」
痛いところをつかれた。
今の魔王様は魔界で一番強いとはいえまだ若い。それゆえに先代から重臣をつとめる黒猫が世話係のような形でそのまま役目を引き継いでいた。その先代の魔王を否定するようなことはできない。
「仕方ありませんね、承知いたしました。ただ、ちゃんと面倒はみてくださいね。下手なことをされても困るので、私も監視しますが。」
「わかった。そのようにしよう。」
「ありがとうございます、黒猫さん。これからよろしくお願いします。」
黒猫にとっては礼を言われる筋合いなどなかった。
どうせ、魔王にとってはペットのようなものなのだろう。すぐにでも飽きられればいいのにと投げやりな気持ちだった。
「それで、どうだ姫。この世界は。」
「すごく気に入りました。本当に私のいた世界とは違うのですね。暗闇にいくつもの明かりが照らされて・・・とても綺麗です。」
「そうか、それはよかった。」
会話を聞きながら黒猫は呆れたように小さくため息をついた。今回の魔王が魔王なら姫も姫かと。
「よっぽどの変わり者だな。」
魔界を綺麗と言うなどと。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる