ばか狼(いぬ)が迎えに参りました。

12時のトキノカネ

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27.異世界は長閑です。

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自分に与えられた部屋の窓からすみれは外の風景を眺めていた。
結局、お店の常連君が言った”こっち”はすみれからすれば異世界だった。
だけれどすっごいはちゃめちゃな展開があるわけでもなく
魔王討伐に借り出されるだとか、聖女に祭り上げられて乙女ゲームのような展開!
となるわけでもなく言葉が通じないわけでもなく。
いたって不便なく普通に馴染んで、それなりに快適に暮らしている。
なんというか、生活面でのジェネレーションギャップというか水準の差はあまりない。
さすがに平成の科学の便利さはないが
上下水道は整備されているし、お風呂も快適で何時でも入れる。
そして食事も日本人の舌に合うおいしい食事だった。

窓から見える光景は山の麓にあるこの国の首都で、でも首都と言っても人口が密集して
いるわけでもなく、日本で言えば避暑地の別荘地。それも軽井沢と言うよりもっと涼しい場所
にこういう場所があってもおかしくないな、と思わせる光景だった。

家々は山へと続くゆるい傾斜に一つ一つがさほど大きくなくコテージのような木造の作りで、
近くで隣り合うこともなく距離を保って点在していて、
そこには肌寒いここの気候に合わせた煙突があり、煙が絶えず上っていた。

道路も見えるがコンクリートで整備された道路ではないがきちんと踏み固められているのか
でこぼこしている様子もない。

そんな街の風景の後ろには森があり、さらに遠くには山がそびえる。
まさに長閑、そういえる風景がどこまでも広がっていた。

「お食事を用意しました。召し上がられますか?」

コンコンとノックがされ、返事をすると食事を持ってきたと告げられる。
それにもうそんな時間かと時計を見て入室してもらうとカートに料理をのせて男性が入ってくる。
眼鏡をかけたすらりとした印象のある知的な男性だ。

「…ルジェロさん。ありがとうございます。」

イルバートの秘書をしている人らしい。すみれがお礼を言うと軽く頭を下げられる。
彼は無口でテーブルに黙々と料理を並べていく。

「冷めないうちにお召し上がりください。」

完璧に整えられた食卓にすみれは言われたとおりにすぐに口をつける。
マナーが気になるが、それよりもルジェロのいるだけで感じる威圧に
すみれは言うとおりにしてしまう。
スープを飲み込むとすぐに素材がいいとわかる上品で薫り高い濃厚な味が口に広がる。

「おいしい…。」

すみれは前世の記憶があるが、それを抜きにしてもこちらでの
至れり尽くせりの生活は快適と言ってよかった。
華美すぎない内装も、広すぎない室内も王の持ち物のはずなのに
どこか庶民的で温かみを感じる。懐かしさを覚える
すみれが住むよう与えられた部屋のある館はどこか
どこか、前世のすみれの住まいに雰囲気が似ていた。

その部屋にすみれは連れてこられてからすでに二日ほど滞在していた。





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