ばか狼(いぬ)が迎えに参りました。

12時のトキノカネ

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26. 初顔合わせ。

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無理をしなくていい。その言葉通りに目を閉じたすみれに周囲が合わせるように声を潜める。
気分は悪いままで良くはならず、頭が痛くてぐるぐるして吐き気がする。
それでもじっと耐えるほかなく、そうしてしばらくすると波も引いてきたのか少しだけ
まともに考えが回るくらいには治まった。

それまでに数回。頭の上に乗せられたタオルを変えられる。
人の気配は複数するが、それでもうるさい者は一人もいない。すみれを気遣う気配がうかがえ
それにすみれも気分が悪いなりにも申し訳なくなる。

タオルを変える、その仕草はやけに丁寧で慎重に思えた。
息も殺すように静かに、その配慮がこそばゆく感じる。それに答えるためにも、と
すみれは喋れる程度に回復したと思うとすぐに眼を開けて周囲を見た。

そこにはやはりすみれを見下ろす無数の目が合った。

その半分は見知らぬ人たち。その後ろにあまり親しくはないまでも知り合いがいたことに
すみれはホッとするが、同時に蘇る記憶に不穏さを抱く。

まだはっきりとしないが、誰かに後ろから掴まれたと思う。
そして口元を押さえられて…。

その記憶がすみれの中にサイレンのように響き渡り、身を硬くする。

後ろにいる彼が怒鳴ったのをすみれは覚えている。

薬品で眠らされて気分が悪いのとは違う茶白を見たままのすみれの顔色のない様子に
察しのいい一人が気づき、また一人が気づく。彼らの間で軽い頷きがあった。

「手荒に貴方様をこちらに招いてしまった非礼、心よりお詫びします。我らは月牙国の王、イルバートに仕える者です。私共の一人が短慮に走り貴方様をこちらへと無理に招いてしまいました。そのご無礼、ひらにお詫び申し上げます。」

知らない人間である二人が膝を折り、まるで王族にでもそうするが如くすみれに頭を下げる。
すみれは驚いて「やめて」と叫びそうになるが、その前に薬の所為で頭が痛み、寝かされていたベッドに逆戻りする。それを二人に慌てて支えられる。

「…、姫様、ごめんね」

その後ろで知っている顔であるバイト先のお店の常連客が何故かいてすみれに頭を下げる。
その彼が取り押さえているバイト仲間の茶白君はそっぽを向いているが…、状況がつかめない。

「…姫って?」
「あー…。すみれさん?ごめんなさい。こいつが暴走したの止められなかった」
「…あ、うん?」

耳があったら伏せている。そんな勢いで謝られてつい状況反射でそれを受け入れてしまうすみれ。

「で、今どんな状況なのかな?」

見知った彼にすみれは助けを求めた。

「この馬鹿が、連れてきちゃいけないかすみさんをこっち(異世界)に連れてきちゃったんだ」

こっち?ってどっち?



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