赤に咲く

12時のトキノカネ

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殆どない母の記憶の中でその言葉は印象的にレーシアの中で残っている

美しいゴールドの輪になったイヤリング。赤い口紅。自分と似た顔で似た赤髪の女性は若く美しい。彼女は優しい笑みでレーシアを見下ろして

夢で見るときの母は永遠に年をとらない。

そして

「私の恋人は夢のような人よ」

うっとりとしたような顔でレーシアを通して別の誰かを見る。

「貴方は彼の娘。私のとびっきりの宝物」

教会育ちの自分とは対極な、なんにでも奔放に生きた女性だったのだろう生命力あふれた彼女は跳びっきりの笑顔を見せてレーシアを抱きしめるのだ。

それが唯一といっていいレーシアの中での親という生き物。
その記憶。






頭が重い

目が覚めるときそのどんよりとした気分に一気に目覚めへの意欲を減退させたレーシアだが眠りすぎた意識は再度の眠りを望まないように浮上していく。
重い瞼がゆっくりと開く。泣きはらしたような目は薄くだけ開く。
その視界に動く影。

なんだろう。

レーシアの家に動物なんかいない。ペットを飼う余裕なんて貧乏なレーシアにはない。働かない頭でしばらくぼーとしていると影が動いて近づいてくる。
次第にはっきりしてくる影人間だと分かる。

「誰?」

「起きた?」

予想外の男性の声にレーシアは一気にベッドの上から飛び起きる。

なんでどうしてレーシアの家の中に男の人が?

しかも、顔を見せた男の顔は

「イツ…」

「おはよう、レーシア」

自分を地獄に突き落とした犯人だった。






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