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「ただいま! アズサ、調子はどう?」
「おかえり! 今日はタケヤの好きなクリームシチューを作ったよ。上手く出来たと思うんだけど……一緒に食べよ?」
「こらっ! また無理して……。でも、ありがとう。嬉しいよ! ご飯の準備してくるね!」
タケヤが帰ってきた!
……早速叱られてしまったけれど。
動画の中とは違う、私だけに向けられる笑顔。太陽のように眩しくて、満月のように美しい。何よりも愛おしく、自分の命よりも大切な宝物だ。
杖をついてベッドから立ち上がり、ワンテンポ遅れて動くチグハグな体でリビングへと向かう。転ばないように、慎重に。
「温めるのにもうしばらく時間がかかるし、日課を終わらせちゃったら?」
「……うん。そうしようかな」
私にとって辛い時間の1つ。ストレッチとマッサージだ。朝と夜に2回行う。
筋は硬く縮こまり、筋肉は麻痺で言うことを聞かない。足を開いて前屈しながら、太腿から順に揉みほぐしていく。
「くっ……。ぐうっ……」
まともな体だった頃には感じなかった耐え難い痛みに襲われる。焼けるような、電流が走るような、無数の針で刺されているかのような。
でも、これをやらなければ体の可動域が狭まり、そのうち動く事すら難しくなってしまう。
私が今の私を保つ為には欠かせない。これ以上、タケヤに迷惑をかけないように。
「ねえ、アズサ?」
「ん? どうしたの?」
「今日さ、一緒にお風呂入ろうよ」
「……いいけど」
彼はたまに意地悪をする。
そんなところもたまらなく好き。
「おかえり! 今日はタケヤの好きなクリームシチューを作ったよ。上手く出来たと思うんだけど……一緒に食べよ?」
「こらっ! また無理して……。でも、ありがとう。嬉しいよ! ご飯の準備してくるね!」
タケヤが帰ってきた!
……早速叱られてしまったけれど。
動画の中とは違う、私だけに向けられる笑顔。太陽のように眩しくて、満月のように美しい。何よりも愛おしく、自分の命よりも大切な宝物だ。
杖をついてベッドから立ち上がり、ワンテンポ遅れて動くチグハグな体でリビングへと向かう。転ばないように、慎重に。
「温めるのにもうしばらく時間がかかるし、日課を終わらせちゃったら?」
「……うん。そうしようかな」
私にとって辛い時間の1つ。ストレッチとマッサージだ。朝と夜に2回行う。
筋は硬く縮こまり、筋肉は麻痺で言うことを聞かない。足を開いて前屈しながら、太腿から順に揉みほぐしていく。
「くっ……。ぐうっ……」
まともな体だった頃には感じなかった耐え難い痛みに襲われる。焼けるような、電流が走るような、無数の針で刺されているかのような。
でも、これをやらなければ体の可動域が狭まり、そのうち動く事すら難しくなってしまう。
私が今の私を保つ為には欠かせない。これ以上、タケヤに迷惑をかけないように。
「ねえ、アズサ?」
「ん? どうしたの?」
「今日さ、一緒にお風呂入ろうよ」
「……いいけど」
彼はたまに意地悪をする。
そんなところもたまらなく好き。
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