4 / 67
絶望的な滑舌
しおりを挟む
スキル『絶望的な滑舌』を授かったみたいだ。
ヒューコンは、常に体の状態を監視していて、重大な変化が起こった時には自動で教えてくれる。
その機能によって、どんなスキルを授かったのかが分かるのだが、俺が獲得したのは滑舌が悪くなるだけの大ハズレスキルだった。
勇太:『絶望的な滑舌』ってスキルを手に入れました。
コメ:ダメそうw
コメ:どういうスキルなんですか?
勇太:絶望的に滑舌が悪くなるみたいです。
コメ:どうすんのそれw
コメ:終わったな……。
目を開けてみると、高級そうな赤い絨毯が敷き詰められた広場だった。
壁には、美しい女性や騎馬に乗った騎士が描かれた巨大なステンドガラスが何枚もはめ込まれており、そこから色鮮やかな陽光が差し込んでいた。
その下には、鈍く光る金属鎧姿の騎士らしき人々や、暗色のローブを身に纏った怪しい人達が立っていた。
「何なのだ今の光は! もしや、そなたは伝説の勇者なのではないか?」
勇太:勇者じゃなくて勇太なんですけどねw
コメ:やめい!w
コメ:おもろw
声がする方を見ると、黒髪に白髪が混じった偉丈夫が、玉座のような椅子に大股を開いて座っていた。
その男は、仕立ての良い派手な衣装を身に纏《まと》い、豪勢な装飾品がついた金色の王冠をかぶっている。
筋骨粒々で背が高いのだが、その割りに顔が小さい。
鼻筋が通っており、顎がしっかりした美しい顔立ちをしている。
四十代半ばに見えるその男性は、目が合ったはずなのにしばらく無言を貫く俺を見下ろしながら、心配そうな面持ちで自分の顎鬚を撫でていた。
ふと視聴者数を確認すると、二十一人になっていた。
会話が出来ないのは不安だったが、いざコメントをしてみたら意外と楽しい。
「何なのだ今の光は! もしや、そなたは伝説の勇者なのではないか?」
コメ:二回目?w
コメ:勇太さんが答えてあげないからw
「ぢょうみょ、きょんにちは!」
※どうも、こんにちは!
勇太:何これ?
コメ:滑舌悪すぎワロタwwww
コメ:ハズレ中のハズレやないか!w
「おお、やはり勇者であったか! 魔王が猛威を振るいし時、光の中から救国の勇者が現れると伝承にあるのだ! 余はジャックス王国の国王、エディウバ・ジャックス三世である!」
コメ:救国の勇太w
コメ:それやめてwww
どうやら俺がワープしてきたのはジャックス王国の王城の中だったみたいだ。
異世界で初めて会話した相手が国王って、とんでもないことになっている気がする。
魔王を倒す勇者というのは、ロールプレイングゲームのようでワクワクする設定ではあるのだが。
俺のスキルがタイキンさんと同じ勇者だったなら、バズりにバズっていたに違いない。
このまま冒険を続けたいところだけれど、流石にこのスキルでは戦えないからなぁ。
視聴者のみんなには申し訳ないが、リセットするしかないだろう。
アタリのスキルが出るまでこの場所でリセマラするのもありかもしれない。
「ところで勇者よ、そなたの名は何と申す?」
「ゆうちゃでぃしゅ!」
※勇太です!
「ほう、ユートルディスと申すか。実に勇者らしい勇敢そうな名前であるな!」
勇太:え?
コメ:飲み物吹いたんだがwwww
コメ:おい、勇者ユートルディスが爆誕したぞwww
コメ:面白すぎて切り抜いたわ!w
確かに今のやりとりは漫才みたいだった。
切り抜きがバズってくれるかもしれない。
でも、魔王どころかその辺の雑魚モンスターと戦っても死にそうな気がするし、ここはやっぱりリセットしかない気がする。
視聴者にも俺の言葉が伝わりづらいだろうし、配信向きのスキルではないよな。
勇太:このスキルは流石にキツイんで、リセットしてもいいですかね?
コメ:このまま魔王倒したら三億のマネーチャットするけど?
勇太:え?
コメ:三億キター!
コメ:いけ! 勇者ユートルディス!
三億だって?
人生が変わる程の大金だぞ……。
このままリセットしたら、こんな一攫千金のチャンスは二度と来ないかもしれない。
命を取るか金を取るか……か。
俺は、平凡を捨てて刺激を取ったんだ。
ここで逃げたら店長に申し訳ないよな!
「勇者ユートルディスよ、世界は魔王により滅亡の危機にある。どうか我々に協力してもらえんだろうか?」
「ひゃい! みゃおうをちゃおしみゃしゅ!」
※はい! 魔王を倒します!
コメ:無理だろwww
コメ:お前に何が出来んねん!w
勇太:俺、三億欲しい……。
コメ:馬鹿だこいつw
「ふむ、心強い。ランデルよ!」
「はっ! ランデルであります!」
青い鎧に身を包む白髪の老兵が歩み出て、玉座に続く階段の下で跪いた。
ヒューコンは、常に体の状態を監視していて、重大な変化が起こった時には自動で教えてくれる。
その機能によって、どんなスキルを授かったのかが分かるのだが、俺が獲得したのは滑舌が悪くなるだけの大ハズレスキルだった。
勇太:『絶望的な滑舌』ってスキルを手に入れました。
コメ:ダメそうw
コメ:どういうスキルなんですか?
勇太:絶望的に滑舌が悪くなるみたいです。
コメ:どうすんのそれw
コメ:終わったな……。
目を開けてみると、高級そうな赤い絨毯が敷き詰められた広場だった。
壁には、美しい女性や騎馬に乗った騎士が描かれた巨大なステンドガラスが何枚もはめ込まれており、そこから色鮮やかな陽光が差し込んでいた。
その下には、鈍く光る金属鎧姿の騎士らしき人々や、暗色のローブを身に纏った怪しい人達が立っていた。
「何なのだ今の光は! もしや、そなたは伝説の勇者なのではないか?」
勇太:勇者じゃなくて勇太なんですけどねw
コメ:やめい!w
コメ:おもろw
声がする方を見ると、黒髪に白髪が混じった偉丈夫が、玉座のような椅子に大股を開いて座っていた。
その男は、仕立ての良い派手な衣装を身に纏《まと》い、豪勢な装飾品がついた金色の王冠をかぶっている。
筋骨粒々で背が高いのだが、その割りに顔が小さい。
鼻筋が通っており、顎がしっかりした美しい顔立ちをしている。
四十代半ばに見えるその男性は、目が合ったはずなのにしばらく無言を貫く俺を見下ろしながら、心配そうな面持ちで自分の顎鬚を撫でていた。
ふと視聴者数を確認すると、二十一人になっていた。
会話が出来ないのは不安だったが、いざコメントをしてみたら意外と楽しい。
「何なのだ今の光は! もしや、そなたは伝説の勇者なのではないか?」
コメ:二回目?w
コメ:勇太さんが答えてあげないからw
「ぢょうみょ、きょんにちは!」
※どうも、こんにちは!
勇太:何これ?
コメ:滑舌悪すぎワロタwwww
コメ:ハズレ中のハズレやないか!w
「おお、やはり勇者であったか! 魔王が猛威を振るいし時、光の中から救国の勇者が現れると伝承にあるのだ! 余はジャックス王国の国王、エディウバ・ジャックス三世である!」
コメ:救国の勇太w
コメ:それやめてwww
どうやら俺がワープしてきたのはジャックス王国の王城の中だったみたいだ。
異世界で初めて会話した相手が国王って、とんでもないことになっている気がする。
魔王を倒す勇者というのは、ロールプレイングゲームのようでワクワクする設定ではあるのだが。
俺のスキルがタイキンさんと同じ勇者だったなら、バズりにバズっていたに違いない。
このまま冒険を続けたいところだけれど、流石にこのスキルでは戦えないからなぁ。
視聴者のみんなには申し訳ないが、リセットするしかないだろう。
アタリのスキルが出るまでこの場所でリセマラするのもありかもしれない。
「ところで勇者よ、そなたの名は何と申す?」
「ゆうちゃでぃしゅ!」
※勇太です!
「ほう、ユートルディスと申すか。実に勇者らしい勇敢そうな名前であるな!」
勇太:え?
コメ:飲み物吹いたんだがwwww
コメ:おい、勇者ユートルディスが爆誕したぞwww
コメ:面白すぎて切り抜いたわ!w
確かに今のやりとりは漫才みたいだった。
切り抜きがバズってくれるかもしれない。
でも、魔王どころかその辺の雑魚モンスターと戦っても死にそうな気がするし、ここはやっぱりリセットしかない気がする。
視聴者にも俺の言葉が伝わりづらいだろうし、配信向きのスキルではないよな。
勇太:このスキルは流石にキツイんで、リセットしてもいいですかね?
コメ:このまま魔王倒したら三億のマネーチャットするけど?
勇太:え?
コメ:三億キター!
コメ:いけ! 勇者ユートルディス!
三億だって?
人生が変わる程の大金だぞ……。
このままリセットしたら、こんな一攫千金のチャンスは二度と来ないかもしれない。
命を取るか金を取るか……か。
俺は、平凡を捨てて刺激を取ったんだ。
ここで逃げたら店長に申し訳ないよな!
「勇者ユートルディスよ、世界は魔王により滅亡の危機にある。どうか我々に協力してもらえんだろうか?」
「ひゃい! みゃおうをちゃおしみゃしゅ!」
※はい! 魔王を倒します!
コメ:無理だろwww
コメ:お前に何が出来んねん!w
勇太:俺、三億欲しい……。
コメ:馬鹿だこいつw
「ふむ、心強い。ランデルよ!」
「はっ! ランデルであります!」
青い鎧に身を包む白髪の老兵が歩み出て、玉座に続く階段の下で跪いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる