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のんきな兎と番契約
しおりを挟む薄っすら目を開ける前に、安心する匂いに包まれていることが分かってそれに擦り寄る。すると、温かくて大きな手が頭を優しく撫でてくれてギュッとしがみついた。僕が起きたことに気付いたロイは、顔を覗き込み額を合わせると、
「ウルル、帰るか?話聞くか?」
そう聞かれたが、僕は鼻をロイのそれとスリスリと摺り合わせると、兎耳を倒して撫でて撫でてと頭をロイの首に埋めてグリグリ押し付けた。
「あ~、ウルル。ちょっと落ち着け。」
苦笑したロイが僕を宥めるようにそう言うと、背中をポンポンされる。撫でてくれないロイに、僕はぺしょっと悲しくなった。
「どうして……?うぅ、撫でてくれない……。僕いっぱい泣いたのに……ぐすっ……。」
ぐすぐす泣きながらロイを見上げると、
「あのな、まだ家じゃねぇんだわ。見てみろ。」
苦笑しながらそう言われて周りを見渡せば、微笑ましく見ているレイルさんと目があって、ぴゃっとロイの腕の中で飛び跳ねた。
「怖い……!ないないして……!」
ロイの外套の中に潜り込もうと頭を突っ込んで震える僕に、ロイが溜め息をついたのが分かった。
「ほらみろ、怯え切ってるじゃねーか。」
「どうしてだろうねぇ。出ておいで、怖くないよ。チッチッチ。」
「ウルル、親父のことは嫌っててもいいが、話は聞け。」
そう言って、ロイが説明してくれた。それを聞いて、恐る恐る顔を出してレイルさんを見た。レイルさんは、そんな僕に気が付くと、
「悪かったね、そういう訳だったんだよ。お詫びといってはなんだけど、これをあげる。」
そう言って一枚の紙をテーブルに置いた。僕がそれに首を傾げていると、ロイが手に取って、
「……これ、番契約書か?」
目を見開いてそう言った。
……番契約書?
「そうだよ。何をもたもたしてるのかと思って。さっさと契約しな。」
「……ウルル、お前の家族に挨拶も出来てないが、」
「番!なる!」
「話を聞け。」
ロイが何か言い掛けたのを遮って、僕が叫ぶように言うと、呆れたように笑われた。番契約、それさえしてしまえば、もうロイは僕の番になるんだ!それを理解した僕は、今すぐにでも契約を交わしたくて、その書類に手を伸ばすとヒョイっと上げられる。
「うぅ、番になるの、ロイは僕のだもん……!」
両手を上げる僕の頭を押し付けるようにしてロイが待ったをかけてくる。
「分かった分かった、ちょっと落ち着け。」
「何?家族に挨拶?ウルル君、独り立ちしているんでしょ?」
レイルさんが不思議そうに聞いてきたことに対し、
「独り立ちしてるが、兎族は基本的に群れで暮らすだろ。帰省することがあれば、挨拶してなかったら驚かせるだろ。」
ロイがそう答えた。
「あぁ、そうか。だいたいの獣人は独り立ちしたら死ぬまで親に会わないことなんてざらにあるけれどね。兎族といえば、確かに群れで暮らす者がほとんどだね。それでまだ番契約をしていなかったわけか。」
「急いでなかったのもあるがな。でもそのせいで危険になるなら、さっさと番になるか。」
ロイとレイルさんが話すのを聞きながら、僕は首を傾げる。
「僕、ロイとずっと一緒にいるよ。どこにも行かないよ。」
どうして僕が実家に帰るような話になっているんだろう。ロイとずっと一緒にいるに決まっているのに。だって、もう王家との婚姻の話はなくなったんでしょう?ロイは僕のでしょう?それだけじゃ駄目なの?
不思議に思って言ったことに、ロイとレイルさんの視線が集まってしまったため、ロイの胸に顔を埋めた僕。
「……はぁ。そうだよな、お前はそういうやつだ。」
笑いを含んだ声でそう言ったロイは、僕の頭に唇を落とした。
「一直線な愛だねぇ。」
レイルさんがそう言った声が聞こえたが、ロイが僕に構ってくれるのが嬉しくて目を細めたのだった。
その後、僕たちは王宮を出ると家へと帰った。ロイと僕の家。数日しか空けていないはずなのに、懐かしくて安心して視界がぼやけてきた。そんな僕の額に唇を落としたロイの首に腕を回して、
「ロイ、もっと。ちゅーして、ギュってして。」
そう強請るや否や、すぐさま唇を合わしてくれたロイ。後頭部にロイの大きな手が差し込まれて、唇を割って入って来た舌に必死についていくが、熱い舌同士がくっついて気持ち良くなってきてポワンとしてきてしまう。
「はぁっ……ぁ……っ……。」
口内を舐められ、僕のそれを甘噛みされ、身体が熱くなってきた僕を抱え上げたロイは寝室へと足を進めてベッドへと降ろされる。唇を合わせたまま、力が入らなくなってきた僕のそれを絡め取っては水音が響いて恥ずかしくなる。
「ひぁ……っ!……んぅ……ん……。」
ロイの手が服の中に入ってきて、すでにピンと立っている胸の飾りを指で弾き、刺激で声が上がる。そのまま、押し潰したり、こりこりと摘ままれたりと弄られて、ビクビクと身体を揺らすも、離されない唇に声も吐息も全て食べられていく。そして、離れていく唇にボーっとしていると、
「あっ、あぁっ……!」
指で刺激されていた飾りが、熱く柔らかい舌でぐりぐりと弄られ吸われ、腰に回された腕で逃げることもできず享受するしかない刺激に生理的な涙が浮かんでくる。身体全身が熱くて、無意識的に揺れる腰に、ロイは少し離れたかと思うと、下へと身体をずらしたのが視界に入った。そして、その瞬間、
「んぁ……っ!?あ、あ、あぁ……っ!」
足の間ですでに立っていたそれを口に含まれて、僕は一際大きい声を上げる。ロイの頭に力の入らない手を置いて、熱い口内で舐められ吸われ、呆気なく達してしまった。
「ふっ、可愛いな。ウルル、気持ち良いか?」
「んん、気持ち良い……。ロイ好き、大好き、もっと……。」
「あぁ、嫌ってほど甘やかしてやるよ。」
意地悪く笑ったロイは、熱が治まらない僕の身体に手を這わせると、再び刺激を与えてくる。
緩やかに立ち上がってきたそれをロイの大きな手で握られ、擦られたり先っぽを指でくりくりと遊ぶようにされて、我慢できずに腰をロイに押し付けるように動かす。そんな僕に口角を上げたロイは、チュッと僕の額に唇を落とすと、お尻に手を這わせて孔を指でゆっくり解し始めた。入ってきた指が敏感なところを掠めては身体を揺らす僕。ロイは、そんな僕の反応を楽しむようにキスを落とし、指を抜くと自身のそれをゆっくり押し進めて熱く硬いもので何度も突かれて声が上がった。
「あ、あっ……んぁ……っふ、ぅ……!」
身体を揺さぶられながら、唇を合わせられ、逃げてしまう僕の舌を捉えると絡めては口内を蹂躙される。力が入らない身体を優しい手つきで撫でられ敏感な部分を弄られ、甘い刺激をひっきりなしに与えられた僕は、そのままロイに愛されながら意識を手放したのだった。
―――それから。
僕たちは、番契約書にサインして提出した。
番契約はお互いの瞳の色の石を付ければ、それで番契約は完了となる。ピアスやブレスレット、アンクレットなど、肌身離さず身に付けられる物であれば何でもいいのだ。それに関しては知っていたが、ここでは書類も提出しなければならないのかと驚いていた僕だったが、どうやらそうではないらしく。
ロイは少し特殊な存在だから、国中に広めるためと決定的なものにするために王のサインを記した書類を貰ってきてくれていたのだとか。よく分からないが、これで安心らしいから、僕は良かったとぴょんぴょん飛んで喜んだ。
番証としては、何でも良かったのだけど、
「お前、外せる物だったら絶対に無くすだろ。」
とのロイの言葉によりピアス一択になった。リング型のピアスにはゴールドとブルーの石が埋め込まれており、ロイとお揃いだ。基本的に外すことはないため、これなら確かに何処かに忘れたり無くしたりすることはないなぁと思った僕。
レイルさんは、あれからまたすぐに国を発ったらしい。あっちこっちをふらふらしているらしいけれど、ロイいわく、
「あれは声を聞くことができんだよ。」
とぽつりと言っていた。どういうことか分からなくて首を傾げた僕に、欲しい情報を知ることができる術を持っているとのこと。情報戦でレイルさんの右に出る者はいないのだとか。国としても囲い込みたかったらしいが、レイルさんを嵌めようだなんて到底できることではないため、自由に暮らしているとのこと。
「レイルさんの番は?」
「そっちも自由人だからな。一緒にはいるんだろうが。親父が今回戻ってきたのは、俺のことで国の混乱を招く事態に成りかねない案件だったから来たんだろう。国が潰れたら、周辺諸国も黙ってねぇからな。面倒臭くなるのが目に見えてる。」
ロイが疲れたように言ったことの大半は良く分からなかったのだが、ロイは国に好かれてるってこと?と聞いたら笑われた。
「俺は、ただのお前の番だ。」
そう言ってくれたから、僕も笑って、
「僕も、ただのロイの番だよ!」
と元気良く返事すると、当たり前に受け止めてくれるロイに飛びついたのだった。
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