薬屋の受難【完】

おはぎ

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薬屋の受難



「あの、これが眠気覚ましで、目を覚ましたい時に水と一緒に飲んで下さい。」 

「おぉ、助かるぜ! なんせ、明日は長々とくだらねぇ話ばっかする老人たちの相手をしなきゃならねぇからな。ったく、こんな良いのがあるなら早く言って欲しかったぜ。」

「ふふ、大変ですね。お疲れ様です。飲み過ぎには注意して下さいね。」

「分かった、ありがとなノルン。」

筋骨隆々の男がニカッと笑い、そう言うと渡した薬を手に扉を開け出て行った。



ーーーここは、僕が営む小さな薬屋だ。

鎮痛剤、解熱剤、解毒剤、基本的な薬もあるが、どちらかというと必要では無いがあると有り難いというような薬を売っている店だ。

さっき売れた眠気覚ましや、靴擦れ用の塗り薬、逆剥けを治す塗り薬、空腹時のお腹の音を止める薬など、無くても困らないがまぁあったら使うかな、というような物が多い。

そんな僕の店で、最近よく来店する人がいる。

ーーーカランカラン

店の扉に付けている鈴が鳴り、客の来店を知らせた。

「…おい、これは何だ。」

入ってきたその人は、黒のローブを纏い、緑の液体が入った瓶を持ち上げそう聞いた。

「あ、それは虫が寄ってこなくなる薬です。スプレー状になってるので、一吹きすれば……。」

「相変わらず変な物ばっかりだな、この店は。ろくな物置いてないじゃないか。こんなので生活できてるのか?」

呆れたように僕の言葉を被せて言うその人は、黒の髪を後ろに撫で上げ、切れ長の瞳をこちらに向けた。

「は、はい。すみません……。余裕はないですが、生活はできてます……。」

色白の肌に、高い鼻。薄い唇の横には黒子があり、色気が漂う。美しいと言われるその顔に見られ、呆れ口調で言われると萎縮してしまう。僕は身を強ばらせながら、言われた言葉に何とか返答する。

「まともな物ぐらい置いたらどうなんだ。まぁ、お前の腕ではたかが知れてるがな。その服も、もうボロボロじゃないか。買い替える金もないのか、情けない。いい歳したやつが、こんな生活してるなんて考えられん。だいたい……。」

つらつらと言われる辛辣な言葉に、僕は俯き涙を堪える。そこまで言わなくたって…。僕は好きでこの店をやってるのに、いつもいつも来店しては嫌味や攻撃的に言葉を投げかけてくるこの人は、この国では知らない者はいない魔術師団長のルーベルト様だ。

全魔術師のトップに君臨するこの人は、魔術で様々な生活を助ける道具を作り出し、この国の防衛にも携わっているぐらい凄い方なのだ。

何故か、僕の店に時々足を運んではこのように集中的に攻撃するということを繰り返されている。

「こんな状態でよく続けてられるな。まぁ、どうしてもというなら、私が助けてやってもいいが。お前が出来ることなんて、子供でもできると思うが、まぁいないよりは……。」

僕はルーベルト様の言葉に堪え切れなくなり、溜まっていた涙が零れた。

「……ぅっ……ぐす……っごめんなさい……。」

ぐすぐすとどんどん流れる涙を慌てて袖で拭いながら、何を言っていいか分からず、とにかく謝った。そんな僕に、
「な、何故泣く。泣くな、何故だ。おい、泣くな……。」

ルーベルト様は少し慌てたようにそう言った。僕は涙で前が見えなくて、ぐすぐすと泣いてしまう。

ルーベルト様が来た時は、毎回こうなるのだ。泣く僕に、ルーベルト様はハンカチを貸してくれて、きまりが悪そうにムスッとしながら帰っていくのがお決まりのパターンになっていた。

今日もまた、そうしたルーベルト様は僕の涙が止まるのを律儀に待って、また来ると小さく言葉を呟くと店を出て行ったのだった。

……この店と僕が気に食わないのなら、何故頻繁に来るんだろう。

ルーベルト様はのんびり店を営んでいる僕とは違い、すごく多忙だ。

だが、短くて2日おきに、長くても4~5日に1度は来店する。そして、毎回同じように責めるような口調で言い募られては、僕が泣いてしまうということを繰り返している。

……僕、何かしたかなぁ。

と言っても、身に覚えはない。ルーベルト様といえば、変人とは言われているが、その美貌と実力で全てを黙らせ追随を許さない。我が道をいく姿に憧れている者も多い。そんな人だから、僕もちょっとでいいから仲良くなりたいというか、せめて良き関係を築きたいと思っているのだけれど……。

「はぁ…。実用性の無い物ばかり売っているこの店と僕は、ルーベルト様には気に食わないんだろうなぁ……。」

悲しくなってくるが、どうしようもない。僕はそっと溜め息をついて、再び鈴が鳴ったのを聞き顔を上げた。



―――――――



「いや~これすげぇ効いたわ。全然眠たくならねぇの。すげぇな。これさ、あと5つぐらい欲しいんだわ。」

以前、眠気覚ましを購入してくれた男性が、再購入したいと来店してきた。

「良かったです。分かりました、あと5つですね。でも、あまり頻繁に服用しないで下さいね。効き目が低下したり、逆に夜に眠れなかったりしますから。」

僕はそう返し、薬を準備する。

「お~、大丈夫だ、そんなしょっちゅう会議出てらんねぇしな。いざって時に使わせてもらう。あと、これ良かったらもらってくれ。」

その人は、そう言って袋を出してきた。その中には、薬草がたくさん入っていた。

「えっ! いいんですか!?」

僕はそれを見て驚き、明らかに質の良さそうな薬草に気分が上がった。

「あぁ、前に外に出た時に薬草の群生地を見つけてな。ノルン、前に薬草取りに行きたいけど今は魔獣が活発化する時期だから行けねぇって言ってたの思い出して、とりあえず取ってきた。」

「すごく助かります! ありがとうございます!」

僕は嬉しくて笑みが止まらない。最近、薬草採取ができてなくて、依頼するほどでもないが、考えれば考えるほど日に日に気になってしまいそわそわしていたため、物凄く嬉しい。そんな僕に、

「そんな喜んでくれんなら、取って来た甲斐あるわ。にしても、お前見てると昔近所に住んでた犬を思い出すんだよなぁ。」

そう言い、がしがしと力強く頭を撫でられる。力が強くて、ぐわんぐわんと頭が回ってしまい、傾いた身体を抱き留められた。

「おっと、わりぃ。加減間違えた。」

「い、いえ。僕こそすみませ……。」

そう言い掛けた時、カランカランと聞き馴染みのある音が聞こえ、顔を上げると。

「……何してる。おい、離れろ。」

僕たちを視界に捉え、目を見開いたルーベルト様は、眉間に皺を寄せ苛立った口調でそう言うと、指をこちらに向けた。その瞬間、ピカッとその指から光が走ったかと思うと、男性がすぐさま後ろに飛び退き、棚の光が当たったであろう部分が焦げたのが分かった。

「……っと、おいおい、いきなり攻撃してくんなよ、危ねぇな。」

「うるさい。グラン、騎士団長ともあろうものが何故こんなところにいる。さっさと帰れ。」

「ご挨拶だな。お前こそ、何しに来たんだよ。魔術師団長様に必要なもんがあるとは思えねぇんだが?」

面白そうに口角を上げ、ルーベルト様を挑発するようにそう言う騎士団長であるグラン様。それに対し目が冷たくなったルーベルト様が、再び手を上げようとした。僕はそれを見て慌てて、

「や、やめてください! 店が壊れちゃいます!」

必死にそう言い、二人の視線の間に割って入った。

「お前、何を抱き締められてるんだ。誰にでも尻尾を振っているから、そうやって手を出されそうになるんだ。誰かれ構わず愛想を振り撒いて、そんなに好かれたいのか。とんだ尻軽だな。」

ルーベルト様は、そんな僕に距離を詰めて来ると見下ろして、そう言い募ってきた。

……し、尻軽……。そんな風に思われてたんだ……。

あんまりの言い分に、僕は呆然とし、ルーベルト様からそんな風に思われていたことにショックを受けた。

「何とか言ったらどうなんだ。他のやつにもそうやって抱き締められたりしてるんじゃないだろうな。そんな男好きだとは思わなかった。誰でもいいのか、お前は。」

続く言葉は僕の心に突き刺さり、言葉を返せない。じわじわと瞼が熱くなり、視界が揺れる。

「……おいおい、お前どうしたんだ。何いきなり…え、まさかそれ妬いてんのか? おい、嘘だろ。それにしてもそんな言い方じゃ……。」

戸惑ったようなグラン様の声が聞こえたが、僕の耳には入らずただ悲しくて悔しくてぼろっと遂に涙が零れてしまった。

「うっ……うっ……も、もう、嫌だ……。ぐすっ……。」

何でそこまで言われなきゃいけないんだ。いくら何でもひどい。

「なっ、おい……。」

「そ、そんなに、僕が気に食わないならッ……も、来ないで下さい……!」

泣いた僕を見て少し慌てたような声を出したルーベルト様に、とうとう、そう言ってしまった。ぐすぐすと泣いて、袖で涙を拭いた僕は、まだ溢れてくる涙を落ちないように我慢してルーベルト様を見上げ、

「も、で、出て行って下さい……!」

声は震えたが、頑張ってそう言い切った。

「お、おいおい、ちょっと落ち着こうぜお前ら。……おい、ルーベルト。お前、固まってる場合じゃねぇだろコラ。」

「………。」

「あー……駄目だこりゃ。ノルン、ちょっと落ち着け。とりあえず、話し合いしろお前ら。……ルーベルト、お前そんなんじゃ後悔するぞ?」

「……うるさい。お前は出て行け。不愉快だ。」

「……へいへい、とりあえずノルンに当たったりすんなよ?」

グラン様は僕に気遣うような視線を向けると、ルーベルト様に何かを耳打ちして出て行った。

……こ、怖い。言ってしまった……。

ルーベルト様は権力者だ。やろうと思えばこんな小さい店なんてすぐに潰されてしまうだろう。僕はぶるぶると震えながらも、言ってしまったことは取り消せないんだと腹を括った。そんな覚悟を決めた僕に、

「わ、悪かった……。」

消え入りそうな声が聞こえたかと思うと、僕の腕をぎこちなく掴む手があった。

「え……。」

思わず顔を上げると、そこには戸惑いと焦りが混じったような表情で、顔を青褪めたルーベルト様が眉を下げて僕を見ていた。

「えっと……。」

僕は言葉を失い、何を言えばいいのか戸惑う。まさか謝られるとは思ってなかったのだ。

逆に生意気なやつだと余計に怒らせてしまうかもしれないと戦々恐々としていたため、予想外の展開に呆然とする。

「悪かった……。つい苛ついて……。」

許しを乞うように言われて、うっと言葉に詰まる。美形の悲し気な顔はずるい……!僕の方が悪いことをしてしまったような錯覚に陥ってしまう。なおも言葉が出ない黙ったままの僕。ルーベルト様はそんな僕の両腕を掴み、引き寄せられたかと思うと覗き込むように顔を近付けられる。

「……っその、グランとの距離につい、腹が立ってしまって……。ノルン、すまなかった。許してくれ……。」

「……っえっと、その、もういいです。僕こそ、出て行けなんて言ってすみませんでした。」

早々に白旗を上げた僕は、近い距離にあるルーベルト様の顔に頬が熱くなりながら、何とか言葉を紡いだ。

「それは、また来ても良いということだな? 来るなって言葉は撤回してくれるんだな?」

必死な様子でそう続けるルーベルト様に僕はこくこくと頷く。

「はぁ、良かった……。ノルン、だが簡単に男に触れられているのは良くない。この指輪をやるからつけておけ。それと、これは触れられると相手に電流が流れるものだ。これも……。」

「ちょ、ちょっと待って下さい! そんな高価な物、いただけません……! それに、僕なんかに触りたいと思う人なんていないです!」

貴族や商人たちが護身や防犯のために持つとされている、値が張るそれをポンと渡されそうになり、慌てて手を振る。

「……は? 現に、グランに触れられていただろう。お前が自覚していないだけで、触りたいと思っているやつなどそこら中にいるに決まっている。」

怒りを滲ませるように言われ、僕は面食らう。僕に触りたいなんて、誰も思ってませんよ!いったい、ルーベルト様の目に僕はどんな風に映っているんだ。

とにかく付けろと押し切られそうになり、そんな物を持っていたら、防犯であるにもかかわらず奪われたり盗まれたりしそうで、首をぶんぶん横に振る。

「何故だ。持っていた方が良いだろ。またグランが来た時に、手を出されそうになるかもしれないんだぞ。」

「ぐ、グラン様は、僕がふらついて受け止めてくれただけで……。」

「……まさか、グランが好きなのか? そうなのか?」

グランが好きなのかと、斜め上の発想で言われた言葉を飲み込むのに時間がかかり、黙ってしまった僕を見て、ルーベルト様は息を飲んだ。

「グランは女好きだ! それに、あいつは遊び人で好みの女を見ればすぐに口説くような軽いやつだし、お前には合わない!」

何故か、必死さも見える様子で早口で続けられる。

「あ、あの、僕、別にグラン様が好きなわけじゃなくて……。」

戸惑いながら何とか否定すると、

「……では、他に好きなやつが? 誰だ。」

僕の恋愛事情を掘り出されそうになる。

「す、好きな人は、いません……。」

「そうか、なら俺が恋人になっても構わないな。ノルン、今日から俺がお前の好きな人だ。グランには手を出せば殺すと言っておく。他の客にも恋人がいると言うんだぞ。」

……ほぇ?

満足気にそう言ったルーベルト様は、僕の両腕を掴んでいた手を引き寄せると、そのまま腕の中に閉じ込めてぎゅっと抱き締められる。

……え?どういうこと?僕はルーベルト様の恋人になって、好きな人になった……?

与えられた情報を処理しきれなくて、頭は言われたことが回り「?」が飛び交う。固まったままの状態の僕だが、ルーベルト様は嬉しそうに僕の頭に頬擦りする。

「名残惜しいが、一旦戻らねばならない。また夜に来る。いいか、近寄ってくるやつにはちゃんと俺という恋人がいると言うんだぞ。」

頬に唇を落とされたかと思うと、最後にもう一度ぎゅっと抱き締めてルーベルト様は颯爽と店を出て行ったのだった。

……何が起こった?

僕はしばらく呆然と立ち尽くし、カランカランと鳴る鈴にはっと我に返り声を上げたのだった。



―――――――



まだ夜も更けきらない時刻に、再び来店したルーベルト様は、許可もなくさっさと店を閉めさせると僕を外へと連れ出した。

「あ、あの、ルーベルト様、何処に行くんですか……?」

あれよあれよと流されるままに連れられる僕の腰にはがっちりとルーベルト様の腕が回されている。街の方へと向かう足取りに、僕はそう聞く。

「俺の家だ。街で少し買い物してから帰る。」

そう言い、まだ人通りが多い街の中に繰り出すと、驚いたような多くの視線が突き刺さった。

「あ、ルーベルト様、珍しいですねこんな……。」

「ルーベルト様? あの箱に使った魔術についてなん……。」

「え、ルーベルト様? 今日はどうし……。」

皆、ルーベルト様を見て驚いたように声を掛けるが、横の僕を見て目を見開くと言葉を詰まらせる。その度に、

「俺の恋人だ。手を出したら殺すぞ。」

そう言うルーベルト様に僕はもう居たたまれません…。少し顔を引き攣らせて笑い、頷く相手の様子にますます僕は身を縮こませる。買い物をして帰ると言っていたにも関わらず、ルーベルト様は店に寄ることなく街を出ようとした。

「え、あの、買い物はいいんですか……?」

恐る恐る聞くと、ルーベルト様は構わん、と一言投げ掛けてくるだけで足を止めない。

……あれ、買い物しないなら何をしに街に来たんだろう。

疑問を持ちながらも、それ以上は何も言えず僕は押し黙った。


―――着いたのは、僕の店よりは大きいがこじんまりとした家だった。

僕はそこに押し込めるように入れられ、振り向いた瞬間、温かい腕に包み込まれる。抱き締められていることを理解した僕は、思わず顔が熱くなる。

免疫がないのだ、こういう触れ合いには。好きな人どころか恋人だっていたことないし、こんな美形に迫られたら誰だってドキドキしてしまうだろう。だから僕の心臓がうるさく鼓動してしまうのは仕方がないんだ。

「ノルン、ここで一緒に住もう。店は続ければいいが、ここから通ってくれ。あと、書類を貰ってきたから記入しておくように。明日朝一で出しに行く。それから……。」

まだまだ続きそうなルーベルト様の言葉に、慌てて待ったをかける。

「ちょ、ちょっと待ってください! ここに住む……? え、書類って何の……。」

「結婚のだが。別々に住むのは許容できない。ここは二人で住むにも十分な広さだし、君の店にも通える距離だ。問題はないだろう。」

……け、結婚?一体何がどうなっているんだ。

ぽかんとルーベルト様と見上げていると、そんな僕を見下ろし、顔が近付いてくる。え、と思った時には、唇が合わさっていた。

「……ノルン、可愛いな。」

甘さを含んだ声で言われ、何度も啄む様に重なる唇に僕は全身が熱くなってくる。くらくらしてきて足に力が入らなくなり、思わずルーベルト様の胸の縋りつくように体重を預ける。

そんな僕を嬉しそうに見たルーベルト様は、ぎゅっと抱き締めた後、僕を抱き上げた。いきなりの浮遊感に、僕はルーベルト様のローブを掴むと、額に口付けされる。

降ろされた時、背中に柔らかい覚えのある感触に気付き、はっとして上体を起こそうとした。そんな僕の肩を押し、再度シーツに沈み込ませたルーベルト様が覆い被さってくる。

「る、ルーベルト様、あの、僕、今日はちょっと、帰りた……。」

この状態が何を意味するのか、経験がない僕でも分かる。これはさすがに僕のキャパシティを超えてしまう……!度重なる怒涛の展開に、一度逃げたい衝動に駆られる僕。

「ノルン、全て任せていればいい。優しくする。俺を受け入れてくれ。」

僕の首筋に顔を埋めて、そこに口付けられながら話されてビクっと肩を揺らす。そのまま滑るように腰に、胸に、手を這わされて思わず声が漏れる。

胸の突起を指で揉み込むようにいじられ、思わずルーベルト様の腕を掴むも、口付けで返され力が抜ける。他人に触れられたことがないところを触られいじられ、足の間に顔を埋められた時には思わず叫んだ。

「あっちょ、やめ……っ! あぁっ……あ……っ!」

すでに立ち上がりかけていたそこを、熱い口内で包まれて、吸われ舐められ、生理的な涙が流れる。達しそうになった時、口が離され、止められた刺激に思わず自分でそこを触ろうとするも、両腕を取られて頭上で固定される。

「うっ、何でぇ……!」

ひどい、と訴えるように見上げると、ルーベルト様のギラついた目と視線が交わった。噛み付くようなキスを贈られ、それと同時に後孔に指を入れられる。探り当てられた敏感な部分を突かれて、声を上げた時、熱く硬くなっているルーベルト様のそれを当てられる。

「えっ、あっ、待って、そんな大きいの、入らな……っ!」

そう言うや否や、ゆっくり挿入されたそれに息が詰まる。そんな僕の口をこじ開けて舌を差し込んできたルーベルト様に、そのまま口内を蹂躙される。

「ノルン、ノルン……っ! ……動くぞ……っ!」

腰を打ち付けられ、僕は一瞬頭が真っ白になる。そのまま、優しくも強引に開かれた僕の身体は、与えられる刺激を拾いながら声を上げ続けた。


―――――――


「ノルン、今日も迎えに行く。店で待っていろ。ほら、早く。」

そう言い、出る時にキスを強請る僕の夫になったルーベルト様。

「ルー、僕、ちゃんと帰って来れるから大丈夫だよ。」

僕は照れながらも、催促されるがまま唇を合わせ、そう言った。

「駄目だ、襲われたらどうするんだ。お前は防犯意識が低いんだから、一人で出て何かあったらどうする。だいたい……。」

長くなりそうな気配を察知し、ちゃんと待ってるから、いってらっしゃい!と慌てて送り出す。

……あれから、僕は流されるまま書類にサインをし、提出され結婚した。引っ越しも有無を言わせず行われ、いつの間にか僕の荷物はここに運び込まれて一緒に暮らす生活がスタートした。

ルーベルト様は、とても多忙だ。だから、生活もすれ違うことがあるだろうと思っていたのだが。実際は、毎日仕事をさっさと終わらせては僕の店へと迎えに来て一緒に帰るというのが、最近の日課になりつつある。
そして、かなりの心配性で過保護だ。誰が僕を襲うんだ。ルーの目に映ってる僕は、一体どんな風なのか一度見てみたい。

なし崩し的にこんな関係になってから、改めてルーから告白された。

「好きだ。愛してる。ずっと一緒にいたいし、ずっと家にいて欲しい。店の薬を同僚からもらった時に、効き目も丁寧な調合も素晴らしくて気になり行ったんだ。一目惚れだ。可愛くて仕方なかったんだが、どうすればいいのか見当もつかず。反応が返ってくるのが嬉しくて、思ってもないことを言った。泣かせたい訳じゃなかったんだが、泣き顔も可愛くて……。」

どんどん溢れて聞かされるルーの想いに、僕は真っ赤になってストップをかけたのだった。

そんなルーは吹っ切れたように、所構わず僕をその腕で抱いたり、口付けてきたりと熱烈に愛情を示してくれる。僕がそれに太刀打ちできるわけなく、まんまとルーを好きになった。そして気持ちを伝えた時は、泣かれて思いっきり抱き締められた後、そのままベッドへと運ばれたのだった。


―――今日も今日とて、店ではのんびりと時間が過ぎ、時々お客さんが来ては薬を買っていく。お客さんと話しては満足気に帰って行くのを見て、僕も嬉しくなる。そんな中、もう日が落ちる頃、心配性な僕の夫が鈴の音を鳴らすのだった。




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