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二章 勇者誕生
2-12 ドキドキが止まらない
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鉄戸をくぐって城内に入ると、そこは狭い通路になっていた。両壁に灯されたロウソクを道標に奥へと進んでゆく。
そこに、なぜか俺達の後ろをずっとついてくるプレイヤー達がいた。ついさっきミスリルの戦闘を見て盛り上がってた野次馬連中だが、まさかコイツら、あれでファンになったとか言わないよな? オンラインゲームじゃ、ただのプレイヤーがアイドルに……なんて話もあるらしい。
いや、いくらなんでもそれは唐突過ぎる。たった一、二戦でファンってのはおかしい。急に野次馬ができた理由は何か他にあるはずだ。
とりあえずゲーム内の掲示板をチェックしてみると、最新トピックに“キュール王キタ!?”とあった。“キタ!?”ってなんだ?
投稿を辿ると、キュール王の存在は未だ未確認と書かれていた。いやいや、普通に王様はいるだろ。今だって王様に会いにこの城に来たんだから。さらに読み進めると、門番の《バッカス》や騎士の《ラミー》との戦闘が新たに確認されたと書かれていた。
げ! これってまさか、後ろの連中が書き込んでるのか? 俺達の攻略ルートで何かが起きていて、その真偽を確かめに来たってとこか。
後ろをチラ見する。それでか、さっきよりも人が増えてるのは。つーか、特別なことした覚えはないんだが……厄介なことになってきたな。
あれこれ考えているうちに、目の前に一際大きな扉が見えてきた。近付くほどに、扉の装飾が鮮明になる。薄暗くても分かるほどの眩い金細工は、ここが“王の間”であることを確信させた。
「すっごい扉ね」
黙々と隣を歩いていたミスリルが感嘆の声を漏らした。
ん……? ああっ! そうか、コイツだ! そうだよ、何も俺がしたこととは限らないんだ!
確か門番の奴に「この街の者ではないな」とか言われたよな。あの時は街でのイベント漏れかと思ったけど、そんなの珍しくも何ともない。もっとシンプルに考えろ。ミスリルがしたこと……いや、しなかったこと! コイツは一度も街に入ってない!!
「あはっ、やばい、なんかドキドキしてきた」
演技がかってない素の台詞から高揚感が伝わってくる。そういやコイツ、このゲームを絵本で読んだ冒険みたいって言ってたな。確かに日常じゃ得難い体験だし、テンション上がって当然だよな。ま、今の状況が相当に特別だってこと、当の本人は気付いちゃいないんだろうけど。
多くのプレイヤーは東の平原から来て、北の森に抜ける道がないと分かると街を通っていく。それを南下してわざわざ海岸沿いを迂回する奴はいない。仮にいたとしても、あの門番や騎士はこのフィールドにしては強すぎる。ミスリルのチートなステータスに装備、加えて俺のテクニックがなければ、到底ここまで辿りつけなかったはずだ。
俺はそんな今の状況が特別だって認識できてるし、そこにきて“ロープレ”で“お城”といったらもう、盛大なファンファーレの出迎えを期待せずにはいられなかった。
「やべ、なんかこっちまでテンション上がってきた」
ミスリルがこっちの顔を窺うように見てきた。俺はそれに大きく頷いて返す。後ろの連中はただ固唾を呑むように見守っている。
そして二人は示し合わせるように大きな扉に手を掛けた。
開かれた扉から溢れ出した光は、暗闇に慣れきった目を真っ白に眩ませた。しばらくして視界が戻るにつれ、辺りが色付き鮮明になってゆく。
眼前には突き抜けるように高い天井があり、複数の天窓から射し込む光が幾重もの筋となって輝いていた。室内は城全体の敷地と錯覚するほどの大広間で、入口から部屋の奥へ伸びた鮮やかな赤い絨毯がひと際目を引き付ける。絨毯の両脇には衛兵が隊列を組み、さらに先にある階段を二階の高さほど登った玉座まで敷き詰めていた。その玉座に座っている人物こそ噂の中心……そう、この城の王、《キュール王》に違いない。
この盛大な出迎えが俺達の為かと思うと、ちょっとした感動すら覚える思いだった。バイザー越しで実際には見えないが、小金沢の方は今どんな顔をしてるだろう?
「『タナーカー! 走って!!』」
目の前の小金沢が発した声と、バイザーからのミスリルの声が重なって、意識がゲームに引き戻された。
すぐに異変に気付く。周りの衛兵達が持っていたのは歓迎の“ラッパ”ではなく“長槍”だった。さらには玉座に至る階段の中腹にいた騎士すら見落としていた。
細身の体に束ねた長い金髪、そして顔立ちからしておそらく女騎士だろう。アイコン横には《シャルロッテ》という名前ともう一つ、例のライフゲージが伸び始めていた。まさかの三人目だ。
目を奪われていたうちに両脇に並んだ衛兵達は槍を構え、一斉に赤い絨毯の中央目掛けて前進していた。俺は出遅れつつもミスリルに続いて左右から迫る槍の中を駆け抜ける。これが現実だったら狂気の沙汰としか思えない……ってかもう、タイミングアウトだろ!
「痛ってえ!!」
実際には痛くないが、想像力が痛みを感じさせる。
「タナーカー!!」
先行したミスリルは間一髪で隊列を抜け出せたようだ。良かった。
そうなると問題は俺だ。ギリギリ体力は残っているが、腹部に槍が突き刺さり、いまだ大勢に囲まれている。ただ、よく見ると衛兵達にはライフゲージが表示されていない。つまりはトラップの類だ。
「俺に構うな! 女騎士を頼む!」
「分かったわ、必ず仇はとってみせる!」
え、いや、俺、まだライフ残ってるからね。
ミスリルは前に向き直ると階段を駆け上がった。それを見下ろすように、上段にいるシャルロッテがゆるやかに剣を抜く。非常に細身な剣、レイピアだ。
「せいぃあぁあああー!!!」
掛け声と共にミスリルの剣閃が女騎士を捉え……なかった。シャルロッテは軽やかに身を翻すと、そのまま回り込むように反撃に転じてきた。手元が速すぎて目では追い切れない剣の嵐。ミスリルも負けじとチート盾の“鉄壁”で、剣撃の全てを受けきってみせた。
これにはさすがに女騎士も手を止め間合いをとった。
「ほう、初見で私の剣を凌いだのは貴公が初めてだ。名を聞いておこうか」
「初めて? その程度の腕で? それじゃあ今日は相手が悪かったわね。私は何人の攻撃も受けたことのない汚れなき戦士、《ミスリル》。覚えておくといいわ」
何言ってんだ! ボスに一瞬でやられたりしてるくせに。つーか、嘘ついてる時点で汚れてるだろ。
「我が名は《シャルロッテ》。では参る!」
再び高速のレイピアとチート盾が激しく衝突した。どちらも一歩も譲らない。つーか、これって勝負つくのか?
その間にやっとのことで俺は槍トラップを抜け出した。
「ミスリル! ずっとガードしてたってしょうがねぇぞ!」
「あはっ、タナーカー、無事だったんだ」
「このっ! 勝手に仇とか言ってんな! それよりダメージ覚悟で反撃しちまえよ!」
「ダメよ、コイツの剣は喰らったら最後よ」
何言ってんだ? 敵のステータスは確認したが、三人目にしては大したことなかったはずだ。とにかくレイピアによる剣速を活かした分り易いスタイルで、防御力や体力は警戒する必要はない。ダメージ覚悟で闘えばミスリルの武器と攻撃力なら余裕で勝てるはずだ。
念の為、奴の武器も調べるか。種類はレイピア、名前は“点穴”、そして説明には“必ず急所を貫く一撃必勝の剣”とあった……って、一撃!? おいおい、チート対決じゃないか!
なんだっけこういうの、“最強の矛と最強の盾”だっけか? とにかく、このままじゃ均衡が破れそうにない。
「タナーカー、なんとかコイツの動きを止めて!」
止めろって無茶言うな! それができりゃ苦労しない。いや……待てよ。
「いーか、今から一瞬だけ間を作ってやる。動きを止めたきゃ、いくらでも自分のチート武器でやれ!」
俺の役目はほんの一瞬、道化師専用の飛び道具“クレイジー・ボム”を二人の間に投げつけた。大して威力はないが、弾けた衝撃で狙い通り二人の距離に少しばかりの“間”ができる。
「いいよ、タナーカー、それ最高!」
瞬時にミスリルは《大地の嘆き》を装備した。さすがは相棒、ここまでくると以心伝心だ。唯一の心配は両手剣ゆえに盾が外れてしまうのだが、奴が迫るより先にミスリルの《大地の嘆き》が地面を震わせた。
次の瞬間、シャルロッテの動きは封じ込められた。特殊効果の麻痺が効いたようだ。いける!
ところが、次の攻撃はすぐに決まらなかった。なぜかミスリルは剣を引っ込めると、やけに古めかしい大きなツボを取り出した。
「何やってんだ! 急げって!」
「うるっさい! これが私流なのよ!」
謎のツボを持ち上げ、奴に近付いてゆく……ええっ、ちょっとそれ、どうする気だ!?
「そぉーりゃぁ!!!」
ドガシャーーン!!
それはそれは激しくシャルロッテの頭を打ちつけ、ツボは砕け散った。
「はぁーっ、超ドキドキしたぁ! 一度この《カチワリ土器》使ってみたかったのよね」
「って、それ武器かよっ! しかも土器かよっ!」
「何よ、タナーカーが『チート武器で』って言ったんじゃない」
コイツ、どんだけ特殊アイテム持ってんだ。しかも一撃で体力全てを奪っちまうとは……ん? ってことは、今のも一撃必勝の武器? まさか奴のレイピア“点欠”に張り合ったのか。
「そっか、それで『私流』か。本当、たいした奴だな。ん……あれ?」
完全勝利。なのになぜかミスリルはとても見覚えのある大きなツボを取り出していた。
「どうしようタナーカー、まだドキドキが止まらない」
なに言ってんだ? ミスリルはツボをゆっくり頭の上まで掲げると、さらに階段を駆け上がり出した。
「ばっ……やめろ!! その先にいるのは王様だぞ!!!」
どうしたらそうなるんだ! 例の百倍返しってやつか? いくらなんでも滅茶苦茶だ! 逃げて王様!!
俺の静止も虚しく、まさにミスリルが王様の頭にツボを叩きつける瞬間だった。
ポワワワーン♪
『フィールドクエスト“キュール王の後継”が発生しました』
突然のシステム音声。と同時に歓喜が起こった。
「「うおおおー!」」
「「ユニクエきたぁああああ!!」」
これまでじっと静観していたギャラリー連中だった。いきなりの盛り上がりに状況把握が追いつかない。つーか「ユニクエ」って何だ?
ともかく、ミスリルが王様に接触したことが何かしらのクエスト発動に繋がったようだ。って、あれ? 俺は王様のところに行ってないんだけど。これ、どうなるんだ?
そこに、なぜか俺達の後ろをずっとついてくるプレイヤー達がいた。ついさっきミスリルの戦闘を見て盛り上がってた野次馬連中だが、まさかコイツら、あれでファンになったとか言わないよな? オンラインゲームじゃ、ただのプレイヤーがアイドルに……なんて話もあるらしい。
いや、いくらなんでもそれは唐突過ぎる。たった一、二戦でファンってのはおかしい。急に野次馬ができた理由は何か他にあるはずだ。
とりあえずゲーム内の掲示板をチェックしてみると、最新トピックに“キュール王キタ!?”とあった。“キタ!?”ってなんだ?
投稿を辿ると、キュール王の存在は未だ未確認と書かれていた。いやいや、普通に王様はいるだろ。今だって王様に会いにこの城に来たんだから。さらに読み進めると、門番の《バッカス》や騎士の《ラミー》との戦闘が新たに確認されたと書かれていた。
げ! これってまさか、後ろの連中が書き込んでるのか? 俺達の攻略ルートで何かが起きていて、その真偽を確かめに来たってとこか。
後ろをチラ見する。それでか、さっきよりも人が増えてるのは。つーか、特別なことした覚えはないんだが……厄介なことになってきたな。
あれこれ考えているうちに、目の前に一際大きな扉が見えてきた。近付くほどに、扉の装飾が鮮明になる。薄暗くても分かるほどの眩い金細工は、ここが“王の間”であることを確信させた。
「すっごい扉ね」
黙々と隣を歩いていたミスリルが感嘆の声を漏らした。
ん……? ああっ! そうか、コイツだ! そうだよ、何も俺がしたこととは限らないんだ!
確か門番の奴に「この街の者ではないな」とか言われたよな。あの時は街でのイベント漏れかと思ったけど、そんなの珍しくも何ともない。もっとシンプルに考えろ。ミスリルがしたこと……いや、しなかったこと! コイツは一度も街に入ってない!!
「あはっ、やばい、なんかドキドキしてきた」
演技がかってない素の台詞から高揚感が伝わってくる。そういやコイツ、このゲームを絵本で読んだ冒険みたいって言ってたな。確かに日常じゃ得難い体験だし、テンション上がって当然だよな。ま、今の状況が相当に特別だってこと、当の本人は気付いちゃいないんだろうけど。
多くのプレイヤーは東の平原から来て、北の森に抜ける道がないと分かると街を通っていく。それを南下してわざわざ海岸沿いを迂回する奴はいない。仮にいたとしても、あの門番や騎士はこのフィールドにしては強すぎる。ミスリルのチートなステータスに装備、加えて俺のテクニックがなければ、到底ここまで辿りつけなかったはずだ。
俺はそんな今の状況が特別だって認識できてるし、そこにきて“ロープレ”で“お城”といったらもう、盛大なファンファーレの出迎えを期待せずにはいられなかった。
「やべ、なんかこっちまでテンション上がってきた」
ミスリルがこっちの顔を窺うように見てきた。俺はそれに大きく頷いて返す。後ろの連中はただ固唾を呑むように見守っている。
そして二人は示し合わせるように大きな扉に手を掛けた。
開かれた扉から溢れ出した光は、暗闇に慣れきった目を真っ白に眩ませた。しばらくして視界が戻るにつれ、辺りが色付き鮮明になってゆく。
眼前には突き抜けるように高い天井があり、複数の天窓から射し込む光が幾重もの筋となって輝いていた。室内は城全体の敷地と錯覚するほどの大広間で、入口から部屋の奥へ伸びた鮮やかな赤い絨毯がひと際目を引き付ける。絨毯の両脇には衛兵が隊列を組み、さらに先にある階段を二階の高さほど登った玉座まで敷き詰めていた。その玉座に座っている人物こそ噂の中心……そう、この城の王、《キュール王》に違いない。
この盛大な出迎えが俺達の為かと思うと、ちょっとした感動すら覚える思いだった。バイザー越しで実際には見えないが、小金沢の方は今どんな顔をしてるだろう?
「『タナーカー! 走って!!』」
目の前の小金沢が発した声と、バイザーからのミスリルの声が重なって、意識がゲームに引き戻された。
すぐに異変に気付く。周りの衛兵達が持っていたのは歓迎の“ラッパ”ではなく“長槍”だった。さらには玉座に至る階段の中腹にいた騎士すら見落としていた。
細身の体に束ねた長い金髪、そして顔立ちからしておそらく女騎士だろう。アイコン横には《シャルロッテ》という名前ともう一つ、例のライフゲージが伸び始めていた。まさかの三人目だ。
目を奪われていたうちに両脇に並んだ衛兵達は槍を構え、一斉に赤い絨毯の中央目掛けて前進していた。俺は出遅れつつもミスリルに続いて左右から迫る槍の中を駆け抜ける。これが現実だったら狂気の沙汰としか思えない……ってかもう、タイミングアウトだろ!
「痛ってえ!!」
実際には痛くないが、想像力が痛みを感じさせる。
「タナーカー!!」
先行したミスリルは間一髪で隊列を抜け出せたようだ。良かった。
そうなると問題は俺だ。ギリギリ体力は残っているが、腹部に槍が突き刺さり、いまだ大勢に囲まれている。ただ、よく見ると衛兵達にはライフゲージが表示されていない。つまりはトラップの類だ。
「俺に構うな! 女騎士を頼む!」
「分かったわ、必ず仇はとってみせる!」
え、いや、俺、まだライフ残ってるからね。
ミスリルは前に向き直ると階段を駆け上がった。それを見下ろすように、上段にいるシャルロッテがゆるやかに剣を抜く。非常に細身な剣、レイピアだ。
「せいぃあぁあああー!!!」
掛け声と共にミスリルの剣閃が女騎士を捉え……なかった。シャルロッテは軽やかに身を翻すと、そのまま回り込むように反撃に転じてきた。手元が速すぎて目では追い切れない剣の嵐。ミスリルも負けじとチート盾の“鉄壁”で、剣撃の全てを受けきってみせた。
これにはさすがに女騎士も手を止め間合いをとった。
「ほう、初見で私の剣を凌いだのは貴公が初めてだ。名を聞いておこうか」
「初めて? その程度の腕で? それじゃあ今日は相手が悪かったわね。私は何人の攻撃も受けたことのない汚れなき戦士、《ミスリル》。覚えておくといいわ」
何言ってんだ! ボスに一瞬でやられたりしてるくせに。つーか、嘘ついてる時点で汚れてるだろ。
「我が名は《シャルロッテ》。では参る!」
再び高速のレイピアとチート盾が激しく衝突した。どちらも一歩も譲らない。つーか、これって勝負つくのか?
その間にやっとのことで俺は槍トラップを抜け出した。
「ミスリル! ずっとガードしてたってしょうがねぇぞ!」
「あはっ、タナーカー、無事だったんだ」
「このっ! 勝手に仇とか言ってんな! それよりダメージ覚悟で反撃しちまえよ!」
「ダメよ、コイツの剣は喰らったら最後よ」
何言ってんだ? 敵のステータスは確認したが、三人目にしては大したことなかったはずだ。とにかくレイピアによる剣速を活かした分り易いスタイルで、防御力や体力は警戒する必要はない。ダメージ覚悟で闘えばミスリルの武器と攻撃力なら余裕で勝てるはずだ。
念の為、奴の武器も調べるか。種類はレイピア、名前は“点穴”、そして説明には“必ず急所を貫く一撃必勝の剣”とあった……って、一撃!? おいおい、チート対決じゃないか!
なんだっけこういうの、“最強の矛と最強の盾”だっけか? とにかく、このままじゃ均衡が破れそうにない。
「タナーカー、なんとかコイツの動きを止めて!」
止めろって無茶言うな! それができりゃ苦労しない。いや……待てよ。
「いーか、今から一瞬だけ間を作ってやる。動きを止めたきゃ、いくらでも自分のチート武器でやれ!」
俺の役目はほんの一瞬、道化師専用の飛び道具“クレイジー・ボム”を二人の間に投げつけた。大して威力はないが、弾けた衝撃で狙い通り二人の距離に少しばかりの“間”ができる。
「いいよ、タナーカー、それ最高!」
瞬時にミスリルは《大地の嘆き》を装備した。さすがは相棒、ここまでくると以心伝心だ。唯一の心配は両手剣ゆえに盾が外れてしまうのだが、奴が迫るより先にミスリルの《大地の嘆き》が地面を震わせた。
次の瞬間、シャルロッテの動きは封じ込められた。特殊効果の麻痺が効いたようだ。いける!
ところが、次の攻撃はすぐに決まらなかった。なぜかミスリルは剣を引っ込めると、やけに古めかしい大きなツボを取り出した。
「何やってんだ! 急げって!」
「うるっさい! これが私流なのよ!」
謎のツボを持ち上げ、奴に近付いてゆく……ええっ、ちょっとそれ、どうする気だ!?
「そぉーりゃぁ!!!」
ドガシャーーン!!
それはそれは激しくシャルロッテの頭を打ちつけ、ツボは砕け散った。
「はぁーっ、超ドキドキしたぁ! 一度この《カチワリ土器》使ってみたかったのよね」
「って、それ武器かよっ! しかも土器かよっ!」
「何よ、タナーカーが『チート武器で』って言ったんじゃない」
コイツ、どんだけ特殊アイテム持ってんだ。しかも一撃で体力全てを奪っちまうとは……ん? ってことは、今のも一撃必勝の武器? まさか奴のレイピア“点欠”に張り合ったのか。
「そっか、それで『私流』か。本当、たいした奴だな。ん……あれ?」
完全勝利。なのになぜかミスリルはとても見覚えのある大きなツボを取り出していた。
「どうしようタナーカー、まだドキドキが止まらない」
なに言ってんだ? ミスリルはツボをゆっくり頭の上まで掲げると、さらに階段を駆け上がり出した。
「ばっ……やめろ!! その先にいるのは王様だぞ!!!」
どうしたらそうなるんだ! 例の百倍返しってやつか? いくらなんでも滅茶苦茶だ! 逃げて王様!!
俺の静止も虚しく、まさにミスリルが王様の頭にツボを叩きつける瞬間だった。
ポワワワーン♪
『フィールドクエスト“キュール王の後継”が発生しました』
突然のシステム音声。と同時に歓喜が起こった。
「「うおおおー!」」
「「ユニクエきたぁああああ!!」」
これまでじっと静観していたギャラリー連中だった。いきなりの盛り上がりに状況把握が追いつかない。つーか「ユニクエ」って何だ?
ともかく、ミスリルが王様に接触したことが何かしらのクエスト発動に繋がったようだ。って、あれ? 俺は王様のところに行ってないんだけど。これ、どうなるんだ?
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