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二章 勇者誕生
2-13 勇者認定
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「全員、剣を収めよ!」
壇上からの大きな声に誰もが注目した。
声の主はキュール海のように鮮やかな青のマントを纏い、顔立ちは壮年ながらも鋭い眼光を携え、口の上には立派なヒゲを生やしている。冠こそしていないものの、そこには紛れも無く王の風格が窺えた。
「我が名はピエタ・ラ・ビ・キュールである」
名乗ると同時に「キタァー!」とか「喋った!」とか「動いた!」など、野次馬連中が歓声とも悲鳴ともつかぬほど湧き立った。お目当ての《キュール王》本人を目の当たりにして、異様なテンションになっているのだろう。
あんたら外野のくせに何を盛り上がってんだ……って、そういう俺も今は外野だった。
当のミスリルは、振り上げた腕を宙に浮かせたまま何が起きたか分からず戸惑っていた。持っていたツボは、おそらく強制イベントってことで消えてしまったのだろう。
また、例のごとく倒した女騎士は復活していて、既に階段の中腹に戻っていた。槍兵達も始めに見た通りの位置に隊列を整え直している。
「さて、貴公はミスリルといったか。まさかバッカスやラミーに続き、シャルロッテまで退けるとはな。見事だ。いや、それよりもまずは非礼を詫びねばならぬ。すまなかった」
王自らが深々と頭を下げて謝罪をした。これには誰もが意表をつかれた。
さすがにミスリルも何かが始まらんとする空気を感じ取ったのか、キュール王の前で跪いた。
「いえ、キュール王には深いお考えがあってのことと理解しております」
おいおい、ついさっきまで土器を叩きつけようとしてたくせに何を聞き分け良いこと言ってんだ。
キュール王は頭を戻すと改めて話し始めた。
「このような辺境の地で王などやっておるが、我が祖先は世界中の魔物を討って旅をしていた一族だ。我も王位を継ぐ前は“猛将ピエタ”と呼ばれ、当時は貴公の千倍は強かったものだ」
千倍とか有り得ないだろ。
「キュール王の武勇伝は私も聞き及んでおります」
おいおい、いつ聞いたよそんな話? なんでどっちも嘘つくんだ。
「しかし、いかに勇猛な血筋だとしても寄る年波には勝てぬ。その上、生憎と我が授かった子は娘であった」
“ガチャ”と鎧の音が響くと、女騎士のシャルロッテが一礼した。えっ、アナタ、お姫様だったの!?
「我は貴公のような勇気と強さに溢れた若者が現れるのをずっと待っておったのだ」
ちょっと待って、それ血筋とか関係ないじゃん。
「いえ、私などまだまだ若輩者です」
いやいや、「まだまだ」も何も、娘に継がないのは女だからなんじゃないの? っていうか、ミスリルは人の話し聞いてないし、王様は言ってること滅茶苦茶だよ。
「ふ、粗削りだがそれで良い。我が求めるのは己の限界を知らぬ者。それは歴戦の戦士では務まらぬ。今はまだ原石だが、貴公が見せた才能の片鱗と、その内に秘めた可能性は確かなものであった。我の目に狂いはない」
いやいや、アナタの娘さんと同じで、全部、装備の力ですって。眼鏡曇ってますよー。しかも、つまるとこ血筋に関わらず、性別も関係ないって、なんだこの茶番。
そして僅かばかりの沈黙の後、さらに冗談のような話は続いた。
「戦士・ミスリルよ、どうだろう、この世界を救ってはくれぬか?」
な、世界!?
「はい、喜んで」
軽っ! ノリ軽っ! 居酒屋かよっ……つーか、なに勝手に返事してんだ!
ジャラララーーーン!♪
これまでに聞いたことがない程の豪華なシステム音が鳴り響いた。
しまった、俺には見えてないけど、何か設問が出てたんだ。しかも今、ソッコーでOK押したろ。
「我らは誇り高きキュールの民。貴公にこれを授けよう」
そう言ってキュール王はミスリルに近付くと、首にネックレスのようなものをさげた。次の瞬間、ミスリルの全身が光りに包まれる。
「「うおおおーー!! すっげぇーー!!」」
再びギャラリー連中が湧き上がった。
「それは行く先々で貴公の助けとなるであろう。では頼んだぞ、我らの誇りを受け継ぐ者、《勇者・ミスリル》よ」
「「勇者キターーー!!!」」
え! ちょっ、今、「勇者」って言わなかったか!?
見ると、目の前のパートナーの頭上には《勇者・ミスリル》と新たな名前が刻まれていた。これってあのキングプレイヤーみたいな称号と同じってことか? いや、それどころか勇者ってことは、おいおい……完全にユニークネームじゃないか!
急いでミスリルのアイコンを確認する。まさかとは思ったが、さっきのネックレスは《勇者のあかし》となっていた。本物だ。なんか、えらいことになってきたぞ。
「「ミスリル!! ミスリル!! ミスリル!!」」
ギャラリーが沸きに沸き上がり、当分騒ぎは収まりそうになかった。心配になってゲーム内の掲示板を覗いてみると、最新トピックは“勇者生まれた”の話題で持ちきりになっていた。
終始ツッコミどころ満載のキュール王とミスリルの掛け合いだったが、まさかネットアイドルどころか勇者になってしまうとは……これ、炎上するんじゃないか?
壇上からの大きな声に誰もが注目した。
声の主はキュール海のように鮮やかな青のマントを纏い、顔立ちは壮年ながらも鋭い眼光を携え、口の上には立派なヒゲを生やしている。冠こそしていないものの、そこには紛れも無く王の風格が窺えた。
「我が名はピエタ・ラ・ビ・キュールである」
名乗ると同時に「キタァー!」とか「喋った!」とか「動いた!」など、野次馬連中が歓声とも悲鳴ともつかぬほど湧き立った。お目当ての《キュール王》本人を目の当たりにして、異様なテンションになっているのだろう。
あんたら外野のくせに何を盛り上がってんだ……って、そういう俺も今は外野だった。
当のミスリルは、振り上げた腕を宙に浮かせたまま何が起きたか分からず戸惑っていた。持っていたツボは、おそらく強制イベントってことで消えてしまったのだろう。
また、例のごとく倒した女騎士は復活していて、既に階段の中腹に戻っていた。槍兵達も始めに見た通りの位置に隊列を整え直している。
「さて、貴公はミスリルといったか。まさかバッカスやラミーに続き、シャルロッテまで退けるとはな。見事だ。いや、それよりもまずは非礼を詫びねばならぬ。すまなかった」
王自らが深々と頭を下げて謝罪をした。これには誰もが意表をつかれた。
さすがにミスリルも何かが始まらんとする空気を感じ取ったのか、キュール王の前で跪いた。
「いえ、キュール王には深いお考えがあってのことと理解しております」
おいおい、ついさっきまで土器を叩きつけようとしてたくせに何を聞き分け良いこと言ってんだ。
キュール王は頭を戻すと改めて話し始めた。
「このような辺境の地で王などやっておるが、我が祖先は世界中の魔物を討って旅をしていた一族だ。我も王位を継ぐ前は“猛将ピエタ”と呼ばれ、当時は貴公の千倍は強かったものだ」
千倍とか有り得ないだろ。
「キュール王の武勇伝は私も聞き及んでおります」
おいおい、いつ聞いたよそんな話? なんでどっちも嘘つくんだ。
「しかし、いかに勇猛な血筋だとしても寄る年波には勝てぬ。その上、生憎と我が授かった子は娘であった」
“ガチャ”と鎧の音が響くと、女騎士のシャルロッテが一礼した。えっ、アナタ、お姫様だったの!?
「我は貴公のような勇気と強さに溢れた若者が現れるのをずっと待っておったのだ」
ちょっと待って、それ血筋とか関係ないじゃん。
「いえ、私などまだまだ若輩者です」
いやいや、「まだまだ」も何も、娘に継がないのは女だからなんじゃないの? っていうか、ミスリルは人の話し聞いてないし、王様は言ってること滅茶苦茶だよ。
「ふ、粗削りだがそれで良い。我が求めるのは己の限界を知らぬ者。それは歴戦の戦士では務まらぬ。今はまだ原石だが、貴公が見せた才能の片鱗と、その内に秘めた可能性は確かなものであった。我の目に狂いはない」
いやいや、アナタの娘さんと同じで、全部、装備の力ですって。眼鏡曇ってますよー。しかも、つまるとこ血筋に関わらず、性別も関係ないって、なんだこの茶番。
そして僅かばかりの沈黙の後、さらに冗談のような話は続いた。
「戦士・ミスリルよ、どうだろう、この世界を救ってはくれぬか?」
な、世界!?
「はい、喜んで」
軽っ! ノリ軽っ! 居酒屋かよっ……つーか、なに勝手に返事してんだ!
ジャラララーーーン!♪
これまでに聞いたことがない程の豪華なシステム音が鳴り響いた。
しまった、俺には見えてないけど、何か設問が出てたんだ。しかも今、ソッコーでOK押したろ。
「我らは誇り高きキュールの民。貴公にこれを授けよう」
そう言ってキュール王はミスリルに近付くと、首にネックレスのようなものをさげた。次の瞬間、ミスリルの全身が光りに包まれる。
「「うおおおーー!! すっげぇーー!!」」
再びギャラリー連中が湧き上がった。
「それは行く先々で貴公の助けとなるであろう。では頼んだぞ、我らの誇りを受け継ぐ者、《勇者・ミスリル》よ」
「「勇者キターーー!!!」」
え! ちょっ、今、「勇者」って言わなかったか!?
見ると、目の前のパートナーの頭上には《勇者・ミスリル》と新たな名前が刻まれていた。これってあのキングプレイヤーみたいな称号と同じってことか? いや、それどころか勇者ってことは、おいおい……完全にユニークネームじゃないか!
急いでミスリルのアイコンを確認する。まさかとは思ったが、さっきのネックレスは《勇者のあかし》となっていた。本物だ。なんか、えらいことになってきたぞ。
「「ミスリル!! ミスリル!! ミスリル!!」」
ギャラリーが沸きに沸き上がり、当分騒ぎは収まりそうになかった。心配になってゲーム内の掲示板を覗いてみると、最新トピックは“勇者生まれた”の話題で持ちきりになっていた。
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