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紅い月のもとで
第十三話 紅い月のもとで③
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ヴァルキュリアと交換しただと、まさかメリッサと? いやそれは違う、奴には最初に襲われた時から脚力があった。
そうか! 宿の部屋でメリッサが刺されたとき、彼女はその身体能力の異様さに気づいたんだ。
メリッサは武術の心得がある、不意を突かれたとはいえ間合いの取り方は、熟知していただろう。なのにあっさりと刺されてしまった。そのとき、老婆の脚力に脅威を感じたんだ、狭い空間ではあっさりと間合いを詰められ、銃は不利だろう。
──だから、僕に逃げろと言ったんだ。
僕はなんと愚かな選択をしたんだ、わざわざ老婆を、こんな狭い空間に招き入れるなんて、自殺行為だ。まずいことになった……。それにしても、老婆のショートソードの切れ味は鋭い、木とはいえさっくり切ってみせた。
ん、まてよ、そうか! これを利用すれば――
ショートソードを持つ老婆の手を防いでいる僕の手の力を緩める、徐々に光の刃が僕の顔に近づいてきた。老婆は口元をゆがめ、刃が僕の顔を刺そうとするその瞬間――!
僕は素早く顔を傾け刃をかわす、老婆は体重をかけて力を込めて刃で僕の顔を貫こうとしていた。その力が余って、硬いコンクリートの床に光の刃が刺さったのだ。しめた──!
老婆は刺さったショートソードをなんとか引き抜こうとするが、光の刃は鋭く、深々と刺さっている。その刹那僕は間髪入れず老婆との間に足を入れ、蹴り飛ばし、体を起こす。武器を探すと、さっき捨てたMP7A1が地面に落ちていた。
すぐさま、リトラクタブル・ストックをしまい、そのストックの部分で老婆の頭を殴る。一回、二回、三回、僕は硬いストックの部分で思いっきり殴りつける。僕の手が痺れたころ、老婆はよろめいている、よし、だがそのときだった──光の刃が床から抜け、閃光が僕のもとへやってくる。
襲ってくる光の刃――
僕は咄嗟に利き手の右手で顔をかばおうとした。しかし、光の刃は僕の右腕をすっぱり切り落とす。
血がとめどなく流れて落ちていく、まるで洪水、あわてて、僕はその場から逃げ出した。だが、追撃がやってくることはない、振り返ると老婆がよろめきながら頭を押さえている、おそらく脳しんとうだろう、なら今のうちにこの場から離れよう。
──そしてすぐに、僕は町中に戻った。
早く、早く彼女に会いたい、メリッサは大丈夫だろうか、僕は一心不乱に探す。
「佑月!」
遠くからメリッサの声が聞こえる。
「メリッサ!」
僕は彼女の呼びかけに答える、喜びのあまり声がいつもよりも高くなった。
僕はメリッサの姿を見て、衝撃を受けた、服は切り刻まれ胸、肩、太ももがむき出しになりながら、深く切り刻まれ、血で真っ赤だ。ところどころ刺し傷で血で真っ赤に染まった民族衣装で、顔は片目が刺されたのだろう。血が目から流れており、頭も赤く染まっている、全身切り傷でいっぱいだ。
メリッサは口から血を吐きながら、笑って見せた。
「お互い無様な姿になったな、なんだ私に見とれているのか?」
僕は発狂寸前になりながら、彼女を強く抱きしめた。
「よかった……よかった……また会えて」
僕の手は震えていた、おそるおそる彼女の頬をなでようとする、あれ、変だ僕は右手を出して……? 手を見ると僕の右手がないことに改めて気づく。その情けない様子を見てメリッサは優しく苦笑した。
「あの老婆の気配がする、まだ倒したわけじゃないんだな」
メリッサは冷静に状況把握をしていた、冷静に策を考えるため、とりあえず僕たちは老婆から距離を取ることにした。老婆の気配が途切れたとメリッサが言ったところで、僕は老婆との戦いを詳しく話した。
「そうか……ヴァルキュリアの体を部分的に奪ったのか、むごいことをする」
僕も同感だった、あの老婆の狂気じみた考えに怖気を感じる。メリッサは僕の瞳をまっすぐ見つめた。
「それで、勝算はあるのか? お前は利き手じゃない片手だぞ。武器もまともに扱えまい、どうする?」
「僕に考えがある」
それを聞いてメリッサは胸をなで下ろした。
「そうか、弱音を吐かずに済みそうだな、よかった、なら武器を創れ」
彼女の言葉に僕は静かに呟いた。
「――メリッサ・ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」
世界が歪みゆく、僕とメリッサ二人だけになった。
「――イメージしろ。お前は何を思い描く? ――」
儀式が終わった後、僕はメリッサから武器を手渡される、その武器を見てメリッサは不思議そうに問うた。
「そんなものでいいのか? もっと……」
疑惑の目を向けた彼女に笑顔で僕は答える。
「いや、これでいい。この武器でやつを倒せる。必ず」
────────────────────────────
空に滲む紅い月のもと、真っ赤な返り血を浴びた老婆は獲物を探しつづけた。今回の獲物はしぶとい、しかし手を切ってやった、なら、次で仕留めてやろうと老婆は思った。
点々と続く血を老婆はたどった、すると天井が低い、窓やドアが取り外された、狭い空き家へとつづいていた。人の気配を感じる。
エインヘリャルがそばにいることを強く感じた老婆は獲物の存在を確信した。
(おやおやまた同じ手かい? やつの武器はわかった。こんどこそ……!)
老婆は銃弾に気をつけてドアがあった入り口の空間に身を潜めた。じんわり、影が建物側に伸びているのに気づく、老婆は勝利を確信した。あちら側からは老婆の影が見えない、銃に照準を合わさせる暇もなく距離を詰められるだろう。
老婆は笑みをこらえきれない、思わず老婆は叫んだ。
「さあ最後の時間だよ! 死ね坊や!」
そうか! 宿の部屋でメリッサが刺されたとき、彼女はその身体能力の異様さに気づいたんだ。
メリッサは武術の心得がある、不意を突かれたとはいえ間合いの取り方は、熟知していただろう。なのにあっさりと刺されてしまった。そのとき、老婆の脚力に脅威を感じたんだ、狭い空間ではあっさりと間合いを詰められ、銃は不利だろう。
──だから、僕に逃げろと言ったんだ。
僕はなんと愚かな選択をしたんだ、わざわざ老婆を、こんな狭い空間に招き入れるなんて、自殺行為だ。まずいことになった……。それにしても、老婆のショートソードの切れ味は鋭い、木とはいえさっくり切ってみせた。
ん、まてよ、そうか! これを利用すれば――
ショートソードを持つ老婆の手を防いでいる僕の手の力を緩める、徐々に光の刃が僕の顔に近づいてきた。老婆は口元をゆがめ、刃が僕の顔を刺そうとするその瞬間――!
僕は素早く顔を傾け刃をかわす、老婆は体重をかけて力を込めて刃で僕の顔を貫こうとしていた。その力が余って、硬いコンクリートの床に光の刃が刺さったのだ。しめた──!
老婆は刺さったショートソードをなんとか引き抜こうとするが、光の刃は鋭く、深々と刺さっている。その刹那僕は間髪入れず老婆との間に足を入れ、蹴り飛ばし、体を起こす。武器を探すと、さっき捨てたMP7A1が地面に落ちていた。
すぐさま、リトラクタブル・ストックをしまい、そのストックの部分で老婆の頭を殴る。一回、二回、三回、僕は硬いストックの部分で思いっきり殴りつける。僕の手が痺れたころ、老婆はよろめいている、よし、だがそのときだった──光の刃が床から抜け、閃光が僕のもとへやってくる。
襲ってくる光の刃――
僕は咄嗟に利き手の右手で顔をかばおうとした。しかし、光の刃は僕の右腕をすっぱり切り落とす。
血がとめどなく流れて落ちていく、まるで洪水、あわてて、僕はその場から逃げ出した。だが、追撃がやってくることはない、振り返ると老婆がよろめきながら頭を押さえている、おそらく脳しんとうだろう、なら今のうちにこの場から離れよう。
──そしてすぐに、僕は町中に戻った。
早く、早く彼女に会いたい、メリッサは大丈夫だろうか、僕は一心不乱に探す。
「佑月!」
遠くからメリッサの声が聞こえる。
「メリッサ!」
僕は彼女の呼びかけに答える、喜びのあまり声がいつもよりも高くなった。
僕はメリッサの姿を見て、衝撃を受けた、服は切り刻まれ胸、肩、太ももがむき出しになりながら、深く切り刻まれ、血で真っ赤だ。ところどころ刺し傷で血で真っ赤に染まった民族衣装で、顔は片目が刺されたのだろう。血が目から流れており、頭も赤く染まっている、全身切り傷でいっぱいだ。
メリッサは口から血を吐きながら、笑って見せた。
「お互い無様な姿になったな、なんだ私に見とれているのか?」
僕は発狂寸前になりながら、彼女を強く抱きしめた。
「よかった……よかった……また会えて」
僕の手は震えていた、おそるおそる彼女の頬をなでようとする、あれ、変だ僕は右手を出して……? 手を見ると僕の右手がないことに改めて気づく。その情けない様子を見てメリッサは優しく苦笑した。
「あの老婆の気配がする、まだ倒したわけじゃないんだな」
メリッサは冷静に状況把握をしていた、冷静に策を考えるため、とりあえず僕たちは老婆から距離を取ることにした。老婆の気配が途切れたとメリッサが言ったところで、僕は老婆との戦いを詳しく話した。
「そうか……ヴァルキュリアの体を部分的に奪ったのか、むごいことをする」
僕も同感だった、あの老婆の狂気じみた考えに怖気を感じる。メリッサは僕の瞳をまっすぐ見つめた。
「それで、勝算はあるのか? お前は利き手じゃない片手だぞ。武器もまともに扱えまい、どうする?」
「僕に考えがある」
それを聞いてメリッサは胸をなで下ろした。
「そうか、弱音を吐かずに済みそうだな、よかった、なら武器を創れ」
彼女の言葉に僕は静かに呟いた。
「――メリッサ・ヴァルキュリア、僕に力を貸せ」
世界が歪みゆく、僕とメリッサ二人だけになった。
「――イメージしろ。お前は何を思い描く? ――」
儀式が終わった後、僕はメリッサから武器を手渡される、その武器を見てメリッサは不思議そうに問うた。
「そんなものでいいのか? もっと……」
疑惑の目を向けた彼女に笑顔で僕は答える。
「いや、これでいい。この武器でやつを倒せる。必ず」
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空に滲む紅い月のもと、真っ赤な返り血を浴びた老婆は獲物を探しつづけた。今回の獲物はしぶとい、しかし手を切ってやった、なら、次で仕留めてやろうと老婆は思った。
点々と続く血を老婆はたどった、すると天井が低い、窓やドアが取り外された、狭い空き家へとつづいていた。人の気配を感じる。
エインヘリャルがそばにいることを強く感じた老婆は獲物の存在を確信した。
(おやおやまた同じ手かい? やつの武器はわかった。こんどこそ……!)
老婆は銃弾に気をつけてドアがあった入り口の空間に身を潜めた。じんわり、影が建物側に伸びているのに気づく、老婆は勝利を確信した。あちら側からは老婆の影が見えない、銃に照準を合わさせる暇もなく距離を詰められるだろう。
老婆は笑みをこらえきれない、思わず老婆は叫んだ。
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