川底の鍵

季徒川 魚影

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 伊藤が進学ではなく就職することに決まったことを、明義はある日夕ご飯の時に知らされた。
 すでに、下宿の先生と伊藤の父親の間でも何度か話し合いが持たれたようであった。
 明義は、自分も進路を決める時になったら、こんな風に下宿の先生から干渉されるのか、と考えただけで、めんどくさいなあ、と思った。
 そんな訳で、三月までいるとばかり思い込んでいた伊藤は、十月いっぱいで下宿から出ていった。
 十一月の初旬のある月曜日の朝、お決まりの朝のスキンシップで、剣もほろろに先生が追い返された後、留美子は明義にメモを渡した。
 明義は、部屋に戻ってそのメモを見た。
「今日は、下宿に戻って昼食を食べてください」「このメモは直ぐにトイレに捨ててください」
 明義は、鞄の準備をしてから、トイレに入った。
 玄関に向う前に、念のため、ダイニング・テーブルを覗いたが、いつも通り明義の弁当箱はあり、彼はそれを持って下宿を出た。

 四時間目の授業は、数学だったが、明義は気も漫ろだった。
 正直、決心するまでには時間がかかった明義だった。
 最終的には、突然鳴った就業のチャイムが彼の背中を押したのかもしれなかった。
 明義は、弾かれるように席を立った。
 下宿に戻って、玄関の扉を開けようとしたが、鍵が掛かっていた。
 明義はインタフォンを押して、少し待った。
 やがて、内側から鍵が開く音がしたので、明義は、引戸を最小限に引き、中に滑り込んだ。
 留美子がすかさず扉に鍵を掛けた。
 二人はともにダイニングに入っていった。
「ちょっと待って、今お茶入れるから」
 明義は弁当箱を鞄から出して食べる準備をした。
「ごめん、明義くん」
 明義は、当然、学校の途中で呼び出したことを留美子が謝ったのだと思った。
「後で合鍵渡して置くね」「はい、どうぞ」「私はもう食べたから」
 明義は、弁当を開け食べ始めた。
「明義くんの弁当だけ作らないと」「怪しまれるから」
 留美子は、明義が弁当を食べるのを楽しそうに眺めていた。
「明義くん、いつも残さないで食べるから」「いい子よねえ」「今日も残さず、食べてね」
 そう言うと、留美子は席を立って行った。
 弁当の後、明義は居間に入っていったが、留美子は居なかった。
 結局、留美子は洗面所に居た。
 一糸纏わずに、鏡に向かい歯を磨いていた。
 留美子の肌が、明かり取りから刺す太陽光に照らされて、白さが強調されて見えた。
 留美子が振り向くと、大きくて、先だけが少し上向きの乳房が見えた。
 彼女は、口をすすぐと直ぐに明義の唇を貪りながら、器用に明義の学生服を脱がしていった。
 そして、洗濯機に両腕を付き、後ろから明義を招き入れた。
「この間みたいに激しくして」
 留美子の動きに合わせて、明義が動き始めた。
 留美子の言いなりになったつもりはなかった明義だが、自然に激しい動きになっていった。
「そう、そうよ、いいわっ」
 留美子は、この間の夜よりも大きなあえぎ声を上げた。
 留美子の尻の弾力のある柔らかさ。
 明義は、その初めて味わう感触に衝撃を覚えていた。
「今日は安全日だけど」「あ、あっ」「出す時は、私の口に出してみて」
 明義はもう少しそうしていたかったので、動きを逆に遅くしてみたが、それは逆効果だった。
 動きが遅くなったことで、明義のペニスは留美子の中の粘着のある感触を余計に感じてしまうことになった。
 明義は耐え切れず、体を離すと、素早く振り返りしゃがんだ留美子の口にペニスを差し入れ、直ぐに射精した。
 学校に戻る自転車の上で、明義は、別の一線を越えてしまったことを自覚した。 
 しかし、不思議と後悔はなかった。
 興味の方がはるかに上回っていたということだろう。
 先生と子供たちの外泊がなくても、このような形で、二人の情事は保たれることになった。
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