モンスターと

水無月

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モンスター王の息子

ピギィの仕事風景

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※ 「俺様専用の人間」の続編です。

  モブが襲われる描写有り。
  レインがピギィ以外にヤられかける場面があります。
  野外、媚薬を含。










 友人の頭にでっかいたんこぶが生えていた。

『どうした、ソレ。人間にやられたのか?』
『ちげぇよ‼ ピギィ様だよー。あの方スラッとしたイケメン囲ってるじゃん? 一晩貸してって頼んだら、ハンバーグにされるとこだったぁあああーッ‼』

 命知らずでアホの友人がわんわん泣き出す。

『ああそう』

 回れ右して帰ろうとしたらローブの裾を掴まれた。

『お前は? 人間(イケメン)飼ってたりしない⁉ 一発ヤらせてくれんか?』
『あ、自分。人間に興味ないです』
『なんで敬語なんだよ! チクショー‼ いいもん。探してくる』

 ダッと走り出す後ろ姿を見送る。




「……」

 嵐のように帰っていったモンスターにぽかんとする。

「さっきのモンスター、知り合いか? 一晩貸してとか言ってたけど。なんだったんだ?」
『ただの下っ端だ。気にするな』

 俺が持ってきた酒を味わう豚のモンスター・ピギィ。これが名前なのか種族名なのかは不明だ。
 岩のような図体なのでもっとこう、樽で飲むと思ったのに。一口飲むのに三分くらい時間をかけている。めちゃくちゃ上品だった。
 










 ピギィは気にするなと言ったが、人間を殺さないか監督する役目もあるらしい。そういえばモンスターの王子に任されてたな。
 さっきのやかましいモンスターを尾行するピギィに、なんとなくついてきた。
 ピギィは気配や足音を消すのが上手い。真横にいるのに存在を忘れそうになるほどだ。
 茂みに身を潜ませ、ピギィは邪魔そうに俺を睨む。

『なんで貴様もついてくるのだ』
「お前と一緒に居たくて……」

 あのモンスターを探すのに夢中で上の空で返事をしてしまっていた。そのせいでピギィの顔を見ていなかった。

『……』

 ぶっすぅと黙り込んだピギィの首には欠けた銀のペンダント。欠けた部分に小粒のレインストーン(青い石)がうまいことはめ込まれてある。……あんな石、初めからついてたっけ?
 一人と一体が茂みからあのモンスターを見守る。

「あのモンスター、なに?」
『うん? 知らんか? インキュバスだ』

 ――インキュバス? あの⁉

 女性を惑わし、部屋に忍び込んでは堂々と襲う悪魔。女性の好みの男性に化ける力もあるとか……
 俺は真面目な顔でゴクリと息を呑む。

「もっと顎落ちるほど妖艶な美人を想像していたんだが、違うんだな」
『貴様は美人を見ると顎外れるのか? あれはまだまだ子ども。姿も長い時間変えられんし妖艶さもない。せいぜい子ども好きの変態をターゲットにするしか精液は手に入らん』

 インキュバスにも下積み時代とかあるんだな。
 ん? 精液?

「インキュバスなのに男を襲うのか?」
『同性を好きになるのはおかしいことか?』

 ……なんも言い返せなかった。






 ――ピギィ様が持っているようなイケメンが好みだが仕方あるまい。

 子ども好きの変態で我慢してやろう。とか独り言が大きいインキュバス君。
 ボロイ服装で金持ってそうなおっさんに声をかけること二人目。変態にヒットした。

「おやおや。可愛いね。お小遣い欲しいかい?」
『お金、ほしいです。たっくさん』

 無力なフリをすれば暗がりに連れて行かれる。そこで服を脱がされた。

『オラオラ‼ さっきまでの威勢はどこにやったんだよ。もっと鳴けや。ブタみてぇによぉお‼』
「お、おうっ‼ 子どものくせに、な、なんて大きい……ぶひぃ、ぶひぃいいいッ」

 中年が十代未満のお子様にガンガンとケツを突かれている。四つん這いにさせられ、髪を掴まれ。身体が前後に揺れる勢いで。剥ぎ取られた下着がその辺に落ちている。
 相手を気遣う優しさとか皆無だろうに、そこはインキュバス。中年のおじさまは目を剥いて唾液を飛ばしていた。

『さっさと出せよ。あの白い液をよぉ? 分かってんだろぉ?』
「くうう。ガキが何たる口の利き方……あ、ぶあ、ああああ~‼ そんな奥までエエエ。あう! あうぅううん!」
『そのガキに喘がされてな~に大人気取ってんだぁああん⁉ 無様に腰へこへこさせてりゃいいんだよ〇〇が‼』
「ブヒぃイイイ‼ わたしはブタですブッヒィイン!」

 見ていられず、俺は顔を伏せた。ピギィは退屈な劇でも見させられているような表情だ。

「あのインキュバス。豹変しすぎじゃないか? ストレスか?」
『相手の好みに化ける能力があるから、一応あれがあの中年の好み、なのだろうよ知らんけどな』

 中年がフィニッシュする際、何故か「見るな」とピギィに視界を塞がれた。

「お、おうおうん。ふうっ、ふうぅう!」

 中年のおじさまがアヘ顔でひっくり返っている。
 不思議なことに、地面に吐き出されるはずの精液は、インキュバスの尻尾に吸い込まれた。掃除機かあの尻尾。

『あぁ……。たまらないね』

 おじさまを踏んづけたまま、恍惚とした表情だ。天を仰ぎ、生への、性への感謝を込めて両腕を広げている。

『次次ぃ!』

 服を着るのも忘れて路地から飛び出る。
 すっぽんぽんのお子様に通行人は「⁉」と驚いていたが、インキュバス君は止まらない。

「色んな意味で元気すぎだろ! あのモンスター。人間は服着ないと捕まるんだぞ! モンスターはそういうのないのか?」
『ないわ。元々服など着ない種族だしな……』

 追いかけるも、治安の悪い街だ。
 すぐに柄の悪そうなお兄さんたちに捕まっていた。……いや。捕まえていた。

『人前でされるのが好きなんだろ? このド変態が。さあさあ! 醜く鳴きな!』
「な、何故それを……ああああっ、イイ! こんなの、初めて……キャイン!」
『お前はやさし~く、なかなかイかせずに先っぽを弄られていたいんだよね? 知ってるよぉお?』
「どうしてバレて……あっああ。さ、最高だ! たまらねぇ。んくううう! ク、クる……」
『お兄ちゃん。僕のパンツのにおいを嗅ぎたいなんて。この、へんたい!』
「俺の理想の弟がここに……はあはあ! なんでも言う事を聞きます……あはっはぁ。な、なので、パンツ下さい‼」

 相手の好み云々はマジらしく、お兄さんたちを下僕に変えていた。

「……なんだこの地獄」
『インキュバスの子どもの食事風景など、こんなものだろう』

 噓だと言ってくれよ。俺は若干頭が痛い。勝手についてきたのは俺だけどさ。

「なんか、二周回って大丈夫そう、だな」

 人を害する気配がないとピギィも悟ったのか、飽きた顔で財布を確認していた。

『食い物でも買ってくる。貴様はそこにいろ』
「え? いいよ悪いし」
『先の酒の礼だ』
「……」

 目を丸くする俺を置いて、ピギィは人混みに紛れていく。
 普通に街に溶け込めているのは、あいつの隠形(視覚的に隠すこと)が上手すぎてほぼ透明人間扱いだからだ。顔をすっぽり隠すフードさえ身につければ誰も気にしない。

 ……あのレベルのモンスターが普通に人里を闊歩している事実に引いたが、不思議と報告する気にはならなかった。人類への、裏切りになるだろうか。

 ゴミ置き場の横の木箱に腰掛け、適当に時間を潰そうとする。

(あいつも真面目だよな)
『お兄さん! 僕とヤらない?』

 十代未満特有の高い声。足元にあのインキュバス君が立っていた。ギョッとして両足を浮かす。
 俺もフードを被っていたが、下から見上げてくる彼からは丸見えだった模様。

『……って、あれ? お兄さん、ピギィ様の肉人形じゃん』
「ごっほ‼」

 むせた。
 とんでもない認識をされている。ひとまず尾行していたことには気づかれていないようだが。
 ニマッとインキュバス君の口角が吊り上がった。

『お兄さぁん。今、暇ぁ? 僕と遊ばない?』

 ぷりぷりと尻を振りながら上目遣い。何も知らなければ素直に可愛いと思う。何も知らなければ。

「い、いえ……。自分は連れを待ってますんで」
『なんで敬語? そう言わずにぃ。極上の時間を提供してあげるよ?』

 膝の上に勝手に乗っかってくる。リンゴ二つ分くらいの重さしか感じなかった。

「間に合ってます!」
『ピギィ様のお相手、大変でしょ? たまには味変しない? 僕みたいな男の子は、どう?』

 んーと唇を近づけられ、逃げるようにのけ反るが後頭部がレンガの壁にぶつかる。

『ねぇねぇ。いいでしょぉ?』
「いらんいらん!」

 腕を回して抱きついてくる。精液を吸収した食事後(事後)のためか、悲しいことにむちむちして抱き心地が良い。
 でもやめてほしい。全裸の男の子を膝に乗せている言い訳が浮かばない。

「服着ろぉ‼」
『えー? 照れてるの? 可愛いねっ』

 顎の下をくすぐられ、鳥肌が立つ。

「このガキッ……」
『ああん』

 膝から蹴り落とすと走って逃げた。でも追いかけてくる。

『待って。お兄ちゃん』
「ついてくるな! おっさんを漁ってろ」
『イケメンが好きなんだもん』

 時速八十で駆けるも距離が縮まってくる。流石はモンスター。見た目がお子様なせいですごく怖い。

『チッ。足速いな』

 背後でインキュバス君が何かしようとした気配を感じ取ったが、

「うげぇ」

 土地勘のない場所を走り回り、たどり着いたのは行き止まり。

『もう逃げられないね? お兄ちゃん』
「う、うぐぐ」

 仕事で大型モンスターに追い詰められた時並みの緊張感。武器持ってきてないしな。
 何かないか、周囲を探す。

『おにーいちゃーん。あっそぼー』
「来んな!」

 飛びついてきたインキュバス君を回避するが、角材を踏んづけて背中から倒れてしまった。ものが散らばった地面に倒れると痛い!

「ッででで……」
『だいじょうぶぅ? おにーちゃん』

 インキュバス君が跨ってくる。俺と目が合うと、ぺろりと舌なめずりした。

『いただきまーす』
「んっ⁉」

 きちんと両手を合わせると、ぷっくり唇が口に吸いついてきた。

「んんんんんんん⁉」

 引き剥がそうと腕を掴むも、とろんと脳が痺れた。

「……う、なん……?」
『インキュバスは初めて? 迂闊にキスを許すと抵抗できなくなるよ』

 ――やっべ……

 徹夜三日目のような身体の重さだ。眠いわけではないが瞼を開けていられなくなってくる。
 動かなくなった人間に、悪魔の尾が上機嫌に揺れた。

『さーて。僕も味わっちゃお。ピギィ様ってば、独り占めしてズルいんだよね』

 服をがばっとめくりあげ、上半身を露わにする。上に乗っかったまま乳首を舐め始めた。

「あ、あっ」
『アハッ。ここで感じちゃうんだ? ピギィ様に開発されちゃったの?』

 つんと指でつかれ、ヒクっと身体が反応してしまう。

「てんめぇ……。調子乗んな」
『強気だね。そんな人をあひあひ鳴かせるの、だぁい好きっ』

 髪を耳にかけ、乳首をちゅうちゅうと吸っていく。ぞわぞわとした甘い痺れに、吸われていない方の胸まで立ってしまう。

「あ、はあ、はう……」
『んふっ。その気になってきた? じゃあ、お兄さんの好みになってあげるよ。まだ長い時間変身はできないけど、ちょっとくらいなら出来ちゃうもんね。力の源である、えっちな液も集まったことだし』

 スペードのような尾の先を舐めながら頬を染めている。
 ギクッとした。今までの被害者たちの反応を見るに、自分でも知らなかった扉をこじ開けられる気がする。

 ――新たな自分とか発見したくないわ!

「う、この。下りろ」
『逃げないでよ、モォ~』

 牛になったインキュバス君がきゅっと下半身の、先端を摘んでくる。幼い手をズボンに突っ込まれ、罪悪感やら嫌悪感がごちゃ混ぜとなった。嫌な汗で服が貼りつく。

「触っ、そんなとこ……」

 ふにふにとした指が先端を軽く引っ張ったり、陰茎を握ったりしてくる。
 激しい刺激ではないが、不思議と甘いミルクでも垂れ流されたように気持ち良さが染み込んでいく。

「ん、く」
『動けないでしょ? アハッ。じゃ、へんし~ん』

 インキュバス君にザザッと砂嵐がかかったかと思うと、体積が十倍ほど膨張した。
 可愛らしい男の子の姿が消え去り、現れたのは、
 豚の耳に張り出た大きなおなか。鋼鉄の蹄に豚さんのお鼻。歴戦の猛者を思わせる鋭い眼光に、皮の鎧。男の象徴を隠す腰巻き。

「……ッ⁉」
『あれえ? この姿って、もしかして、ピギィ様?』

 ピギィだった。声や体臭はインキュバス君のままだが、外見は彼そっくりだ。
 にまぁとインキュバス君(ピギィの姿)が笑う。

『へー。お兄さん。ピギィ様が好きだったんだぁ。いがぁい。ただの肉穴としか思われてないのに? もしかしてお兄さん、ドM?』
「……」

 衝撃で言葉がなかった。
 お、俺って、あ、あいつのこと、好きだったの⁉ いやいやいや……そんな馬鹿なッ‼
 嘘だ! とか、インキュバス君も、ま、まだ子どもだしなとか。ごった煮になった思考は遅々として纏まらない。

「……」
『固まっちゃった。かーわいいっ。つーかここ街中なのにモンスターに変身しちゃったよ。ま、いっか。さぁーて、今のうちに……』

 ズボンを没収されると、杭のようなマラを取り出す。

「……。お、おい。嘘だろ」
『お前の精液も、搾り取らせてもらおう。観念しろ』

 ピギィの口調で言われ、心臓が勝手に高鳴る……気がした。

「こ、こんな。誰かに見られたら」

 明るい時間帯。入り組んだ行き止まりとはいえ、人が全く来ないわけではない。現に今も、人の話し声がちらほらと聞こえる。

『ふん。その情けない姿を見てもらえ』

 片足を肩に担ぐと、尻穴にピンクの液体を塗り込んでいく。

「やめろ! なんだそれは」
『さて。なんだろうな』

 正直ピギィの攻めが激しいので、多少触られた程度では満足できなくなっている身体なのに、妙に疼く。

「……は、あぁ」

 にちゅにちゅと水音に耳を塞ぎたくなる。こんな場所で……

(ダメだ。気持ち、っい……)

 穴の中も丹念に解されていく。

「も、やめ……」

 いやいやと首を力なく振る。インキュバス君は顔を近づけてきた。

『そんなに汁を垂らし、欲しがっておいて何を言う。せいぜい声を出さないようにするのだな』
『で、遺言はそれだけか?』









 
『まったく。こんな場所で何をしている』
「ははは。動けなくなって……。助かった」

 紙袋片手に、ピギィが見下ろしてくる。
 男の子の姿に戻ったインキュバス君は瓦礫に頭から突っ込んでいた。お尻丸出しで。(ピギィが蹴った)(爪先でチョンと)(ピンボールのように飛んだ)。

 身を起こしたいのに、まだ身体は激重だ。

「なんか、動けなくて」
『インキュバスの能力だろう……しかし、ここまで準備万端なのだ。ヤらないのは勿体ないな』
「へ?」

 紙袋を置くと、あろうことかピギィが跨ってくる。

「待て! 街中だぞ⁉ さっきも言ったけど」
『それがどうした。嫌なら逃げればいい』

 動けないのを知って、足首を掴むと指を舐めてくる。相変わらず汚いところだろうとお構いなしだ。

「ま、まま待てって! お前のは無理! 絶対声を抑えられない」

 俺の声を無視して、ナカの様子を確かめるように指を押し込んでくる。

「――ッ、あ! 一言……っぁあああ……あ」

 スムーズにずぶずぶと根元まで入っていく。

「ひとこと、あ、ぁ、言えって……」
『フン。やかましい穴だ』

 指でイイ所を押し込まれ、顎がのけ反った。

「ああ、やっ……! いつもより、感じ……ぁあ‼」

 信じられないことに、あっけなくイってしまう。
 肩で息をする。

「ウソ……」

 精液のにおいにつられたのか、インキュバスが戻ってきた。

『ピギィ様。ピギィ様ぁあん。僕にも分けてよ~。てか、二人で使いましょうよ、この肉人形』

 全開ぶりっ子で頼み込んでいる。指を引き抜くと、ピンク液の付いた指を舐めた。
 まだ汚れていない方の手でインキュバスの頭を掴んだ。俺もインキュバス君も「あ、ハンバーグにされる」と死を覚悟したが、

『ピ、ピギィ様……? ハンバーグにしないで』
『いずれ貴様にも、こいつだ! と思える相手が現れる。それまでテクと男を磨いておけ』
『……』

 インキュバス君の頭をわしゃわしゃと撫でた。乱暴な手つきだが、インキュバス君の頭はもげたりしなかった。
 男の子悪魔はぎゅっと手を胸元で握りしめる。

(ピギィ様、笑ってる……。舐めた真似したらぶち殺すが基本の、暴力の化身のような方が)

 失礼なことを考えながらも、インキュバスはピギィの変化がどこか、羨ましかった。自分にもいつか、「運命」と呼べる相手が……いつか。

『お、お邪魔しました! お幸せに』

 頭を下げると、インキュバスは去っていく。いや待ってえええええ‼ この状況! 二人きりにしないでくれ。お幸せに、ではない。
 こんなこと目の前で言われて、俺はどんな顔すればいいんだよ‼

 手を伸ばすも、インキュバス君の背中は見えなくなった。

「……ピギィ?」

 壊れた人形の動きで、首を豚さんに向ける。彼は驚いたように耳を掻いた。わざとらしい。

『なんだ、聞こえたのか』
「この距離で聞こえないのは鈍感系主人公だけなんよ」
『まあ、安心しろ。記憶を消すのは得意だ』

 それって記憶が消えるほど――
 おっそろしいことを言い放ち、やはり一言なくマラを押し込んだ。

「っ! あぐう」
『ほう。インキュバスの媚薬でとろけたナカも悪くない』

 二人きりの薄暗い洞窟ではなく、人の声が風に乗って届く青空の下。俺はガンガン突かれている。

「あぐぅ、ああっ、や、ピギ……。ああ! こえ、声が」
『ふむ。いつでもヤれる肉便器というのも悪くはない、が。人間は耐久が低いのが難点だ。他に何人か飼うか』
「アアッ、うあああああ」

 慣れてきているはずなのに、シチュエーションが違うだけで興奮してしまう。立たせた乳首に、挿入したまま奴がしゃぶりついた。

「ひゃあ、ああ! ん。あう、舐め、あっあ」
『女のような声をあげおって。そんなに媚薬が気に入ったか?』

 口の周りを舐め、口内に舌が侵入してくる。

「あ、んぶ……」

 上と下の口を封じられ、ピギィの腹に精をかけてしまった。

「あ、ああ。ん」
『またイったのか。媚薬は悪いものではないが、俺様の好きな寸止め放置ができないな』

 ありがとうインキュバス君。でも次会ったら殴る。

「はうっ……う、動かないで、いま……」
『そうか、動いてほしいか』

 いらんこと言ったと後悔する暇もなく後頭部を掴まれ、舌をねじ込まれる。満足に呼吸できない状態で抜き差しが始まった。グチュグチュと内壁を擦られる。

「ッんうう。んう‼ ううっ。ん……んぐう‼」

 酸素を求めて口を開けるが、より奥に舌が入り込むだけだ。
 苦しくなり、下腹部に力が入る。

「んぷ、あう、んぐ‼ あっ、ピギ……んふ……」

 ぶるると身体が震え、薄まった精を吐き出す。絡みついていた舌が口内から出て行く。

「う……ぁあ」
『フン。やはり呼吸を制限するとナカが良く締まる。本当は首を絞めながらヤりたいが……』

 人間の細い首。
 ピギィは諦めたように頭を振った。

 それはそうと、まだ繋がりを解いてはくれない。

「……きゅうけい、させ……」
『ふざけたことを言うな。俺様はまだ一度もイっていないのだ。俺を満足させるがいい。この身体でな』

 顎を掴まれ、獰猛な眼が覗き込んでくる。ゾクゾクと快楽に似た何かが駆け抜け、ナカをきゅうっと締めてしまう。

「あ……」
『なんだ。やる気ではないか』
「違う、今のは……!」
「なんかさっきから、声聞こえねー?」

 複数の足音が近づいてきた。達した余韻と疲労も忘れて俺は思わずピギィにしがみつく。……意外なことに、片腕を背中に回してくれた。

「ピギィ」
『どうした? 続けるぞ』

 この鋼メンタル野郎。
 俺は必死に小声で訴える。

「見られたくない……」
『そうか』

 そうか、ではなくて。

「もしかしてさー。ヤってるんじゃね?」
「あーいるいる。変態多いんだよなこの街」

 こちらへ来る人の影が伸びてくる。角を曲がるまであと三歩もないだろう。

 俺は死ぬ気でしがみついた。

「見られたくない! お前以外に」
『……』
「あれ? 誰もいねーじゃん」
「なんだ。聞き間違いか」

 あるのは角材が散らばった行き止まり。男女カップルはさっさと踵を返し、デートを再開する。




『インキュバスが俺様に化けていた件を詳しく聞きたいのだが』
「じゃあ俺帰るわ! 肉サンドでも持ってきてやるよ」

 俺でもまだはっきりしてないのに説明できるわけがない。
 逃げるように洞窟(ピギィハウス)を去った。











『おかえり』
『ピギィ様が大人の対応してくれた。蹴られたけど』
『絶対ひき肉にされてると思ったから安心したわ……。よく生きて帰ってきたな』

 友人のモンブランウィッチが頭を撫でてくれる。女の子のように小柄でタイプではないはずなのに。その笑顔から目が離せなかった。




【おしまい】

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