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邪神さま降臨のわけ
『違うよー。天使の一人。僕を心配してついてきてくれたの』
天使だったか。天使ってガタイいいんだな。フリルの多い服なのに、はっきりと筋肉が分かるほどパッツパツだった。モンスター退治を生業にしている人のように引きしまったボディ。高い背丈に長い足。爽やかで端正な顔立ち。それらとクラシカルメイド服が見事に事故を起こしていた。
訊ねずにはいられない。
「どうしてメイド服を、着ているん……です?」
『え? 地上では使用人に、ああいう服を着せるんでしょ? 僕は詳しいんだ』
えっへんと腰に手を当てている。あまり地上には詳しくないご様子。
天使とは神の娘・息子たちのような存在。「これ着てね」と邪神さまにメイド服を渡された当時の彼の反応を見てみたかった。是非。
天使まで地上に降臨しているとは。
「あの。邪神さまは――」
ここで前話の冒頭質問に戻る。
『アクティの子たち(人間)との戦いで勝利したって言うから、見に来たの』
アクティとは人間の、人類の創造神。
そうか。自分が作った種族が勝利したとなれば、気になるよな。
それなのに人間をペットにするとは。もしかしてモンスター以外の生物の区別があまりついていないのか。
『なぁに? 僕のこと気になるの?』
「え」
素直に「はい」って言って大丈夫かコレ……。ええい。臆するな! この方は多分、俺のことは、殺しはしないはず。きっと。
「気に、なります」
『ええ? なんだかくすぐったい。次、チョコね』
まだ食べるんですか邪神さま。三~四人前あったサンドイッチがほぼ消えてます。
「すみません。ちょ、ちょこ、ってなんですか?」
『はあ? 僕のことが気になるって言ったのに、なにチョコに浮気してるの? 信じらんない!』
ええええええっ⁉
服を掴まれ前後に揺すられる。もっと首が吹き飛ぶ勢いで揺すられると思ったのだが、なんだか、非力だ。見た目通りと言うか。お風呂に行く際、俺を抱き上げたパワーはいずこへ?
「す、すみません?」
『僕に関する質問がくるんだろうなぁってわくわくしてたのに! 弄ばれたんだけどぉ!』
下唇が上唇を追い越すまでぐぬぅと押し上げ、涙まで滲ませている。噴き出すところだった危ない。
『僕はチョコ以下ってこと⁉』
「ごめんなさい。邪神さま。泣かないで」
ダボついた服の裾で涙を拭う。
『うっ。ドールぢゃんのばがぁ……』
背中をぽんぽんと叩くように撫でてあやすこと数分。ぐすんと泣き止んでくれた。その間、俺の服をしっかり握りしめている小さな手。どうしても子ども扱いしてしまう。
目線をしっかりと合わせる。
「あまり質問責めにしても、申し訳ないかと思ってしまって」
もひもひ。
ぶっすぅと拗ねた顔の涙目邪神さまが俺の服を食べ始める。なんで?
「それは食べ物じゃありませんよ」
肩を掴んでそっと引き剥がす。でも歯が離してくれない。
『うー。うーっ』
ウーウー言いながら首を左右に振る。あーやめてください‼ 弟かと思ってしまうんでいけません邪神さま‼ 駄目だって! 駄々っ子可愛いって思っちゃうって!
「邪神さま? 邪神さまは、サンドイッチでは何が一番好きですか?」
そうだ。質問してあげたらいいんじゃないか?
引き攣り気味の顔で笑みを作る。
俺の服をちうちうと吸っていた邪神さまはようやく口を離してくれた。若干伸びたが、元からだぼ服なのでまあいいだろう。
『う、うえっ、ぐだもの……。いぢごの、さんどいっじの、やつ……』
サファイアがぽろぽろと、夜空の星のような雫をこぼす。ハンカチを持っていないので失礼ながら、引き続き裾で星屑を拭っていく。
イチゴか。真っ先に食べていたな。
「イチゴ! いいですね。俺も好きなんですよ。いい香りなんで!」
『そうなのっ?』
瞳の鍵穴が星になって輝く。
ほんのり笑顔になった邪神さまが皿の上を見回している。もしかして、俺にイチゴのサンドをくれようとしているのか。だが皿はほぼ空っぽ。ちょこサンドしか残っていない。
『……ぐうう』
うりゅっとサファイアの瞳が潤む。あーあーあーあー。もう頭が痛い。
「邪神さま? お気持ちだけで。ドールはお気持ちだけで嬉しいです」
『ドールちゃん……。泣いてない? イチゴ、食べられなかったって、泣いてない?』
子猫をあやすように、美少年がほっぺを舐めてくる。泣かないでね、というように。小さな舌で。
くすぐったくて片目を閉じる。俺に変な性癖が(略)。
「んぅ。ありがとうございます。邪神さま。泣いてませんよ」
『そう? ナメちゃんに持ってこさせなくていい?』
なめちゃん……? ああ。さっきのムキムキメイドさん? ナメンソンさん?
天使だったか。天使ってガタイいいんだな。フリルの多い服なのに、はっきりと筋肉が分かるほどパッツパツだった。モンスター退治を生業にしている人のように引きしまったボディ。高い背丈に長い足。爽やかで端正な顔立ち。それらとクラシカルメイド服が見事に事故を起こしていた。
訊ねずにはいられない。
「どうしてメイド服を、着ているん……です?」
『え? 地上では使用人に、ああいう服を着せるんでしょ? 僕は詳しいんだ』
えっへんと腰に手を当てている。あまり地上には詳しくないご様子。
天使とは神の娘・息子たちのような存在。「これ着てね」と邪神さまにメイド服を渡された当時の彼の反応を見てみたかった。是非。
天使まで地上に降臨しているとは。
「あの。邪神さまは――」
ここで前話の冒頭質問に戻る。
『アクティの子たち(人間)との戦いで勝利したって言うから、見に来たの』
アクティとは人間の、人類の創造神。
そうか。自分が作った種族が勝利したとなれば、気になるよな。
それなのに人間をペットにするとは。もしかしてモンスター以外の生物の区別があまりついていないのか。
『なぁに? 僕のこと気になるの?』
「え」
素直に「はい」って言って大丈夫かコレ……。ええい。臆するな! この方は多分、俺のことは、殺しはしないはず。きっと。
「気に、なります」
『ええ? なんだかくすぐったい。次、チョコね』
まだ食べるんですか邪神さま。三~四人前あったサンドイッチがほぼ消えてます。
「すみません。ちょ、ちょこ、ってなんですか?」
『はあ? 僕のことが気になるって言ったのに、なにチョコに浮気してるの? 信じらんない!』
ええええええっ⁉
服を掴まれ前後に揺すられる。もっと首が吹き飛ぶ勢いで揺すられると思ったのだが、なんだか、非力だ。見た目通りと言うか。お風呂に行く際、俺を抱き上げたパワーはいずこへ?
「す、すみません?」
『僕に関する質問がくるんだろうなぁってわくわくしてたのに! 弄ばれたんだけどぉ!』
下唇が上唇を追い越すまでぐぬぅと押し上げ、涙まで滲ませている。噴き出すところだった危ない。
『僕はチョコ以下ってこと⁉』
「ごめんなさい。邪神さま。泣かないで」
ダボついた服の裾で涙を拭う。
『うっ。ドールぢゃんのばがぁ……』
背中をぽんぽんと叩くように撫でてあやすこと数分。ぐすんと泣き止んでくれた。その間、俺の服をしっかり握りしめている小さな手。どうしても子ども扱いしてしまう。
目線をしっかりと合わせる。
「あまり質問責めにしても、申し訳ないかと思ってしまって」
もひもひ。
ぶっすぅと拗ねた顔の涙目邪神さまが俺の服を食べ始める。なんで?
「それは食べ物じゃありませんよ」
肩を掴んでそっと引き剥がす。でも歯が離してくれない。
『うー。うーっ』
ウーウー言いながら首を左右に振る。あーやめてください‼ 弟かと思ってしまうんでいけません邪神さま‼ 駄目だって! 駄々っ子可愛いって思っちゃうって!
「邪神さま? 邪神さまは、サンドイッチでは何が一番好きですか?」
そうだ。質問してあげたらいいんじゃないか?
引き攣り気味の顔で笑みを作る。
俺の服をちうちうと吸っていた邪神さまはようやく口を離してくれた。若干伸びたが、元からだぼ服なのでまあいいだろう。
『う、うえっ、ぐだもの……。いぢごの、さんどいっじの、やつ……』
サファイアがぽろぽろと、夜空の星のような雫をこぼす。ハンカチを持っていないので失礼ながら、引き続き裾で星屑を拭っていく。
イチゴか。真っ先に食べていたな。
「イチゴ! いいですね。俺も好きなんですよ。いい香りなんで!」
『そうなのっ?』
瞳の鍵穴が星になって輝く。
ほんのり笑顔になった邪神さまが皿の上を見回している。もしかして、俺にイチゴのサンドをくれようとしているのか。だが皿はほぼ空っぽ。ちょこサンドしか残っていない。
『……ぐうう』
うりゅっとサファイアの瞳が潤む。あーあーあーあー。もう頭が痛い。
「邪神さま? お気持ちだけで。ドールはお気持ちだけで嬉しいです」
『ドールちゃん……。泣いてない? イチゴ、食べられなかったって、泣いてない?』
子猫をあやすように、美少年がほっぺを舐めてくる。泣かないでね、というように。小さな舌で。
くすぐったくて片目を閉じる。俺に変な性癖が(略)。
「んぅ。ありがとうございます。邪神さま。泣いてませんよ」
『そう? ナメちゃんに持ってこさせなくていい?』
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