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第一の芸
邪神さまと溶けるチョコ
膝立ちになった邪神さまが頬に吸いついてきた。ちょっと強めのキスのように。ちううっ。
自然と口角が上がる。いつものことなんで、いいんですけどね。
『火事で燃えたら新しい家を作れるでしょ? それを楽しむために木製にしているの』
「うえ? 火事?」
人間が大嫌いな火事を楽しもうというのか。そりゃモンスターの腕力なら、家くらいぱぱっと作れるんだろうけど。
人間と考え方や価値観が違い過ぎるな。
「そうでしたか」
『うん。おいち』
頬をペロペロされるとくすぐったい。
「そうだ。お店でお菓子を落としちゃって、これは俺がもらっていいですか?」
落としてしまったお菓子はポッケに入れておいたのだ。
「……あれ?」
包装紙の上から触れたのに、なんだかぬるっとする。
急いでテーブルに置いて包装紙を開けると、ケーキを閉じ込めているチョコ卵が少しだけ、変形していた。
「え? 溶けてる? なんでっ?」
『んへへ~。新鮮なリアクション』
「チョコは温かいところで溶けるんだ。今は冬だが、お前ずっとポッケに入れていただろう」
お、俺の体温で溶けたってこと? ……言ってくださいよ、ナメさぁん。
「溶けても、食べられるんですか?」
『うん。僕は溶けてるチョコも好きなんだ~』
ルンルン気分でチョコを掴もうとする、その手首を背後から掴む。
『……』
つぶらな瞳で見てくる邪神さまに微笑む。
「ダメです。俺のです」
落ちちゃいましたからね、これ。床に。
『あああん! お菓子が目の前にあるのにぃ! 食べたい食べちゃい! あーん、してよぉ』
じたばたと足をばたつかせる。
あんまり暴れないで。落ちちゃいますよ。
俺にがばっと抱きつき、ぐりぐりと顔を押し当ててきた。
頼りない背中を撫で、両腕で抱きしめる。
「あーんはしません。落としちゃったんで、三つも」
ポッケからキャンディ擬態型洋菓子を出して、テーブルに転がす。キランとサファイアの瞳が煌めく。
『手伝ってあげる! 食べるのを!』
「大丈夫です。多いなと思ったらナメさんに渡すんで」
「いらんわ。クソボケが」
え? 甘いの苦手? でも向こうでチョコを平然と食べていたしな。
俺が考え事をしていると、「今のうちに」とお菓子に手を伸ばす美少年をがっちり抱きしめる。シートベルトに徹するんだ俺。じたばたもがいている邪神さまが非力で可愛い。……? 何か違和感を覚えたが、可愛い後ろ姿を眺めるのに忙しく忘れてしまった。
『ナメちゃん! 一個くらいいいよね⁉』
「ダメです」
邪神さまがテーブルに突っ伏している。
静かになったのでなんとなしに、眼下に広がる庭園を見る。
クリスマスローズやスノーホワイトといった季節の小花が、緑に積もる雪の結晶のよう。ヒュウと冷たい風が吹き、邪神さまを抱き締める腕に力が入った。
「……さむっ」
嘆息しながら、ナメさんが温かなお茶の入ったカップを置いてくれる。
「邪神さま。ペットをお風呂に入れた方がよろしいかと。外を歩いたので汚れていますし」
『お風呂? ドールちゃん。お風呂行きたい?』
ほっぺたをテーブルに押し付けたまま瞳だけ向けてくる。
「はい。あったまりたいです。あ、一人で入れますよ」
買い物にも行けたんだ。お風呂も一人で大丈夫だと伝えると喜んでくれるはず。あの広すぎてどこか不安になる大浴場でも、初めに入った猫足バスタブでも。使い方も覚えましたし。
お風呂の気持ち良さを思い出してほっこりしていると、邪神さまがお餅になっていた。
限界まで頬に空気を溜めて、もの言いたげに睨んでくる。
なんですか。その可愛いお顔は。
指が勝手に、ぱんぱんほっぺをつんつんしてしまう。
『あむ』
指先が食われた。薄い唇でちうちうと吸われる。
「どうしました? 邪神さま?」
『…………』
指が第二関節まで飲まれていく。ちょ、ストップストップ! あったかいですけど。
何か言ってくださいよ。何を望まれてます? 邪神さま。邪神さま……は、甘えん坊。……ハッ!
「あ、あー。お風呂不安だなー。寂しいし。邪神さまが一緒に、入ってくれないかなー?」
『しょうがないね! ドールちゃんはっ。僕が一緒に居ないとダメなんだから』
どやっと胸を張ると、いそいそと身体の向きを変えて俺に抱きついてくる。忙しい神様だな。
抱き締め合っていると満足したのか、邪神さまは膝から飛び降り、「タオルの用意してくるね」とお部屋に走って行く。俺はナメさんの淹れてくれたお茶を飲み干すと、すぐに後を追った。こうなると予想していたのか、お茶は飲みやすい温度だった。リンゴの風味が美味しいです。
「ナメさん。ご馳走様!」
「走るな。歩け。大声を出すな」
父さんを思い出しちゃうな。
自然と口角が上がる。いつものことなんで、いいんですけどね。
『火事で燃えたら新しい家を作れるでしょ? それを楽しむために木製にしているの』
「うえ? 火事?」
人間が大嫌いな火事を楽しもうというのか。そりゃモンスターの腕力なら、家くらいぱぱっと作れるんだろうけど。
人間と考え方や価値観が違い過ぎるな。
「そうでしたか」
『うん。おいち』
頬をペロペロされるとくすぐったい。
「そうだ。お店でお菓子を落としちゃって、これは俺がもらっていいですか?」
落としてしまったお菓子はポッケに入れておいたのだ。
「……あれ?」
包装紙の上から触れたのに、なんだかぬるっとする。
急いでテーブルに置いて包装紙を開けると、ケーキを閉じ込めているチョコ卵が少しだけ、変形していた。
「え? 溶けてる? なんでっ?」
『んへへ~。新鮮なリアクション』
「チョコは温かいところで溶けるんだ。今は冬だが、お前ずっとポッケに入れていただろう」
お、俺の体温で溶けたってこと? ……言ってくださいよ、ナメさぁん。
「溶けても、食べられるんですか?」
『うん。僕は溶けてるチョコも好きなんだ~』
ルンルン気分でチョコを掴もうとする、その手首を背後から掴む。
『……』
つぶらな瞳で見てくる邪神さまに微笑む。
「ダメです。俺のです」
落ちちゃいましたからね、これ。床に。
『あああん! お菓子が目の前にあるのにぃ! 食べたい食べちゃい! あーん、してよぉ』
じたばたと足をばたつかせる。
あんまり暴れないで。落ちちゃいますよ。
俺にがばっと抱きつき、ぐりぐりと顔を押し当ててきた。
頼りない背中を撫で、両腕で抱きしめる。
「あーんはしません。落としちゃったんで、三つも」
ポッケからキャンディ擬態型洋菓子を出して、テーブルに転がす。キランとサファイアの瞳が煌めく。
『手伝ってあげる! 食べるのを!』
「大丈夫です。多いなと思ったらナメさんに渡すんで」
「いらんわ。クソボケが」
え? 甘いの苦手? でも向こうでチョコを平然と食べていたしな。
俺が考え事をしていると、「今のうちに」とお菓子に手を伸ばす美少年をがっちり抱きしめる。シートベルトに徹するんだ俺。じたばたもがいている邪神さまが非力で可愛い。……? 何か違和感を覚えたが、可愛い後ろ姿を眺めるのに忙しく忘れてしまった。
『ナメちゃん! 一個くらいいいよね⁉』
「ダメです」
邪神さまがテーブルに突っ伏している。
静かになったのでなんとなしに、眼下に広がる庭園を見る。
クリスマスローズやスノーホワイトといった季節の小花が、緑に積もる雪の結晶のよう。ヒュウと冷たい風が吹き、邪神さまを抱き締める腕に力が入った。
「……さむっ」
嘆息しながら、ナメさんが温かなお茶の入ったカップを置いてくれる。
「邪神さま。ペットをお風呂に入れた方がよろしいかと。外を歩いたので汚れていますし」
『お風呂? ドールちゃん。お風呂行きたい?』
ほっぺたをテーブルに押し付けたまま瞳だけ向けてくる。
「はい。あったまりたいです。あ、一人で入れますよ」
買い物にも行けたんだ。お風呂も一人で大丈夫だと伝えると喜んでくれるはず。あの広すぎてどこか不安になる大浴場でも、初めに入った猫足バスタブでも。使い方も覚えましたし。
お風呂の気持ち良さを思い出してほっこりしていると、邪神さまがお餅になっていた。
限界まで頬に空気を溜めて、もの言いたげに睨んでくる。
なんですか。その可愛いお顔は。
指が勝手に、ぱんぱんほっぺをつんつんしてしまう。
『あむ』
指先が食われた。薄い唇でちうちうと吸われる。
「どうしました? 邪神さま?」
『…………』
指が第二関節まで飲まれていく。ちょ、ストップストップ! あったかいですけど。
何か言ってくださいよ。何を望まれてます? 邪神さま。邪神さま……は、甘えん坊。……ハッ!
「あ、あー。お風呂不安だなー。寂しいし。邪神さまが一緒に、入ってくれないかなー?」
『しょうがないね! ドールちゃんはっ。僕が一緒に居ないとダメなんだから』
どやっと胸を張ると、いそいそと身体の向きを変えて俺に抱きついてくる。忙しい神様だな。
抱き締め合っていると満足したのか、邪神さまは膝から飛び降り、「タオルの用意してくるね」とお部屋に走って行く。俺はナメさんの淹れてくれたお茶を飲み干すと、すぐに後を追った。こうなると予想していたのか、お茶は飲みやすい温度だった。リンゴの風味が美味しいです。
「ナメさん。ご馳走様!」
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父さんを思い出しちゃうな。
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