邪神さまのペット

水無月

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第二の芸

邪神さまと文明の残滓

『水と風にしたんだ?』

 ぱりぱりと新作お菓子を齧る邪神さま。
 リップルさんのとこで購入したお菓子もあと一つ。一日に二個食べたがっていた日もあったが、邪神さまは頑張っておられる。
 新作お菓子は自分で食べているのに、卵型のお菓子は俺が食べさせている。

「はい。邪神さまはどう思います? ダメでした?」
『もぐもぐ……。ドールちゃんの好きにすればいいよ。ドールちゃんの魔法なんだから』

 マシュマロの形をした椅子に座っている俺の膝に座っている邪神さま。
 窓際にはナメさんが控えている。見慣れてきた風景。

「でもなんか、身体がふわふわするんですけど」
『魔力に馴染んでないだけだよ。すぐ自分の物になるさ』
「そういうものですか。上達するコツとか、あったりします?」

 ここにいるのは人類を遥かに超越した魔法使いたち。何かいい言葉が聞けるかもしれない。
 ナメさんは肩を竦めた。

「人間ボディは私たちより低スペック過ぎて、教える前に、私たちがお前の感覚をよくわからん。一番いいのは学園に通うことだ。人間が教えているし」
「学園……」

 縁のない場所だ。思い浮かべることさえ難しい。

「学園って、何かを学ぶ場所ですよね? 邪神さまかナメさんが教えてくれると思ったんですけど」
『僕、お勉強、やー』

 眉を逆立て、ぷくうっと邪神さまが膨れている。ほっぺを両手で包み込むと表情がふにゃんとなった。そのまま両手で軽く揉んで頬肉を堪能する。あー、やんわらけぇ。

「ナメさん教えてくださいよ」
「学園って人がたくさんいるぞ? お前、そういうの嬉しいんだろう?」
「えーでも。建物(校舎)とか、モンスターか獣人に徹底的に破壊されてますって」

 モンスターの都を見た後では、何かが残っているとは考えにくい。

「まぁな。だが人間の書物や作り出したもの、歌なんかは残っている。知能面は人間がぶっちぎっているからな。モンスターや獣人からすれば、人間の本や設計図は近未来の宝物のように映るだろ。奴らも人間が作ったものを活用したいはずだ。焚書は免れていると思う」
「そもそも。人類に学園をやっている余裕はあるんですか?」

 外の世界を知らないために、質問ばかりになってしまう。しかしお二方は嫌な顔一つしない。
 邪神さまは嬉しそうにお菓子を頬張る。

『あうよー(あるよー)。人間が生き残ってりゅ、場所』
「邪神さま。お口にものが入っているのに喋ったらいけません」
『ぷくーっ』

 注意するナメさんに邪神さまが膨れる。このぱんぱんに張ったほっぺがぱよぱよしてて楽しいんだよな。触ると。
 両手で挟み込んで、軽く押しては離すを繰り返す。ぱよぱよしていると邪神さまに手を掴まれた。小さい手でぎゅっと握ってくる。

「邪神さま。可愛いです」
『う? 僕、怒ってるんじゃよ?』
「でも可愛いです」

 嬉しかったのかほっぺがしぼみ、もう機嫌を直して掴んだ腕に甘えてくる。空いた手で髪の毛を避けてなでなで。綺麗にセットされた髪を崩さないように。なんせ今日はアクティさまが遊びに来られる日。これから邪神さまはあの白い妖精さんのようなお洋服に着替えるのだ。俺もアクティさまに会えるのかな? 一目だけでも。一度でいいので拝んでみたい。

 そういや、「執事服を二時間くらいあっちの天使に自慢しとく」とナメさんたちは別の意味で張り切っていたな。喜んでもらえてなにより。

「生き残っている場所って? ペットショップや牧場、狩り用以外に、ですか?」
『そうだよ』
「どうしてです? 生き残ってるなら、モンスターたちが狙うはずじゃあ……」
「さっき言っただろ? 人間の作る物が惜しいって。ほっとくと人間は便利なものを生み出すからな。それ目当てだ。人間を何百人、何千人か知らないが小島にでも閉じ込め発明品だけ奪い取る用、だけどな」

 人間ってやっぱりそういう扱いなんですね……。どこか肩を落としたが、何もかも消えたわけではなかった。
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