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第二の芸
邪神さまと島での立場
「この島は、名前とかあるんですか?」
「島に名前……? ははあ、なるほど。難しい話ですか?」
国や物に名前つけるのって、人間と獣人くらいなのかな。邪神さまのお城も、みんな「城」って言ってたし。
「ええっと。何学園とか。学園名はあります?」
「……? ドールさま。もしかして見えない誰かと話しておられます? 背筋が寒くなってきたので、お控えいただけると……その」
やばい。ヤバい奴認定されてしまいかねない。
「す、すみません」
「いえ」
微妙な空気で二人並んでとことこ歩いていると、腰にピコハンを下げたモンスターと鉢会った。俺の背丈ほどある、どこまでも走りそうなキツネ似の四つ足のモンスターに跨り、こっちを見下ろしてくる。巡回兵さんかな?
「おう。ミヤマ。それが例の人間か?」
答えもせず、ミヤマさんはため息をついた。
「何を乗ったまま……。降りて挨拶なさい。身分の差と言うモノを、その核(心臓)に刻んで差し上げましょうか?」
四つ足のモンスターは「くぅん」と鳴いて縮こまり、跨っていた者は気づいた顔でぬかるみに膝をついた。
「も、申し訳ない! 休日で気が緩んでおりました!」
「え?」
四つ足も跨っていたモンスターも、「俺」に頭を下げた。……俺⁉
てっきり、仮にだが、上司であるミヤマさんに舐めた口利いたから叱られたのかな~って、ぼーっと見ていたら。
ミヤマさんの腕を軽く引っ張る。
「ミヤマさん。俺はただのペットなんです。こんな風に、へりくだる必要はないですよ」
このままでは勘違いしてしまいそうだ。俺の方が偉いんだと。力があるんだと。そんなことはない。人間どころか、ペットにまで堕ちた身だ。ペットになったことに後悔もないし邪神さま可愛いが。モンスターが俺にぺこぺこするのは違う気がする。
それを告げるとミヤマさんは申し訳なさそうに口に笑みを乗せた。
「失礼しました。わたくしは種族の特性上、上下関係を殊更気にしてしまうのです」
針毒は女王を筆頭に超えられない壁という、身分ピラミッドが存在する。生まれながらに付く仕事は決められ、蜂(人)手不足にならない限り、その仕事以外をすることはない。
「それに我らモンスターは記憶力が素晴らしいわけではありません。こうして何度も口にして言うことも、あえて言うことも大事なのです」
「そうです、か。口出ししてすみません」
「とんでもない。何かあれば言ってください。我らは人間のことなど、何も知らないのですから」
まだ膝をついているモンスターも四つ足も、同意するように頷いている。
手を振って巡回兵? と別れる。
「この島って、規律とか、守らないといけないこととかって、あります?」
「そうですね。あなた様を絶対に傷つけないことでしょうか」
「……」
俺の存在が規律を書き換えてないか?
雨脚が強くなる。
どおおおぉぉ……ん。
遠くで鳴った雷の音が、島の空を震わせた。ついミヤマさんの腕を両手で掴む。
「まだ案内したい場所があるのですが。今日はここまでにしておきますか」
「……はい」
ミヤマさんは平気そうだが、俺は耳を澄まさないと彼の声を拾えなくなってきた。足早に校舎に戻る。
下駄箱が置いてある屋根の下に入ると、ミヤマさんは手で雨粒を払ってくれた。
「では明日も同じ時間に。わたくしは船(大渦蛇)着き場で待っておりますので」
船着き場まではナメさんが付き添ってくれて、そっからはミヤマさんに交代ってことか。俺はどこのVIPなんだか。
「ミヤマさんは一緒に、邪神さまのお城まで行かないんですか?」
「こぷっ! ……ご、ご冗談を。わたくし如きが」
なんだよ。行くって言えよ。
風が弱まるのを待って、島の船着き場まで急いだ。
「島に名前……? ははあ、なるほど。難しい話ですか?」
国や物に名前つけるのって、人間と獣人くらいなのかな。邪神さまのお城も、みんな「城」って言ってたし。
「ええっと。何学園とか。学園名はあります?」
「……? ドールさま。もしかして見えない誰かと話しておられます? 背筋が寒くなってきたので、お控えいただけると……その」
やばい。ヤバい奴認定されてしまいかねない。
「す、すみません」
「いえ」
微妙な空気で二人並んでとことこ歩いていると、腰にピコハンを下げたモンスターと鉢会った。俺の背丈ほどある、どこまでも走りそうなキツネ似の四つ足のモンスターに跨り、こっちを見下ろしてくる。巡回兵さんかな?
「おう。ミヤマ。それが例の人間か?」
答えもせず、ミヤマさんはため息をついた。
「何を乗ったまま……。降りて挨拶なさい。身分の差と言うモノを、その核(心臓)に刻んで差し上げましょうか?」
四つ足のモンスターは「くぅん」と鳴いて縮こまり、跨っていた者は気づいた顔でぬかるみに膝をついた。
「も、申し訳ない! 休日で気が緩んでおりました!」
「え?」
四つ足も跨っていたモンスターも、「俺」に頭を下げた。……俺⁉
てっきり、仮にだが、上司であるミヤマさんに舐めた口利いたから叱られたのかな~って、ぼーっと見ていたら。
ミヤマさんの腕を軽く引っ張る。
「ミヤマさん。俺はただのペットなんです。こんな風に、へりくだる必要はないですよ」
このままでは勘違いしてしまいそうだ。俺の方が偉いんだと。力があるんだと。そんなことはない。人間どころか、ペットにまで堕ちた身だ。ペットになったことに後悔もないし邪神さま可愛いが。モンスターが俺にぺこぺこするのは違う気がする。
それを告げるとミヤマさんは申し訳なさそうに口に笑みを乗せた。
「失礼しました。わたくしは種族の特性上、上下関係を殊更気にしてしまうのです」
針毒は女王を筆頭に超えられない壁という、身分ピラミッドが存在する。生まれながらに付く仕事は決められ、蜂(人)手不足にならない限り、その仕事以外をすることはない。
「それに我らモンスターは記憶力が素晴らしいわけではありません。こうして何度も口にして言うことも、あえて言うことも大事なのです」
「そうです、か。口出ししてすみません」
「とんでもない。何かあれば言ってください。我らは人間のことなど、何も知らないのですから」
まだ膝をついているモンスターも四つ足も、同意するように頷いている。
手を振って巡回兵? と別れる。
「この島って、規律とか、守らないといけないこととかって、あります?」
「そうですね。あなた様を絶対に傷つけないことでしょうか」
「……」
俺の存在が規律を書き換えてないか?
雨脚が強くなる。
どおおおぉぉ……ん。
遠くで鳴った雷の音が、島の空を震わせた。ついミヤマさんの腕を両手で掴む。
「まだ案内したい場所があるのですが。今日はここまでにしておきますか」
「……はい」
ミヤマさんは平気そうだが、俺は耳を澄まさないと彼の声を拾えなくなってきた。足早に校舎に戻る。
下駄箱が置いてある屋根の下に入ると、ミヤマさんは手で雨粒を払ってくれた。
「では明日も同じ時間に。わたくしは船(大渦蛇)着き場で待っておりますので」
船着き場まではナメさんが付き添ってくれて、そっからはミヤマさんに交代ってことか。俺はどこのVIPなんだか。
「ミヤマさんは一緒に、邪神さまのお城まで行かないんですか?」
「こぷっ! ……ご、ご冗談を。わたくし如きが」
なんだよ。行くって言えよ。
風が弱まるのを待って、島の船着き場まで急いだ。
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