33 / 74
第二の芸
邪神さまにアクティさまのお話を聞こう
♢
俺の腹に、美少年が抱きついている。
真っ白な妖精さんを思わせるコートに雪の結晶のタイツ。どれだけ可愛い服を着ようとも、決して負けていない中身。
ずっと城にいたのか邪神さまがあったかい。冷え切った身体には助かる。
抱きしめ返す。
「ただいま戻りました。邪神さま!」
『おかえり! さみしかったぁ。ドールちゃん! どこにも行かないで』
二人でわんわん泣き合う。白けた目のナメさんに運ばれて部屋に放り込まれた。
「今日は顔合わせの意味もあったのでこいつ早く帰ってきましたが、明日からは夕方過ぎないと帰ってこないんですからね。邪神さま。慣れてください」
『やじゃああ! 誰なの? ドールちゃんに学園に行けって言ったのは。許せないよ』
下唇を噛んだナメさんが指差すの(ツッコミ)を堪えている。
「学園はどうだった?」
顔を埋める勢いで、邪神さまのほっぺに頬ずりする。アアー。あったかいしやわらかい。天国。俺の天国。しかもお菓子のようにいい香り。コートのファーがふわふわしてて気持ちが良い。
「いきなり霊鬼が出てきたんで気絶しました」
「また気絶してたんかお前……」
涙を浮かべて拳を握る。
「そうですよ! 超怖かったのに! なんでナメさん横にいなかったんですか!」
「だーかーらー! 仕事だとあれほど……いや、護衛を用意していただろうが文句言うな」
「ナメさんがいないから俺ずっと神官さんやミヤマさんにひっひゅひふえ……ふぇ」
顔が引っ張られると思ったら、邪神さまが俺の頬に吸いついている。
「邪神ひゃま。アクティさまと、たのひはっはへふは?」
『あむあむ』
「たべひゃいで……」
可愛いことされると顔がだらしなくなってしまう。「なんか飲むか?」と言ってくれたナメさんにいつものモンレモン白湯を頼む。
「ほらよ。熱いからな?」
「ありがとう。ナメさん。明日から鞄に邪神さまを詰めて持って行ってもいいですか? いいですよね?」
「それで私が許可出すと思っとんのか?」
『ドールちゃん。いじめられなかった? 大丈夫?』
心配そうに眉を下げ、人差し指を銜えている邪神さま。すぐにナメさんに「指を吸ってはいけません」とチュポンされていたが可愛い。
「いじめられるどころか……VIP待遇で落ち着かなかったんですけど」
『不快だったの? 消してあげようか?』
白湯を飲もうとした手が止まる。
「ひえっ⁉ いえいえ! 不快なんかじゃなかったです。消さないでくださいね。邪神さま」
カップを持ったまま柔らかな髪を撫でる。撫でていると手のひらに頬を擦り付けてきた。笑顔が美しいほど可愛い。
「アクティさまは、帰られたんですか?」
『アクティの話が良いの?』
邪神さまのほっぺが焼かれたお餅に!
頑張って俺を睨みつけ、ぷくうーと膨れている。なんでこんなに可愛いのだろうか。俺さっきから可愛いしか言えてない。
「邪神さま。好きですよ」
『むう』
「俺は邪神さまと話がしたいので、他の方の話題を出しているだけです。ほら、俺。アクティさまが邪神さまの服装を見てどういう反応をするか、気にしてたじゃないですか。教えてくださいよ」
椅子から降りてテーブルを回ってくると、俺の膝に尻を乗せる。むっ。コートを着ている分、尻肉の感触がいつもより伝わってこない。
邪神さまは少し照れたお顔で、指に髪を巻きつけていた。
『なんか……服については何も言わなかったけど。アクティってば、いつもより……なんていうか。いつもより笑ってた』
「ほうほう」
『いつも笑ってるんだけど。質が違うっていうの? さらっとした笑みじゃなくて。笑みが深くなってたって感じ』
邪神さまが気を張らずに会ってくれたのが、嬉しかったのかもしれませんね。
ああ……嬉しそうな邪神さまを見れて、ドールは幸せです。
「なんでお前が泣いとんだ」
「だって。邪神さまが……。照れたお顔が可愛くて」
「ああ、うん」
ナメさんの相槌が適当になった。
『これからは可愛い服装で決めちゃうよ! ドールちゃんが見たがってるからね! 仕方ないねっ!』
どんっと薄い胸を叩いて口角を上げている。なごむなぁ……。
『そうだ。制服はもらった?』
「せいふく……? ああ、はい。外套までもらっちゃいましたよ」
見せたくて鞄に手を伸ばすが、膝にお尻が乗っかっているので動けない。邪神さまを抱っこしてベッドに座らせ、貰った風呂敷をベッドの上で開封する。
ナメさんも見にきた。
「青い服に黒いズボンです。かっこいいでしょ?」
『ドールちゃんが喜んでる』
「まあ、ただの制服だな」
「なんで服をくれたんでしょう? 邪神さまがくれるのでいっぱい持ってるのに。城では全裸だと思われてるんですかね?」
俺は「制服」というものをまるで知らなかった。
『着てみて~?』
「はい!」
俺の腹に、美少年が抱きついている。
真っ白な妖精さんを思わせるコートに雪の結晶のタイツ。どれだけ可愛い服を着ようとも、決して負けていない中身。
ずっと城にいたのか邪神さまがあったかい。冷え切った身体には助かる。
抱きしめ返す。
「ただいま戻りました。邪神さま!」
『おかえり! さみしかったぁ。ドールちゃん! どこにも行かないで』
二人でわんわん泣き合う。白けた目のナメさんに運ばれて部屋に放り込まれた。
「今日は顔合わせの意味もあったのでこいつ早く帰ってきましたが、明日からは夕方過ぎないと帰ってこないんですからね。邪神さま。慣れてください」
『やじゃああ! 誰なの? ドールちゃんに学園に行けって言ったのは。許せないよ』
下唇を噛んだナメさんが指差すの(ツッコミ)を堪えている。
「学園はどうだった?」
顔を埋める勢いで、邪神さまのほっぺに頬ずりする。アアー。あったかいしやわらかい。天国。俺の天国。しかもお菓子のようにいい香り。コートのファーがふわふわしてて気持ちが良い。
「いきなり霊鬼が出てきたんで気絶しました」
「また気絶してたんかお前……」
涙を浮かべて拳を握る。
「そうですよ! 超怖かったのに! なんでナメさん横にいなかったんですか!」
「だーかーらー! 仕事だとあれほど……いや、護衛を用意していただろうが文句言うな」
「ナメさんがいないから俺ずっと神官さんやミヤマさんにひっひゅひふえ……ふぇ」
顔が引っ張られると思ったら、邪神さまが俺の頬に吸いついている。
「邪神ひゃま。アクティさまと、たのひはっはへふは?」
『あむあむ』
「たべひゃいで……」
可愛いことされると顔がだらしなくなってしまう。「なんか飲むか?」と言ってくれたナメさんにいつものモンレモン白湯を頼む。
「ほらよ。熱いからな?」
「ありがとう。ナメさん。明日から鞄に邪神さまを詰めて持って行ってもいいですか? いいですよね?」
「それで私が許可出すと思っとんのか?」
『ドールちゃん。いじめられなかった? 大丈夫?』
心配そうに眉を下げ、人差し指を銜えている邪神さま。すぐにナメさんに「指を吸ってはいけません」とチュポンされていたが可愛い。
「いじめられるどころか……VIP待遇で落ち着かなかったんですけど」
『不快だったの? 消してあげようか?』
白湯を飲もうとした手が止まる。
「ひえっ⁉ いえいえ! 不快なんかじゃなかったです。消さないでくださいね。邪神さま」
カップを持ったまま柔らかな髪を撫でる。撫でていると手のひらに頬を擦り付けてきた。笑顔が美しいほど可愛い。
「アクティさまは、帰られたんですか?」
『アクティの話が良いの?』
邪神さまのほっぺが焼かれたお餅に!
頑張って俺を睨みつけ、ぷくうーと膨れている。なんでこんなに可愛いのだろうか。俺さっきから可愛いしか言えてない。
「邪神さま。好きですよ」
『むう』
「俺は邪神さまと話がしたいので、他の方の話題を出しているだけです。ほら、俺。アクティさまが邪神さまの服装を見てどういう反応をするか、気にしてたじゃないですか。教えてくださいよ」
椅子から降りてテーブルを回ってくると、俺の膝に尻を乗せる。むっ。コートを着ている分、尻肉の感触がいつもより伝わってこない。
邪神さまは少し照れたお顔で、指に髪を巻きつけていた。
『なんか……服については何も言わなかったけど。アクティってば、いつもより……なんていうか。いつもより笑ってた』
「ほうほう」
『いつも笑ってるんだけど。質が違うっていうの? さらっとした笑みじゃなくて。笑みが深くなってたって感じ』
邪神さまが気を張らずに会ってくれたのが、嬉しかったのかもしれませんね。
ああ……嬉しそうな邪神さまを見れて、ドールは幸せです。
「なんでお前が泣いとんだ」
「だって。邪神さまが……。照れたお顔が可愛くて」
「ああ、うん」
ナメさんの相槌が適当になった。
『これからは可愛い服装で決めちゃうよ! ドールちゃんが見たがってるからね! 仕方ないねっ!』
どんっと薄い胸を叩いて口角を上げている。なごむなぁ……。
『そうだ。制服はもらった?』
「せいふく……? ああ、はい。外套までもらっちゃいましたよ」
見せたくて鞄に手を伸ばすが、膝にお尻が乗っかっているので動けない。邪神さまを抱っこしてベッドに座らせ、貰った風呂敷をベッドの上で開封する。
ナメさんも見にきた。
「青い服に黒いズボンです。かっこいいでしょ?」
『ドールちゃんが喜んでる』
「まあ、ただの制服だな」
「なんで服をくれたんでしょう? 邪神さまがくれるのでいっぱい持ってるのに。城では全裸だと思われてるんですかね?」
俺は「制服」というものをまるで知らなかった。
『着てみて~?』
「はい!」
あなたにおすすめの小説
愛されたいだけなのに
まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。
気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。
しかしまた殺される。
何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。
ゆう
BL
八代秋(10月12日)
高校一年生 15歳
美術部
真面目な方
感情が乏しい
普通
独特な絵
短い癖っ毛の黒髪に黒目
七星礼矢(1月1日)
高校三年生 17歳
帰宅部
チャラい
イケメン
広く浅く
主人公に対してストーカー気質
サラサラの黒髪に黒目
仏頂面の上司OFFが可愛すぎる件
子ネコの親子
BL
社会人5年目の俺は今日も部下と上司に板挟みされている。
唯一の楽しみはお昼休憩の行きつけのカフェ。
その日は運悪く相席を頼まれて、時間がないので仕方なく座った席にいたのは、休みのはずの苦手な上司で……。
ジャンルはBLですが、ただただ、主人公が上司の新たな一面を見て胸をときめかしているだけの話。
主な人物
主人公……椎名(一人称)
上司………橘(仏頂面の上司)
新人………新人(確認が苦手な新人)
店員さん…橘の妹
行きつけのカフェのオーナー……桂木(橘の幼馴染)
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
可愛いは有罪
零壱
BL
───「可愛い」とは理性を狂わせる「罪」である。
美貌・頭脳・魔法に剣の腕前まで完璧な公爵子息リオハルト・ユーグリウスには、ただ一つ、致命的な欠点があった。
それは─── “かわいげ”がないこと。
鉄面皮、超合金と揶揄されるほど動かぬ表情筋。
圧倒的合理主義からくる感情の伝わらない言動。
完璧すぎて、人間味が壊滅的だった。
父侯爵にも匙を投げられたリオハルトは、己を変えようと一念発起。
学園の中庭で“可愛いとは何か?”を観察し続けること、一カ月。
数多の生徒の中でただ一人、リオハルトが“可愛い”と刮目したのは───騎士科の平民、ジーク。
弟子入りを申し出たその日から、ジークの前でだけリオハルトの完璧な理性が音を立てて崩れていく。
理性で“かわいげ”を解明しようとしては惨敗するポンコツ貴族(受)と、不屈の忍耐でそれを受け止める平民(攻)。
クスッと笑えて、気づけば胸を撃ち抜かれている。
理性崩壊系・文学ラブコメ、堂々開幕。
※他サイトにもタイトル話、二話目、三話目のみ再掲。
※二年前の作品です。改稿しようとして断念しました。