邪神さまのペット

水無月

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第二の芸

邪神さまにアクティさまのお話を聞こう




 俺の腹に、美少年が抱きついている。
 真っ白な妖精さんを思わせるコートに雪の結晶のタイツ。どれだけ可愛い服を着ようとも、決して負けていない中身。
 ずっと城にいたのか邪神さまがあったかい。冷え切った身体には助かる。
 抱きしめ返す。

「ただいま戻りました。邪神さま!」
『おかえり! さみしかったぁ。ドールちゃん! どこにも行かないで』

 二人でわんわん泣き合う。白けた目のナメさんに運ばれて部屋に放り込まれた。

「今日は顔合わせの意味もあったのでこいつ早く帰ってきましたが、明日からは夕方過ぎないと帰ってこないんですからね。邪神さま。慣れてください」
『やじゃああ! 誰なの? ドールちゃんに学園に行けって言ったのは。許せないよ』

 下唇を噛んだナメさんが指差すの(ツッコミ)を堪えている。

「学園はどうだった?」

 顔を埋める勢いで、邪神さまのほっぺに頬ずりする。アアー。あったかいしやわらかい。天国。俺の天国。しかもお菓子のようにいい香り。コートのファーがふわふわしてて気持ちが良い。

「いきなり霊鬼が出てきたんで気絶しました」
「また気絶してたんかお前……」

 涙を浮かべて拳を握る。

「そうですよ! 超怖かったのに! なんでナメさん横にいなかったんですか!」
「だーかーらー! 仕事だとあれほど……いや、護衛を用意していただろうが文句言うな」
「ナメさんがいないから俺ずっと神官さんやミヤマさんにひっひゅひふえ……ふぇ」

 顔が引っ張られると思ったら、邪神さまが俺の頬に吸いついている。

「邪神ひゃま。アクティさまと、たのひはっはへふは?」
『あむあむ』
「たべひゃいで……」

 可愛いことされると顔がだらしなくなってしまう。「なんか飲むか?」と言ってくれたナメさんにいつものモンレモン白湯を頼む。

「ほらよ。熱いからな?」
「ありがとう。ナメさん。明日から鞄に邪神さまを詰めて持って行ってもいいですか? いいですよね?」
「それで私が許可出すと思っとんのか?」
『ドールちゃん。いじめられなかった? 大丈夫?』

 心配そうに眉を下げ、人差し指を銜えている邪神さま。すぐにナメさんに「指を吸ってはいけません」とチュポンされていたが可愛い。

「いじめられるどころか……VIP待遇で落ち着かなかったんですけど」
『不快だったの? 消してあげようか?』

 白湯を飲もうとした手が止まる。

「ひえっ⁉ いえいえ! 不快なんかじゃなかったです。消さないでくださいね。邪神さま」

 カップを持ったまま柔らかな髪を撫でる。撫でていると手のひらに頬を擦り付けてきた。笑顔が美しいほど可愛い。

「アクティさまは、帰られたんですか?」
『アクティの話が良いの?』

 邪神さまのほっぺが焼かれたお餅に!
 頑張って俺を睨みつけ、ぷくうーと膨れている。なんでこんなに可愛いのだろうか。俺さっきから可愛いしか言えてない。

「邪神さま。好きですよ」
『むう』
「俺は邪神さまと話がしたいので、他の方の話題を出しているだけです。ほら、俺。アクティさまが邪神さまの服装を見てどういう反応をするか、気にしてたじゃないですか。教えてくださいよ」

 椅子から降りてテーブルを回ってくると、俺の膝に尻を乗せる。むっ。コートを着ている分、尻肉の感触がいつもより伝わってこない。
 邪神さまは少し照れたお顔で、指に髪を巻きつけていた。

『なんか……服については何も言わなかったけど。アクティってば、いつもより……なんていうか。いつもより笑ってた』
「ほうほう」
『いつも笑ってるんだけど。質が違うっていうの? さらっとした笑みじゃなくて。笑みが深くなってたって感じ』

 邪神さまが気を張らずに会ってくれたのが、嬉しかったのかもしれませんね。
 ああ……嬉しそうな邪神さまを見れて、ドールは幸せです。

「なんでお前が泣いとんだ」
「だって。邪神さまが……。照れたお顔が可愛くて」
「ああ、うん」

 ナメさんの相槌が適当になった。

『これからは可愛い服装で決めちゃうよ! ドールちゃんが見たがってるからね! 仕方ないねっ!』

 どんっと薄い胸を叩いて口角を上げている。なごむなぁ……。

『そうだ。制服はもらった?』
「せいふく……? ああ、はい。外套までもらっちゃいましたよ」

 見せたくて鞄に手を伸ばすが、膝にお尻が乗っかっているので動けない。邪神さまを抱っこしてベッドに座らせ、貰った風呂敷をベッドの上で開封する。
 ナメさんも見にきた。

「青い服に黒いズボンです。かっこいいでしょ?」
『ドールちゃんが喜んでる』
「まあ、ただの制服だな」
「なんで服をくれたんでしょう? 邪神さまがくれるのでいっぱい持ってるのに。城では全裸だと思われてるんですかね?」

 俺は「制服」というものをまるで知らなかった。

『着てみて~?』
「はい!」
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