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第二の芸
邪神さまと制服
ベッドの横に立ち、着ていた服をバサバサと脱いでいく。
『制服はね。みんな同じデザインにすることで、一体感を生むのが目的だって。見てる側も制服だと安心する効果もあるし。看護師さんとか。ってアクティが言ってた』
邪神さまの話を聞きながらズボンを履いて上着に袖を通す。
『勉学の邪魔にならないし、なにより毎日服を選ぶ面倒臭さから解放される』
「……なんだか、最後の方に力入ってますね?」
コートとマフラーに包まれ、もこもこしている美少年から目を離せられない。ベッドにちょんと座っているだけで可愛さが倍増する。おかげでボタンを何度か留め損なう。
「っと、これは? 紐?」
「ネクタイだな。だがお前は首輪をしているから、タイまでつけると苦しくなるだろう。どうしましょう。邪神さま」
『頭に巻いとく?』
「……酔っ払い、ですね」
ナメさんの顔が軽く引き攣る。
冗談だったのか、邪神さまは口元を隠してころころと笑っていた。
『胸ポケットに入れてポケットチーフにしちゃえばいいよ』
「採用です」
ナメさんは紐を丸めると、「ネクタイの説明まだかな?」と待機している俺の胸ポッケに押し込んだ。
「ひゃあ!」
彼の指が胸に当たり、びくっと身体が跳ねてしまった。ついでに高い声も出てしまう。恥ずかしくて口を押えたが、出た声は戻らない。
ちらっとお二人を見ると、目を丸くしておられた。
部屋の隅で蹲る俺に、ナメさんが思い出したようにぽんと手を打つ。
「お前、くすぐったがりだったな。そういえば」
『ええ? こしょばかったの? かーわーいーいー』
足をバタつかせ、きゃっきゃと笑っておられる。
ううっ。服の上からだったのにぃ! 変な声出た! 俺が敏感になったのは邪神さまのせいですからねっ。
悪戯好きの一面が顔を出した邪神さまが走ってくる。ああああ‼ 絶対くすぐられるじゃん‼
即座に立ち上がって部屋中を駆け回る。
「やめてええええ」
『待って~。ドールちゃん。かわいがってあげる』
「ナメさん助けて!」
俺のメーデーを無視して、執事は淡々と脱ぎ散らかされた服を畳んでいく。すみません。ほったからして。でも助けて⁉
あまり追い付けないと邪神さまがぐずり出すので、速度を落とすと美少年が背中に飛びついてきた。
『つーかまーえたっ』
「おぎゃあ!」
転びかけたが、俺と床の間にクッションが滑り込んでくる。もふっと顔が埋まった。
すぐに首を捻り、背中を確認する。
「邪神さま! 怪我はありませんか?」
『無いし、こっちの台詞だね』
「ナメさん。クッションありがとう!」
「室内で走るな」
「じゃあ助けてよ‼」
やかましく喚くと、ははっと執事が笑っている。
「……」
おお。彼のあんな自然な笑顔は初めて見たかもしれない。
『じゃ、覚悟はいーい?』
油断していると背後から邪悪な気配が!
「いやあのっくすぐるのはやめっ……」
城中に笑い声が響きまくった。
♢
体重が落ちたかもしれない。笑い過ぎて。
邪神さまは俺を太らせたいのか、ダイエットさせたいのか。
げっそりしている俺を気遣うように、護衛のミヤマさんが顔を覗き込んでくる。
「ドール様? 眠れませんでしたか?」
邪神さまは音が鳴る玩具(俺)が楽しいのか、隙を見つけてはちょっかいをかけてきた。ベッドに入って油断したところをくすぐられたときはベッドから落ちたものだ。ピンク雲ベッドじゃなくて助かったが。
「はい……。緊張したのかもしれません」
「すぐ、慣れますよ」
薄く笑い、今日もオールバックが決まっているミヤマさんに続いて学園に向かう。昨日の雲が残りそらはどんよりしているが、昨日より寒くはない。
(今日から授業か)
学園など、貴族や大商人といった桁の違う金持ちにしか関係ない、と思っていたところに通えるようになるとは。
ようやくふわふわした感覚が落ち着き、魔力が血管に染み込んでいったのがなんとなく感じ取れた。魔法のまの字も使えないが。素人以下の俺に教えるのは骨が折れるんじゃななかろうか。
もやもや考えていると校舎の前に綺麗なお姉さんが立っていた。
ミルクティー色の髪を後頭部で大きなお団子にして、気難しそうな顔をしている。スタイルも良く、すらりとした足が長い。
その女性はミヤマさんを見ると一瞬だけ顔をこわばらせた。が、すぐに視線は俺に向けられる。
「……初めまして。学園長のクリスバナーです。あなたがドールさん?」
学園長⁉
昨日会えなかった人だ。そしてまごうことなき……人間、だ。
ひどく懐かしい。
生き残って、いたんだ。あの狩り場以外でも。狩り場以外で暮らす人間。
瞳は潤んだが、彼女の冷めた視線に涙が引っ込む。
「初めまして。ドールと申します」
「あなたは魔法を二種、使えるようになりたいと。間違いないですね?」
「はい。その通りです。よろしくお願いします」
頭を下げるが、ヒールの足はさっと身を翻す。
慌てて頭を上げた。
「あの……」
学園長は振り向き、はぁと息を吐く。
「ドールさん? あなたは道楽でこの学園にきたのかもしれませんが、我々はノルマやらなんやらで忙しのです。教師の言うことを一聞いて十理解してください。あと……無駄な行動も控えるように。問題児に構ってあげる暇など、ないのですからね」
カッカッとヒールを鳴らして校舎に入っていく。
歓迎されていないのは伝わった。
『制服はね。みんな同じデザインにすることで、一体感を生むのが目的だって。見てる側も制服だと安心する効果もあるし。看護師さんとか。ってアクティが言ってた』
邪神さまの話を聞きながらズボンを履いて上着に袖を通す。
『勉学の邪魔にならないし、なにより毎日服を選ぶ面倒臭さから解放される』
「……なんだか、最後の方に力入ってますね?」
コートとマフラーに包まれ、もこもこしている美少年から目を離せられない。ベッドにちょんと座っているだけで可愛さが倍増する。おかげでボタンを何度か留め損なう。
「っと、これは? 紐?」
「ネクタイだな。だがお前は首輪をしているから、タイまでつけると苦しくなるだろう。どうしましょう。邪神さま」
『頭に巻いとく?』
「……酔っ払い、ですね」
ナメさんの顔が軽く引き攣る。
冗談だったのか、邪神さまは口元を隠してころころと笑っていた。
『胸ポケットに入れてポケットチーフにしちゃえばいいよ』
「採用です」
ナメさんは紐を丸めると、「ネクタイの説明まだかな?」と待機している俺の胸ポッケに押し込んだ。
「ひゃあ!」
彼の指が胸に当たり、びくっと身体が跳ねてしまった。ついでに高い声も出てしまう。恥ずかしくて口を押えたが、出た声は戻らない。
ちらっとお二人を見ると、目を丸くしておられた。
部屋の隅で蹲る俺に、ナメさんが思い出したようにぽんと手を打つ。
「お前、くすぐったがりだったな。そういえば」
『ええ? こしょばかったの? かーわーいーいー』
足をバタつかせ、きゃっきゃと笑っておられる。
ううっ。服の上からだったのにぃ! 変な声出た! 俺が敏感になったのは邪神さまのせいですからねっ。
悪戯好きの一面が顔を出した邪神さまが走ってくる。ああああ‼ 絶対くすぐられるじゃん‼
即座に立ち上がって部屋中を駆け回る。
「やめてええええ」
『待って~。ドールちゃん。かわいがってあげる』
「ナメさん助けて!」
俺のメーデーを無視して、執事は淡々と脱ぎ散らかされた服を畳んでいく。すみません。ほったからして。でも助けて⁉
あまり追い付けないと邪神さまがぐずり出すので、速度を落とすと美少年が背中に飛びついてきた。
『つーかまーえたっ』
「おぎゃあ!」
転びかけたが、俺と床の間にクッションが滑り込んでくる。もふっと顔が埋まった。
すぐに首を捻り、背中を確認する。
「邪神さま! 怪我はありませんか?」
『無いし、こっちの台詞だね』
「ナメさん。クッションありがとう!」
「室内で走るな」
「じゃあ助けてよ‼」
やかましく喚くと、ははっと執事が笑っている。
「……」
おお。彼のあんな自然な笑顔は初めて見たかもしれない。
『じゃ、覚悟はいーい?』
油断していると背後から邪悪な気配が!
「いやあのっくすぐるのはやめっ……」
城中に笑い声が響きまくった。
♢
体重が落ちたかもしれない。笑い過ぎて。
邪神さまは俺を太らせたいのか、ダイエットさせたいのか。
げっそりしている俺を気遣うように、護衛のミヤマさんが顔を覗き込んでくる。
「ドール様? 眠れませんでしたか?」
邪神さまは音が鳴る玩具(俺)が楽しいのか、隙を見つけてはちょっかいをかけてきた。ベッドに入って油断したところをくすぐられたときはベッドから落ちたものだ。ピンク雲ベッドじゃなくて助かったが。
「はい……。緊張したのかもしれません」
「すぐ、慣れますよ」
薄く笑い、今日もオールバックが決まっているミヤマさんに続いて学園に向かう。昨日の雲が残りそらはどんよりしているが、昨日より寒くはない。
(今日から授業か)
学園など、貴族や大商人といった桁の違う金持ちにしか関係ない、と思っていたところに通えるようになるとは。
ようやくふわふわした感覚が落ち着き、魔力が血管に染み込んでいったのがなんとなく感じ取れた。魔法のまの字も使えないが。素人以下の俺に教えるのは骨が折れるんじゃななかろうか。
もやもや考えていると校舎の前に綺麗なお姉さんが立っていた。
ミルクティー色の髪を後頭部で大きなお団子にして、気難しそうな顔をしている。スタイルも良く、すらりとした足が長い。
その女性はミヤマさんを見ると一瞬だけ顔をこわばらせた。が、すぐに視線は俺に向けられる。
「……初めまして。学園長のクリスバナーです。あなたがドールさん?」
学園長⁉
昨日会えなかった人だ。そしてまごうことなき……人間、だ。
ひどく懐かしい。
生き残って、いたんだ。あの狩り場以外でも。狩り場以外で暮らす人間。
瞳は潤んだが、彼女の冷めた視線に涙が引っ込む。
「初めまして。ドールと申します」
「あなたは魔法を二種、使えるようになりたいと。間違いないですね?」
「はい。その通りです。よろしくお願いします」
頭を下げるが、ヒールの足はさっと身を翻す。
慌てて頭を上げた。
「あの……」
学園長は振り向き、はぁと息を吐く。
「ドールさん? あなたは道楽でこの学園にきたのかもしれませんが、我々はノルマやらなんやらで忙しのです。教師の言うことを一聞いて十理解してください。あと……無駄な行動も控えるように。問題児に構ってあげる暇など、ないのですからね」
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