クズとグラブジャムン

水無月

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服のセンスは無くても好きなものに胸を張れるのはいいと思う

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🐻
 


 目を覚ました藤行は、ぽけっと口を開け周囲を見回す。
 差し込む朝日。きれいな和室。白い布団。
 隣で爆睡している伸一郎。
 ゆっくりと立つと、藤行は熟睡男を蹴っ飛ばした。

「いって!」

 伸一郎はイラついたような目をすると、蹴った足首を掴んできた。そのまま布団の中に引き込まれる。
 布団の中で彼は藤行に馬乗りになり頬をむぎゅむぎゅ引っ張る。

「朝から何しやがる」
「ふぁっふぇ(だって)! ……昨日なんか酷いことされた、記憶が……有るような、無いような」

 語尾が勢いを失くしていく。
 やれやれと伸一郎は上から退いて胡坐をかく。

「やっぱ覚えてねえのか。昨日のお前、とろっとろでめちゃくちゃ可愛かったのに。本当に同じ藤行か?」
「え? え? 何したの俺。覚えて、なんかあんまり覚えてない!」

 青ざめて頭を抱える藤行。
 イけない状況で尻穴に指を入れられていたことは覚えている。覚えていたくないが。ぼんやりと。
 そこから記憶が。

「……はぁー」

 思い出そうと苦戦している様子の藤行に、伸一郎は仕方なく昨夜のことを語りだした。



 イきたくてもイけず。気絶したくても出来ない。
 ローターは休みなく振動し続け指は二本に増やされ、穴は彼の指の形に広がる。

「ん、ん……。ん! んっん」
「お前。前と後ろ同時に責められるの好きだろ? 返事聞かなくても分かるぜ。ここが反り立ってるからな」

 ツィっと裏筋をなぞられ、伸一郎の予想通りに跳ねてしまう。クーラーの効いた室内といえど、熱の逃げ場がない藤行は玉の汗を浮かべていた。伸一郎の指がナカで動くたびに汗が真珠のように散り、藤行の火照った身体を蠱惑的に飾り立てる。

「……あー。やばいな」

 抗えるものなら抗ってみろと言わんばかりの艶やかな肢体に、伸一郎の股間がむくむくと大きくなった。
 腫れていない方の頬を軽く叩き、藤行の薄れかかっている意識を自分に向けさせる。

「う……んぐ」
「快感に酔ってるとこわりぃが、俺のを舐めてくれねぇか? フェラしてくれよ、フェラ」
「……うぇ?」
「知らねぇか。俺のチンコ舐めろって意味だ。せいぜい頑張れよ」
「……!」

 そんなこともちろんごめんである。
 拒絶の意味を込めて首を振ろうとしたが、指がより奥を突く。

「んうっ!」
「返事は『はい』しか認めねぇから。返事は?」
「ぐう! うう! ングッ!」

 ぐちゅっ! ぐちゅっ! と奥の熱いところを連続で突かれ、あまりの快感に溺れそうになる。

(熱い、熱い! 熱いッ! 『はい』って言うまで、これをするつもり……?)

 刺激が強すぎる。到底我慢できるものではない。
 やめてほしい。それだけしか頭に無く、涙を流し藤行は何度も頷く。
 ようやく指の動きが止まる。

「いい子だ。そうだよな。やりたいよな。素直じゃねえんだから」

 勝手なことを言い、穴から指を引き抜く。

「……ッ……ぐ、う」

 異物が出て行くもホッとすることは出来ない。ローターが正常な判断を奪うように動き続けているのだ。

 歩けない藤行を大事そうに抱き上げ、伸一郎は広縁の椅子に腰かける。
 自分も下着を脱ぐと、藤行の後頭部を鷲掴みにした。

「ほら。舐めろ」
「……っ!」

 すでに立ち上がりかけている伸一郎のソレに、藤行は小動物のように震える。
 鼻先がソレに付くぐらい近づけさせられ見せつけられると同時に、伸一郎のにおいをきつく感じた。
 嫌、ではない。ぞくぞくと背中に熱いものが走り、とても興奮する。

 ――これ、口に入れて、舐めちゃって、いいの?

「洗ってなくて申し訳ねえが、まあ、いいだろ」
「んっ」

 口から下着を取り払われ、顎が楽になる。唾液で湿ったパンツを伸一郎は床にポイした。
 彼の両足の間で膝立ちになる。

「……」

 何をしていいか分からず見ているだけの藤行に焦れ、掴んだままの頭を引き寄せる。

「んん」

 彼のソレにキスしてしまう。

「あ、あ……」
「舐めろ」

 ぞくっと身体が痺れる。彼の声に逆らおうという気が起きない。
 舌先をちろっと出し、恐る恐る舐め始める。
 ぺろ、ぺろ……

(苦い、のに。脳がとけそう……)

 夢中になって舌を這わせる。
 だが、鋭い舌打ちが聞こえた。

「まー、初めてだしこんなもんか」

 呆れたような声に悲しくなる、が――

「今の表情も悪くねえが、もっととろけさせてやるよ」

 そう言うと、彼の指が背中を滑っていく。
 びくっと身体が揺れるも彼の中指はお構いなしに、穴の中に潜り込む。ぐちゅっと音を立て、閉まりかけていた穴を押し広げる。

「あっ!」

 たまらず悲鳴を上げるが、

「おい。舐めろって言っただろ? さぼってんじゃねぇぞ」

 頭部を掴んでいた手に引き寄せられ、強引にソレを銜えさせられた。

「んんっ⁉」

 ――お、大きい。

 藤行は懸命に口を開けるが、舌は完全に止まっていた。
 思い出させるように尻の中がかき混ぜられる。

「んぼぉ……おぉ、お、お!」
「舌。動かせ」
「っ……お、あ」

 無我夢中で舌を使う。
 伸一郎はマッサージチェアにでも座っているような顔になる。

「あー。いいな。悪くない」
「ひぐっ、う、あう、うう」

 口内とナカを同時にぐちゃぐちゃにされ、ぼろぼろと涙が落ちる。指は三本に増えるのに、良い所は触ってもらえない。
 顔を上げたくてもしっかり掴まれた頭は動かせない。
 俺は今、どんな体勢で、どんな姿にされているんだろう。
 伸一郎は気分よく窓の外を眺める。暗いがぽつぽつと明かりが灯され、落ち着いた景色で悪くない。

「はっ。これからオナニーしたくなったら呼ぶから、舐めに来てくれよ。藤行。終わったら帰っていいから、さ」

 掴んだ頭を上下に無理矢理動かし、彼の喉でソレを扱く。

「ぐっ、ぐう、うう、ぐう」

 されている方はたまったものではないが、藤行はやめてと言うことも出来ない。涙を零し、ただ必死に吐き気に耐える。
 やがて、伸一郎の目元がぴくっと痙攣する。

「はあ……はっ、出すぞ。藤行。しっかり受け止めろよ」
「ん、ぐう! ううっ」

 何もできない。道具のように使われる藤行の口に、熱いものが発射される。

「……ああ。最高だな」
「がはっ! ごほっオエッ! ゴホッゴホッ!」

 手が離され、広縁の床で咳き込む。尻から引き抜いた指を、伸一郎は美味そうに舐める。

「藤行の味がする」
「……はあ、はあっ。ううっ……、えほっ、えほっ」

 生理的な涙が流れる。
 胸を押さえている藤行の浴衣を掴み、力づくで上を向かせる。

「おい。吐き出すな。床を汚すなよ」
「あ、あ……」

 涙で潤んだ瞳。口を開け、口内の白いものを見せつけてくる。
 伸一郎は苦笑いを浮かべる。ったく。どこで覚えてきたんだか。
 ぱっと手を離し、余韻に浸る。

「これからもっと練習していこうな? 藤行。練習のたびに俺のチンコ貸してやるから」

 喉が乾いたので冷蔵庫から適当にビールを選んで、ぷしっと開けながら広縁に戻る。

「お前もビール飲んでみるか……」

 ビールを持ったまま伸一郎は硬直する。藤行が何かをしている。

「ん、ちゅっ、んん……。ああ、おいしい……」

 なんと床に吐き出した精液を指で掬い、美味しそうに舐めているのだ。
 女の子座りで、乱れた浴衣を直しもせず。表情は恍惚として。

「……」

 伸一郎の理性が爆弾を仕掛けられたダムのようにボカンと決壊した。



 と、同時に枕が飛んできたのでさっと避ける。

「いつまでエロ話語ってんだアア!」
「んだよ。お前が聞きたそうにしてたんだろ」
「もう結構です!」

 はー、はーと息を荒くして肩を上下させる。今の話できれいに思い出した昨日の出来事。出来れば記憶の泥に沈んで一生浮上しないでほしかった。
 また布団ミノムシになってしまう。

「うううう……」
「話聞いてる時のお前の顔も面白かったぞ?」
「伸一郎さんだけバス乗り遅れろ!」

 さめざめと泣くが、気になったことがあるので布団から出る。
 汚したらしい広縁の床も、藤行自身も、浴衣もきれいだ。

「伸一郎さん。まさか掃除してくれたの? え? 掃除したの? 伸一郎さんが?」
「お前拭いて床拭いたぐらいだよ。「こいつ影武者か?」みたいな顔すんな。部屋に付いてるシャワーでタオル濡らしてちゃちゃーっとな」

 浴衣を脱いで着替えだす伸一郎に、藤行もここが旅先なのだと思い出す。
 藤行も着替える。昨日の服でもいいが夏なので服を余分に持ってきた。せっかくなのでそれに着替えよう。

「で、まだ続きあるけど、話そうか? 俺の理性(ダム)が決壊したあとの話だけど」
「聞いてないです。うるさいんで黙ってください」
「こっからがいいとこなのに」

 着替え終わるとお互い、ため息をついた。

「なんだお前その、服。服……? 朝からテンション下げさせんな。昨日の服の方がマシだったぞ。そろそろいい加減にしろ」

 前と後ろにどどんとプリントされたちくわちゃんTシャツ(背景紫)。

「伸一郎さんだって。浴衣の方がかっこよかったのに」

 シワの多いシャツに実家でくつろいでいる時のようなゆったりしたズボン。

「「……」」

 不毛な争いはやめよう。
 宿の人が布団を回収しに来てくれる。それと入れ替わりで朝食が運ばれてきた。
 白米に漬物、旬の魚の煮物に、味噌汁。甘い豆の何かに、味付け海苔。毎日食べたい和食。

「うまそう~。でも俺、シャワー浴びたい」
「食ってからにしろ」

 両手を合わせて食べ始める。
 もぐもぐもぐもぐ。
 昨日運動(隠語)したせいか、腹が減って仕方がない。器の中身が次々消えていく。

「顔の腫れ、マシになったな」
「そう? それなら良かった。飯食ったら温泉行ってこようかな」
「軽くにしておけよ」
「うん」

 もぐもぐもぐもぐ。

「ごちそうさま~。お腹いっぱい」
「全然足りねぇんだけど? 白米どこ行った?」
「おじいちゃん全部食べたでしょ」

 おひつの中にあった白米は空っぽ。それでもまだ足りないと申すか。
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