わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

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間話 何でもない日じゃなかったある日の10月~女子会編~

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仕事終わりにおしゃれな店でシャンパンを飲みながら女子会。
リア充過ぎて軽く夢かと思うレベルですが、驚く事にこれが現実。


「でも本当によかったんですか?主任の奢り断っちゃて」
「あら、今日はだって喜んでいたのは及川さんじゃない?」
「それはそうなんですが…」

おんぶにだっこついでで、今日は完全に二人の奢りと聞かされた高瀬としてはなんともコメントに困る。

間違いなくオッケーされると信じていたらしい主任。帰りに見たその背中には、そこはかとない哀愁がただよっていた。

南無。

そうこうしているうちに、てきぱきと料理の注文を行う矢部先輩。
あらかた頼み終わると、開いたままのメニューを高瀬に手渡す。

「ほら、気にせず好きなものじゃんじゃん頼みなさいよ。
今日は及川さんのお祝いなんだから、それを全部主任達に支払ってもらうんじゃおかしいでしょ?」
「そうね。私達にだって先輩としてのプライドがあるわ。
雇用年数に応じてそれなりの給料だって貰ってるんだから、貴方の食い扶持くらい私達二人で軽く払ってあげるわよ」

「……………先輩っ!!」

持つべきものは気のおけない先輩社員。

まさか二人とここまで親密な関係を築けるとは夢にも思わなかった。

前回の一件から、思いがけず親戚関係が判明した矢部先輩と中塚女史。

お互い腹を割って話してみれば案外共通する部分もあったのか、いつの間にかあっさり仲良くなってしまっていた。
高瀬を真ん中に挟んで飲み会をするのも、先月から数えて既に二度目のことである。

ちなみに、今日の事を最初に企画してくれたのは矢部先輩。
始めの頃、ハムちゃんで遊んで本当にすみませんでしたと心の中で土下座した。

「でも矢部先輩的には部長が居た方がよかったんじゃ……?」

折角のチャンスを不意にしてしまったのではなかろうかと心配すれば、そこは流石に矢部先輩。

「主役が余計な気を回すんじゃないわよ。
………大体、素で飲んでる姿なんて憧れの人に見せられるわけないでしょ」
「おぉ…………」

なるほど、それが女心。
そう言えば、前回の飲み会の時も。
酔った高瀬がぽろっと「部長は香水が嫌いだそうです」と暴露した結果、翌日から矢部先輩は香水をつけるのをやめた。
微かに漂うのは柔軟剤の香りのみで、この程度なら何の抵抗もない。
出勤直後に呼び出され、臭いを嗅いでみろと言われた時には驚いたが、訳を聞けばなんと言うことはない。

矢部先輩は重度の鼻炎だった。

道理でやたらと強い臭いを好んでいたはずである。

そもそも香水の瓶を集めるのが趣味で、多少鼻が麻痺している部分もあったようだ。
その趣味の香水も、部長の為にきっぱり封印した矢部先輩。
当然ながら、その日を境に社内での矢部先輩の評価はぐっとアップした。
矢部先輩的には部長以外になんと思われようと構わない、といった様子だったが…。

「最近思ったんですけど、矢部先輩って女子力高めなわりに変なところで乙女ですよね」

そのせいでわりと損してませんか?と。
シャンパン片手にしみじみ呟いた高瀬に、ぷっと吹き出す中塚女史。

「…………どういう意味か今から小一時間詰め寄られたくなかったらちゃんと説明して」
「うす!」

ざっくり言えばこうだ。

「女子力とはつまり対男性向け。はっきり言えば女子目線で多少あざとくても男性受けすれば可」
「…………」

ズバッと断言する高瀬を前に、脛に傷を持ち沈黙する矢部先輩。
矢部先輩の場合は、そのアピールする方向性も間違っていたのでいたたまれない。

「それに対して乙女は対自分。
まぁ、有り体に言えば自分が可愛いと思ったものなら人の目は気にはならない感じですね」

ゴスロリなどは良い例だ。
乙女の憧れではあるが、リアルに考えればあまり男性受けはしない。
合コンに着ていくなら、お姫様なフリフリよりも清楚なチラリズム。
女子のいう「可愛い」と男子の言う「可愛い」は根本的に意味合いが違うのだ。

「少女の心を失わないって意味で純粋とも言えます。
男性でいうなら中二病?」

あっちはあっちで自分がかっこいいと思ったものを追求する感じだ。
多分にアニメやゲームの影響を受けたものだが、それに関しては女子だって人のことは言えない。
将来なりたい職業に「プリ○ュア」だの「仮面ラ○ダー」だのをあげるちびっこは案外多いのだ。
総オタク国家日本としての面目躍如である。

「………失礼な事を言われてるのはわかるけど、身に覚えがないとも言えないのが癪だわ」
「悪気はないのよね、及川さんは。そもそもあなた自身が永遠の少女みたいなものだし」
「………規格外過ぎて逆に現実味のないレベルよね」

ーーう。

ぐさりと付きささる二人からの一言。
この二人には幽体離脱時の姿をバッチリ目撃されている。

「私の場合、永遠の少女ではなく永遠のなんで………」

「「…………永遠の幼女」」

永遠の少女ならば耽美だが、永遠の幼女では犯罪臭がぷんぷん漂う。
惜しい。後5年ほしかった。

姿って、自分の意思では変えられないの?」
「できたらとっくにやってますって」

高瀬としても、そろそろ永遠のロリが心に刺さる実年齢なのだ。

「なんで幼女なのかしら?不思議ね……?」
「あれはあれで可愛いから私は変える必要がないと思うわ」

ね?と同意を求められても、流石にそれには頷けません。
ほんのり頬が赤く染まった中塚先輩の方がエロ可愛いと思う。

「この際はっきり言っておくけど、部長のことはもう諦めたわよ。
現実的に考えて、弱みを見せられないと思うような相手と一生生活を共にするなんて無理でしょ。
あの神々しい人相手に、イビキやおならの音なんて聞かせられると思う?」

私には無理、ときっぱり断言する矢部先輩。

「結婚まで考えるなら、愛や恋より気の置けない相手を選ぶのが一番よ」
「う~む」

確かにそれも一理あるかもしれない。
部長、知らぬところで矢部先輩にふられれていたらしい。

「勿論今でも憧れの人ではあるけど、10代の子じゃあるまいし、現実と理想は別ってこと」

相手から嫌われたくないと思う程度には好いているが、一生を共にしたいとは思わない。

「一気に悟りましたね、矢部先輩」
「あれだけの目に遭えば、人生観だって変わらざるを得ないわよ」

ーーー納得した。
矢部先輩もまた、あの事件以降悪くない方向に変わりつつあるらしい。

それからしばらくして料理が届き始め、やいのやいの言いつつ3人はしばらく食事を堪能した。
サプライズでバースデーケーキまで持ち込んでくれた二人には本当に感謝である。

「これからもよろしくね、及川さん」

「こちらこそ!!」

犬のようにしっぽを振るので是非仲良くして欲しい。

そう言えば、呆れたような表情の矢部先輩。

「馬鹿ね。私たちは対等でしょ。
職場では先輩後輩だけど、わざわざ媚びる必要はないわ」

もう借りは返したし、とボソリ呟く。

そう言えば一度目の飲み会の時、矢部先輩は「この前の迷惑料よ」と言いながら気前よくおごってくれたっけ。
矢部先輩としては、あれでもう貸し借りなしのつもりだったようだ。

そもそも矢部先輩に対して貸しとは思っていなかったのだが、こういうのは本人の気の持ちようだ。
それで気がすむなら、素直におごってもらったほうがお互い楽になる。

「たまには年上の友人もいいでしょ?」

照れたようにそっぽを向く矢部先輩に、「そうね、そう思ってもらえたらいいわ」と笑う中塚女史。

「一生ついていきます!」

はい!と手を上げれば、「大げさね」と二人揃って笑われた。

「さて。そろそろお開きにしようかと思うけど、帰りはどうする?
私達はこのまま電車で帰るつもりだけど」

そう言われてスマホの液晶を見れば、時間は既に10時近く。
勿論お供します、と言いたいところだが、生憎この二人と高瀬とではむかう方向が真逆。
3人で話しでもしながら電車に乗るのと、一人ぽつんと帰るのでは気分的に大きな差がある。
折角の誕生日、ここはタクシーを使うべきか。

でもなぁ、と。

悩んでいたところに、プルル、と手持ちのスマホが鳴動した。

着信先を見れば、そこにあったのは見慣れた名前。
このタイミングでわざわざかけてきたということはもしや。

「ーーーーお迎えかしら?」
「!」

何もかもわかっているというような表情でふふと笑う中塚先輩。
どうやらこうなることは彼女たちの中で予測済みだったらしい。

「及川さん。
あなたはいったい誰を一生の相手に選ぶのかしらね?」

「誰を選ぼうと、女の友情は永遠よ?」

何も言わず送り出してくれる二人の笑顔がひたすら眩しい。

その瞬間、胸に過ったのは奇妙な安堵。

ーーーーあぁ。私の選択は間違っていなかった。

縁は今、ここに繋がっている。

、本当によかった」

「…………及川さん?」

今の台詞は一体…………。
まるで、かつては人ではなかったかのような………。

手の中で鳴動していたスマホの音が、その瞬間ピタリと止まった。
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