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お年玉企画~部長とおせちの甘い罠④~
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「――――及川君、とにかくその格好は」
ピンポーン、ピンポーン。
軽快なチャイムの音に、高瀬渾身の土下座を止めさせようと動いていた部長の足がピタリと止まった。
そのあとすぐ聞こえてきたのは、実に耳覚えのある声。
「お~い谷崎!いるんだろ?開けてくれよ」
どこかのんびりと、笑いを含んだその声。
思わず顔を見合わせる二人。
だが相談するまでもない。
ドアの前にいるのは間違いなく主任だ。
「もしかして、主任にも声をかけてたんですか?………ってあれ部長、今舌打ち………」
「気のせいだ」
「いやでも」
「俺は君以外呼んだ覚えはない」
躊躇いなく言い切る様はいつも通りの部長のようにも見えるが………。
「部長、もしかしてなんかちょっと変わりました?」
「何……?」
「いや、なんていうかこう………」
やっぱり中に誰か入ってるんじゃ………?
着ぐるみのチャックを確認すべく、そ―っと部長の背後を覗きこんでみるが、当然ながらそんなものがあるはずもなく。
「………まさかの双子?」
部長が二人でぶちょうがつ―。
ぶちょうがつ―、ぶちょうがつ―。
………おしょ―がつ?
なんかめでたいような気もするのだが、小言の類いも二倍になるかと思うと笑えない。
双子があり得ないことはわかっている。
部長は確実に一人っ子だ。
「開けなくていいんですか、部長。
新年の挨拶とか………」
「そんなものは仕事始めで顔を会わせれば十分だろう。
只でさえ見飽きた顔だぞ?めでたいも何もあるか」
「建前もなしに本音を言うとかやっぱり部長らしくないです」
「………君の俺認定について、一度じっくり話し合ってみたいと言うのが今の俺の本音だ」
「!!」
やばい、やっぱりいつもと何かが違ってる!
ハッまさか!!
「これが噂の1UP………!」
ピンポンピンポ―ン!!
応答がないことに焦れたと言うよりはまるでこちらをからかっているかのようなタイミングで鳴り響くチャイム。
そしてそれとはまた別に新しい音が部長の腰元から。
「部長、スマホ鳴ってますけど」
「……………相手はわかっているから出ずとも構わない」
「それってやっぱり主…………」
「気になるなら切る」
どう考えても催促の電話だが、部長はスマホを手に取るとあっさり着信拒否に。
途端に鳴り響くチャイムの音。
ピンポンピンポンピンポーン!!
「今電話切ったな?ってことはやっぱりそこに高瀬君がいるんだろ!
独り占めなんてずるいぞ!彼女には特別にお年玉を用意してきたんだか――――」
「お年玉!!」
心の耳が今ピンと立ち上がった拍子に、自分の体もぴょんと飛び上がる。
土下座はもう撤収だ。
「今すぐ開けてあげましょう部長!!」
さぁ今すぐにと部長の腕を引く高瀬。
明けましておめでたいのでお年玉下さい、主任!
ピンポーン、ピンポーン。
軽快なチャイムの音に、高瀬渾身の土下座を止めさせようと動いていた部長の足がピタリと止まった。
そのあとすぐ聞こえてきたのは、実に耳覚えのある声。
「お~い谷崎!いるんだろ?開けてくれよ」
どこかのんびりと、笑いを含んだその声。
思わず顔を見合わせる二人。
だが相談するまでもない。
ドアの前にいるのは間違いなく主任だ。
「もしかして、主任にも声をかけてたんですか?………ってあれ部長、今舌打ち………」
「気のせいだ」
「いやでも」
「俺は君以外呼んだ覚えはない」
躊躇いなく言い切る様はいつも通りの部長のようにも見えるが………。
「部長、もしかしてなんかちょっと変わりました?」
「何……?」
「いや、なんていうかこう………」
やっぱり中に誰か入ってるんじゃ………?
着ぐるみのチャックを確認すべく、そ―っと部長の背後を覗きこんでみるが、当然ながらそんなものがあるはずもなく。
「………まさかの双子?」
部長が二人でぶちょうがつ―。
ぶちょうがつ―、ぶちょうがつ―。
………おしょ―がつ?
なんかめでたいような気もするのだが、小言の類いも二倍になるかと思うと笑えない。
双子があり得ないことはわかっている。
部長は確実に一人っ子だ。
「開けなくていいんですか、部長。
新年の挨拶とか………」
「そんなものは仕事始めで顔を会わせれば十分だろう。
只でさえ見飽きた顔だぞ?めでたいも何もあるか」
「建前もなしに本音を言うとかやっぱり部長らしくないです」
「………君の俺認定について、一度じっくり話し合ってみたいと言うのが今の俺の本音だ」
「!!」
やばい、やっぱりいつもと何かが違ってる!
ハッまさか!!
「これが噂の1UP………!」
ピンポンピンポ―ン!!
応答がないことに焦れたと言うよりはまるでこちらをからかっているかのようなタイミングで鳴り響くチャイム。
そしてそれとはまた別に新しい音が部長の腰元から。
「部長、スマホ鳴ってますけど」
「……………相手はわかっているから出ずとも構わない」
「それってやっぱり主…………」
「気になるなら切る」
どう考えても催促の電話だが、部長はスマホを手に取るとあっさり着信拒否に。
途端に鳴り響くチャイムの音。
ピンポンピンポンピンポーン!!
「今電話切ったな?ってことはやっぱりそこに高瀬君がいるんだろ!
独り占めなんてずるいぞ!彼女には特別にお年玉を用意してきたんだか――――」
「お年玉!!」
心の耳が今ピンと立ち上がった拍子に、自分の体もぴょんと飛び上がる。
土下座はもう撤収だ。
「今すぐ開けてあげましょう部長!!」
さぁ今すぐにと部長の腕を引く高瀬。
明けましておめでたいのでお年玉下さい、主任!
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