284 / 290
比丘尼塚伝説編⑦
しおりを挟む
「やっぱり、とは随分な言いようですね」
「あぁ?なぁにをすっとぼけてやがる竜児。そもそも一番ひどかったのはてめぇだろうがよ」
完全に僧侶としての顔を投げ捨てたのか、それともいつもこの調子なのか。
柄の悪さ全開の源太郎は、袈裟姿のままドサりとあぐらをかきその場に座り込む。
「あんだけあからさまに態度に出してりゃ、大抵のやつは空気読んでお前らから離れようとするわ!」
「んで、空気が読めなかったゲンゴロウだけが残ったんだよなぁ、はは」
「てめ、賢治っ」
「ぴぃ!」
人をKY呼ばわりする賢治に肩車され、ピーちゃんは実にご機嫌だ。
肩車どころか振り回されてジャイアントスイング気味なんだが、大丈夫かピーちゃん。
個人的にはスカートの中身が心配です。
「……ん?ぴぃ?ぴぃってなんだぴぃって。鳥じゃあるまいし」
その様子に毒気を抜かれつつ、首をひねったのが源太郎。
そこですかさず訂正を入れる高瀬。
「いや、ピーちゃんは鳥だし」
「あぁ?」
「だから、鳥だって」
「んなわけあるか………!!……あ?なんだ嬢ちゃん??」
再びするすると賢治の肩を伝って畳へと降りたピーちゃんが、源太郎の袈裟の袖を引っ張り、そこに顔を突っ込んでみたりして遊んでいる。
それはそれでなかなか楽しいらしい。
「おいおい、袈裟はそうして遊ぶもんじゃ…………」
「ぴぃ?」
ボンッ!!
「!?」
小首をかしげたピーちゃんが、一瞬にして視界から消えた。
「な、なんだなんだ!?」
慌てる源太郎だが、あいにくピーちゃんの居場所は反対側からは丸見え。
「源太郎、袖の中」
「んぁ?」
こんなところにいるわけ………そう言いながらも覗き込んだ袖の中、ひょいと顔を出したのは、お馴染みの。
「………鳥だな」
「でしょ?」
空気は読めないが、こういう場面における適応能力だけは人一倍高い源太郎。
早くも袖の中でくぅくぅと寝息をたてようとしているピーちゃんをゆっくり取り出すと、手のひらに乗せて矯めつ眇めつながめ、妙に満足気な表情で再び袖の中に戻す。
ピーちゃんとしては快適ハンモック状態なのだろうが、ちょっとまて。
「なぜ今戻したの?
そりゃ確かに楽しげに寝てるけど、それうちの子だからダメ!」
「くれ」
「一言!?」
そういえばこの男、見た目に似合わず小動物好きだった。
「しゃべれる小動物なんて最高じゃないか!可愛い!くれ!!」
「ダメ!!」
うちの子はあげませんっ!!
「ケンちゃんパパ!源太郎からうちの子を奪取!!!」
「はいはい、了解」
「あ!おい何するっ!!」
ノリのいい賢治が、ひょいと背中から源太郎を押さえ込み、その袖をまさぐってすぐにピーちゃんを見つ出す。
「ほれよ」
ひょい、っと畳の上に投げてやれば、転がり落ちたピーちゃんが「ぴぃ!」ともう一度鳴いてようやく高瀬の元へ。
「ぴぃ~」
「きっとふ~、って一息ついてるところなんだろうけど、この混乱の大本はピーちゃんだからね?」
わかってるのか、とツンツンその体をつつけば、くすぐったそうにプルプルと身を震わせる白い小鳥。
確信犯ピーちゃんは、基本やり逃げが得意です。
だか、ある意味タイミングとしてはバッチリ。
おかげで説明が楽になった。
「ほら、今ので分かったでしょ?
ピーちゃんは確かにうちの子だけど、厳密に言えば私が産んだ子ではありません」
流石に鳥の子供は産めない。
というか人間には不可能な芸当である。
「可愛い外見して腹が真っ黒そうなあたりお前ら3人にそっくりだが」
「名誉毀損!!」
「そりゃま、子は親に似るって言うしな」
むぅとほっぺを膨らませる高瀬に対して、当たり前だと答える賢治。
「僕は鳥の子供を持った覚えはありませんが、それはタカ子の分身のようなものですからね」
「確かに娘みたいなもんだよな」
ピーちゃんにだったら、父と呼ばれるのもやぶさかではないらしい二人。
「まぁ、さっきのはピーちゃん流のブラックジョークだとは思うけど……。
とにかく、このピーちゃんは私の、私の………??」
そこまで言って急に不安を覚え、二人に視線を向ける高瀬。
「こういう場合って、なんて言えばいいの?」
式神?いや、確かにピーちゃんは元々紙でできているが、今となってはそれも怪しいし。
とりあえず身内であることは間違いないが、ピーちゃんが何かと言われるとちょっと難しい。
二人としても専門家ではないため、「なんでもいいんじゃねぇの?」と適当な答え。
それに対して一番まともな回答をくれたのは、意外なことに源太郎だった。
「つまり、コイツはお前の眷属ってことだろ。
どういう経緯で出てきたのかは後でじっくり聞かせて貰いたいところだが………」
腐っても坊主、流石に専門家は違う。
「ってことは、さっき一緒に居たハムスターもお前のか?」
「ハムちゃんのこと?うん、そうだよ」
そういえばいつもの事とは言え、姿がみえない。
「コイツ、さっきから袈裟の中に入って寝てるんだが、こっちは連れて帰ってもいいんだよな?」
「!?」
ダメ!!!と叫んでから急いでハムちゃんを回収。
なんでそんなところにいるの!
すっかりピーちゃんに気を取られて、ハム太郎にはまで気が回っていなかった。
あやうくそのまま連れ去られるところだったと焦る高瀬。
「ってか、いつからそこに」
「お前んところのその偽幼女が、あいつらをパパだのなんだの言い始めた頃だな」
「そんな前から!?」
なんということだ。
ピーちゃんよりもハムちゃんの方が一足先に侵入を果たしていたとは。
しかもピーちゃんが入り込んだのとは反対の袖だった為、一度袖に手を突っ込んだ賢治も気付かなかった模様。
ハム太郎の隠密スキルは日々レベルアップしている。
「ハムちゃんっ、知らない人について言っちゃダメでしょっ?」
「きゅ?」
「きゅ?じゃなくて!!目をこすらないっ!!でもそれなんかカワイイから許すっ」
ゴシゴシと腕で目を擦る素振りを見せるハム太郎。
本気で寝てたな、こいつ。
「無駄に肝が据わってるところがお前そっくりだな」
なるほど、と妙なところで納得している源太郎。
なんだか地味に精神が削られた気がするが、いい加減に本題に入ってもらえないだろうか。
「というか源太郎って、こういうオカルト系得意だったっけ?
それともお坊さんになってから勉強したの?」
昔は特に霊感があるなんて話は聞いたことがなかった。
その頃には高瀬も今ほど強い霊感があったわけではないので、絶対にないとは言い切れないがーーーー。
「まぁ、必要に迫られてってとこだな」
「必要?」
「色々あったんだよ、俺にもな」
「ほぉ……」
気になる。
すごく気になるので後で酔わせて聞いてみよう。
場が落ち着いたのを見計らい、ようやく真面目な話に入る四人。
説明は賢治の担当だ。
「んで、話をまとめると、その色々ってのが現在に繋がってるわけでな」
「?」
「あ~、ほらタカ子。こいつの顔をもう一度よく見てみろよ。どっかで見覚えはないか?」
「??だから源太郎でしょ?」
見覚えも何もないと首を傾げれば、「違う」と一言。
賢治から返ってきたのは、思いもよらぬ正解。
「テレビだよ。テレビCM」
「CM?」
「ほら、毎年やってるだろ?年末恒例超常現象特番」
オカルト否定派と肯定派が揃い、目くそ鼻くそなバトルを繰り広げるバラエティ番組だ。
「半分悪ふざけみたいな内容も多いが、去年あれに出てた霊能力者の一人がこいつ。
一時期番宣も結構バンバン流れてたから、一回くらいはタカ子も見たことがあるはずだぞ?」
「え、マジで」
オカルト番組?
源太郎が???
申し訳ないが、まったく記憶にない。
「同時期に放送してた、シリーズもの刑事ドラマの映画版なら覚えてるんだけど………」
東京がウィルステロの標的にされると言う、なかなかに衝撃的な展開だった。
ごめんごめんと謝れば、意外にも源太郎に怒った様子はない。
「所詮はやらせ番組だからな」
本物の能力者である高瀬なら興味がなくて当然、ということらしい。
賢治としても、初めからそのくらいのことは予測済みだ。
番組を見ていないとしても、そのC M位は一度は目にしているはずなのだが、残念ながら高瀬の記憶に一切残らなかったらしい。
「仕方無いか。そもそもあの手の心霊バラエティなんてほとんど見ないもんな、タカ子は」
「何しろ日常がオカルトなもので……」
ある意味では笑えるのだが、正直見ていて気の毒になるのであまり見ない。
誰も居ない場所を指差して大真面目に「あそこに女の霊が!」とか言われてもなんだかなと言う感じで。
むしろ貴方の後ろで指を指して笑ってますよと教えてあげたくなる。
ちょっと切ない。
「幽霊より生きてる人間のほうがよっぽど怖いよね」
「タカ子にとっちゃ、そうだろうなぁ」
人間とは非日常に憧れる生き物。
だからこそ人はオカルトに興味を持つのだろうが、高瀬の場合はむしろ反対。
リアル路線のサスペンスや、刑事ドラマのほうが見ていて楽しい。
定番の「犯人はお前だ!」という奴は、いつかどこかで言ってみたいセリフNo1だ。
と、脱線したが結局なんの話だっけ?
「つまりだな。その特番をやってたのがさっき話したのと同じ問題のテレビ局で。
ゲンゴロウが今ここにいるのは、テレビ局の人間が番組の伝手を辿ってわざわざ呼んできた、あっちサイドのオブザーバーだから、ってことだ」
………なんだって?
「え、じゃあ源太郎実はスパイだったの?」
「違うっ!!」
即座の否定が逆に怪しい。
「僕達がそんな間抜けな事をすると思いますか?
それは僕たちの手駒。彼等に仕掛けた獅子身中の虫ですよ」
「手駒………?」
「なるほど、確かに虫だな」
ゲンゴロウだけに、と笑う賢治をジロリと睨む源太郎。
「獅子身中の虫って確か、身内にいる裏切り者的な意味じゃなかったっけ?」
「タカ子にしては利口ですね」
つまり正解。
っこてはだ。
結局どっちにしろ、源太郎はスパイってこと??
「いわゆるミッションインポッシブル?」
それに対する竜児の反論はこうだ。
「とんでもない。不可能な任務どころか、彼らを足止めするだけの実に簡単なお仕事ですよ。
なにしろテレビ局の人間は誰1人として僕らの繋がりを把握していないのですから、疑われるはずもありませんし」
「あぁ?なぁにをすっとぼけてやがる竜児。そもそも一番ひどかったのはてめぇだろうがよ」
完全に僧侶としての顔を投げ捨てたのか、それともいつもこの調子なのか。
柄の悪さ全開の源太郎は、袈裟姿のままドサりとあぐらをかきその場に座り込む。
「あんだけあからさまに態度に出してりゃ、大抵のやつは空気読んでお前らから離れようとするわ!」
「んで、空気が読めなかったゲンゴロウだけが残ったんだよなぁ、はは」
「てめ、賢治っ」
「ぴぃ!」
人をKY呼ばわりする賢治に肩車され、ピーちゃんは実にご機嫌だ。
肩車どころか振り回されてジャイアントスイング気味なんだが、大丈夫かピーちゃん。
個人的にはスカートの中身が心配です。
「……ん?ぴぃ?ぴぃってなんだぴぃって。鳥じゃあるまいし」
その様子に毒気を抜かれつつ、首をひねったのが源太郎。
そこですかさず訂正を入れる高瀬。
「いや、ピーちゃんは鳥だし」
「あぁ?」
「だから、鳥だって」
「んなわけあるか………!!……あ?なんだ嬢ちゃん??」
再びするすると賢治の肩を伝って畳へと降りたピーちゃんが、源太郎の袈裟の袖を引っ張り、そこに顔を突っ込んでみたりして遊んでいる。
それはそれでなかなか楽しいらしい。
「おいおい、袈裟はそうして遊ぶもんじゃ…………」
「ぴぃ?」
ボンッ!!
「!?」
小首をかしげたピーちゃんが、一瞬にして視界から消えた。
「な、なんだなんだ!?」
慌てる源太郎だが、あいにくピーちゃんの居場所は反対側からは丸見え。
「源太郎、袖の中」
「んぁ?」
こんなところにいるわけ………そう言いながらも覗き込んだ袖の中、ひょいと顔を出したのは、お馴染みの。
「………鳥だな」
「でしょ?」
空気は読めないが、こういう場面における適応能力だけは人一倍高い源太郎。
早くも袖の中でくぅくぅと寝息をたてようとしているピーちゃんをゆっくり取り出すと、手のひらに乗せて矯めつ眇めつながめ、妙に満足気な表情で再び袖の中に戻す。
ピーちゃんとしては快適ハンモック状態なのだろうが、ちょっとまて。
「なぜ今戻したの?
そりゃ確かに楽しげに寝てるけど、それうちの子だからダメ!」
「くれ」
「一言!?」
そういえばこの男、見た目に似合わず小動物好きだった。
「しゃべれる小動物なんて最高じゃないか!可愛い!くれ!!」
「ダメ!!」
うちの子はあげませんっ!!
「ケンちゃんパパ!源太郎からうちの子を奪取!!!」
「はいはい、了解」
「あ!おい何するっ!!」
ノリのいい賢治が、ひょいと背中から源太郎を押さえ込み、その袖をまさぐってすぐにピーちゃんを見つ出す。
「ほれよ」
ひょい、っと畳の上に投げてやれば、転がり落ちたピーちゃんが「ぴぃ!」ともう一度鳴いてようやく高瀬の元へ。
「ぴぃ~」
「きっとふ~、って一息ついてるところなんだろうけど、この混乱の大本はピーちゃんだからね?」
わかってるのか、とツンツンその体をつつけば、くすぐったそうにプルプルと身を震わせる白い小鳥。
確信犯ピーちゃんは、基本やり逃げが得意です。
だか、ある意味タイミングとしてはバッチリ。
おかげで説明が楽になった。
「ほら、今ので分かったでしょ?
ピーちゃんは確かにうちの子だけど、厳密に言えば私が産んだ子ではありません」
流石に鳥の子供は産めない。
というか人間には不可能な芸当である。
「可愛い外見して腹が真っ黒そうなあたりお前ら3人にそっくりだが」
「名誉毀損!!」
「そりゃま、子は親に似るって言うしな」
むぅとほっぺを膨らませる高瀬に対して、当たり前だと答える賢治。
「僕は鳥の子供を持った覚えはありませんが、それはタカ子の分身のようなものですからね」
「確かに娘みたいなもんだよな」
ピーちゃんにだったら、父と呼ばれるのもやぶさかではないらしい二人。
「まぁ、さっきのはピーちゃん流のブラックジョークだとは思うけど……。
とにかく、このピーちゃんは私の、私の………??」
そこまで言って急に不安を覚え、二人に視線を向ける高瀬。
「こういう場合って、なんて言えばいいの?」
式神?いや、確かにピーちゃんは元々紙でできているが、今となってはそれも怪しいし。
とりあえず身内であることは間違いないが、ピーちゃんが何かと言われるとちょっと難しい。
二人としても専門家ではないため、「なんでもいいんじゃねぇの?」と適当な答え。
それに対して一番まともな回答をくれたのは、意外なことに源太郎だった。
「つまり、コイツはお前の眷属ってことだろ。
どういう経緯で出てきたのかは後でじっくり聞かせて貰いたいところだが………」
腐っても坊主、流石に専門家は違う。
「ってことは、さっき一緒に居たハムスターもお前のか?」
「ハムちゃんのこと?うん、そうだよ」
そういえばいつもの事とは言え、姿がみえない。
「コイツ、さっきから袈裟の中に入って寝てるんだが、こっちは連れて帰ってもいいんだよな?」
「!?」
ダメ!!!と叫んでから急いでハムちゃんを回収。
なんでそんなところにいるの!
すっかりピーちゃんに気を取られて、ハム太郎にはまで気が回っていなかった。
あやうくそのまま連れ去られるところだったと焦る高瀬。
「ってか、いつからそこに」
「お前んところのその偽幼女が、あいつらをパパだのなんだの言い始めた頃だな」
「そんな前から!?」
なんということだ。
ピーちゃんよりもハムちゃんの方が一足先に侵入を果たしていたとは。
しかもピーちゃんが入り込んだのとは反対の袖だった為、一度袖に手を突っ込んだ賢治も気付かなかった模様。
ハム太郎の隠密スキルは日々レベルアップしている。
「ハムちゃんっ、知らない人について言っちゃダメでしょっ?」
「きゅ?」
「きゅ?じゃなくて!!目をこすらないっ!!でもそれなんかカワイイから許すっ」
ゴシゴシと腕で目を擦る素振りを見せるハム太郎。
本気で寝てたな、こいつ。
「無駄に肝が据わってるところがお前そっくりだな」
なるほど、と妙なところで納得している源太郎。
なんだか地味に精神が削られた気がするが、いい加減に本題に入ってもらえないだろうか。
「というか源太郎って、こういうオカルト系得意だったっけ?
それともお坊さんになってから勉強したの?」
昔は特に霊感があるなんて話は聞いたことがなかった。
その頃には高瀬も今ほど強い霊感があったわけではないので、絶対にないとは言い切れないがーーーー。
「まぁ、必要に迫られてってとこだな」
「必要?」
「色々あったんだよ、俺にもな」
「ほぉ……」
気になる。
すごく気になるので後で酔わせて聞いてみよう。
場が落ち着いたのを見計らい、ようやく真面目な話に入る四人。
説明は賢治の担当だ。
「んで、話をまとめると、その色々ってのが現在に繋がってるわけでな」
「?」
「あ~、ほらタカ子。こいつの顔をもう一度よく見てみろよ。どっかで見覚えはないか?」
「??だから源太郎でしょ?」
見覚えも何もないと首を傾げれば、「違う」と一言。
賢治から返ってきたのは、思いもよらぬ正解。
「テレビだよ。テレビCM」
「CM?」
「ほら、毎年やってるだろ?年末恒例超常現象特番」
オカルト否定派と肯定派が揃い、目くそ鼻くそなバトルを繰り広げるバラエティ番組だ。
「半分悪ふざけみたいな内容も多いが、去年あれに出てた霊能力者の一人がこいつ。
一時期番宣も結構バンバン流れてたから、一回くらいはタカ子も見たことがあるはずだぞ?」
「え、マジで」
オカルト番組?
源太郎が???
申し訳ないが、まったく記憶にない。
「同時期に放送してた、シリーズもの刑事ドラマの映画版なら覚えてるんだけど………」
東京がウィルステロの標的にされると言う、なかなかに衝撃的な展開だった。
ごめんごめんと謝れば、意外にも源太郎に怒った様子はない。
「所詮はやらせ番組だからな」
本物の能力者である高瀬なら興味がなくて当然、ということらしい。
賢治としても、初めからそのくらいのことは予測済みだ。
番組を見ていないとしても、そのC M位は一度は目にしているはずなのだが、残念ながら高瀬の記憶に一切残らなかったらしい。
「仕方無いか。そもそもあの手の心霊バラエティなんてほとんど見ないもんな、タカ子は」
「何しろ日常がオカルトなもので……」
ある意味では笑えるのだが、正直見ていて気の毒になるのであまり見ない。
誰も居ない場所を指差して大真面目に「あそこに女の霊が!」とか言われてもなんだかなと言う感じで。
むしろ貴方の後ろで指を指して笑ってますよと教えてあげたくなる。
ちょっと切ない。
「幽霊より生きてる人間のほうがよっぽど怖いよね」
「タカ子にとっちゃ、そうだろうなぁ」
人間とは非日常に憧れる生き物。
だからこそ人はオカルトに興味を持つのだろうが、高瀬の場合はむしろ反対。
リアル路線のサスペンスや、刑事ドラマのほうが見ていて楽しい。
定番の「犯人はお前だ!」という奴は、いつかどこかで言ってみたいセリフNo1だ。
と、脱線したが結局なんの話だっけ?
「つまりだな。その特番をやってたのがさっき話したのと同じ問題のテレビ局で。
ゲンゴロウが今ここにいるのは、テレビ局の人間が番組の伝手を辿ってわざわざ呼んできた、あっちサイドのオブザーバーだから、ってことだ」
………なんだって?
「え、じゃあ源太郎実はスパイだったの?」
「違うっ!!」
即座の否定が逆に怪しい。
「僕達がそんな間抜けな事をすると思いますか?
それは僕たちの手駒。彼等に仕掛けた獅子身中の虫ですよ」
「手駒………?」
「なるほど、確かに虫だな」
ゲンゴロウだけに、と笑う賢治をジロリと睨む源太郎。
「獅子身中の虫って確か、身内にいる裏切り者的な意味じゃなかったっけ?」
「タカ子にしては利口ですね」
つまり正解。
っこてはだ。
結局どっちにしろ、源太郎はスパイってこと??
「いわゆるミッションインポッシブル?」
それに対する竜児の反論はこうだ。
「とんでもない。不可能な任務どころか、彼らを足止めするだけの実に簡単なお仕事ですよ。
なにしろテレビ局の人間は誰1人として僕らの繋がりを把握していないのですから、疑われるはずもありませんし」
0
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる