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ジャ○アンの遺産はのび○のものだそうです。
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「何をショックを受けてるんです、仕方の無い子ですね……ほら」
「?」
目の前にぶら下げられたのは、二つの鍵がついたキーリング。
合鍵を返したというのならわかるが……なぜ2個?
しかもどう見ても二つとも、及川家の鍵穴とは合いそうにない。
謎の鍵を前に、手を伸ばすこともなくじっと見上げていた高瀬だが、その高瀬の額の上に、トン、っと二つの鍵が置かれた。
「僕の自宅の鍵と、賢治の暮らすあの雑居ビルの部屋の鍵です」
「はい?……っとと!!」
答えながら顔を下げたことで、額の鍵がするすると滑り落ち、慌ててそれをキャッチする。
そして、改めて涼しい顔の竜児を凝視した。
「まさか、うちの合鍵を返さない代わりにこれでおあいこってこと!?」
そういう意味か、っとハッと気づけば、それに首をふる竜児。
「違いますよ、失礼ですね…。さっき言った言葉を聞いていなかったんですか?」
「?」
「…タカ子のものは僕のもの、賢治のものも僕のもの、そして最終的には僕らのものはタカ子のもの…ってね」
「はい!?」
ジャ○アン理論にまさかの続きがあった。
ということは、なんだ。
「よかったですね、タカ子。君の総取りですよ」
「…ってそういう問題じゃないから!!むしろこの鍵いらないからうちの鍵っ」
さっさと鍵を差し出し、交換を求めてみるが、当然のごとく却下。
「それでもまだ不満ならうちのマンションの不動産登記をタカ子の名前に…」
「結構ですっ」
「まぁどちらにせよそれはいずれ妻になるタカ子のものになる予定ですからね…」
ふむ、と一人勝手に納得する竜児。
――――まさか、最後の総取りって財産分与のことか!?
頭を抱えだした高瀬に向かい、いいことを思いついたと笑顔で付け足す。
「賢治と僕が養子縁組して生前分与で全ての不動産名義を君のものにしておけば随分と贈与税が…」
「―――――いらないよ!?」
家族設計を飛び越えて死後の設計まで入ってますけど!?
「というか、なんで二人が早く死んで私だけ生き残る予定でいんの??美人薄命とかさ!」
ねぇねぇ、と主張すれば、一言。
「だったら一番最初に命を落とすのは僕ですね」
「ガッデム!!」
真実を告げる白雪姫の継母の鏡並に空気を読めない奴め!
確かにそれが事実かもしれないけどっ。
「というより、タカ子に薄命は似合いませんよ。
君は長く図太く生きるタイプです」
「――それは否定しない」
自分でも多分そうだろうなとは思ってた。
「って、そんな言葉でごまかされないよ!?だから鍵っ!!」
「ちっ」
「舌打ちした!?結局誤魔化す気満々だったな!?」
そこまでして合鍵を返したくないのか、あんたらはっ。
どうせ返しやしないだろうが、あと一言二言行ってやらねば気がすまんと口を開きかけたその時。
ガサッ…。
「…おや」
『きゅぅ~』
扉の影から聞こえた物音に、竜児は目を細め、ハム太郎がそっと高瀬の影に隠れた。
「あ、白狐…」
ごめんすっかり忘れてた。
のそりと身を起こした白狐が、真っ赤な目を開いてこちらを見ている。
こちらに近づいてこようとす白狐を、その途中でひょいとつまみ上げた。
――勿論、竜児が。
キャンキャンキャンッツ!!!
「なんかものすっごい不本意感が伝わってくるけど…」
「気にする必要はありません。タカ子、そこの窓を開けて――――」
「つまみ出す気!?」
いくらなんでもかわいそうなんじゃないかと言えば、「当然です」と。
すたすたと自ら窓へ近づいていき。
「あぁ!」
ぺしっ。
窓の外へ容赦なく放り投げると、鍵をしっかりと締める。
そして何事もなかったかのような顔で、くるりと振り返り。
「これでよし」
『きゅ~…』
いつのまにか竜児の足元に歩み寄ったハム太郎が、一緒になって腕を組み、「やれやれ」といった表情を浮かべている。
一体ハムちゃんに何があったのか。
ちょっと竜児と二人わかり合えている様子なのが怖い。
ハムちゃんまで黒くなったらどうしよう。
『キャンキャンッ!!!!』
「……なんか家の外から聞こえるんだけど…」
「気のせいです」
『きゅ』
そう?ねぇ?本当にそう?
「……まぁ、いいけどさぁ…」
はぁ、と最終的には諦めの吐息を吐き、高瀬が椅子に腰掛ける。
「そうそう。タカ子には僕らとそこのペットがいるでしょう?多頭飼いはおすすめしませんよ」
「はいはい…」
まったく、何を言ったってどうせ聞きやしないのだ。
別にあの白狐自身には大した思い入れもないし、さっちゃんの魂を食おうとしていたのだとしたらむしろ悪。
救い出した竜児の方を褒めるべきかもしれない。
勝手な理屈だが、人間どうあがいても多少の依怙贔屓は仕方ない。
「そういえばさっき変な夢を見たなぁ…」
「夢?」
ぽつりと呟いたセリフに、竜児が食いついた。
「…桃太郎?」
と、しか言い様がない。
「部長に毒されたかな……」
目覚めてみれば待っていたのは犬猿雉ではなく魔王、ハムスター、狐だったが。
「なんか、いぬ、さる、きじ、って文字が変化して、変な単語になってさ…」
幼馴染二人がそこにキャスティングされていたことを省いて、気になっていたことだけを話す。
「それが不吉な言葉ばっかりだったんだよね~。いなくなるとか、帰ってこないとか…」
酷く後味が悪かった。
「……もしかすると、それは…」
「…ん?なんかあんの?この夢」
心当たりがあるらしい竜児に食い気味に尋ねる。
「…俗説の一つですよ。神隠しなどの一部の伝承と同じで、桃太郎もまた、裏に子供の「間引き」の実態を隠していると。桃から生まれた桃太郎は神の化身。その化身に連れられていくお供の動物というのが、つまり間引かれた子供。つまり、神によって鬼ヶ島=死後の世界に連れて行かれる」
――――だから、連れて行く動物の名がそれぞれ「居ぬ」「去る」「帰じ」なのだと。
「最もこの説を唱えているのは少数で、解釈はそれぞれですが…。
どこかでちらりと耳にしたことでもあったのでは?それが頭の片隅に残っていたのかも」
「…そうかなぁ?」
正直、心当たりはないが、とりあえずそういうことにしておこう。
でないとちょっと気味が悪い。
さすがにその3匹が部長と幼馴染二人だったというのも口にしづらいし。
「で、竜児はうちになんの用だったの?」
「それは決まってるでしょう。タカ子の身を案じていただけです」
「…要するに心配だから様子を見に来ただけ?」
「有り得ていに言えば」
特に異論はないらしい。
――――まったく、うちの幼馴染は揃って過保護がすぎる。
「しかし賢治には一言いっておかなければなりませんね」
「何を?」
「あれです」
そう言って指さしたのは、ピザの空箱。
「あんな添加物まみれのものをタカ子に食べさせるのは許せません」
「え~!!」
美味しかった、超美味しかったのに、とブーブー騒ぐ高瀬に、竜児の痛い一言。
「ジャンクフードばかり食べていると成長が止まりますよ」
ピシッ…。
なんの、とは言わない。とはいえ、今更身長が伸びて喜ぶはずもない。
「食事ならいくらでも連れて行ってあげますから、くれぐれもおかしなものは食べないように」
竜児の中のおかしなもの、にはきっと、マク○ナルドも、ケン○ッキーもピ○ハットも、全て一まとめになっているに違いない。
――というか、つい最近成長期を否定されたばかりな気がするのはきっと気のせいだろう……。
「?」
目の前にぶら下げられたのは、二つの鍵がついたキーリング。
合鍵を返したというのならわかるが……なぜ2個?
しかもどう見ても二つとも、及川家の鍵穴とは合いそうにない。
謎の鍵を前に、手を伸ばすこともなくじっと見上げていた高瀬だが、その高瀬の額の上に、トン、っと二つの鍵が置かれた。
「僕の自宅の鍵と、賢治の暮らすあの雑居ビルの部屋の鍵です」
「はい?……っとと!!」
答えながら顔を下げたことで、額の鍵がするすると滑り落ち、慌ててそれをキャッチする。
そして、改めて涼しい顔の竜児を凝視した。
「まさか、うちの合鍵を返さない代わりにこれでおあいこってこと!?」
そういう意味か、っとハッと気づけば、それに首をふる竜児。
「違いますよ、失礼ですね…。さっき言った言葉を聞いていなかったんですか?」
「?」
「…タカ子のものは僕のもの、賢治のものも僕のもの、そして最終的には僕らのものはタカ子のもの…ってね」
「はい!?」
ジャ○アン理論にまさかの続きがあった。
ということは、なんだ。
「よかったですね、タカ子。君の総取りですよ」
「…ってそういう問題じゃないから!!むしろこの鍵いらないからうちの鍵っ」
さっさと鍵を差し出し、交換を求めてみるが、当然のごとく却下。
「それでもまだ不満ならうちのマンションの不動産登記をタカ子の名前に…」
「結構ですっ」
「まぁどちらにせよそれはいずれ妻になるタカ子のものになる予定ですからね…」
ふむ、と一人勝手に納得する竜児。
――――まさか、最後の総取りって財産分与のことか!?
頭を抱えだした高瀬に向かい、いいことを思いついたと笑顔で付け足す。
「賢治と僕が養子縁組して生前分与で全ての不動産名義を君のものにしておけば随分と贈与税が…」
「―――――いらないよ!?」
家族設計を飛び越えて死後の設計まで入ってますけど!?
「というか、なんで二人が早く死んで私だけ生き残る予定でいんの??美人薄命とかさ!」
ねぇねぇ、と主張すれば、一言。
「だったら一番最初に命を落とすのは僕ですね」
「ガッデム!!」
真実を告げる白雪姫の継母の鏡並に空気を読めない奴め!
確かにそれが事実かもしれないけどっ。
「というより、タカ子に薄命は似合いませんよ。
君は長く図太く生きるタイプです」
「――それは否定しない」
自分でも多分そうだろうなとは思ってた。
「って、そんな言葉でごまかされないよ!?だから鍵っ!!」
「ちっ」
「舌打ちした!?結局誤魔化す気満々だったな!?」
そこまでして合鍵を返したくないのか、あんたらはっ。
どうせ返しやしないだろうが、あと一言二言行ってやらねば気がすまんと口を開きかけたその時。
ガサッ…。
「…おや」
『きゅぅ~』
扉の影から聞こえた物音に、竜児は目を細め、ハム太郎がそっと高瀬の影に隠れた。
「あ、白狐…」
ごめんすっかり忘れてた。
のそりと身を起こした白狐が、真っ赤な目を開いてこちらを見ている。
こちらに近づいてこようとす白狐を、その途中でひょいとつまみ上げた。
――勿論、竜児が。
キャンキャンキャンッツ!!!
「なんかものすっごい不本意感が伝わってくるけど…」
「気にする必要はありません。タカ子、そこの窓を開けて――――」
「つまみ出す気!?」
いくらなんでもかわいそうなんじゃないかと言えば、「当然です」と。
すたすたと自ら窓へ近づいていき。
「あぁ!」
ぺしっ。
窓の外へ容赦なく放り投げると、鍵をしっかりと締める。
そして何事もなかったかのような顔で、くるりと振り返り。
「これでよし」
『きゅ~…』
いつのまにか竜児の足元に歩み寄ったハム太郎が、一緒になって腕を組み、「やれやれ」といった表情を浮かべている。
一体ハムちゃんに何があったのか。
ちょっと竜児と二人わかり合えている様子なのが怖い。
ハムちゃんまで黒くなったらどうしよう。
『キャンキャンッ!!!!』
「……なんか家の外から聞こえるんだけど…」
「気のせいです」
『きゅ』
そう?ねぇ?本当にそう?
「……まぁ、いいけどさぁ…」
はぁ、と最終的には諦めの吐息を吐き、高瀬が椅子に腰掛ける。
「そうそう。タカ子には僕らとそこのペットがいるでしょう?多頭飼いはおすすめしませんよ」
「はいはい…」
まったく、何を言ったってどうせ聞きやしないのだ。
別にあの白狐自身には大した思い入れもないし、さっちゃんの魂を食おうとしていたのだとしたらむしろ悪。
救い出した竜児の方を褒めるべきかもしれない。
勝手な理屈だが、人間どうあがいても多少の依怙贔屓は仕方ない。
「そういえばさっき変な夢を見たなぁ…」
「夢?」
ぽつりと呟いたセリフに、竜児が食いついた。
「…桃太郎?」
と、しか言い様がない。
「部長に毒されたかな……」
目覚めてみれば待っていたのは犬猿雉ではなく魔王、ハムスター、狐だったが。
「なんか、いぬ、さる、きじ、って文字が変化して、変な単語になってさ…」
幼馴染二人がそこにキャスティングされていたことを省いて、気になっていたことだけを話す。
「それが不吉な言葉ばっかりだったんだよね~。いなくなるとか、帰ってこないとか…」
酷く後味が悪かった。
「……もしかすると、それは…」
「…ん?なんかあんの?この夢」
心当たりがあるらしい竜児に食い気味に尋ねる。
「…俗説の一つですよ。神隠しなどの一部の伝承と同じで、桃太郎もまた、裏に子供の「間引き」の実態を隠していると。桃から生まれた桃太郎は神の化身。その化身に連れられていくお供の動物というのが、つまり間引かれた子供。つまり、神によって鬼ヶ島=死後の世界に連れて行かれる」
――――だから、連れて行く動物の名がそれぞれ「居ぬ」「去る」「帰じ」なのだと。
「最もこの説を唱えているのは少数で、解釈はそれぞれですが…。
どこかでちらりと耳にしたことでもあったのでは?それが頭の片隅に残っていたのかも」
「…そうかなぁ?」
正直、心当たりはないが、とりあえずそういうことにしておこう。
でないとちょっと気味が悪い。
さすがにその3匹が部長と幼馴染二人だったというのも口にしづらいし。
「で、竜児はうちになんの用だったの?」
「それは決まってるでしょう。タカ子の身を案じていただけです」
「…要するに心配だから様子を見に来ただけ?」
「有り得ていに言えば」
特に異論はないらしい。
――――まったく、うちの幼馴染は揃って過保護がすぎる。
「しかし賢治には一言いっておかなければなりませんね」
「何を?」
「あれです」
そう言って指さしたのは、ピザの空箱。
「あんな添加物まみれのものをタカ子に食べさせるのは許せません」
「え~!!」
美味しかった、超美味しかったのに、とブーブー騒ぐ高瀬に、竜児の痛い一言。
「ジャンクフードばかり食べていると成長が止まりますよ」
ピシッ…。
なんの、とは言わない。とはいえ、今更身長が伸びて喜ぶはずもない。
「食事ならいくらでも連れて行ってあげますから、くれぐれもおかしなものは食べないように」
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