わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

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大漁?

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翌々日。
「はい、これお土産。残りは及川くんの自宅に配送してもらったからね」
出勤するなり主任から手渡されたのは、○○県では超有名なお土産物のお菓子。
「本当なら昨日渡すはずだったんだけど、君の怖い幼馴染から怒られちゃってさ~」
はは~と軽く言う主任だが。
「怒られた?」
竜児に?
「…うん。可愛い幼馴染に無理させるんじゃないってさ。君ら、昨日一緒だったんでしょ?」
「まぁ」
夕食をご馳走になった後竜児のマンションへ行き、夜はやってきたケンちゃんも一緒に3人で深夜まで映画鑑賞(シン・ゴ○ラ等々)、翌日は仕事があると出かけて行ったケンちゃんを見送って、竜児と二人で美味しいピザを食べに行った。
気になっていたその付近の水族館にも出かけ、デザートには付属のカフェテリアのパフェを。
誰の邪魔も入らないという安心感があってか、心配していた竜児も妙な下心を出すことなく、久々に幼馴染として誰はばかることなく楽しい休日を過ごしたわけだが…。
「それ、誰がどう聞いてもデートだよ」
「え」
「……予約して有名店にピザを食べに行って?その後水族館でぬいぐるみを買ってもらって、パフェを食べて?」
なにその理想のデートコース、と言われてはたと気づく。
「――否定できない!」
「でしょ」
ガード緩々だね、と指摘されても残念ながらその通り。
でも仕方ない。
幼馴染というのはそういうものだ。
近すぎて、逆に距離感が掴みづらい。
デートかどうかも改めて言われなければわからないくらいだ。
「まぁ、君が疲れてるのは知ってたし、無理をさせずにただ喜ばせようとしたんだろうけど…」
「愛されすぎて怖い」
「…君がそういう態度だから調子に乗るんだと思うけど?」
最もなご意見が耳に痛いと思いつつ、聞かなかったことにして頂いた土産を荷物に隠す。
休憩時間に中塚女史も呼んでおやつにしよう。
「あ、中塚くんにはそれとは違うお菓子をお土産に買ってきたよ。彼女も君と一緒に食べるって喜んでたから、今日出すつもりじゃないかな」
「やった」
頼れる姉御はやっぱり優しい。
「君、彼女にもよく懐いてるよねぇ。彼女が君のことを可愛がるのはなんとなくわかるんだけどさ」
――曰く、バカな子ほど可愛い。
「美人でサバサバしたしっかりもののお姉さんは憧れでしょう」
できる女の理想形なのだ。
「あのタイプは好き嫌いが分かれない?若い女の子にはちょっと倦厭されがちだと思うけど…」
「そんな勿体無いこと!」
「………うん、彼女が君をとっても可愛がってる理由はよくわかったよ」
これだけキラキラした瞳で懐かれればそれは嬉しくもなる。
「若い女の子が倦厭するってのはアレですよね。完全無欠の相手に上から目線で正論言われると腹が立つってやつ」
一種の八つ当たりのようなものだ。
「そんなの、一度腹を割って話せばすぐ分かり合える話なんですけどね」
いくら完璧に見えても、内面まで全て完全な人間なんて一人も居ない。
互いの粗を認め合って助け合うのが仲間だろう。
勿論、秘書課に来るにあたっていろいろ世話になった中塚女史には、これから恩を返していくつもりだが。
――――あ。主任の弱みを握ったし、なんかあったら私が中塚女史の代わりに…。
ちらり。
「急に悪い顔してどうしたの?」
「いえ、別に」
切り札はギリギリまで隠しておくものだ。
「ところで部長は?今日はお休みですか?」
「んなわけないでしょ…。ほら、例の提携話で会議中だよ」
「あぁ、室井社長の所の…」
そういえば、そもそもその話をしにいくというのが出張の目的だった。
「断ったんですよね?」
部長の話では、最初からそのつもりだったようだが。
「それがさ、どうやら昨日室井がうちの社長に直接電話入れたみたいで…。
――――どうやら、1年契約で本決まりになりそう」
一年で儲けが出ればそのまま継続、でなければそのテナントを出て行ってもらえばいい。
こちらの会社にとっては損のない契約だ。
「室井の奴、本気で会社全体の立て直しを計ってるみたいでさ…。病院のベッドの上からあっちこっちに電話して頭下げてるって…。アイツの会社の人間もみんな大忙しって話だよ」
そういいながら、主任の顔が嬉しそうに笑っている。
――――よかったですね、主任。
どうやら、自身の力でこれからを生きていく決意ができたようだ。
「及川くんが言っていた、呪いの反動?ってのも警戒はしてたみたいだよ。
君の言ってた霊能力者ってやつ…?それにも連絡をとって、例の土蔵の供養をお願いしたって」
「それはいいことですね…」
供養されずに放置されていた遺骨を、ようやく埋葬することができる。
本人達の霊は既に成仏しているとは言え、きちんとした供養をするに越したことはない。
呪いの返しも少なくて済むだろう。
「ちょっと調べてみたけど、なんだか若い割に結構なお偉いさんみたいだね」
「…あの男ですか?」
「……知らないの?」
君が勧めたくせに、と言われて言葉に詰まる。
「いや、なんだかヤバイ一族だから近づくなと言われて…」
竜児からは勿論、本人にも言われた。
自他ともに認めるくらいだから相当だろうな、と。
「ヤバイもなにも、日本の歴史を影で操ってるって言われてるような連中だよ。
――――嘘か本当かわからないけど、戦時中、敵国の首脳陣を呪詛してたって話もあるくらいの」
「流石にそれは眉唾じゃ…」
「だといいけどねぇ…」
アニメの見すぎ、そうだと信じたい。
「室井家の呪詛とやらは、彼らの一族の中でも今はもう失われた呪法に入るらしい。専門家を送るから、自由に調べさせろって言われたみたいよ。代わりに供養は無料だってさ」
「まぁ、いいんじゃないですかね…」
莫大な料金を請求された、などといったら直接乗り込んでやろうかと思ったが、そんなことはなかったらしい。
調べて何をするつもりかはきになるが…。
「ちなみに、室井からも君へなにかお礼をしたいって言うから、適当にお土産物を買わせといたよ」
「え?」
「それも全部自宅に届くと思うから、楽しみにね~」
にやりと笑う、その顔がちょっと怖いんですけど、主任。
え、どんだけ来んの?土産。
嬉しいけどちょっと怖い。
「それと、ひとつ言っておきたいことが…」
「?」
「…実は中塚君の事なんだけど」
「中塚先輩がなにか??」
ちょっと言いにくそうな主任の口調に、嫌な予感を覚える。
「それが――――」
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