Alastor-アラストル-

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旅立ち

Rentrons à la maison ~帰りましょうか~

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「クソ! クソがっ!! ぶっ殺してやる!!!」
 洞穴の中で横になり血の滲む包帯の巻かれた右目を押さえローベルトが喚き散らす。まだ痛みは取れておらず時折呻き声を挙げては暴れていた。

「じっとしてるんだローベルト! 傷に障る!」
 その様子を見てカインが体を押さえる。普段の落ち着いたローベルトからは想像もつかない狼狽ぶりに掛けてやる言葉が見付からない。
 アニエスもただ涙を流しがらローベルトを見ているしか出来なかった。

「何なんだよ……鳥のくせによ! 知能低いんじゃなかったのかよ!!」
 悪態をつき続けるローベルト。自信のあった策を破られ目も抉られ運良く生き残っているが、そのまま喰われ死んでいた可能性の方が遥かに高かった。
 だが死への恐怖よりも悔しさと憎しみの方が勝っていた。

「すまない……俺達が付いていながら……俺がお前達を連れて来なければ……っ!」
 ウィリアムは自分の責任だと、自分が3人を村に残していればローベルトが死にかけることはなかったと後悔し謝罪を繰り返す。

「ウィリーさん……そもそも僕がローベルトを無理に誘わなければ良かったんです。
 すまないローベルト……僕のせいでこんなことに……!」
 討伐隊参加に嫌がるローベルトを無理矢理引き込んだ己に責任があるとカインは自分を責めた。

「ローベルト君、気休めかもしれないけど痛み止よ。」
 イリスは調合した薬を飲ませる。
「ごめんなさい……」
 彼女もただ謝ることしか出来ず己の無力さを呪う。誰の責任であるか判断出来ないが、皆自分を責めることしか術はなかった。

「ゲホっ!……痛っ!……」
 痛み止を飲み噎せた衝撃で傷が痛む。唯一残された左の目は空を見ていた。
「……なぁカイン? ちょっと耳かせ。」


 遡る事2時間前。   
 コカドリーユが迫り右目を抉られたローベルトは一瞬の出来事に理解が追い付かない。だが右目が見えなくなったと思った瞬間激痛が襲った。
「ギャァァァァァァッ!!!」
 経験したことのない激しい痛みに叫ぶ。

「ローベルト!!!」
 カインが叫び助けに向かおうとするが、目の前で起こった光景に足が竦み動けないでいた。今更にモンスターへの恐怖心が押し寄せて来たのだ。

「クソったれ! イリス! イーゴリ!」

 ウィリアムの声に反応しイリスがコカドリーユの顔面目掛けて爆破魔法を放つ。ローベルトを足で掴み残る左目に觜を突き刺そうと勢いをつけた瞬間、光弾が目元に着弾し爆発した。

「今よ! イーゴリ!!」
 イリスの攻撃魔法がローベルト救出の隙を作る。コカドリーユの顔面が燃え上がった。

 怯んでいる隙にローベルトを鷲掴みしている脚へイーゴリは何度も戦斧を叩き付ける。掴む脚は一瞬だが確かに緩んだ。
「ウィリアム頼んだである!」

「言われなくても!」
 弛んだ隙を見計らってウィリアムはローベルトを救出する。
「もう一度だイリス! 一時撤退! 急げ!」

「了解!」
 イリスが再び魔法を発動する。
 放たれた魔法が炸裂しまとわりつく様な黒煙がコカドリーユを包み込んだ。どうやら目眩ましの魔法のようだ。

「ナイス判断だ! おいカイン君ぼっとしてんなよ! 逃げるぞ! アニエスちゃんもだ!」

「はっ……はい!」
 ウィリアムの声にハッとなり、震える足を叩きしゃがみ込んでいたアニエスの手を取り走り出す。
「アニエスしっかりするんだ! ローベルトはウィリーさんが助けた! 逃げるぞ!」
 放心状態で手を引かれるだけのアニエスの意識を覚醒させようと叫ぶ。逃げ遅れてしまっては3人の働きを無駄にしてしまう。

「うん……ごめん……!」
 アニエスも何とか気を持ち直しカインと共に撤退する。

「あの煙は暫くは晴れないわ! 何処かに身を隠してローベルト君の手当てをしなきゃ!」

「それならこっちです! 穴があります!」
 黒煙の中苦しむコカドリーユを背に撤退する。


 カインの誘導により洞穴に着いた一行は苦しむローベルトを寝かせ手当てを開始した。

「イリスさん回復魔法はないの!?」
 右目のあった部分から血を流し呻き声をあげるローベルトの姿を見てアニエスが問う。魔女であるイリスの術で治せるのではないか、そう希望を持って。

「ごめんなさい。私は攻撃系の術しか扱えないの。それに回復系を扱える魔女は少ないの……居ることは居るのだけれど……」
 イリスは申し訳なさそうに答えた。自分に回復魔法が使えないことをこんなに悔しいと思ったことはなかった。

「そうですか……」

「でも薬の知識なら一通りあるわ。とにかく止血して急いで処置しましょう。」
 残念そうなアニエスを見て心が痛んだが、イリスは出来るだけのことをしようとローベルトの治療を開始する。
 止血と傷口の消毒をすると激痛が走るのか、ローベルトが暴れるため布を咥えさせて男達に体を押さえるよう指示した。痛ましい姿だがイリスは懸命に処置していく。
 消毒を終え包帯を巻いてやるとローベルトは少しだけ落ち着きを取り戻した。

「ローベルトどうだ? わかるか?」
 カインが近付き心配そうに声を掛ける。

「ああ。右目が見えないな。俺の目はどうなった?」
 ローベルトが包帯に手を添え口を開いた。包帯の下にあるはずの目の無事を祈って。

「残念だがローベルト……君の目はコカドリーユに奪われたんだ……すまない。」

「そうか……」
 カインの答えに一言だけ呟きローベルトは沈黙した。
 それから暫く洞窟内は静寂に包まれていた。それぞれ思うところはあったが、それを口にしてもローベルトにしてやれることは何もないと解っていたからだ。


 時を戻す。
「……なあカイン? ちょっと耳かせ。」

「何だ?」
 カインがローベルトの口元に耳を寄せると何かボソボソと話し始めた。
「なっ……本気かローベルト……?」
 何かを聞きカインは驚愕する。皆その様子を訝しげに見た。

「ああ本気だ。もう小細工は無しだ。奴には俺達に手を出したこと後悔させてやるよ……」

 ローベルトの決意の籠った目にカインは何も言えないでいる。反対したい気持ちの方が勝ると同時にローベルトの話に乗ってやりたい気持ちも確かにあった。
 暫く目を閉じた後、カインは頷いた。
「わかった……僕は乗るよ。」
 ローベルトにだけ聞こえる声で返事をしてそのまま沈黙する。

「ありがとうカイン……皆、聞いて下さい。」
 カインに礼を言いローベルトが話し出した。皆がどんな反応をするか大体分かっているがローベルトには自信があった。
 案の定話を聞いた全員が予想通りの反応を示す。

「おいそれは無茶苦茶だ……ローベルト君考え直せ! 応援を呼んでからでも遅くないだろ!?」
 ウィリアムが聞いた途端に反対する。イリスも同意見だ。
「カイン君何故黙ってる!? 最初に聞いたお前こそ止めるべきだろ!?」
 止めもせずに沈黙を貫いているカインに矛先を向ける。やけに落ち着いているカインにウィリアムは怒りを覚えた。幼馴染みが大事ではないのか、下手したら今度こそ死んでしまう…と。

 カインは怒りを向けられながらも冷製に、淡々と話し始めた。
「ウィリーさん、確かに危険です。ですが応援を待っていては間に合わないかもしれないし、モンスターが先に村を襲わないとも言い切れません。
 それに僕が巻き込んだせいでローベルトは右目を失った……その仇は僕が討つ。それしか手はありません。」

「お前はっ!!」
 カインの言葉に我慢出来ず掴みかかろうとしたがイーゴリに止められる。
「おい離せイーゴリ! こいつは殴らんとわからねぇ!!」
 羽交い締めにされて尚カインに殴りかかろうとするウィリアム。

「落ち着くのであるウィリアム。俺は小僧の言い分も解る。」
 更に力を入れウィリアムを拘束する。イーゴリはウィリアムと対照的にローベルトの話を冷静に聞いていた。
「小僧ども……本当にやれるのであろうな?」
 カインとローベルト2人の目を真っ直ぐに見て何かを確認している。2人共目を反らすことなく無言で見つめ返す。
「良いだろう。俺は小僧どもに協力するのである。」

「イーゴリ! どうしたんだお前まで!? 冷静に考えてみろ!」
 イーゴリの思いもよらぬ返答にウィリアムは力が抜ける。そのまま自分を拘束している男の方を見て2人を止めるよう訴える。

「ウィリアムよ、お前が落ち着くのである。
 小僧の言う通り応援は間に合わぬ。このまま俺達で討った方が早い。相手は手負いだ、こちらの戦力は全て健在であり勝算はある。」
 まるで子供に言い聞かせるかのようにイーゴリは諭す。コカドリーユの状態と現在の自分達の戦力を考え導きだした結果可能だと判断した。

「確かにイーゴリの言う通りね……。ローベルト君には悪いけど戦力に変わりないし……。
 よし! 私も乗った!」
 2人のやり取りを見てイリスもローベルトの案に賭けることにした。ローベルトの怪我ばかりを考えていて冷静に分析出来ていなかった自分に反省する。

「おい……そろそろ離してくれイーゴリ。」

「もう暴れぬな?」

「子供じゃねぇんだ。暴れねぇよ。」
 ウィリアムは拘束を解かれ乱れた服を直した。
 そして咳払いをして話し出す。
「お前らの言うことは良ぉくわかった。仕方ねぇ……やるぞ。」
 ウィリアムも腹を括ったようだ。頭を掻きながらしぶしぶではあるが……ローベルトの案に乗ることを了承する。
「アニエスちゃんもそれで良いのか?」
 ずっと黙っているアニエスの事が気になり確認する。

「ええ……昔からこの2人が何か企んでる時は覆らないって知ってますから。申し訳ないんですが助けてやって下さいね。私も頑張ります。」
 カインとローベルトの様子を見て既に決心していたようだ。苦笑いでそう答えたのだった。

「皆ありがとう。時間がねぇから今すぐやっちまいましょか。討伐開始だ……ってやつです。」
 そう言ってウィリアムの口調を真似したローベルト。皆を心配させぬよう無理におどけて見せたことはバレていたが誰も何も言わない。
 もう一度作戦概要を説明し準備が始まった。


「物憂げなのも良いけど、さっきの感情剥き出しのローベルト君もワイルドで良かったわよ。」
 作戦の準備をしつつイリスが話し掛ける。

「え? ほんとですか? この戦いが終わったら俺とデートしましょうか!?」
 弱っていたローベルトの元気が一時的に回復する。美しい女性に目がないローベルトらしい反応だ。

「あら、私バツイチ子持ちだけど誘ってくれるの?」

「「「マジッすか!?」」」
 衝撃の事実にクレール村の3人は作業中の手を止め声を揃えた。

 こうして再びコカドリーユ討伐が開始された。


 数十分後、森の一角。
「さぁ来いやぁぁっ! クソ鳥野郎がぁぁぁっ!!」
 全身血だらけのローベルトが横たわって叫んでいた。


 とてもシュールな光景ではあるが、作戦はこうだ。
 全身に血を塗った自分を餌に匂いと音でモンスターを誘い出し、モンスターが来たらローベルトの近くに隠れている全員で一斉攻撃。以上だ。
 作戦と言うには雑すぎるがローベルト曰く弱った相手を確実に仕留めるにはこれが一番だそうだ。

 ローベルトは気付いていた。コカドリーユの知能がそれほど高くないことは紛れもない事実である。それなのに何故自分を襲ってきたのか。
 鳥の化物は攻撃の来た方角ではなく指示を出してローベルトの声に反応していた……だから他の者を無視し自分が襲われたのだ。そのことを前提に全員には前もって攻撃のタイミングを支持してある。
「いつでも来いよ化物! 殺してやる…!」


(なあカイン君……これ本当に大丈夫なんだろうな……?)
 隠れて攻撃に備えているウィリアムがカインに尋ねた。

(大丈夫ですよ。村のいじめっ子達をこらしめるのにローベルトと良く使っていた手です。)
 カインは自信ありげに笑顔でそう答える。

(しかし相手はモンスターだぞ……)
 不安を拭い去れないウィリアムは今からでも遅くないから撤退しようと言い出した。

(相手は手負いである。一気に片付けるには良い作戦ではないか。)
 イーゴリはローベルトを支持しているのかウィリアムを制止し敵の出現を警戒するよう諭す。

(しかしだな……)

(しっ! 奴が来ましたよ。)

 木々を掻き分ける音が聞こえ、地響きと共にどす黒い怪鳥が姿を現す。少しふらついているが血と声に引き寄せられるように一歩ずつローベルトへと近寄って行った。
「来やがったな化物め!」

 コカドリーユがローベルトを確認し、逃がした獲物を喰らい直そうと觜を突き出した。その面はニヤついているようにさえ見えた。

「今ですイーゴリさん!!」
 ローベルトが叫ぶ。その体にはロープが繋がれていた。

「おおおっ!」
 ローベルトの合図と同時にイーゴリが渾身の力でロープを一気に引き寄せる。

「痛ぇっ! 布を敷いとくんだった!」
 引き摺られるローベルトは作戦が失敗することはないという自信があるのか、それとも余程余裕があるのか背中の心配をする。

 確実に獲物の肉を啄んだと思ったコカドリーユは觜が空を切り地面に突き刺さる。
 その刹那空から無数の矢が降り注ぐ。木上に隠れ弓を構えていたアニエスが矢を射ったのだ。休む間も無く矢が尽きる程に次々と射続ける。

 首と背に多くの矢を喰らったモンスターは辺りをキョロキョロと見ている。だが未だ叫び挑発し続けるローベルトを標的としているようだった。
 遠ざかるローベルトを追おうと再び動き出したが、次はイリスの魔法が襲った。爆破、炎、氷とありったけの攻撃魔法を喰らい続ける。

 遠距離攻撃が止み煙が晴れるとコカドリーユは羽毛が焼け落ち、無数の矢が刺さり焼け爛れた皮膚を露出させ怯んでいる。
 そこに間髪入れずカインとローベルトが飛び出し斬撃を叩き込んでいく。確実にダメージが蓄積されているが、なかなか倒すまでには至らない。

「クソ……しぶといな……!」
 ウィリアムに疲労の色が見え始めた。化物はダメージを受けながらも立ち続け、未だ反撃の好機を窺っている。

 戦闘中カインは作戦前のローベルトとの会話を思い出していた。
「なあカイン。そのクレア……だっけか? 何か柄が短くない?」

「やっぱりそう思う? 村長に合わせて造ってるらしいからね。手首を使うように言われてるんだけど……短いせいかどうもまだしっくり来ないんだ。」

「お前器用なんだしさ、長く弄ったら? 木剣も長めに改造してたじゃん? 」

「うぅん……確かに僕は長い方が好きだし扱いやすいけど…考えとくよ。」

「まあお前の事だし好きにしろよ。今は戦いに集中だな。」

 この内容から何か思い付いたのか、カインは持ち場を離れた。
「ウィリーさん! 少し抜けます! 時間稼ぎお願いしますね!」

「何言ってんのカイン君!?」
 当然ウィリアムは困惑するが攻撃を緩めずに何とか持ちこたえている。
「クソっ! イーゴリ! 一旦カイン君と交代!」
 ローベルトを側で守っていたイーゴリに突然の攻撃交代を指示する。

「おいどうした小僧?」
 何故か退いてきたカインを疑問に思っている。
「ええい仕方ない! 訳は後で聞くのである!」
 カインがローベルトの元へ離脱するとイーゴリはすぐに飛び出しウィリアムの援護に向かう。

「あと少しです! 確かここに……あった!」
 何やらゴソゴソしだすカイン。
 イーゴリとウィリアムはその間も攻撃の手を休めない。

「おいどうしたんだカイン?」
 ローベルトも戦闘中に何事かと疑問をぶつける。何か弄っているカインをただ見つめながら。

「君の言葉を思い出したんだ! 良し! これで巧く戦える!」
 作業が完了したのか、それだけ言い残し勢い良く走り出す。

「何だったんだ……?」
 ローベルトは一人取り残されカインの背中を見つめることしか出来なかった。
「えっ……俺の護衛は!?」

 ウィリアムとイーゴリの元にカインが戦闘復帰する。
「お待たせしました! もう大丈夫です。
 イーゴリさんはまたローベルトをお願いします!」
 自信に満ちたその表情は何かを予感させる。イーゴリは急ぎローベルトの元へ向かった。

「何やってたんだ! おいそのクレア何したんだ!?」
 ウィリアムがクレアの柄が何故か長くなっていることに気付いた。柄が延長され柄頭に鋭利な物が装着されている。
「おい何だそりゃ? そんなんで使えるわけねぇだろ!」
 昨日の稽古で教えたこと、柄の短いクレアだからこそ出来る技だということを無視する形となっていた。

「大丈夫です。僕手首は固いんですが握力には自信あるんで。」

「何その無駄な追加設定! そして今関係あるか!?」

「まあ見てて下さいよ。」

 そんな2人のやり取りで隙が生まれ、コカドリーユは好機と見てカインに襲いかかった。脚を深く踏み込み、觜を勢い良く突き出す。

「カイン!」
 ウィリアムが叫ぶ。モンスターの攻撃はカインに直撃する寸前だった。

 カインはコカドリーユの動きに集中する。世界がスローモーションの様に見えていた。
 觜がカインの眼前に迫っている。

 切っ先で喉元を斬り挙げる……
 心の中で昨日繰り返した動きを思い返す。クレアの切っ先がモンスターの喉元に食い込み、斬り裂きながら刃先が空を仰ぐ。
 敵の勢いを活かして……そしてそのまま降り下ろす…だよな?
 剣は綺麗な弧を描きコカドリーユの肩口に吸い込まれて行った。

 その瞬間、コカドリーユの左翼が吹き飛び宙を舞う。そして鳴き声もないままに地面へ平伏した。

 カインは今何をした?昨晩の稽古は結局妥協して何とか及第点で終了させただけじゃなかったか?
 一瞬の出来事にウィリアムは理解が追い付かない。

「まだです! ウィリーさんこれ借りますよ!」

「あっ! おい俺の剣!」

 カインがウィリアムの剣を取り、起き上がろうとするコカドリーユの元へ駆けて行く。大きく跳躍して化物の背中に飛び乗った。
「これで最後だ化物め!」
 そう叫びウィリアムの剣を背中から突き刺し心臓を貫通させる。

 コカドリーユは叫び声を挙げながら暴れだす。振り落とされないようカインは踏ん張っている。
「そして……これはローベルトの分だ!」
 モンスターの右目にクレアを突き立て、更に押し込み左目から貫通した。そのまま突き出た刃先を地面に固定する。

 グゲエェェエ!!
 コカドリーユは叫び激しく暴れるがカインは決して剣を離さない。寧ろ力を入れ続けている。

 コカドリーユの抵抗は次第に弱まり、そして絶命した。

「……エグっ! カイン君引くわぁ……」
 カインの行動にモンスターと言えど同情するウィリアムであった。

 カインはコカドリーユから剣を抜き付着した血を振り払う。
「ウィリーさんこれお返ししますね。」
 ウィリアムより奪い取った剣を返却し、自分のクレアも血を拭き鞘に納める。
 「さて、帰りましょうか!」

 返り血を浴びて微笑むカインを見てその場に居る全員は弱冠引いているが、一同帰路につく。

 こうしてコカドリーユは無事討伐された。
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